バカとテストと文学少女っ!   作:しほ

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第9話 - 戦争開始 -

問 以下の問いに答えなさい。

『goodおよびbadの比較級と最上級をそれぞれ書きなさい』

 

姫路瑞希の答え

『good ― better ― best

 bad ― worse ― worst 』

 

教師のコメント

その通りです。

 

 

前原玲奈の答え

『good ー better ー best

bad ― worse ― worst』

 

教師のコメント

前原さんには簡単すぎましたかね。

 

 

吉井明久の答え

『good ― gooder ― goodest』

 

教師のコメント

まともな間違え方で先生驚いています。

goodやbadの比較級と最上級は語尾に-erや-estをつけるだけではダメです。覚えておきましょう。

 

 

土屋康太の答え

『bad ― butter ― bust』

 

教師のコメント

『悪い』『乳製品』『おっぱい』

 

 

 

 

 

「さて皆、総合科目テストご苦労だった」

 

教壇に立ち、皆を労う雄二。

僕はといえば、昨日のBクラス代表である根本くんと玲奈ちゃんの不穏な会話に不安を覚え、未だふつふつとこみ上げる怒りのままに試召戦争を迎えようとしていた。

 

「午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」

 

『おおーっ!』

 

それにしても、我らがFクラスのモチベーションは全く下がっていないみたいだ。最低戦力であるFクラス(ぼくたち)の唯一の武器であると言ってもいいだろう。

 

「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない」

 

『おおーっ!』

 

「確実に勝つ為、前線部隊は玲奈と姫路が指揮を取る。臆することなく、死ぬ気で戦え!」

 

『おおーっ!』

 

「が、頑張ります」

 

「ますっ」

 

姫路さんと玲奈ちゃんの存在によって、Fクラスの士気はさらに高まった。

Fクラスの最高戦力が揃い踏みで僕たちと一緒に前線に出るのだから当然だよね。それに玲奈ちゃんや姫路さんはFクラスのアイドルと言っても過言じゃないし。

 

キーンコーンカーンコーン…

 

昼休み終了のベルが鳴り響く。開戦だ!

 

「よし、行ってこい! 目指すはシステムデスクだ!」

 

『サー、イエッサー!』

 

雄二の指示でFクラスのメンバーが教室から飛び出していく。

Bクラスを目指して駆けつつ、僕は何気なく振り向いた。

 

「ん?」

 

今気が付いたけど、姫路さんの姿がない。

姫路さんの体が弱いことを考えると、恐らく僕たち男連中のスピードに追いつけないんだろう。

 

「玲奈ちゃんはこのまま僕と前に。島田さん、秀吉!」

 

「どうしたの?」

 

「なんじゃ明久、何かあったのか?」

 

近くで一緒に走っていた島田さん達に、姫路さんがいないことを伝えて、姫路さんと合流するようにお願いする。

昨日の一件もある今、僕は玲奈ちゃんからあまり離れたくない。

 

「姫路さんが遅れてるみたいなんだ。Bクラスが束で姫路さんに奇襲をかけたりしたら、いくら姫路さんでも勝てないかもしれない。いったん二人で引き返して、姫路さんと合流してきて欲しい」

 

「なるほどのぅ、了解した」

 

「吉井にしちゃ賢明な判断じゃない、そっちは任せたわよ!」

 

二人がUターンして戻っていくのを確認して、僕と玲奈ちゃんは先を急ぐ。少し心配そうな玲奈ちゃんだけど、あの二人はなんだかんだFクラスの主戦力たち。特に島田さんは数学ならBクラスにも引けを取らないだろう。

 

僕たち前線部隊は、とにかく全力でBクラスへと廊下を駆け抜けた。

 

今回は数学を主武器に、英語のライティングや物理など立ち会いの教師を出来るだけ多くして、一気に勝負をかける。

 

「いたぞ、Bクラスだ!」

 

「高橋先生を連れているぞ!」

 

正面にはゆっくりとした足取りでこちらに向かってくるBクラスの生徒。

十人程度しかいないみたいだから、今は様子見ってとこかな。

 

「あ、あのっ、出来るだけ一人で相手をせず、三人一組(スリーマンセル)で行動してくださいっ!」

 

『おうっ!』

 

敵と交戦する前に味方に指示を出す玲奈ちゃん。昨日の一件はさておき、今は試召戦争に集中しているみたい。心配することはなかったのかな。

それはさておき、多対一なら、少なくとも早々にやられたりはしないだろうと思うけど、高橋先生と言えば総合科目。

となるとちょっとまずかったりしないだろうか。点差的に。

 

そんな僕の心配をよそに、両陣営がぶつかり、Bクラス戦が始まった。

 

 

 

 

『Bクラス 野中長男

     VS 

 Fクラス 近藤吉宗

      武藤啓太

      君島博

 

 総合   1943点

     VS

      764点

      682点

      706点 』

 

 

 

 

三人がかりでなんとか点数が並んでいる感じだ。

戦力を削られないのはいいけど、このまま拮抗して勢いを殺されると困る。

 

「高橋先生っ、Fクラス、前原玲奈が行きます――試獣召喚(サモン)!」

 

玲奈ちゃんの声に応えて魔方陣が展開される。

そこに現れたのは、愛らしい姿の玲奈ちゃんの召喚獣。

姫路さんの召喚獣と似たような、強そうだけど可愛らしいその姿。

でも可愛いのは姿だけで、その点数は驚異的だ。

 

