ある日。慶が競馬場で大負けした時、携帯がヴヴッと震えた。LINEが来ていた。
さっちゃん『暇なら、少し会えるかな?相談があるんだけど』
慶『今、競馬場だから。30分くらい掛かるけど』
さっちゃん『あれ?未成年じゃ無かった?』
慶『バレなきゃいんだよ。変装してるし』
ちなみに慶の服装はエゥーゴの制服だった。完全に変装のベクトルを間違っている。
さっちゃん『じゃあ、今すぐ来てくれる?』
慶『分かったよ。どこ?』
さっちゃん『いつもの喫茶店』
慶『うい』
返事だけすると、慶はバイクでぶっ飛ばした。
*
喫茶店に到着。
「よう、どーした?」
「その、相談があるの」
「はぁ」
「桜庭ライトって、知ってるわよね?」
「ああ。マイエンジェルだろ」
「あ?」
「や、なんでもない」
口が滑った。
「で、そのひか……夜神月がどうした?」
「その、引退、するみたいなの」
「ねぇよ」
「へ?」
慶は昨日の夜に光が楽しそうに自分が出てるテレビを見てるのを思い出しながら即答した。だが、正体は秘密にしてることを思い出した。
「あーいや、なんでもない。とにかくねぇから安心しろよ」
「な、なんでそんなことわかるの?」
「いつも見てるから」
「いつも見てる……?」
「あっ、いやなんでもない」
「ねぇ、けーくんってライトとどういう関係なの?」
いつの間にか、紗千子はものっそい形相で慶を睨んでいた。
「あっ、いや……えっと……し、知り合いだけど?」
「ただの知り合いでもアイドルといつも一緒にいられるわけないわよね?」
「や、それは……」
「ねぇ、どういう関係なの?」
目からハイライトが消えていた。
「え、えと……」
「もしかして、付き合ってるの?」
「何その神シチュエーション!」
また口が滑った。その瞬間、ガタッと紗千子は立ち上がった。
「もういい。さよなら」
「えっ、ちょっと何?えっ?何怒ってんの?」
「……………ばか」
そのまま紗千子は行ってしまった。
「………ごめん、光。お兄ちゃん余計なことしたかも」
*
紗千子はアイドルの事務所的なところに戻っている最中。
「最低………」
自虐的に言った。今思えば、まだ2人が付き合ってるかなんて分からないし、勝手に決め付けて呼び出しといて飛び出てきた。
「どうしよう……」
ため息をついて事務所的なものに戻った。
*
慶は家に戻った。
「てなわけで、なんで怒らせたのかさっぱりわかんねんだよ」
「あんたが悪いわね」
間髪入れずに葵に言われた。
「え?俺が悪いの?」
「10割とは言えないけどあなたが悪いわ」
「えぇ〜……なんでかさっぱり分からん……」
「まぁ分かれとも、謝りなさいとも言わないけど、少しは考えなさい。どうして怒ったのか」
それだけ言うと、慶は葵に部屋から締め出された。