一方アーチャーも、フィーの得物が入った鞄にその所持者と共に向かう。
そこにたどり着くと、フィーは真っ先に鞄を取り、開いた。
その中には、短剣に拳銃が組み合わさった武器が二本、『
不調を至ってないか確認した後、鞄の上方に置かれている箱に手を伸ばすフィー。
こちらには、ご丁寧に『Fee』『Archer』と立て札で区分された二つのマスタークオーツが入れてあった。
オーブメントとは、使用者に
その効果は、オーブメントの中核をなす宝玉『マスタークオーツ』によって異なり、
例えば、フィーのマスタークオーツ『レイヴン』は使用者に時属性の補助魔法の使用と敏捷上昇が主な効果だ。
そして、このマスタークオーツは通常のクオーツとは違い、
『アーチャーはこれ』
フィーは自身のマスタークオーツをオーブメントにはめた後、姿の見えぬアーチャーに念話でマスタークオーツの存在を教える。
『あぁ、分かっているが。一回霊体化を解かないといけないから、持っていてくれないか』
だが、アーチャーはそれを断った。この場所で自身の姿を晒す訳にはいかない。
霊体化にだって弱点はある。その一つが自身の所有物ではないモノには触れられない点だ。
フィーはアーチャーのその言葉を聞き、『分かった』と言ってそれを制服のポケットに仕舞った。
一同もどうやら、装着し終わったのか中央に集まりだしていたので、フィー達もそれに便乗した。
「ふん……」
全員が集合し終え、黙りこくっている中動いたのは、金髪の美男子だった。
先行して奥の部屋に向かおうとする彼を緑髪の眼鏡の少年が呼び止めた。
「待て、一人で勝手に行くつもりか?」
「馴れ合うつもりはない。それとも、“貴族風情”と連れ立って歩きたいのか?」
「な、なんだと……?」
声から察するに、一階で騒いでいた二人のようだ。
この場に及んでも対立を続ける反抗精神は素晴らしいものだ、とアーチャーが感心する。
「まあ、魔獣が怖いのであれば同行を認めなくもないがな。それなりに剣は使えるつもりだし、
「っ!! だ、誰が貴族ごときの助けを借りるものか!」
そう言うと、緑髪の少年は真っ先に部屋の奥へと向かい、数秒後に金髪の美男子も奥へ向かった。
サラの説明では、奥はちょっとした迷路となっており、魔獣と呼ばれる不思議生物も居るようだ。
――――後で面倒なことになりそうだ。
「ふむ……まあ、ここでいつまでも立ち尽くしている訳にもいくまい。我らも動くとしよう」
青髪の古風な口調に
『アーチャー、先に行く?』
フィーはアーチャーにそう提案していた。
『何故、そうする』
アーチャーが問い返すと、
『アーチャーが出てこれないよ?』
そのフィーの返答にアーチャーは驚く。
なにせ、生前も含め彼の周囲にそんな優しさをくれたマスターが居なかったが為だろう。
『う、うむ。では行こうか』
少し戸惑いながらも肯定したアーチャーの声を聞くと、フィーは歩き出す。そして、それを後から追うアーチャー。
「では、そなたも一緒に――――
どうやら、男女で分けたようで、青髪の少女はフィーも誘おうとするが、フィーはそれに気付かず去っていく。
アーチャーは申し訳ない気分になったので、姿は見えないだろうが謝罪する。
「すまないな、少女よ」
そして、アーチャーもフィーを追いかける。
「む……いま声が聞こえた気がしたのだが」
「う、うん。僕も聞こえたよ」
「いま、違う者の風を感じたような……」
「や、やめなさいよ」
「(いまの気配は――――霊?)」
「(今の声は、朝の――――)」
アーチャーは忘れていた。
霊体化しても声を出せば、声は伝わってしまうことに。
遠坂凛の『うっかり』を見事に継承しているアーチャーだった。
なぞの声騒ぎが入り口方面で広まっている中、アーチャーはフィーにちょうど追いついたところだった。
『アーチャー?どこ』
フィーの問いにアーチャーは自身が霊体化を解いていないことに気付いた。
霊体化を解除してからアーチャーは声を掛ける。
「すまない、フィー。霊体化を解除するのを忘れていた」
「ん、だいじょぶ」
そう言って、フィーはポケットから一つのマスタークオーツを取り出す。
「ん、これ最後なんて書いてあるの?」
アーチャーはフィーの言葉に疑問を覚えながら、マスタークオーツと共に説明書を受け取った。
「なになに………ふ、遠坂め。面白いやり方をしたな」
説明を読んでいたアーチャーが途中から笑い声になっているのを見て、フィーは驚愕していた。
普段は小さく笑みを浮かべるのが彼の笑い顔だと思っていたが、この様子を見た後ではフィーも考え直していた。
(どんなことになったら、あんなに笑うんだろ?)
父親代わりとして、アーチャーを見ているフィーはそんなことを考えているとき、アーチャーは再度、説明を読み返していた。
(遠坂も粋なことをしてくれたものだ)
説明には、こう書かれていた。
『これは十日ほど前に謎の赤い服の女性が、アーチャーを名乗る人物が現れたら渡してくれ、とエプスタイン財団に届けられたものです。
詳しい説明は、下記にその女性からの文が書かれている。
《アーチャー、面倒だから挨拶等は抜いたわ。このマスタークオーツは私が持っていた宝石で作ったものよ。
効果は魔術回路の代役。一段階ごとに代役できる量が十本増えるわ。常時発動であなたに強化と魔術防御の術式込みよ、感謝なさい。
後、宝石剣、無くしちゃったから探すの手伝ってくれないかしら》』
後半をわざわざ、日本語で書いてある説明書を丁寧に折り畳み、仕舞いながらアーチャーは思う。
(面白いものを作ったもんだ、遠坂。宝石剣もフィーが持っているというのに)
一つの歯車を中心に剣が並ぶ模様を描いた赤茶色のマスタークオーツ『アイデアル』を見ながらアーチャーは思う。
アイデアル。それは――――――
「はっ、遠坂。君は私に、再度理想を持てと言うか」
独り言を語るアーチャーに、それを聞いているフィー。
「まぁ、いいさ。その話に乗ろう」
妥協しながらオーブメントに『アイデアル』をはめるアーチャー。
――――カチッ。
「――――――っ!?」
アーチャーがオーブメントにマスタークオーツをはめた瞬間、彼女は彼が別人になったように見えた。
アーチャーが赤茶色の髪をした黄色肌の少年の姿に、いつもとは正反対の姿にフィーは一瞬その様にみえた。
(気のせい、かな)
フィーが頭をかしげているなか、アーチャーは素の口調で呟いた。
「今だけ、
「さて、フィーよ。さっさと奥に進もうではないか」
「……分かった」
「どうした、悩みぬいた様な顔をして」
「むぅ……何でもない」