錬鉄の軌跡 (凍結中)   作:倉木遊佐

7 / 11
時に英雄となる者たち

 お互いの力を把握し終えたフィーとアーチャーは終点を目指し、歩いていた。

 目指すといっても、隅から隅まで全て把握するのが彼らのクオリティー。

 そのため、彼らのダンジョン踏破率は十割に程近いレベルに達していた。

 宝箱も全て回収しているので、他の一行は開いても空の宝箱にイラついていたとか、いないとか……

 どちらにせよ、その場に居なかったフィー達には一切伝わっていない。

「そう言えば、魔術回路の起動って何?」

 走っている中、フィーはアーチャーの指摘を思い出し、疑問に思ったことを問うた。

「あぁ、君に会ってから一回も魔術について語っていなかったな」

「魔術?魔法(アーツ)と何が違うの?」

 この世界はすべて導力が様々な現象を起こす力となる、だがアーチャーは、導力で発生させる“魔法”ではなく“魔術”と言った。

 ――――武器を作っていたあの力も魔法には無いはず……だから魔術?

 そう考え込んでいるフィーをよそに、アーチャーは語る。

「魔術回路というのは、魔術師になれる者が必ず持つ、魔術発動の媒体のようなものだ。

 私の様なサーヴァントを召喚する『マスター』も必ず持っている。

 その魔力を糧に我々は存在を作り出しているからな」

「ん?それじゃ、私はアーチャーを召喚できたから魔術回路がある?」

「む、珍しく察しが良いな。まぁいい。

 魔術回路を持っているものは、自身の属性と起源に関わる魔術を使用できるが、

 魔術を使用するにはまず、自身の魔術回路のON・OFFが自由に出来ないといけない。

 その為、他者から魔術回路を強制的に起動されて、その切り替えを覚えるのだ」

 導力スイッチの使い方と似ている、と思いながら話を聞いているうちにフィーはまたしも疑問を持つ。

「どうして、その起動が痛みにつながるの?」

「…………」

 フィーが問うと、アーチャーは黙りこくる。

 こんなやり取りを彼らは、走りながら行っているわけだが、息一つも乱さない姿はとても異常だった。

 

 

 

 

 そのとき、何故彼が黙ったのかは言うまでも無い。

 ただ、身に焼け死ぬような熱さを出し消しし続けた日々を思い出していた。

(初めて投影したときもそうだったな……これが一度経験するだけで良いと分かったときは絶望したものだ……)

 フィーのジト目を受け流しながらも、生前の苦労した日々を思い出すアーチャー。

「アーチャー、答え――――――

「フィーよ、終点が見えてきたぞ!!」

 フィーの追求を終点が近づいたことで、話を逸らそうとするアーチャー。

 そんなアーチャーに再びジト目をおくった後、フィーはため息を付く。

「これ終わったら、説明して」

「終わったら、即起動させようではないか」

 令呪を使われない限り、喋るつもりは無いアーチャー。しかも、フィーに令呪の存在さえまだ話していない。

(少女は無垢で、無知であるべきだ……)

 そんなことを考えるアーチャーの耳が一瞬、剣戟の音を拾った。

「……フィーよ、終点で戦闘が発生しているとみた。私は霊体化させてもらうぞ」

「ん、許可する」

 フィーの言葉を聞き遂げると同時に霊体化をするアーチャー。

 フィーに自身の姿が消えているのを確認してもらった後、二人は終点の広間へと向かった。

 

 

 

 二・三分走り続けたところで、一本道は終わって終点の広間へ到着した。

 広間の中ではフィー以外のⅦ組メンバーが一体の魔獣と戦っていた。

 何百年も前に起こったという《暗黒時代》に神殿や遺跡などに侵入した“異物”を排除する為に産み出された魔物。身体は岩よりも硬く、攻撃を与えられたとしても、たちまち再生してしまう“石の守護者”ガーゴイル、と世界から得た情報を元にアーチャーはこの魔獣の正体を看破した。

(これは、かなり分が悪かったようだな)

