土くれのフーケは幸運であった。
自身の得意とする“錬金”の魔法すら通じないほど、この宝物庫には頑強な“固定化”の魔法がかけられているが、確かな筋の情報によると、物理的な力を防ぐ魔法はかけられていないらしい。
しかしこの城は元々、戦にも使用できる程に頑丈な作りだ。三十メイルもの巨大なゴーレムの拳を食らわせようと、数メイルもある分厚い壁を打ち壊すことはできない。
今日は年に一度の二年生達による発表会だ。
王室の者達が来訪してきたのは予想外だが、その状況で盗み出してこそ、王室と貴族達の無能さを証明でき、かつ自らの優越感を更に満たせるというものだ。
おまけに大多数の目が発表会の側に向いている、盗み出すなら今が好機だ。
しかしこの宝物庫を開けることができないのなら、結局はどうすることもできない。
どうしたものか、と頭を悩ませるフーケ。
そんな時だった。
どこからか、遠くからヒュルルルという風を切る音が聞こえてきたかと思えば、どこからともなく巨大な火の玉が突然飛んできたのだ。
圧巻だった。
呆然としている内に火の玉は、丁度宝物庫がある場所に真っ直ぐ向かっていき、そのままぶち当たった。
辺りに爆発音が響き渡り、瓦礫や火の粉が雨の様に降り落ちた。
そして、一瞬美しいとすら思わせる破壊を受けた宝物庫の壁は、巨大な風穴を開けて崩壊した。
フーケは驚き立ち尽くした。
しかしラッキーだ、あれだけ手こずらせた守りが勝手に壊れたのだから。
もう目当ての品…“破壊の杖”と自分とを隔てるものは1つもない。二度と訪れないであろう好機、まるで天までもが自分に味方しているかのようだ。
フーケは嬉々として破壊の杖を持ち去った。
この束の間の幸運が、後になって大きな不幸に繋がるとも知らないで…
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深い森の一本道を馬車が走っていた。
乗っているのはルイズ、キュルケ、タバサ、ロングビル…そしてミラ。
その目的はただ1つ、土くれのフーケの討伐だ。
危険故、大人である教師達ですら誰も名乗りを上げなかった任務、だというのに、まだ子どもである3人の生徒がこの討伐任務に駆り出されていた。
勿論、教師側がルイズ達に対して無理矢理押し付けた訳ではない。
この編成には理由があるのだ。
事の発端はルイズ…その使い魔ミラボレアスが原因ではあるが、だからと言って誰もルイズに行けとは言わない、先の通り大人でも躊躇する危険な任務だ、罰則だろうとまだまだ未熟なメイジに軽々しく言えるものではない。
しかし、それでもルイズは自ら率先して言い放ったのである。はっきりと、私が行くと。
自分自身に課せる罰だとか、そんなものでは断じてない。
自らの…貴族としての誇りの問題だ。
もしここでフーケを捕らえることができれば、今まで自分をゼロと馬鹿にしてきた者達を見返す事ができると、そう考えたのだ。
キュルケとタバサは逃げるフーケを直接目撃したという理由で、やはり自ら名乗りを上げた。
もっとも、キュルケの場合はヴァリエールであるルイズへの対抗心だろう。
タバサの方はそんな二人を心配しての同行だ。
「この森を抜ければ、土くれのフーケが潜伏していると思われる小屋が見えます」
案内役であり、馬車の手綱を握るロングビルがそう言った。
敵の根城はすぐそこだ。
だというのに、馬車の上からはまったく緊張感を感じられない。
それもそのはずだ、何せ今回の任務を引き受けた3人のメイジ達には、一人を除いて実戦経験というものが皆無なのだ。
もっとも、貴族の生まれ…それもまだ学びを受けている学院の生徒であるため、当然とも言えるかもしれない。
しかし敵であるフーケにはそんなものは御構い無しだ。
