俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第75話

 

 

 

体育倉庫に閉じ込められた。

 

「嘘おおおおおおおおッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

悲鳴をあげるように叫ぶ岬。

 

「なんでこうなるの!なんでこうなったの!なんでこうなんなきゃいけないの!最悪だよ!」

 

「ままま、落ち着けよ。俺が携帯で遥呼べば済む話だろ」

 

言いながら携帯を取り出す慶。だが、バッテリー切れ。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

二人に嫌な汗がドッと浮かぶ。

 

「だ、大丈夫だよ。お前この後体育館使うクラスだってあんだろ……」

 

「今のが6限だからもう誰も来ないよ」

 

「…………ぶ、部活やってるとことかあんだろうが」

 

「今日の放課後は体育館なんか使うみたいだから体育館使う部活はオフだよ」

 

「………………」

 

「………………」

 

「ヘルプ!ヘルプミィィイイイイイイ‼︎‼︎誰でもいいからこの重い扉を開放しろおおおおおおお‼︎‼︎」

 

「頼りなっ!もう少し冷静を保っててよ!」

 

「うるせぇ!どこか窓はないのか窓は!」

 

「ない」

 

「マジかよ………一応聞くけどお前携帯は?」

 

「教室よ」

 

「だよなぁ……」

 

「そもそもなんで充電切らしてんのよ」

 

「さっきまで白猫の協力バトルやってたから……」

 

「あんたは………」

 

「まぁ過去に理由なんて求めても仕方ねぇよ。未来に希望を探そう。とりあえず落ち着いてどこでもドアか通り抜けフープを探せ」

 

「あんたが落ち着けええええええ‼︎」

 

「未来に手を伸ばすって言ったろうが」

 

「何年先の未来⁉︎無限パンチでも届かないわよ!」

 

で、岬はため息をついた。

 

「はぁ……こんな時に遥がいてくれれば……」

 

「悪かったな。愛しの遥様じゃなくて。ブラコン」

 

「シスコンに言われたくないわよ!」

 

「馬鹿野郎!俺のシスコンは光と栞限定だ!」

 

「尚更危ないわよ!」

 

「まぁとにかく、ここから脱出する方法考えねーとな」

 

言いながら立ち上がる慶。すると、後ろから「くしゅんっ」とくしゃみの音が聞こえた。

 

「寒いのか?」

 

「忘れてたけど、体育着破けてるんだよねー……っくしゅ!」

 

「おら」

 

着ているコートを放る慶。

 

「風邪引かれると俺が葵に殺される」

 

「! あ、ありがと……。やっぱりツンデレだ」

 

「………やっぱそれ返せ」

 

「やーだよー」

 

ニヒッと笑う岬。それにイラッとしつつも慶はゴキゴキと両手を鳴らした。で、ドアを見る。

 

「あ、あの、けーちゃん?やめといたほうが……」

 

「やってみなきなわからんだろ」

 

「いや分かると思うけど……」

 

「オラァッ‼︎」

 

そのまま本気でドアを殴る慶。ゴッ‼︎と短く太い音が響き渡る。大きく凹んだものの、やはりドアは壊れなかった。それどころか、

 

「…………指折れた」

 

「だから言ったじゃない!」

 

「痛い……泣きそう……」

 

「そりゃ痛いわよ!こんなバカ久々に見たわ。とにかく、大人しくここで待ちましょう。明日になればまた部活やら体育やらあるでしょ」

 

「それもそうだけど……。でもここで何もしないのは俺のポリシーに反するわけで」

 

「どうでもいいわよあんたのポリシーなんか」

 

「まぁ、しばらくここで待ってるのもいいか。それより岬。バドミントンやろうぜ」

 

「今度は何⁉︎なんでそんな落ち着いてるの⁉︎」

 

「お前が落ち着けって言ったんだろ。暇だし寒いからやろって言ってんの」

 

「うー。別にいいけどさぁー」

 

そんなわけで、バドミントンをやる事になった。体育倉庫で。

 

 

 

 

5時間後、櫻田家。

 

「まだ帰ってきてないの?」

 

葵が言った。

 

「そう。けーちゃんも岬もいないんだよ」

 

「何かあったんじゃなーい?」

 

光がソファーの上でゴロゴロしながら言った。

 

「うーん……でも慶がいれば変な人に出会しても大丈夫だとは思うんだけど……」

 

「探してこようか?」

 

そう言ったのは修だ。

 

「うーん、そうね。お願いするわ」

 

「僕も行くよ。能力で探してみるよ」

 

遥も言った。

 

「別に慶兄さんはどうでもいいけど、岬は心配だから」

 

「そう。ならお願い」

 

「じゃ、行くぞ遥」

 

「うんっ」

 

そのまま二人は家を出た。

 

 

 

 

「予知だとこっちのはずなんだけど……」

 

と、遥と修が到着したのは中学だった。

 

「こんな所で何してんだあいつら」

 

「さ、さぁ………」

 

「もしかして、兄妹としての一線を越えたのかもな」

 

「ええっ⁉︎」

 

「冗談だ」

 

なんて話しながら進むこと数分、着いたのは体育倉庫の前だ。

 

「…………ますますやっちまってそうだな」

 

「そんなの僕は許さないよ!」

 

「や、だから冗談だって。とにかく、中の様子でも見よう」

 

修はそう言うと、遥と一緒に中に瞬間移動で中に入った。中では、

 

「1782!」

 

「1783!」

 

「1784!」

 

「1785!」

 

バドミントンをしてる二人の姿があった。

 

「…………何してんの」

 

「うおわあっ⁉︎」

 

急に声がかかって、思わずビクッとする慶。

 

「けーちゃん!前、前!」

 

「へっ?あっやべっ」

 

「あー終わっちゃったー……」

 

「終わっちゃったじゃなくて。何してんのって聞いてんの」

 

「や、体育倉庫に閉じ込められちまったからあったまるようにバドミントンやってたら思いの外熱中しちゃってな」

 

「1785回まで連続して出来るようになったよ!」

 

「「出来すぎだろ!」」

 

デュエットでツッコむ修と遥。

 

「ったくお前らは……ほら、早く帰るぞ」

 

「えーもーちょっとだけ。今なら2000回はいける気がする」

 

「葵姉さんに殺されても知らないからな」

 

「さて、帰る準備するか」

 

 


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