俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第8話

 

 

 

体育の授業。男子はサッカー、女子もサッカー。ただグラウンドが違った。すると、女子の方から上がる歓声。

 

「きゃー!慶くんすごーい!」

 

今までは友達がいなかったので、体育の授業中はパスはされないし、むしろ少し離れた場所でパズドラをやっていたのだが、あのスリ犯捕獲以来、よくパスが来るようになった。

結果、サッカー部の中でスタメンとは言わないが、ベンチ入りしてる奴と同じくらい強かった。

 

「櫻田!こっち!」

 

言われて完璧なパスを通す。パスを貰ったそいつは見事なドリブルでデュフェンスを躱すと、別の奴にパスを出し、そいつがシュートを放った。

 

「っしゃ!」

 

「ナイス!田中!」

 

まぁすっげぇ活躍してるかと言われたらそうでもない。まずまずだ。

 

「ほーんと、やれば出来るのがすごいなぁ……」

 

それを見ながら茜が声を漏らす。

 

「? そうなの?」

 

友達の鮎ヶ瀬花蓮が聞いた。

 

「うん。成績優秀スポーツ万能、残念なのは性格だけなんだから」

 

「性格残念って……姉が言っちゃうんだ……」

 

「この前なんて猫に泣かされそうになってカナちゃんと一緒に寝………」

 

と、言いかけた茜の顔面にシュートが直撃した。慶が当てたのだ。プレイ中に。撤回しよう、ベンチ入りどころか即戦力レベルだった。

 

 

 

 

学年集会。

 

「と、いうわけで、町内清掃活動をやります」

 

と、いうわけだった。が、慶にとってはどーせサボるからまったく関係ない。学年集会の話を片っ端から無視して、パズドラをしていた。

 

 

 

 

教室。

 

「な、なぁ。櫻田くん。ちょっといいか?」

 

急に声をかけられた。

 

「え?な、なんですか……てか誰ですか?」

 

「福品だよ。一応同じクラスなんだけど……」

 

「そ、そう……な、なに?」

 

「その、今度の町内清掃活動なんだが……校内に変えてもらえるように君のお姉さんに頼んでもらえないかな?」

 

「な、なんで?」

 

「い、いやだってさ……茜様がほら、恥ずかしがるじゃないか……可哀想だと思わないか?」

 

「断る」

 

「な、なんで⁉︎」

 

「可哀想だと思わないからだ。それに、俺が仮にふ、ふく……福岡くん?の意見に賛同しても大した変化にはならないよ。俺は王家の中でも特に人気がない。何より、奏と俺は仲悪いから」

 

「そ、そっか……そだね。悪かった」

 

そのまま福品は去っていった。

 

 

 

 

そんなこんなで、結局は町内清掃となった。福品と茜がなぜかクラス全員と話している中、慶は当然のようにサボった。監視カメラを見事に躱し、ゲーセンに到着。

 

「あの、すいません」

 

店員に声をかけた。

 

「け、慶様⁉︎何ですか?」

 

「ゴミ箱って何処すか?」

 

「そこにありますけど……」

 

「ゴミ、少しだけもらえます?」

 

「構いませんが……何に使うんですか?」

 

「隠蔽工作」

 

「は?」

 

そう言うと慶はテキトーな数だけの空き缶とその他燃えるゴミを回収した。

 

「ありがとうございます」

 

お礼だけ言って、そのゴミ袋を手に持ち、いつもやってる音ゲーを始めた。

 

 

 

 

「また買い物ぉ⁉︎」

 

ガビーン!と声を上げる茜。

 

「なんでまた私なのよぉ〜……もうやだぁ〜……」

 

「くじ運悪過ぎ」

 

言いながら慶は休みのカードを葵の持っている箱にしまう。

 

「じゃ、茜。こういうのはどうだ?」

 

「?」

 

「2000円で買い物係を変わってやる」

 

「はぁ⁉︎高いよ!絶対やだ!」

 

「ならこのごまんといる国民の皆様に貴様の姿を晒すがいい小娘」

 

イラっとした茜は半眼になり言った。

 

「ボルシチ、集合」

 

「待ってくださいお願いします‼︎俺が悪かった!言いすぎたからやめて下さい‼︎」

 

「なー」

 

「だからごめんってば!本当にやめて!」

 

「いや〜いい弱点をもらったねぇ。あ、そうだ。いっそのこと買い物今日は私と変わりなさいよ」

 

「はぁ⁉︎ふざけんな!」

 

「ボルシチ……」

 

「なんなりとお申し付けくださいお姉さま」

 

「うむ、よろしい……」

 

と、言いかけた茜の頭をコツンと叩く葵。

 

「コラ茜。良くないわよそういうの」

 

「じ、じょーだんだよお姉ちゃん……。さて、仕方ない。行きますかぁ……」

 

と、茜が涙目で立ち上がった時だ。

 

