俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第7話

 

 

 

 

当番のくじ。櫻田家では年長組の五人がクジを引いて決める。クジの内容は掃除、洗濯、料理、買い物、そして休みの五つだ。で、全員が引いた。

 

「買い物ぉおおおおおお‼︎」

 

雄叫びを上げて頭を抱えるのは茜だった。その様子を見ながら慶は部屋に戻る。手元に握られている札には料理の二文字。基本、慶は面倒だからサボるのが自分のスタイル。その慶の肩を葵が掴んだ。

 

「サボりはダメよ?」

 

「…………うぃっす」

 

なんてやってると、光が茜に言った。

 

「あたしカレー食べたいっ!なんなら一緒に行ってあげるから!」

 

「出かけたくないって言ってるじゃん〜…宅配ピザじゃダメ?」

 

「あかねちゃん!そんなにカレーが嫌なの⁉︎」

 

「カメラが嫌なんだってば!」

 

「この前全国に自分のパンツ晒しといて何言ってんだよ」

 

慶のいうこの前、とはあのぬいぐるみの時だろう。慶と奏が争ってる時に途中で競技が終わってしまったのは、茜が遥にケツを触られ、動揺して能力を誤作動し、輝に突っ込んだ所を修が瞬間移動で助けたのだが、間違えて茜のスカートごと移動してしまい、パンツを全国に晒されたらしい。

 

「言わないで!」

 

なんて話してると、奏が口を挟んだ。

 

「あんた達って選挙活動する気ゼロよね」

 

「まぁな。俺は将来は王様になったやつに養われるつもりだ」

 

「どうでもいいけど、私が王様になっても養わないからね」

 

「嘘っ⁉︎」

 

「ていうかあたしはやる気あるもん!」

 

光がグイッと会話に入る。

 

「光じゃ相手にならないの」

 

「そんなことないよ。光だって頑張ってるよね」

 

「いや頑張ってはいないかも」

 

「フォローした私の為にも頑張って⁉︎」

 

茜が絶望的な声を出しながらも光は無視して言った。

 

「大丈夫!いざとなったらあたしの能力で票集めなんて楽勝だもん!」

 

「国民にはあんたが10歳ってバレてるんだから意味ないじゃない。それも変化するのは外見だけだし。見た目で人を引きつけようなんてダメよ」

 

そう言う奏は鏡を見ながら前髪を弄っている。

 

「自分だって外見めちゃめちゃ気にしてるじゃん!」

 

で、光は何を思ったか、胸を張る。

 

「いいもん。将来はあたしの方がおっぱい大きくなるし‼︎」

 

「はぁ?おっぱいは形が大事なの」

 

「大きさだよ‼︎修ちゃんが言ってた‼︎」

 

「言ってねぇ!感度だ……」

 

「けーちゃんはどう思う⁉︎おっぱい‼︎」

 

「お前らは何も分かってない。いいか?オッパイは形でも大きさでもない……」

 

「「はぁ?」」

 

言いながら慶は手だけで栞を呼んだ。すると、とててと寄ってくる栞。そして、慶の膝の上に乗せた。

 

「見ろ!このオッパイを!」

 

「…………小さいし子供オッパイじゃん」

 

「光!お前、なんっも分かってねぇな!形だ大きさだじゃない、オッパイは……可愛い子のオッパイがベストなんだっ!」

 

言いながら慶は栞を抱き締める。

 

「慶お兄様……痛い……」

 

「お?そうか?悪いな我が天使よ。今日の飯なにがいい?栞の好きなもの作っちゃうぞー?」

 

「じゃあ……唐揚げっ!」

 

「任せろ。栞のために作ってやるからな。オイ栞以外のその他大勢、貴様らの飯はこの栞様のついでだ。ありがたく思え」

 

「シスコン……」

 

「気持ち悪い……」

 

「死ねばいいのに……」

 

「おい最後の奏。言い過ぎだろ」

 

 

 

 

なんやかんやで、茜と光は買い物へ行った。

 

「さて栞。お前なんでそんなに可愛いの?天使なの?もう結婚しちまおうぜ、な?」

 

「ちょっと、気持ち悪いわよ本気で」

 

奏に止められる慶。

 

