南部アフリカに位置するアンゴラ。かつてポルトガル領西アフリカとして、海外県の扱いを受けていた。
冷戦と言う国際情勢を背景に、現地では社会主義陣営の関与もあってポルトガルに対する叛乱が発生した。
当初、ポルトガル軍優勢で戦況は進むが、ポルトガル本国のリスボンで左派によるクーデターが発生。カーネーション革命である。これによって政権が打倒され、アンゴラはポルトガルから独立をしたが、今度はアンゴラ全土を巻き込む抗争が勃発。内ゲバの内戦状態にあった。
西側陣営は反共姿勢から、アンゴラを統一すると勢力を拡げる
アンゴラは天然資源が大量に埋まっており、開発さえ進めば、国民が飢える事の無い未来は約束されている。
当然、開発の利権を求めて諸外国から多くの者が訪れた。
南西アフリカに近いチラタの街を支配するボコ・デレ将軍は、来訪した外国企業の者に賄賂を要求した。
「パパ、蚊に刺されちゃった。痒いわ」
「ホテルに戻ったら消毒をしておこう。この国は最悪だ」
父は資本投資の視察にやって来たが、将軍から賄賂を要求され拒絶した。肝の座った男であり、一度賄賂を渡せば、将来に渡り要求され続ける事が予想出来たからだ。
娘は付き添って小旅行の積もりだった。治安情勢も考えて護衛も雇っていた。世界屈指の警備会社、インターモードの社員だ。
「死ね、おらっ!」
銃声が聞こえた。次の瞬間、二人居た護衛が射ち倒されて居た。
「何事なんだ」
武装した兵士達が周囲を取り囲んだ。ボコ・デレ将軍の部下達だ。直接、マトにかけて来た。
これから仲良くやっていこうと言う姿勢では無い。
「逮捕しろ!」
会社の代紋を背負ってここに来ていたから、あやをつけられたり、ある程度の荒事は覚悟していた。
しかしここまで直情的な動きに出るとは思っても居なかった。
「パパっ!」
「何しとんじゃ! これがお前達のやり口か、腐れ外道が!」
筋を曲げたくない。だが、考えるほど甘くはない。
父親は指揮官に腹を殴られうずくまった。
「吹かしてるとぶっ殺すぞ。このまま、あんたを帰したらうちの面子にかかわるんだよ」
指揮官の命令で二人は連行される。
「イギリス人父娘がFAPLA、つまりアンゴラの共産軍に捕らえられている。今回の依頼は彼等の救出だ」
FAPLAはソ連やキューバから軍事援助を受けている。フェイスは軍隊相手と言う話にうんざりした。
「良いね、正規軍相手か。言っちゃ何だが、ハンニバル。これは南アフリカ軍とかに頼む仕事だぜ」
「だから楽しいんじゃないか。この稼業、最後は度胸だ」
ハンニバルはノリノリだった。
「は」
フェイスは呆れた。バラカスも突っ込みを入れる。
「こいつ、また楽しんでやがる」
そして念押しをした。
「言っておくがハンニバル。俺は飛行機には乗らないぞ」
ハンニバルはにこりと笑った。
「
「そいつは良い。船なら眠らされる心配も無いから安心だぜ」
ほっとするバラカス。フェイスも機嫌を治した。
ハンニバルは説明を続ける。
「南アフリカ軍やイギリス軍の介入を疑われては、依頼主の商売に差し障りがある。だから俺達は、ポルトガルの傭兵に偽装して救出に当たるんだ」
全員一致で賛成と成り、依頼は受ける事となった。
旅は順調だった。たった一度の人生、たまには贅沢も許される。
船旅を満喫して、目的地に近づいた。集合したメンバーにハンニバルは状況を説明する。
「お前達、新しい情報が入った。現地ではサヴィンビの指揮するUNITAが攻勢を開始したらしい。アンゴラは戦場だ。気を抜くな」
サヴィンビの率いるUNITAは、タマの取り合いで話を着けようとMPLAに牙を向き続けていた。
ハンニバル達は、顔を黒のドーランで塗りたくり、リザードパターンの迷彩服姿に、FN-MAG、FN-FAL、RPG等を携行している。