「葵姉様!僕も当番やらせてください!」

 

「輝?どうしたのよ」

 

「僕は大切なものを守るために……もっともっと強くならなくちゃいけないんだ……そのためには、試練が必要なんだ!」

 

すると、修が突然声をかけた。

 

「気に入った!いいだろう、任せる!」

 

「なんで修ちゃんが許可してるのよ……」

 

「まぁ待てよ輝」

 

そう言って立ち上がったのは慶だ。

 

「どうせ強くなりたいなら買い物だけなんかじゃ中途半端だと思わないか?」

 

「むっ、確かに……」

 

「と、いうわけでこれからは炊事洗濯家事全般こなせ」

 

「ええっ⁉︎」

 

「慶、やめなさい」

 

今度は慶が葵に怒られた。

うおおお!と、1人燃えている輝に栞が声をかけた。

 

「わたしもいく」

 

「栞、これは試練なん……」

 

「絶対にダメだ‼︎栞が輝と二人で買い物、だと……⁉︎ふざけるな!そんな暴挙は俺が絶対に許さん‼︎そんなことをするなら……俺は世界を滅ぼす‼︎」

 

「落ち着け」

 

言いながら修は慶を二階に瞬間移動させた。で、改めて輝は栞に言った。

 

「栞、これは試練なんだ。どんな危険が待ち受けているかわからないんだぞ…」

 

「………いくっ」

 

「栞……。栞は本当に甘えん坊だな……わかった。絶対に僕から離れるんじゃないぞ!」

 

「待て!そんな、俺は……許さないぃ〜…!」

 

と、戻ってきた慶を修はまた瞬間移動させる。

 

「じゃ、行ってきまーす!」

 

出発する2人。すると、慶はリビングに戻ってきて、なんか食ってる光に言った。

 

「光……ちょっと、いいか……」

 

「ふえ?な、なに……?」

 

「手伝え」

 

 

 

 

そんなわけで、小さくなった慶と大きくなった光でストーキング。

 

「世の中の国民……栞に何かしてみろよ……?全員殺してやるからな……」

 

言いながら慶は拳銃を懐に忍ばせている。

 

「けーちゃん、その拳銃どうしたの?」

 

「前に一ヶ月だけ軍の訓練受けてた時にもらった。こいつで栞に危害を加えようとするゴミは殺す」

 

「…………」

 

「なんだよ」

 

「なんか、戦争ごっこしてる小学生みたいで可愛いなぁーって」

 

「お前を撃つぞ」

 

なんてやってるときだ。目の前でワンワン!と犬の声がした。

 

「ああっ⁉︎ぶっ殺すぞ駄犬……ッ‼︎」

 

「やめてよバレちゃうでしょ⁉︎拳銃しまって!(小声)」

 

なんてやってる間に、栞が能力で対話して通り過ぎた。

 

「ほ、ほら。輝はともかく栞なら自分の力でなんとかするから大丈夫だよ。だから……」

 

「追跡するぞ」

 

「む、無駄にプロっぽい動き⁉︎」

 

そのまま二人は尾行した。すると、ようやくスーパーに到着した。

 

「なんとか無事着いたねーけーちゃ……あれ、けーちゃん?」

 

「光!あれ買って!ガンダムのガチャガチャ!」

 

「あんたは子供か!自分で買いなさいよ!」

 

 

 

 

そんなこんなで、ようやく買い物も終わって帰宅中。

 

「だから言ったでしょ?そんなに心配しなくても平気って……」

 

「バカ、アホ、カス、死ね。任務は家に帰るまでだ」

 

「言い過ぎじゃない⁉︎」

 

その時だ。また犬の鳴き声がした。

 

「「⁉︎」」

 

慶と光が同時に前を見ると、さっきとは別の犬が立ち塞がっていた。

 

「な、なんだお前!あ、あっち行け!」

 

輝が怯えながらも追い払おうとするが、犬は退かない。

 

「そうだな……あっちの世界へ逝かせてやろう……」

 

「だから拳銃はしまいなさい!………だいじょぶだよ、栞の能力を使えば……」

 

と、光が言うように能力を使う栞。だが、犬は栞に向かって駆け出した。

 

「ターゲット確認、これより破壊する」

 

「あーもうめんどくさいなこの兄!」

 

その時だ。ダゴォォォンッ‼︎と地面が割れた。

 

「………なにその拳銃」

 

「まだ撃ってねぇよ!」

 

すると、輝がいつになく怒った表情で犬に言った。

 

「おいお前、弱いものを攻撃するなんて卑怯なやつだな。生き物に向かって能力を使っちゃダメだって言われた。でもお前が栞を傷つけようとするなら、ぼくは約束を破るぞ」

 

その瞬間、逃げていく犬。安心したように息を吐く光と、拳銃を懐にしまう慶だった。

 

 

家に帰った慶は、奏に全力で愛でられた。

 

 

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