俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第74話

 

 

慶は中学に来ていた。

 

「ったく……なんで俺がこんなこと……」

 

岬と遥の授業参観の親役で。慶の学校はあれ、なんか休みになったってことで。で、体育という事なので体育館にいる。もちろん、女子の方を見に。

 

「ねぇ、岬」

 

クラスメートが岬に声を掛けた。

 

「なに?」

 

「慶さん、だよね?仲良いの?」

 

「そーでもないよ。けーちゃんはパパの代理だし」

 

「でも普通、妹の授業参観なんか来てくれないよ?」

 

「まぁ、けーちゃんツンデレだからなぁ……」

 

「そうなの?」

 

「絶対そう。そんな気しかしない」

 

「………なんとなく分かるかも」

 

なんて話してる岬の後頭部にバスケットボールが直撃した。保護者の方から飛んできたようだ。

 

「だ、大丈夫岬⁉︎全然デレてないけど!」

 

「へ、へーきへーき。あれけーちゃんなりの愛情表現……」

 

と、呟いた所に二発目のバスケットボールが飛んできた。

 

 

 

 

で、終わって後片付け。何度も授業を邪魔した罰で慶も手伝わされていた。

 

「まったく……馬鹿だねけーちゃん」

 

「っせーよ。お前がツンデレだなんだ抜かすからだろうが」

 

「だからって普通邪魔しないから。ほら開いた」

 

岬が体育倉庫の鍵を開けて中に入る。

 

「とっつげきぃ〜!」

 

「きゃあっ!」

 

後ろからボールのカゴのあの台で突撃され、思わず転んでしまう岬。

 

「ちょっと何すんのよ!」

 

「いやごめん。力入っちゃった」

 

「わざとでしょ!突撃って言ってたもん!」

 

「まぁな」

 

「まったく……あれっ?」

 

「どした?」

 

「やだっ……服がどこかに引っかかって……」

 

「何やってんだよ…ったく……」

 

「けーちゃんのせいでしょ⁉︎」

 

すると、慶は岬の元へ歩く。

 

「へ?何?」

 

「どこが引っかかってんだ〜……?」

 

そんな事を呟きながら慶は岬の背中の辺りを覗き込む。

 

「ち、ちょっと、けーちゃん⁉︎」

 

「あーこれだこれだ。バレーボールのポールの引っかかるところに引っかかって……てか穴あいちゃってら」

 

「あ、穴⁉︎」

 

「今とってやるから……」

 

「ま、待って!触らないで!自分でやるから……!」

 

だが、慶は無視して外そうとする。その時だ。顔を真っ赤にした岬の蹴りが慶の腹にクリティカルした。

 

「触んないでってばぁーーーーッッ‼︎‼︎」

 

「グホッ⁉︎」

 

そのまま後ろのドアに突っ込む。

 

「いってぇな!何すんだよ!」

 

「触らないでって言ってるでしょ⁉︎」

 

「外してやろうとしてたんだろうが!その位置はお前とどかねぇだろ!」

 

「な、何を……!って、けーちゃんそれ何持ってるの?」

 

「あ?」

 

慶の手には白い布が握られていた。『櫻田』と刺繍入りの。そこでようやく自分の服が破れて半裸になってる事に気付いたようだ。

 

「き、キャアァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

その時だ。足音が体育倉庫の外から聞こえてきた。

 

「やばい……!」

 

自分は平気だが、岬は半裸。万が一生徒だったら見られるので急いで体育倉庫のドアを閉めた。で、慌てて岬の口を塞ぐ。

 

「………⁉︎」

 

「静かにしろ。半裸誰かに見られたいのか?」

 

「……………」

 

だが、この行動はダメだった。外から、ガチャッという鍵を閉める音がした。

 

「「………………えっ?」」

 

二人の思考はフリーズした。

 

 


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