「もう一度確認して置くぞ。父娘を救出したら無線で連絡して、モンキーの
いざ上陸の時間になったら、驚かされた。
「動力付きのボートを要求したが、ゾディアックとは贅沢だな」
モンキーが解説する。
「こいつは南アフリカ国防軍の第5特殊部隊連隊も使ってる高級品だぜ」
バラカスの舵取りで海岸を目指した。
風は心地良いが、日差しはきつい。
人気の無い海岸に上陸するとボートを偽装して隠した。
「フェイス、先導しろ。
背嚢が肩に食い込み、額に汗が吹き出る。嫌でも、あれやこれやとベトナムを思い出させた。
正義の男達が動き出した。
チラタの街から離れた林に仮の拠点が築かれた。
それぞれが偵察を行って来た結果、メモ帳に敵の配置を書き込んで視覚化し、情報共有を行っていた。チラタに駐屯する敵兵力は、将軍の司令部が置かれているだけあって、歩兵を中心に連隊規模だと言う。
「
「ZU-23対空機関砲にSA-3地対空ミサイル。これを排除しないとモンキーの野郎、来る事も出来ないんじゃないか」
バラカスの報告では街の外周に配備されている防空部隊が厄介だった。
「フェイス」
「人質は司令部に連行されている。街のど真ん中にある大きい屋敷だ。元々、ポルトガル人の金持ちが持っていたんだろうね。中々、良いセンスだ。機関銃構えた歩哨さえ居なければね」
フェイスは屋敷の入り口にMGと書き込んだ。
「司令部の通信室を押さえよう。無線機さえ潰せば、防空部隊に指示も出来ない。下っ端が勝手に撃ったりはしないだろう」
夜まで寝て過ごしたハンニバル達は、日暮れと共に行動開始した。
アンゴラの赤い土は血が染み込んでいるからだと言う。ハンニバルは無駄な殺生をする積もりは無かった。
歩哨の兵士を気絶させると、応用架設された無線機のアンテナを追って通信室を目指した。
将軍は顔を立てるのが商売であり、賄賂を寄越さない事は面子を潰す行いだった。
低収入で低身長で心に余裕の無い男だ。だから拘束した。
「すまない。私が誘わなければ、お前をこんな目に遇わせる事も無かったのに」
酒、女、賭博が絡まなくても強盗、殺人、傷害は何処にでもある。だから護衛を手配していた。しかし軍隊が相手だ。これは予想も出来なかった。
「パパのせいじゃないわ。筋道を通さないあいつらが悪いのよ」
手打ちにするには護衛も殺され、血が流されている。商売人は面子が第一であり、許せない。何とか脱出して、きっちりとケリを着けたい所だった。
「カチコミだ!」
怒鳴り声と銃声が聞こえた。反政府ゲリラの襲撃であろうかと考えながら、娘を庇い部屋の隅で屈んだ。
見張りも駆けて行ったが、銃声が近付いて来る。そして扉が破られた。
みんな死んでしまう。別れの時だと覚悟した。
「お待ちどうさん。助けに来たぞ」
そう言ってハンニバルが現れた。
「君達は?」
「俺はハンニバル・スミス。こっちはフェイス、
無政府主義者と共産主義者は国家を脅かし、社会の秩序を破壊する害悪しか垂れ流さない病原菌と言えた。
途上国では途上国のやり方がある。何でも良いから乗り込んで、マシンガンでバリバリやってぶっ飛ばす手が通用する。
「フェイス、先導しろ。
屋上に向かって走るとフランス製ヘリコプターでSA316、アルエット3が飛来した。モンキーだ。
「時間、ピッタリだな」
しかし敵の対空射撃が激しい。ミサイルこそ射ってきて無いが、小銃と軽機関銃でも数が集まれば脅威だ。LZに降りたくても敵の妨害で困難だと見てとれた。
ハンニバルは周囲を見渡した。
「丁度、良いのがあるじゃない」
敵の車輛が目に留まる。
「予定変更だ。
「了解、ハンニバル」
早速、ラペリングの用意を始める事にした。