相手が誰であろうが、自分を討伐するべくやって来た相手だ、それ相応のもてなしをするだろう。
現在討伐隊の中で、臨戦状態に入っているのはタバサただ一人だ。
他の二人は油断しきっている、ルイズの従者である、ミラボレアスも例外ではない、ご機嫌に口笛を吹いている。
これも当然と言えるだろう、圧倒的強者であるミラボレアスには、トライアングルクラスのメイジであろうと取るに足らない存在なのだから。
しかし油断や慢心とは恐ろしいものだ、足元をすくわれる可能性だって十分にある。
「馬車では目立ちます。
ここから先はフーケに警戒されないように、徒歩で行きましょう」
多少の不安を残しながらも、討伐隊を乗せた馬車は目的地の付近に停車した。
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「ここが…フーケの潜伏している場所?」
静かに尋ねたルイズに、ロングビルが無言で頷いた。
見た目は所々に木材の劣化が見られる、ただのくたびれた住み開き小屋だ、とても人が住んでいるようには思えない。
しかしここはあくまで一時的に潜伏している仮住居に過ぎない。それに見た目のボロさから、いいカモフラージュになるだろう。
討伐隊の一同はゆっくりと、音を立てずに小屋の周りを囲んだ。
敵は目と鼻の先、しかも自分よりも格上のメイジだ。
先ほどまで危機感の欠片もなかった二人にも、確かな緊張感が駆け巡っていた。
「ふむ…人間の臭いがあまりしないな…
中には誰もいないようだ」
「…罠も仕掛けられてないみたい」
ミラが鼻を使い、タバサが杖を振って、小屋の中に危険が無いかを確かめた。
そしてタバサはそのまま扉の取手に手を掛け、小屋の中に突入した。
小屋の中も外見と同じくらいに荒れ果て、ボロボロになっている。
「…やっぱり、もぬけの空…」
「私達は一応中も捜索するわ。
…ま、無駄だとは思うけどね」
「なら私は外を見張っておくわ」
「では私は辺りを偵察してきます」
タバサ、キュルケ、ミラが小屋の中を…ルイズが小屋の外を…ロングビルが更にその周辺を、それぞれ役割を決めてフーケの手がかりを探した。
「随分と埃っぽい場所だな」
ミラがむず痒そうに顔を歪めながらそう言った。
確かに部屋の中は、歩くだけで埃が飛び散る程に汚れている。
「ほんと、おかげで服も汚れちゃったわ。
早く済ませて、こんな所出ちゃいましょう」
愚痴を溢すミラとキュルケを尻目に、黙々と捜索を続けるタバサ。
その手は埃だらけのこの部屋では目立つ、やけに小綺麗な箱に触れて止まった。
「…破壊の杖」
「本当に!!?」
タバサの小さな言葉に反応したキュルケが、大慌てで彼女に駆け寄った。
普通の人間の倍近くはある巨大な箱だ、小柄なタバサの隣に並んでいるのでさらに大きく見える。
確かにそれは、学院長から事前に知らされていた物と同じものである。
「まさか…こんな簡単に⁉︎」
キュルケが驚くのも無理は無い、フーケにとって破壊の杖は苦労して手に入れた貴重なお宝だ。
それがこんなボロボロの部屋の壁に、無造作に立てかけられているなど、考えられないことだ。
当然罠の可能性も考えたが、先程と同じようにタバサが杖を振っても何の反応も見られない。
この重量からして空というわけでも無さそうだ。
「…とりあえず、中身を確認してみましょうか?」
キュルケの提案に無言で頷いたタバサは、そのまま箱を開いた。
「…これが…破壊の杖…話に聞いてた通り変な形ね」
その大きさもさることながら、その形状は杖というよりも、騎士などが使う大きな槍に近い。
しかしその先端には、まるで大砲のような銃口が備わっている。
武器というのは分かるが、槍でもなければ銃でもない…本当に奇妙な形をしている。
