ゼロの黒龍   作:無想転生

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眠れる邪気

自分の召喚した使い魔に対し、ルイズはとても感激していたが、同時にもう一つの感情も存在していた。

 

それは…“恐怖”だ。

 

ルイズの心情としてはこのまま湧き上がる感動に身を任せ、今すぐにでもコントラクト・サーヴァンを行って契約に移りたいと思っている。

しかし、体がいうことをきかないのだ。

 

召喚した黒龍の方へ行くために足を動かそうとしても、まるで地面に足をくっつけられたかのように全く動かすことができない。

ふとルイズは、自分の足が震えていることに気がついた。

 

それを見てやっと、ルイズは自分の深層心理に気づいた。

恐怖していた…生物としての生存本能が警告を発するほど…深く浸透する恐怖だった。

 

ルイズの体は無意識のうちに、身を守ろうと固まっていたのだ。

 

それはルイズだけの話ではなかった。

その場にいる全員が、ルイズが召喚した黒いドラゴンの不気味な威圧感に恐怖を抱いていた。

 

担当の教師であるコルベールとて、例外ではない。

しかし彼は元軍人であり、様々な修羅場をくぐり抜けた。危険には慣れている、他の者達に比べればその恐怖も僅かなものだ。

 

(だが…)

コルベールは自分の過去を探りながら思った。

 

(眠りながらにしてこれだけの危険な香りを匂わせるものなど…果たして今までにどれだけ出会ったか…)

目の前にいる存在は正に未知。

ただわかるのは、全身から感じられるドス黒い不気味な感覚と…心底ヤバイと、自らの直感が告げていることだけだ。

 

コルベールはルイズを見た。

そう、自分の使命は彼女を…ここにいる全ての生徒を守ることだ。

もともと自分がここにいるのは、使い魔召喚の際に起こった危険を対処するためなのだから。

 

今はまだ何も起きていない。しかし、このままならまず間違いなくそれは起こる。

ならば自分は、今動かずとしていつ動く?

 

(今私が、この契約を必ず成功させてみせる!)

心の中でそう決心したコルベールは、全身に降りかかる不気味な感覚を払いのけ、ルイズを自分の後ろにおいやった。

 

コルベールはドラゴンを睨みつけながら、後ろにいるルイズにこう言った。

「今からあのドラゴンと契約するために接近します。ミス・ヴァリエール、あなたは私の後ろから近づいてください」

コルベールの言葉に、ルイズは黙って頷いた。

 

コルベールを先頭に、二人はゆっくりと、慎重に眠っているドラゴンに近づいた。

 

(幸い今、あのドラゴンは眠っている。その隙に契約を済ませてしまえば…)

そう思った次の瞬間…背筋が凍りついた。

 

ドラゴンがピクリと体を震わせたからだ。

いやそれだけではない、本当に僅かだが、ドラゴンの口角がつり上がったように見えた。

 

場の緊張感が一気に高まった。

コルベールは完全にルイズを押しのけ、自らが盾となるようにルイズの前に立ち杖を構えた。

 

気づけばコルベール以外にも、タバサとキュルケという名の二人のメイジが、コルベールの一歩後ろで杖を構えていた。

 

タバサ…これは彼女の生い立ちなども関係することなので今は省略するが、彼女もコルベールと同様に幾つもの修羅場をくぐり抜けてきた。

だから目の前にいるドラゴンがどれだけ危険な存在なのかが、なんとなくわかるのだろう。

 

一方、キュルケは二年生の中でも高い成績を収めているものの、彼女には実戦経験などまるでない。

なのでコルベールとタバサに比べれば戦力としては低く、そもそも二人に比べればこの状況の危険度も理解できていないだろう。

しかし親友であるタバサが杖を構えている…しかも相手は犬猿の仲であるルイズの召喚した(契約は完了していないが)使い魔だ。その二つが、彼女を動かす原動力となった。

 

「二人とも下がっていなさい!」

コルベールが二人に呼びかける。

コルベールにとって守る対象はルイズだけではない、ここにいる生徒達全員、もちろんそれは彼女達も含まれている。

確かに二人とも優秀なメイジだ。正直に言えばとても心強い。それにタバサは自分と同じトライアングルだ。

しかしそれは、自分の教師としての誇りが許さない。守るべき生徒達に危害が及ぶ可能性など、ほんの少しでも許すことができなかった。

 

それに相手は眠っているのだ。

いくら危険性を秘めてるといっても、多人数でゾロゾロと接近する必要はない、自分一人で事足りる。

 

二人もコルベールの指示に承諾したのか、杖は構えているのの、その場で立ち止まっている。

 

コルベールは再びドラゴンを見た。

依然変わらず眠っている、寝息まで聞こえてくる。

 

さっきのは気のせいだったのか…と、少しだけホッと息を吐いた。

しかしまだ警戒は怠らない。コルベールとルイズはそのままゆっくりと接近し、ようやくドラゴンの眼前にまで辿り着いた。

たった数メートルしか離れていないというのに、まるで旅でもしていたかのような疲労感だ。

 

コルベールは杖を構えたまま、ルイズを前に促した。

「さぁ、そのドラゴンが眠っている間に、早く契約を」

 

コルベールに指示されたまま、ルイズはコントラクト・サーヴァントを詠唱した

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

詠唱し終えたルイズはそっと顔をドラゴンの顔に近づけ、鋭い牙を覗かせる口にキスをした。

 

ドラゴンの左腕にルーンが刻まれる。

 

その瞬間、ドラゴンはパチリと目を覚ました。

 

ルイズはドラゴンが目覚めた瞬間、その眼球を一瞬だけ見ることができた。宝石のように美しく…そして怪しく赤く光っていた。

 

目覚めたドラゴンは大きく咆哮をあげた。

天まで轟きそうな巨大な雄叫び、地面はビリビリと震え、その場にいる全員があまりの爆音に耳を塞いだ。

 

ドラゴンは宝石のような真紅の瞳で、召喚者であり契約者のルイズを見つめる。

 

無意識の内に杖を握る手に力が加わっているのを感じた。

 

しかしドラゴンは何もしない、ただただルイズを見つめるだけであった。

 

「おめでとう、ミス・ヴァリエール。契約者完了だ」

コルベールは今度こそ心の底から安堵の息を吐いた。

 

 

 

その時のルイズの心情は、彼女自身にもわからない。

しかしその小さな胸には、安心感や達成感や喜びでいっぱいになっていた。

 

 

 

 

 




みんな眠ってるのにミラボレアスにビビり過ぎな気がしますね。
でも設定見ると、ミラボレアスの素材で作った装備を着けるだけで呪われる(もしくは呪い殺される)らいしですからね、妥当かもしれませんね。
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