「なんだよ。別にいいだろ。可愛いんだから。なぁ栞?」

 

「ちょっと……怖い……」

 

「えっ」

 

「ほら見なさい」

 

「奏、言葉に気を付けろ。うっかり自殺するぞ」

 

「だから死ねばいいじゃない」

 

「………お前、なんか怒ってる?」

 

「別に」

 

「いや怒ってるだろ……」

 

「別に」

 

なんなんだ……と、眉をひそめていると、ポンっと肩に手を置かれた。

 

「修………」

 

「大丈夫。お前は悪くない」

 

「ならいいんだが……」

 

「それより、今週のジャンプ貸してくれ」

 

「おう」

 

そんな事を話しながら自室に向かった。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

帰ってきた。が、茜が小さくて光が大きい。

 

「おう、待ってたぜ」

 

「な、なんで⁉︎もしかして私に会いたかったとか……」

 

「ようやく栞たんに美味しい唐揚げを作ってやれるからな」

 

盛大な勘違いに顔を真っ赤にする茜を捨て置いて、慶は聞いた。

 

「つーか、買い物袋は?」

 

「ていうか突っ込めよ⁉︎なんかお前らサイズ違くね⁉︎」

 

修が遅れてツッコム。

 

「何々⁉︎なんかあったの⁉︎何この子どこで捕まえたの⁉︎」

 

岬がハプニングの匂いを嗅ぎつけ、ちっこい茜を抱き締めて誘拐した。

 

「猫を助けるためにね。で、自分が大きくなったんだけど服がアレで……それで茜ちゃんを小さくして服を取り替えたの」

 

そう説明する光は猫を抱いている。

 

「……なるほど。で、さっきから気になってるんだが……慶。何してんの?」

 

「えっ?」

 

修の視線の先では、慶が奏を盾にして隠れていた。

 

「な、なに……どしたの?」

 

光が聞いた。

 

「知らないの?慶って猫ダメなのよ」

 

「「嘘ぉッ⁉︎」」

 

修と光が声をそろえて突っ込んだ。

 

「はぁ⁉︎お、おまっ……ナイフ持ってるスリ男は倒せんのに猫はダメなの⁉︎」

 

「なんでよ!どういうこと⁉︎」

 

と、問い詰める二人に奏は冷静に答えた。

 

「実はね、小さい時に私と慶はよく一緒に遊んでたんだけど、その時に猫が近寄ってきて、慶がたまたま持ってた煮干しをあげようとしたのよね。そしたら、噛まれて、その時の猫の歯が思いの外深く刺さって……」

 

「すごく痛かったんだぞ!血ぃ止まらなくて!」

 

(可愛い)

 

(可愛い)

 

(可愛い)

 

ほっこりする光と修と奏。

 

「だから早く捨ててこいよ!そんな人類壊滅兵器!」

 

「ダメだよ!可哀想じゃん!」

 

「俺の方が可哀想だろ!」

 

「それは頭だけでしょ⁉︎」

 

「どぉぉういう意味だコラァっ‼︎」

 

「うるさい。耳元で叫ばないで」

 

ペシッと慶の額を叩く奏。

 

「栞、ちょっときてくれる?」

 

言われて来る栞。

 

「あの猫の心を読んでくれる?」

 

言われて能力を発動した。

 

「『………木の上から助けてもらい、この人間なら信用しても構わないと思ったのだが、その中にまさかこれほどまでに器の小さなものがいたとは、王族もたかが知れたものだな』」

 

「んだとこのクソ猫がコラァッ‼︎」

 

「にゃー」

 

「ごめんなさい……怒らないで……」

 

「「「「弱っ⁉︎」」」」

 

修、光、奏、栞が思わず声を上げる。すると、猫が言った。それを、通訳する栞。

 

「『なんだ、大したものではないようだ。ならば、力付くで貴様の意見を捻じ曲げてやろう……』」

 

「ご、ごめんなさい!わかりました!ここに住んでくださいお願いします!」

 

「『分かればいい』」

 

そのまま猫はのっしのっしと家の中へ消えて行った。

 

「………奏」

 

「何?」

 

「今日は一緒に寝てください」

 

「仕方ないわね……」

 

 


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