「……これは…」
「何か知ってるの?」
ミラ小さく呟くミラに対して、タバサが尋ねた。
ハルケギニアではまず見ることは無い武器…だがミラには確かに見覚えがあったのだ。
しかし破壊の杖についての情報は、ミラの口から発せられることはなかった。
突然、外で見張りをしていたルイズの悲鳴で掻き消されたからだ。
「今の声は…ルイズ⁉︎」
悲鳴に驚いた3人は急いで扉の方へ振り向いた。
その瞬間、小屋の天井はミシミシという音を立て、まるでテープでも剥がすかのようにいとも容易くゴーレムによって引き剥がされた。
「ゴ…ゴーレム!!?」
青空の見える、ポッカリと空いた天井の穴から3人を見下ろす巨大ゴーレム。
その突然の出現に、若干パニックに陥るキュルケ。
奇襲を仕掛ける筈が逆に奇襲されたのだ。驚くなという方が無理な話である。
そんな中、冷静に行動に移ったタバサは杖を構え、迅速に詠唱終え風の魔法でゴーレムを攻撃した。
風は渦を巻いて小型の竜巻となってゴーレムに激突する。
しかしゴーレムはまったくの無傷、ビクともしない。
キュルケが胸に刺した杖を取り出した。
タバサの行動で落ち着きを取り戻したのか、今度はキュルケが炎の魔法によって攻撃する。
しかしこれまた無傷、多少煙があがるものの、やはりビクともしない。
「やっぱ無理よ!こんなの相手に!」
キュルケがヒステリック気味に叫んだ。
「ここは…一時撤退した方がいい」
そう言って、タバサとキュルケは走ってゴーレムから距離を置いた。
走り去る二人を追うため、ゴーレムが大股の一歩を踏み出した。
しかし二歩目は出ない、ゴーレムは背中に何かが弾けたような衝撃を受け、体をピタリと硬直させた。
衝撃の正体はルイズだった。
ルイズがゴーレムの背後で、がむしゃらに杖を振って魔法を使用していた。
「何してるのよルイズ!」
キュルケが叫けぶが、ルイズは一向にその場から動こうとはしない。
それどころか、更に杖を振って無駄な攻撃を続ける始末だ。
「そんな攻撃であのゴーレムを倒せるわけないでしょ!あんたも早く逃げなさい!」
「私は逃げない‼︎」
キュルケの言葉を無視し、ルイズは更に攻撃を続けた。
しかし表面の岩がほんの少し剥がれただけで、依然としてゴーレムにダメージは見られない。
「その通りだルイズ、見てわかるだろ?
こいつはお前の手に余る」
今まで傍観していただけだったミラが、キュルケに続いてルイズの説得に出た。
もっとも、ミラの場合は心配からではなく、ゴーレムと一対一で戦いたいがための、邪魔者の排除を目的としたものなのだが…
「うるさいわね!そんなのやってみなくちゃわからないわよ!」
ルイズはミラの声も振り払い、杖を持つ手を強く握った。
無謀な戦いだ。
相手はルイズの攻撃を喰らっても毛ほども効いていない。
逆にもし相手の攻撃がルイズに降りかかれば、ルイズは簡単に潰されてしまう。
それほどまでに物量差があるのだ。
このまま続けても、勝敗はわかりきっている。
しかしルイズは逃げだそうとはしなかった。
決して背を向けようとはしなかった。
何故なら…
「私は貴族よ‼︎
魔法を使える者を総じてそう呼ぶんじゃない!」
ルイズは杖を前方に掲げ、堂々と言い張った。
「敵に背を向けないのが、貴族というのよ‼︎」
ルイズは再度杖を振った。何度も何度も、杖が空を切った。
それと同じ回数、ゴーレムの体から小さな爆発が巻き起こった。
しかし効かない。
数度の爆発は、ゴーレムの表面の土や岩を削ぎ落とすことには成功したが、その程度の損傷は一瞬にして修復してみせた。
ゴーレムは一切足を止めることなく、一歩一歩確実にルイズの元へと近づいてゆく。
硬い拳を振り上げ、確実にルイズを潰せる一撃を振り下ろそうとしている。
