恒例言い訳の時間ですが、テスト襲来と自分の体力低下です(;一_一)
今回は校内投稿……誤字があったらホーコクお願いします!
4月18日、休息日の昼過ぎの東トリスタ街道に、フィーとアーチャーは居た。
徹夜明けによる睡眠不足も解消され、調子の良いフィーにアーチャーは講義を始める。
「それでは、魔術講座を始める」
「わー……それで何やるの?」
フィーは適当に返事を返そうとするが、アーチャーの目つきが鋭くなったのを見て真面目になる。
アーチャーはそれを見て、現界してから百数回目のため息をつく。
百回目の時にフィーに皮肉を浴びせてからは数えていないアーチャーだが、百回まで数える執念もそこそこだ。
「まずは魔術の基礎中の基礎、『強化』だ。やり方は簡単、魔術回路を起動させ、対象に魔力を流す。魔術師の属性や起源によって特定のモノしか強化出来なかったりする。フィーの場合は概念に関係しているから、制限は特に掛からないだろう。ということで、まずはこの剣に強化してみると良い」
アーチャーはそう言うと、何処からか無骨な剣を取り出し、フィーに渡す。
フィーは不思議そうな顔でそれを見ていたが、直ぐに顔を上げアーチャーに問う。
「これって何処から出した?」
「説明していなかったな。私は生前魔術師……というより魔術使いだったのは察していると思うが、魔術の中でも白兵武器――特に剣を複製する魔術が得意だった。その剣は魔術で今創ったものだ」
アーチャーは思い出したかの表情をする。そこで、フィーはアーチャーの発言にある疑念を抱いた。
「アーチャーの魔術属性は?」
「『剣』、架空元素『虚』の一点特化だ」
「……起源は?」
「……『剣』だ」
(私と同じ超特化型じゃん)
アーチャーが淡々と語るなか、フィーの目はどんどん細まる。
「なのに『
「ふっ、矛盾しているとは思ったさ」
アーチャーの反応を見て、フィーは面白く無さそうな顔をし、剣に視線を戻す。残念ながら、彼はその弄りには耐性が有る。
心を落ち着かせ、剣全体を捉える。そして、脳裏に振り子時計を思い浮かべ、振り子を振るイメージをしながら呪文を唱える。
「
「ふむ……フィーは起動がゆったりとしているな。イメージはどんなものだったか?」
自分の勢いのある起動とは違うのを見て、アーチャーはフィーに訊く。
フィーは一言、
「振り子時計」
と告げて魔力の集中過程に移る。
「それは何と言うか……君は未知の塊だな(やはり今度、くまなく解析して見よう)」
「誉め言葉として受け取る(ミステリアスな女性はモテるらしいし)」
お互い内心思っていることが微妙だが、これも二人が似ているが為だろう。実際、容姿も相まって親子に見える主従関係だ。
「ふー、
どうやら、魔力を腕に集めることに成功したようで、剣にフィーの魔力が流されていく。
「――ん!?」
「半分成功だな、次は剣の構成を強くイメージすると良い」
グキュと音が鳴ると同時に、剣の根本が曲がる。どうやら魔力の流れ方が合わなかったようだ。それでも魔力が霧散していないのを見るに、量は適切なのだろう。
アーチャーはそれを評価し、新しい剣を造りだす。
フィーはそれを見て「おー!」と驚嘆の声を上げる。
「フィーも頑張れば似たようなことができるさ」
とアーチャーは言い、さっきの剣を消そうとする。
「む、これは……」
が、何故かその剣を懐に入れる。フィーは怪訝そうな顔でアーチャーを見る。
「どうしたの、アーチャー?」
「いや、ちょっと用事を思い出してな。私が戻るまで花や土など様々な物に強化して見るとよい」
そう言ってトリスタへ戻って行くアーチャー。
「……変なアーチャー」
剣を使っている時点で、変なアーチャーか、と自身の発言にツッコミながら、フィーは近くに生えた花を摘んだ。
強化訓練をフィーの自由にしたアーチャーだが、現在は第三学生寮のフィーの自室に来ていた。
剣を片手にじっと目を閉じている様は傍目から見れば異様であろう。
「……やはり、強化された剣の消滅が遅すぎる」
これはおかしい、と思い解析を掛ける。
「
基本骨子……約六割程に乱れが生じている
(これは強化に失敗したからだな。次だ)
構成材質……異常なし、言えば成分が少しも動いていない
(異常なし……ん?少しも動いていない……だと)
アーチャーは構成材質に違和感を覚え、さらに解析する。
強化に失敗して、基本骨子に乱れが生じているというのに、なぜ
調べ尽くす勢いで解析を深く掛け、アーチャーはやっとの事で真実を知る。
「剣がこの状態で
そこでアーチャーは気づいてしまった。あり得ない話ではないそれは、
フィーが強化を使えず、勘違いして
アーチャーは半分理解すればいい方のフィーに対して、少しでも複雑な話は切り捨てて説明していた。その切り捨てた説明の中に『魔術特性』というモノがあったりする。
魔術属性と起源により選ばれた得意な魔術が人には必ず一つは存在する。家系などで引き継がれる可能性の高い其れを『魔術特性』と呼ぶ。例として
魔術特性の中でも強化は、全員の魔術師(アーチャーの知りうる)の魔術特性にあり、満足に使えた。だから、使えるだろうと思い込んだのだろう。
だが、強化とは一番単純かつ全ての魔術の基礎でもある。
「それが出来ないとか、思いっきり前提が崩れるじゃないか……!」
アーチャーは再び剣を解析しながら、この先の修行を組み直していく。
掛けられた魔術が『固定:時』、通称『停止の魔術』と判明するのは5、6分先のことだ。
アーチャーという抑止力がなくなった東トリスタ街道では、
「これが、『強化』……!」
フィーの周囲は様々なモノが動きを止めていた。草も花も木も、風が吹いても一切揺れない様は、フィーの持ち合わせた不思議さと合わさって神秘的な光景となっている。ただ、強化と勘違いしているが為か、殆どが歪な形をしているのが目に毒である。
その原因がフィーは、生物を『強化』してみようと、畑あらしと鬼ごっこしている。畑あらしも先程までの光景を目にしているので必死に逃げる。
フィーが武器を持っていないことが救いだったのだろう、アーチャーがフィーの様子を見に来るまで約十分の間、畑あらしは逃げ続けることに成功したとのこと。
「ーーーーということで、フィーのそれは強化ではなく、停止の魔術だ」
フィーが『停止』させたモノの魔力を散らすことで東トリスタ街道の一角を通常通りにしてから、アーチャーは嘆息混じりに、草原に座っているフィーへと説明する。
それを聞き、フィーは顔色を変える。
「さらにマニアック性能上昇だね……」
「それを知って、嬉しそうな顔をするフィーには恐れ入る。知っているかフィー?魔力を散らすのは案外辛いのだぞ?」
アーチャーは諭すように語るが、目には険が宿っている。
「アーチャーがやっても良いって言ったじゃん」
「限度というものがあるだろうに、……もう直ぐ夕方か、今回はこれで締めよう」
「
フィーも赤みを増したた空を見て、アーチャーの提案に賛成する。
余裕で立ち上がるフィーを見、アーチャーは驚嘆する。
(此処ら一帯に魔術を掛けていたというのに、まだ楽そうだな。流石魔術回路57本)
そして、二人は寮へと戻っていく……。
道中、魔力の使い過ぎによる体力低下でフィーが倒れたのは言うまでもない。