 かなり疲労を溜めていたのか、女子勢は青髪の少女以外、男子勢では赤髪の少年らは気力で立っている始末。

「アーチャー、行ってくるね」

「あぁ、精々頑張ると良い」

 アーチャーの言葉を聞き、フィーは敵を見つめ、走り出した。

 余裕ぶっていたガーゴイルはフィーの接近に残り数歩のところで気付き攻撃をしたが、フィーはそれを空中に退避して回避。

 その後、ガーゴイルの背後に着地し、双銃剣でガーゴイルの翼を断ち切った。

 ガーゴイルも流石に痛かったのか、獣のような叫び声をあげフィーに反撃を加えようとするが、

「《エアストライク》」

 風の塊がガーゴイルに当たり、その攻撃を不発させた。

(いまのは、セイバー(アルトリア)の風王鉄槌……いや、それにしては威力が小さい)

 疑問に思い、発射元を見れば金髪の美男子がARCUSを構えていた。

 どうやら、今のが導力魔法の一種らしい。英霊の道具を知らぬうちに真似るとは、中々発想が良い。

 そこで、朝も見掛けた黒髪の少年が機と思ったのか、全員に声を掛けた。

「いまだ、畳み掛けるぞ!!」

 その声に反応し、勝機を逃すまいと全員が己の武器を構え直したその時、彼らの身体を、突如として淡い光が包み込んだ。

 更に光のラインが伸び出し、彼ら一人一人を繋いでいく。

 それはアーチャーも例外ではない。それに少し戸惑いながらも、戦いの行く末を見届ける。

 光のラインが全てをつなぎ終えた瞬間、彼らは攻撃を開始した。

 剣が、槍が、銃が、魔法等が炸裂する。

 その連携はまるで、長年連れ添った仲間達かのよう。

 その理由を、アーチャーは理解していた。

 攻撃をしている者全員、誰が次にどんな行動を起こすのかが視えるのだ。

(これが、ARCUSの真価、なのか?)

 アーチャーがそう考えている間に、戦局はかなり変わり、今や止めの一撃の瞬間だった。

「いまだ、とどめを!」

「任せるが良い!」

 黒髪の少年の声に、青髪の少女は答え、それ以外はガーゴイルから離れようとするが、

「――――――うっ!?」

 フィーはガーゴイルの追い討ちを受け、その痛みでその場に転んでしまった。

 その様子を見て、アーチャーは溜息をつく。

(だから、痛みの耐性を付けろといったのだ……まぁ、助けてやるとしよう)

『フィーよ、少しだけ足止めしてやろう』

『……ごめん、アーチャー』

『ならば、痛みに対する耐性をつける努力をしてもらおうか』

 フィーの謝罪に毒づくアーチャー。

 内心ではこれで魔術回路の起動訓練を大手を振るって出来る、と考えているのを念話で伝えないようにしていたが。

「それでは、やるとしようか

 

 ――――I am the bone of my sword

 

                 ――――《天の鎖(エル・キドゥ)》ッ!!」

 

 

 

 見覚えのある銀髪の少女が転び戸惑う中、リィンは聞き覚えのある声を聞いた。

 その声が、止まると同時にガーゴイルの周囲に鉄の鎖が現れ、それを拘束した。

「なぁっ!?」

 誰かが息を呑む声が聞こえたが、それも納得してしまう。

 それ位、その鎖は美しく、強固なものに見えたのだから。

 ガーゴイルは拘束を解こうともがくが、その度に金の鎖はガーゴイルをどんどんきつく締め上げる。

「はっ、とどめを!」

 気付いたときには金の鎖は消え、ガーゴイルはぐったりと倒れている。

 どうやら、銀髪の少女も立て直したようで、自分達の後方で傷を癒している。

「――――ッ!!分かった、任せるが良い!」

 気を持ち直して大剣を構えるラウラは、ガーゴイルの首筋に渾身の一撃を加え断ち切った。

 そして、消えていくガーゴイルの身体。

 それを見届けてから、誰かが言った。

「……何だったんだ、今のは」

 

 

 

 