当然ルイズに、その一撃を防ぐ術などは存在しない。
そしてその拳は、無情にもルイズの真上から、勢いよく振り下ろされた。
ルイズは青ざめた顔で、ギュッと強く目を瞑った。
死を覚悟したのだ。
しかし…いつまでたっても、ゴーレムの拳は自分の体に落ちてはこなかった。
不思議に思い、ルイズは恐る恐る閉じていた目を開いた。
目の前にはミラがいた。
片手で破壊の杖を抱えながら、もう片方の腕でゴーレムの拳を受け止めていた。
紅い目が無言でルイズを見下ろしている。
やがてその紅い目は、ゆっくりと歪んでいった。
「グハッハハハハハハハハハハハ!!!!」
ミラの狂ったような笑い声が響き渡る。
「魔法も使えん貧弱なメイジがッ!あの巨大なゴーレムを前にッ!戦うだぁ⁉︎背を向けないだぁ⁉︎笑わせる‼︎」
ミラはルイズの顔に限界まで自分の顔を近づけながら、馬鹿にするかのように、歪んだ紅い目にルイズの姿を写した。
「この圧倒的不利の状況で、立ち向かうなど愚の骨頂!馬鹿のすることだ‼︎
少しでも勝機があるとでも思うか!!?ほんの少しでも⁉︎立ち向かえば勝てると、本気で思ったのか!!?」
「な、な…何よ…!」
自分の覚悟を笑われた。自分の、貴族としてのプライドを…
同時に目からは涙が溢れた。
これが駄目なら、自分はどうやったら馬鹿にされなくなるんだ?と…
ゼロ…ゼロ…ゼロ…と、魔法の使えない自分は、今まで何度も何度も馬鹿にされてきた。
ならばこうするしかない、一流のメイジでも捕まえられない盗賊…土くれのフーケを捕まえる。
そうすれば、もう誰も自分を馬鹿にする者はいなくなる。
しかしそれは否定された。お前にはできないと…
ならばどうする?いや、どうすることもできない。
ルイズは劣等感に押し潰されそうになりながら、必死に反論しようと口を開いた。
しかしそれは、自分を見つめる、愛惜しい者を見るかのような視線によって塞がれた。
「…いいだろう…少しは認めてやる、お前は私の主だ」
ミラがニヤリと笑った。
瞬間、ゴーレムは突然飛んできた炎と風の攻撃によって、バランスを崩しその場で倒れた。
ゴーレムの拳から解放されたミラは、直ぐに空いた手でルイズを抱えその場から離れた。
「ルイズ!」
先の攻撃の正体はキュルケとタバサ、そしてその使い魔であるフレイムとシルフィード、それぞれの魔法とブレスであった。
ゴーレムが退いたのを確認したキュルケは、その場でフレイムから飛び降りてルイズの元へと駆け寄った。
そしてそのまま、ルイズの頬を思いきり引っ叩いた。
「あんた何考えてんのよ‼︎
確かに…立ち向かうことだって大事かもしれないわ。
でも…死んだら意味ないじゃない!」
ルイズは無言だった。
赤くなった頬を手で押さえながら、ただ俯いていた。
別にルイズだって、ミラと違って戦うことが好きなわけではない。
ただ悔しかったのだ…悔しくて悔しくて仕方なかったのだ。
その心情は、ルイズの目から溢れ出る涙が物語っている。
「悔しいなら、その悔しさをあれにぶつけてみろ。
宣言通り戦って、あれを破壊してみせろ」
ミラが横目でルイズを見ながら、再び立ち上がったゴーレムを指さした?
「あんた何を言って…!ルイズを殺させる気⁉︎」
「落ち着けよ。何も勝算無くして言ってるわけではない」
睨みつけるキュルケを尻目に、ミラは破壊の杖を箱から取り出した。
「これを使えば、あのデカ物を破壊することだって可能じゃないか?」
「破壊の杖⁉︎…でも、使い方なんてわからないわよ」
「私にはわかる。
…なんとなくだがな」
見ると、ミラの左手のルーンが強く光っている。
ミラは破壊の杖を弄びながら、ゆっくりと俯くルイズに近づき、こう問いた
「さてルイズよ…どうする!?
