錬鉄の軌跡 (凍結中)   作:倉木遊佐

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特別オリエンテーリング

   赤髪の教師、サラ・バレスタインに赤い制服一行はある建物の前へと連れられていた。

『まさか、ここが校舎なのか?』

『……違うと願う』

 絶賛霊体化中のアーチャーでも、驚くほどだ。

 本校舎の裏手にあり、かなり古びて薄暗い上に、どこか怪しげな雰囲気すら漂っているこの校舎はある意味、トールズ士官学院の中で一番の異彩であろう。

「フン、フフン〜♪」

 その校舎の扉を、躊躇うどころか鼻歌をしながら開くサラ。

 

「ねぇ、リィン。なんであんなに気楽そうなのかな。あの人は」

「俺に、聞かないでくれ……」

「ほうここに、俺たちの教室がーー

「そんな訳無いだろう⁉︎」

 

 そんな会話をしながら、躊躇気味に入る一行。

 サラについていくと、広間の様な場所に止まり、サラが近くの壇上に上がった。

「さて、サラ・バレスタインよ。あなたたち《Ⅶ組の》担任を務めさせて貰うわ。宜しくお願いするわね〜」

 そんなサラの気だるげな、口調とは相異なった発言に全員が疑問を浮かべた。

(む、確かココは五つしかクラスがなかった筈だが)

 アーチャーは生前からの記憶力の高さを盛大に使い、この世界『ゼムリア大陸』に関する情報を《英霊の座》から全て記憶していた。

「あの………確かトールズ士官学院の一年生のクラスは五つだったと思うのですが」

 そんなアーチャーの疑問を三つ編みの少女が代弁してくれていた。

「おっ、さすが学年主席。よく調べてるわね〜」

 どうやら彼女が今年度の学年主席らしい。本人はそれほどでもないと、ジタバタしているが。

(しかし、この床は足音がかなり響くな……空洞になっているのか?)

 アーチャーは彼女のその足音で、床の異常さに気付き、調べてみることにした。

「だ、誰もが四大貴族の名前で怖気づくとは思うなぁ!!」

 周りは少々騒がしいが、マスターの安全を優先するがアーチャー。

 本当に危険な時にフィーは欠伸などしないと分かっているからこそだ。

 だが、いつ何が原因で起きるか分からない。

『フィー、何事だ』

 アーチャーはフィーに状況説明を頼んだ。

『ん、Ⅶ組は身分ごっちゃ混ぜクラス』

『……大体分かった』

 念話でも面倒くさがりのフィーの発言を吸収するのに時間を掛けたアーチャーだが、つまり貴族と平民が言い争っていると理解した。

 この世界では未だに貴族制度が有り、最近ではある宰相がこの伝統を変えようとしているらしく、

 それによる伝統を守ろうという建前の『貴族派』と革命思考の『平民派』の対立があるとのことだ。

 これまた面倒なトコに巻き込まれたな、と思いながら調査をするアーチャー。

(む、この床、開閉器が付いているな)

 アーチャーがそれを発見した時、ちょうど良くサラが口を開いた。

「あーはいはい。それじゃ、『特別オリエンテーリング』を始めるわよ〜」

 そして、後ろに下がりだした。

『フィーよ、落とし穴だ。今の位置から五歩右へ』

『……⁉︎ヤー』

 驚きながらもバレないようにササッと移動するフィー。

「それじゃ行ってらっしゃい♪」

 フィーが移動し終わると同時にサラが、いかにも危険そうな赤い隠しボタンを躊躇なく押す。

 本当に躊躇いのない女だ、とアーチャーが思うと共に、床が大きく傾く。

「うわっ⁉︎」

「何事だー⁉︎」

 いきなりの出来事で、フィーを除いて硬直していた一行が床を滑り、ズルズルと為すすべなく穴に落ちていく。

 そして、全員が落下し終えた様子を見たサラは、フィーに目を向けた。

「はぁ〜フィー、どうやって避けたのよ」

 ため息混じりに聞くサラにフィーは答えた。

「アーチャーに教えて貰った」

 その返答にサラはポカンと口を開け、瞬時に声を出した。

「アーチャーさん⁉︎ちょ、どこに居るのよ!」

「君の後ろだ、サラ教官」

「わっ‼︎」

 少し、からかいたくなったアーチャーはサラの背後に移動してから霊体化を解いた。

 思い通りに驚いてくれたことに満足しているのか、その表情は小さく笑みを浮かべていた。

「はぁ、カンニングじゃない。フィー命令よ、今すぐ落ちなさい」

 サラは、顔を瞬時に戻すと、フィーに命令し、

「アーチャーさんは今からでもお酒をーー

「結構だ、私はフィーについて行く。あと私はこれでも二十代だ。君のタイプではないが」

 アーチャーを食事に誘っていた。どうやらアーチャーがタイプにはまった様だ。お茶ではなくお酒と言っている時点で目論見がスケスケなサラにフィーは冷たい視線を送った。

「ではフィー、深いかもしれないから私につかまっておけ」

「ん、分かった」

 アーチャーは瞬時にフィーの元へ移動すると、フィーにそういった。

 フィーはその通りに腕につかまったのを見ると、アーチャーはフィーを抱え込んで穴へ消えていった。

「アーチャーさん、フィーのところにマスタークオーツをもう一つ入れたので、使っていいわよ〜」

「ほう、感謝しようサラ教官」

 

 

 

『――――とまぁ、こんなトコね』

 フィーとアーチャーはとりあえず無事に穴の奥に着地し、一行が居るであろう奥の部屋へと向かった。

 この時には、他者に姿を見られると面倒なことになるアーチャーは霊体化していた。

 そして、Ⅶ組一行はサラより、戦術オーブメントの通信機能をもって『特別オリエンテーリング』の説明を受けていた。

 アーチャーも一応所持しているモノで説明を聞いていた。

『あなた達の武器とオーブメントにはめるマスタークオーツは隣の部屋に各自用意されているから』

 入学式前に自分達の得物を預かったのはそういう意図があったのかと一同思う中、アーチャーは、

(となると、フィーの得物を預けた生徒会長である少女もグルだったか……)

 と一つ先を考えていた。

『これで説明終了、各自頑張りなさい』

サラはそう言うと通信を切り、一同は自身の得物が置かれた位置に向かった。

 

 

 

 

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