「サーヴァント・アーチャー。召喚に従い参上した。さて、君が私のマスターか?」
少女はアーチャーの声を聞くと、見開いていた目をいつもの眠たそうな目にして聞いた。
「……サーヴァント?……分かんない」
少女のその言葉を聞き、アーチャーは「はぁ、やはりか」と呟いた。
「では、マスターよ。そのペンダントをくれたのはどんな者だったか、おしえてはくれないか?」
そう、アーチャーはそれを見て、ある人物を想像していた。
自身の予想通りなら、あの
「ん……。赤い服を着ていて、黒い髪をしてた……多分。呪文とかも教えてくれた」
少女はいきなり質問してきたアーチャーに少し驚きながらも、こたえてくれた。
「はぁ……やはり遠坂か。人との思い出の品を他人に渡し、ましてやサーヴァント召喚を勧めるとは」
少女はアーチャーの、その様子を見て知人だったのだろうと推測していた。
(……この人、かなり強い。団長は無理そうだけどレオ位は倒せそう)
否。それ以外にも、アーチャーに関する推測を色々していた。
そこで、少女はいきなり自身の体から力が抜けるような感覚に襲われ、地に伏した。
「む。召喚で魔力が減りすぎたようだな」
アーチャーは少女の様子に気づくと、さっさと近づき、少女を両腕で持ち上げた。
少女は一瞬もがくが、中々体に力が入らないらしい。
「安心したまえ、マスターよ。
今は眠りたまえ。起きる頃には食事を振舞ってやろう」
少女はそれをきくと同時に眠くなってきた。今のアーチャーの言葉でどこか緊張していた心が解れたようだ。
(何だろ、とても安心する声。……団長みたい)
そして、少女はその時点でアーチャーに身を任せ、意識を手放した。
「……眠った、か」
アーチャーは少々、揺さぶった後そういった。
「さて、今のうちに解析を済ませておこうか」
少女の右手には赤い模様がついている。サーヴァントと契約している証拠だ。
つまり、少女と自身が契約している、と推定したアーチャーは真っ先に思ったことがあった。
――――私はどれだけ全盛期の力を出せるのだろうか?
マスターの魔術回路が少なければ、その分だけサーヴァントは力を出せなくなる。
ならば、少女はどれぐらい魔術回路を保有しているのだろうか。
せめて、『無限の剣製』が十分近くは出せると良いな、と思いながらアーチャーは少女に解析を掛けた。
「
……。
…………。
………………。
魔術回路 活性化57本
魔術属性 時
起源 疾走
内部に異物を発見、解析。
『宝石剣キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』と判明。
概念固有結界の展開の見込み有り。
「なんでさ」
アーチャーも素の声音が出る。
確かに、これは異常だ。
まだ、魔術回路57本は一流魔術師のなかでも一流の金の卵、ということで納得は出来る。
だが、魔術属性が時、起源の疾走等は未知のジャンルである。
さらには、遠坂の持っているはずの宝石剣が内部にあることや、活性化したばかりなのに固有結界を展開できる可能性があること。
普通の人間にとって利点はないが、
「魔術師からしたら、いい研究材料だな。これは」
だが、これを読み取ったことである程度事情は理解した。
「遠坂は『宿題』を完成させ、第二魔法でこの世界へ。
そこで出会ったマスターに共感やらをしてペンダントを渡し、私の召喚を促す。
何らかのトラブルで宝石剣がマスターに定着。そして、私は本気を出せる……む」
そこで、アーチャーは気づいた。
――――遠坂、宝石剣無いから、元の世界に戻れなくなっていないか……!
そこで、アーチャーは誓った。
「会うことがあったら、皮肉を一つ言ってやろう」
少女は何かの匂いを嗅ぎとり、目を覚ました。
いまさっきのような脱力感は無く、いまでは大きく腹を鳴らせる程の活発具合だ。
「うぅ。おなか、空いた」
良い匂いを辿っていくと、自身が先ほどまで膝を抱えていた部屋に着いた。
そこには白いエプロンを巻いたアーチャーが、紅茶を用意していた。
「ふむ。起きたか、マスターよ。約束通り食事を用意してやったぞ」
そう言いながら、どこから用意したのか(勿論投影)椅子に座るのを勧めてきた。
「ん……サンクス」
感謝を述べてから座り、テーブルに乗ったものを見つめた。
豪華なティーカップとティーポット(勿論投影)に入った紅茶。
これまた豪華な皿とナイフ・フォーク(以下同文)に戦闘レーション。
「なんか、おかしくない?」
「紅茶には自信がある。あと、レーションは一工夫入れれば美味しくなる」
はっきりいって、美味しかった。
少女はレーションがこんなにも美味しくなることにも驚いたが、この紅茶が普通の茶葉を使っていることにはかなり驚いたようだ。
少女が頬を緩めながら紅茶を飲む様子をみながら、アーチャーは言った。
「そういえば、自己紹介をしていなかったな。
改めて、サーヴァントのアーチャーだ。目の良さと紅茶入れ、戦闘には自信がある。
君にペンダント等を渡してきた女の戦友だ」
それを聞いた少女はポカンとした後、フッと微笑んだ。
「フィー・クラウゼル。フィーでいいよ」
「そうか、では宜しくしよう。フィー」
「ヤー、アーチャー」
この後、アーチャーの説得によりフィーは赤髪の元遊撃手、サラ・バレスタインに例の件を承諾。
トールズ士官学院の入学に向け、活動を開始した。
そして、三月三十一日。トールズ士官学院入学式の日まで話は飛ぶ――――