私が今ここで、あれを破壊することは容易い。
だがそれで、お前の信念は⁉︎プライドは⁉︎お前の渇きは潤うか⁉︎
選べ!プライドも何もかも捨て去って私にこうべを垂れるか…!武器を取って戦うか…!決めるのはお前だ」
ミラの提案した絶好のチャンス…そのチャンスにルイズは震撼した。
答えは1つだ…
「そんなの…決まってる…!」
ルイズは拳を固く握って、涙を拭いて前を見た。
「私を誰だと思ってるの⁉︎
私は!ヴァリエール家の三女!フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ‼︎戦ってやる…!戦ってやるわよ!」
ルイズは鳶色の瞳をメラメラと燃やしながら、しっかりと地面を踏み締めそう叫んだ。
「分かったら、早くそれを渡しなさい‼︎我が使い魔、ミラボレアス‼︎」
「了解」
ミラボレアスはニヤリと笑った。
魔法も使えない、小さなか弱いメイジ…自分が少しでも力を振るえば、簡単に潰せそうなほどに小さな存在だ。
しかしその姿が…杖を握って啖呵を切るその姿が…
早朝にかかる薄い霧程に僅かだが、あの屈強なハンター達の姿と重なった。
だからこそミラボレアスは、自分の獲物をルイズに譲ってみようと考えたのだ。
「ッ…⁉︎重っ!
あんたよくこんなのを片手でもてたわね…!」
ミラに手渡された破壊の杖を、ルイズは端を地面につけながら辛うじて両手で支えていた。
破壊の杖は2メイルをゆうに超える程の巨大な武器だ、小柄なルイズではまともに扱うことなどできない。
「持てないのなら誰かに支えて貰えばいい、もともと人間一人の力など、高が知れているのだからな」
「そうね、じゃあキュルケ!」
「え⁉︎」
「早くしてよ!ゴーレムがこっちに来てるんだから!」
ルイズが指さす、確かに、完全に修復を完了したゴーレムがこちらに近づいて来ているのが見える。
「…しかたないわね」
キュルケが後ろから破壊の杖を支え、その後をタバサが続いた。
「…で、どうやって使えばいいの?」
「準備は私がしよう、お前はただ引き金を引けばいい」
そう言ってミラは、馴れた手つきで破壊の杖を弄り始めた。
破壊の杖…ミラはこの武器を見たことはあったが、その使い方までは知らなかったはずだ。
これも左手のルーンの力なのだろう。
「飛距離はあまり無い、ギリギリまでひきつけてから撃て。
よく狙えよ、絶対に外すな、一発撃てば暫くは撃てんからな」
耳元でそう呟くミラに、ルイズは黙って頷いた。
集中しているのだ。
ゴーレムは自己修復能力を持っている、足など狙っても効果は無い、確実に中心を狙わなければならない。
飛距離もないこの武器で、三十メイルものゴーレムの中心を狙うならば、ゴーレムがギリギリまで接近してきた所を狙うしか無い。一歩間違えれば潰される程ギリギリにだ。
瞬間、ゴーレムの動きが変わった。
さっきとは比べものにならない動きだ。一気に勝負を仕掛けに来たのか。
急な変化に、ルイズはパニックになりかけたが、気力で無理矢理それを押し殺し、巨大な引き金を強く握った。
破壊の杖の先端にエネルギーが充填されていくのを感じる、膨大な熱を感じる。
そしていよいよ、ゴーレムの足がルイズの前方1メイルを踏んだその瞬間、ルイズは破壊の杖をゴーレムの中心に向け、その爆発的なエネルギーを放った。
その一撃の名は…“竜撃砲”。
竜のブレスを人工的に生み出したその攻撃は…正に、一撃必殺!!!
ゴーレムはその体の中心に巨大な爆発を受け、修復不可能な程にバラバラに砕かれた。
同時にルイズ達は、今の一撃の反動によって後ろ向きに勢いよく倒れた。
「……やった…勝った…!」
「でも…こんなに強烈な反動がくるんなら、あらかじめ言っといてほしいわ」
「…同意」
ヨロヨロと砂を払って立ち上がる3人が口々にそう言った。
目の前には、ゴーレムの足だったものだけがポツリと立っている。
「それにしても…すごい威力ね、破壊の杖。
でもさっきからずっと煙が出てるけど、大丈夫かしら?」
地面に転がる破壊の杖を見ながらそう言った。
破壊の杖からは黒い煙がブスブスと溢れ出ている。しかしこれは溜まった熱を排熱している為出ている煙なのであって、むしろ正常に作動している証拠である。
そうとは知らないルイズ達は心配になり、破壊の杖についてやたらと詳しかったミラに聞こうとしたが…
「ミラの姿が…どこにも無い」
どさくさに紛れ、どこかへ行ってしまったようだ。
次回は土くれのフーケvsミラボレアスです。
ではまた次回。