ゼロの黒龍   作:無想転生

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黒い韻龍
黒龍の召喚


ハルケギニアの王立魔法学院トリステイン。

そこで魔法を学ぶ貴族の一人、ルイズは歓喜していた。

 

 

 

ほんの少し前の話。

 

この日は生徒達において重要な日である。

春の使い魔召喚儀式。それはこの学校で二年生となったもので行われる、伝統のある大切な儀式とされている。

 

興奮や期待で胸を膨らませる生徒達は順番に使い魔の召喚を成功させ、猫や鳥やカエル…それに見たこともないような生物を次々と召喚させていた。

特に注目されたのは、この学年でもトップクラスの実力を持つ少女二人が召喚した、風龍と火龍だ。

その一方、裏で意外な少年が変わった使い魔を召喚していたが、先の二人にのまれ一部の者以外にはあまり興味を持たれなかった。

 

他の生徒達が次々と成功させ、自分の使い魔とスキンシップをとっている姿を、ルイズは羨ましそうに…そして不安気に眺めていた。

彼女はこれまで一度として、まともに魔法を成功させたことがなかったからだ。

 

ルイズ以外にも、この儀式に不安を抱いていた者もいるだろう。しかしそのほとんどは、せいぜい虫やミミズなんかを引いてしまはないか…みたいに、自分が生涯をかけて相棒とする存在が、変な生物だったり自分の嫌いなものだったりしないかという、成功の先にあるものだった。

 

だがルイズは、彼女はそれ以前の問題なのだ。

 

“ゼロのルイズ”それがこの学院での彼女のあだ名であった。

成功確率ゼロのルイズ、未だに一つとして魔法を成功させていない彼女は、そんな不名誉な名が与えられていた。

 

今宵も魔法が失敗し、何も使い魔を召喚できない場合、彼女は留年という可能性すらある。

 

そして誰もの予想通り、ルイズは最後まで残っていた。

にやけ面で嘲笑する生徒達と、心配そうな眼差しで見守る担当の教師と一部の生徒の視線を浴びながら、彼女は不安を押し殺して杖を構えた。

 

唱えるのは“サモン・サーヴァント”

この世の何処かにいる、自分の使い魔になり得る存在を呼び寄せる魔法。

 

ルイズはゆっくりと深呼吸して、その魔法を唱えた。

 

 

その瞬間大爆発が起きる。

 

結果は…

 

失敗だ。

 

 

しかしまだ一回目だと、ルイズは自分を自分で落ち着かせ、再び詠唱した。

 

しかし何度も何度も唱えてみても、起こるのは爆発のみ、使い魔の姿など影も形も見えやしない。

痺れを切らした生徒達の笑い声がブーイングに変わり始める。

 

「また失敗かよゼロのルイズー‼︎」

 

「もうやめちまえ‼︎」

 

深刻そうな顔つきで担当の教師がルイズを見つめる。

これ以上一人の生徒に時間を使うわけにはいかない、生徒達も騒ぎ始めている、何よりこれは、とても神聖な儀式なのだ。

 

しかし目の前にいる少女、ルイズことミス・ヴァリエールはとても努力家の生徒だった。

魔法の実技こそは最低点であったが、それ以外のほとんどの科目は、その稀いない努力によって学年でもトップクラスの成績だったのだ。

 

教師の心情としては、彼女に合格して欲しいという思いが強い。

 

しかしだ…と、禿頭の教師は心を鬼にしてルイズにこう言った。

「ミス・ヴァリエール…次が最後のチャンスです」

 

ルイズは心臓が鷲掴みにされたかのような嫌な感覚に襲われる。

「最後」という言葉に、ルイズの緊張感は一気に高まった。

(これが最後のチャンス…これで召喚できなかったら……いいや!絶対に成功させる!挫けちゃ駄目よルイズ‼︎)

ルイズは自分で自分を励まし、より一層心を込めてサモン・サーヴァントを唱えた。

 

「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!

神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!私が心より求め、訴えるは、我が導きに答えなさい!」

ルイズの杖が眩く光り輝く。

 

今日一番の感情を込めて詠唱したルイズの魔法…

 

 

その結果は残酷にも…本日一番の大爆発だった。

 

 

その場にいる全員が身を屈める程の強烈な爆風。

例え召喚に成功していても、その生物は死んでいるんじゃないかと思わせる威力だ。

 

ルイズはガクリと膝から崩れ落ち、高々と上がる爆煙を眺めていた。

憎たらしいほどに濃くはっきりとした煙だ。

 

禿頭の教師、コルベールは暗い表情で眉間に皺を寄せていた。

そしてこの…努力家で勤勉な少女への、あまりにも残酷な結果に、コルベールは心の中でその現実に恨みを述べた。

 

正直、彼女が今、どんな顔で絶望に打ちひしがれているかなど、見たくもないし想像できた。

しかし伝えなければならない。この残酷な結果を彼女に…誰でもなく、自分がだ。

 

コルベールは恐る恐るルイズの方を見た。

幸いなことに、ルイズはうつむいていてうまく顔が見えない…

いや、別に幸いでもなんでもないか。どうせ伝える時には相手の目を見て言わなくてはならないのだから…それに現状が変わったわけでもない。

 

コルベールはゆっくりとルイズの肩に手を置き…伝えるべきことを伝えようとした。

 

しかしその時、周りの…他の生徒達が召喚した使い魔が、異様に怯えていることに気がついた。

 

コルベールは慌てて振り向く。

ルイズの魔法による爆煙は未だに立ちのぼっていた。

 

しかしその爆煙の中に、うっすらと何かが見える。

 

 

いる…巨大な何かが、爆煙の中に佇んでいる。

 

 

コルベールだけではない、他の生徒達もその存在に気がつき始めた。

もちろん、ルイズ本人もだ。

 

やがて爆煙が晴れ、爆煙の中にいた生物の姿がはっきり見えるようになった。

 

龍だ!

 

全身が黒い鱗に包まれた、不気味な程に真っ黒な龍…

長い尻尾に長い首…巨大な翼を携えた20メイル以上はあるその体格は、見るからにして強そうだ。

 

先の二人が召喚した龍よりも、更に強大だと思われる。

その根拠は大きさとかそんなものではなく…眠っているにもかかわらず感じられる、圧倒的な威圧感が物語っている。

 

 

ルイズはとてもとても感激した。

 

今まで幾度もゼロと馬鹿にされていた自分が、こんな立派なドラゴンを召喚できるなど、夢にも思わなかったからだ。

 

自分が召喚したドラゴン。

それが自分の目の前で、寝息を立ててスヤスヤと眠っている姿に、ルイズは心が踊った。

 

 

この瞬間は、ルイズの“メイジとして”…今までで一番幸せだと感じた瞬間かもしれない。

 

 

そしてこの事は生涯一生忘れることはないだろう。

 

 

 

 

 

 




少し召喚の儀式を重くし過ぎましたかね?

では次回でお会いしましょう。
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