「……何だったんだ、今のは」

 緑髪の少年がそう呟く。

 その瞬間、広間に鳴り響く拍手の音。

 Ⅶ組一行が声と音のした方へ顔を向けると、そこには、満面の笑みのサラの姿があった。

「いや〜、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね〜。うんうん、お姉さん感動しちゃったわ」

 そんなことをほざきながら、階段を降りてくる。そして、一行の前に立ち止まった。

「さて、これで特別オリエンテーリングは終了な訳だけど……もうちょっと喜ばないの、あなた達は?」

「喜べるわけないでしょ!」

「正直、疑問と不信感しか出てきませんが」

 緑髪の少年と金髪の少女がサラに異議を申し立てた。

「単刀直入に問おう」

 そこで、金髪の美男子が冷静な態度を崩さず、聞いた。

「この、Ⅶ組はどういう目的でつくられたんだ?」

 この問いはⅦ組全員にあった疑問だろう。

 身分関係無くなら、何故自分達が選ばれたのか。

 アーチャーは人が何かを行うときに必ず理由があると知っていた。

 だからこそ、この人選にも意味があると察していた。

 そして、サラは語った。

「それは、ARCUSが一番関係しているわ。

 いまさっきおきた光、《戦術リンク》が戦術オーブメントに備わったのがそれ。

 その適正があったのがあなたたち。この《戦術リンク》がどんなに凄い力か、わかるでしょう?」

 その言葉にアーチャーは驚嘆していた。

 この力があれば、新人兵同士でも長年のパートナー同然の働きを見せられる、この世界において戦局が大幅に変わる代物ということだ。

 一行もこれを察したのだろう、神妙な面つきをするなか眼鏡を掛けた少女が唐突に思い出したように言った。

「では、あの金色の鎖は、何だったんですか?」

 サラはその言葉を聞くと、フィーのほうを向いた。

 サラのジト目とフィーの眠たげな目が視線を交わす。

「まぁ、そのことは置いといてこの話を聞いて《Ⅶ組》に参加するかどうか──改めて聞かせてもらいましょうか?」

 お互いの顔を見合わせる彼らの表情には、はっきりと困惑が見て取れた。

 そんな中、口火を切ったのは、

「──リィン・シュバルツァー、参加させてもらいます」

 黒髪の少年が、瞳に揺ぎ無い意志を込めて一歩前に出た。

「一番乗りは君か……何か事情があるみたいね?」

「いえ……我儘を言って行かせてもらった学院です。自分を高められるのであれば、どんなクラスでも構いません」

 この一言を機に、他の者達も次々と──火花を散らしていたマキアス(緑髪の少年)とユーシス(金髪の美男子)でさえも参加を表明していった。

「さて、これで八名。残るはあんただけだけど……どうするの?」

 サラはそう言い、フィーの方を再び向いた。

『アーチャー、どしよ』

『なに、こっちの方が面白そうではないか。どちらにせよ、サラ教官は入れさせようとすると思うがね』

「むぅ……んじゃ、参加で」

 アーチャーの言葉を聞き、それもそうだと思ったフィーは、変な抵抗もせず参加を表明した。

 サラはその様子に一瞬たまげていたが、直ぐに納得したような顔をした。

「はぁ……どうせ近くに居るんでしょう。仲間には見せてあげても良いんじゃないの?」

 その言葉に、フィー以外の一行は首を傾げたが、フィーとアーチャーは神妙な面つきになった。

『フィー、君が決めると良い』

「それじゃあ、まだいいや」

 フィーの独り言と取れる言葉を聞いた一行は首を傾げている。

「あら、意外と秘密主義になったじゃない」

「む、私だって成長する」

サラの皮肉にそう答えるフィー。

その一言に、サラとアーチャーはフィーの身体を一瞬で眺める。

二人とも考えていることは一緒であろうが、精神面のみ成長したフィーのことを思い、余計な口出しはしないつもりらしい。

「……まあいいわ。ともかく、全員参加ね。……それではこれより、この場をもって特科クラス《Ⅶ組》の発足を宣言する。

 この一年、ビシバシしごいてあげるから、楽しみにしてなさい」

 こうして、子供のように無邪気な笑みで告げられたこの言葉と共に、

 エレボニア帝国の士官学校・トールズ士官学院において、特科クラス《Ⅶ組》が設立された。

 そしてこの瞬間は、

         後の英雄となる者達の出会い

 

 

          英雄への道を書いた物語の序章でもあることに。

「さて、この先どうなることやら。良い日々になると良いのだが……」

        英雄の道に、良い日はあれど、トラブルは必ず起きるものだ………

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。