ある日、慶は寝ていた。その慶の腹の上に何かが落ちてきた。
「ゲッフォアッ!」
「起っきろー!」
光だった。
「ひ、光……親愛なる妹に起こしてもらうのは俺の夢だったが、もう少し穏やかに起こしてくれ……」
「ねぇ、お願いがあるの」
「なんだよ」
「実はさぁ、動物園に行きたくてねぇ〜」
「はぁ?なんでまた」
「虎の赤ちゃんが産まれたんだって!」
「それで?」
「見に行きたいの!」
「行けばいいじゃん。アイドルやって稼いでんだろ」
「お願い、お兄ちゃん」
「よし任せろ。交通費食費入場料お土産代全て俺が出してやる」
「ありがとう!栞と輝の分もお願いね!」
「へっ?ち、ちょっと待ってそれは聞いてな……」
「じゃ!明日よろしくね!」
そのまま出て行ってしまった。ちなみに財布の中には45円しかない。
「………さて、二度寝するか」
現実から逃げた。
*
「と、いうわけで葵お姉様。助けて下さい」
気が付けば土下座していた。
「なんで私なのよ……」
「そりゃあ、俺の3人の姉の中で一番頼れるからだろ」
「そ、そう……そうね」
ストレートに言われて少し顔を赤らめる葵。葵なのに。
「頼むよマジで。金は返すからさ」
「ていうか、そもそもどうしてお金ないのにOKしたのよ」
「俺が可愛い光の頼みを断れるわけないだろ」
「アホね……まぁ、お金返してくれるならいいわよ。行きましょう」
「いや、お前いらねーから金だけくんない?」
「………あんたぶっ殺されたいの?」
「や、冗談ですごめんなさい」
*
そんなわけで、翌日。五人は動物園へ。
「へっ?小学生以下入場料無料なの?」
慶がマヌケな声を上げた。
「なんだよ……じゃあ本当に葵いらなかったじゃん」
「電車代、誰が出したと思ってるの?」
「そ、そういやそうだったなー」
で、ご入園。
「すごーい!あそこ!猿!可愛い!」
「あっ、待ってください姉上ー!」
パタパタ走る光と追う輝。
「あんま離れんなよー。………ったく、はしゃぎやがって」
「あら、いいじゃない。子供だもん」
なんて慶と葵が話してると、慶の肩の上の栞が言った。
「なんか、今の会話、パパとママみたい……」
「うえっ⁉︎」
言われて顔を真っ赤にする葵。
「し、栞?き、兄弟で結婚すると思ってるの?」
「栞は、慶お兄様と結婚する」
「俺も栞と結婚する」
「なんか一度通報したほうが身のためみたいね……」
「それは勘弁してくれ、死んじゃうから社会的に」
「どうしよっかなー。………って、輝!余り遠くに行かないでね!光もちゃんと見てあげてて!」
慌てて二人のあとを追った。
「まっておにいさま!お猿さん見たい!」
「ああ?でもあいつら先に行っちゃってて……」
「いいわよ慶。二人は私が見てるから栞と一緒にゆっくり後から来て?」
「………いいのかよ」
「もちろん」
「なら、ゆっくり回るか栞」
「うんっ」
フヒヒ、栞たそと一緒に動物園デートとか死んでもいい。
「さて、栞。何処に行きたいー?」
「おさるさん」
「うんすぐそこだね。好きなだけ見てけ」
「うんっ」
と、まぁこんな感じで二人でデートを続けた。
*
数時間後、慶の携帯……略して慶帯にLINEが来た。
あおい『そろそろお昼にしましょう』
それだけ確認すると、慶は栞に言った。
「栞、そろそろ飯にしようだとよ」
「分かった」
そんなわけで、飯屋。モンハンコラボのつもりか、こんがり肉なんてものが売っていた。
「おーい、こっちこっちー!」
光の元気な声がして、ようやく合流した。
「さて、じゃあ何食う?俺が買ってきてやるよ」
「僕はこんがり肉がいいです!」
「あたしも!」
「私はハンバーガーでいいわよ」
「栞も、お子様ランチ」
「うぃっす。………一人じゃ無理だから誰か手伝って」
「じゃあ僕が手伝います!」
威勢良く手を挙げた輝と飯を買いに行った。