 

 

 

『Bクラス 満島春香

     VS 

 Fクラス 前原玲奈

 

 総合   1834点

     VS

      3276点 』

 

 

 

 

「前原玲奈だ!」

 

「“図書委員長”か……!」

 

「一気に攻めて討ち取るぞ!」

 

「ああ!」

 

Bクラスが玲奈ちゃんの周囲を取り囲む。

だけど僕は知っている。そんな包囲は、玲奈ちゃんにとってはまるで問題にならないってこと。

 

「皆さん、失礼します…!」

 

玲奈ちゃんの召喚獣は、華麗な動きで取り囲んでいたBクラス達の包囲から抜け出すと、彼らに向けてその大きな剣先を振りかざす。

そう、例えるなら某召喚システムゲームの青い王様のように。

その剣は光を纏って。

玲奈ちゃんが放ったエクス○リバーはあっという間にBクラスの召喚獣を戦死に導いていた。

 

「さすがだよ玲奈ちゃん!Bクラスじゃ相手にならないね!」

 

「そ、そんなことないよっ!特殊能力のおかげだよ…!」

 

謙遜する姿も可愛い。とにかく可愛い。

あわあわと両手を左右に振る姿すら清楚で可愛いなんて玲奈ちゃんくらいしかいない気がする。

 

「は、濱田達がやられた!」

 

「岩下と菊入も戦死したぞ!」

 

「なっ!そんな馬鹿な!?」

 

「前原玲奈に姫路瑞希、噂以上に危険な相手だ!」

 

どうやら姫路さんも無事到着して参戦していたらしい。

多分岩下さんと菊入さんという生徒を倒したんだろう。流石です。

 

「み、皆さん、頑張ってくださいー」

 

「やったるでぇーっ!」

 

「姫路さんサイコーッ!」

 

姫路さんの指揮官らしくない指示も、彼らにとっては効果絶大だ。

Bクラスの先鋒のほとんどを討ち取り、逆にこちらの被害はかなり少ないように見える。

 

「中堅部隊と入れ替わりながら後退! 戦死だけはするな!」

 

Bクラスの指示が聞こえる。

少しずつ相手を下がらせるという作戦は成功しているみたい。

 

けど、このペースだと今日中の決着は無理かもしれない。

雄二はどうするつもりなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「明久よ、わしらは教室に戻るぞ」

 

「んぇ?なんで?」

 

「Bクラスの代表じゃが……あの根本らしい」

 

「根本って、あの根本恭二?」

 

「うむ」

 

なるほど、秀吉も根本くんの最悪の噂はかねがね…って感じみたいだね。それだけ根本くんの評判が悪いんだけど。

もちろん僕も、昨日の一件もあるし、出来うる限り根本くんと玲奈ちゃんが関わる状況は避けたいし、根本くんの評価なんて最低ランクだ。

 

「あの…差し出がましいようだけど、坂本くんには、恭二くんが代表だって伝えてあるよ。心配いらないと思うんだけど…」

 

「じゃが、相手があの根本ではな。何をしてくるかわからんじゃろう?」

 

「念の為に戻った方がいいかもね」

 

玲奈ちゃんも現状特に問題はなさそうだし、少しくらいなら離れていても大丈夫かな。一応島田さんに近くにいてもらうようにお願いしよう。

 

不安そうな玲奈ちゃんを安心させるべくにこりと笑って、僕たちは島田さんに声をかけ、教室へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこうくるとはのう」

 

「卑怯、だね」

 

俺達が教室に戻ると、そこには穴だらけになった卓袱台、折られたシャープや千切れた消しゴムが散乱していた。

 

「酷いね。これじゃ補給がままならない」

 

「うむ。地味じゃが、点数に影響の出る嫌がらせじゃな」

 

酷い有様の教室。

けれど、特に酷いのは…

 

「………」

 

おそらく教科書だったであろうものを彼女の鞄から取り出し、眺める。

彼女の名前は真っ二つにされていたし、教科書をぱらりとめくれば根も葉もない、心無い悪口が埋め尽くされていた。

 

「これはまた、一段と酷いのう…」

 

「……見たところ、ここまで酷いのは玲奈のものだけだな」

 

後ろから雄二達が鞄の中を覗き込む。

 

「玲奈ちゃんは、一年の時根本くんと同じクラスだったはず。

ちょっと前には付き合ってるんじゃないかって噂もあったんだけど、噂は噂のままだった。

 

確か、玲奈ちゃんに告白したけど、根本くんは振られたって。

その腹いせのつもりなのかもしれない」

 

 

「……」

 

「でも、ここまでされるいわれは無いよね。

 

僕、知ってるんだよ。玲奈ちゃんは教科書ひとつだってすごく丁寧に扱うんだ。それが“本”という形を持っている限り、玲奈ちゃんにとってこれは宝物で、大事にしたいもの」

 

「…」

 

「……どうしよう」

 

「…明久、」

 

「僕、根本くんを許せそうにないよ」

 

「………うむ。噂に違わぬ外道じゃ」

 

「キツめのお灸を据えてやる必要がありそうだな」

 

良かった、みんなも同じ気持ちだったみたいだ。

許せないよ、根本くん。僕は君を許せないし、許さない。

 

泣かせた。

傷つけた。

彼女の大事なものまで奪った。

あまつさえ、彼女に触れた。

 

 

 

_____死刑でも文句を言う立場にないよね。根本くん?

 

 

 

 

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