バカテスト 英語
問 以下の英文を訳しなさい
『This is the bookshelf that my grandmother had used regulary.』
姫路瑞希の答え
『これは私の祖母が愛用していた本棚です』
前原玲奈の答え
『これは私の祖母が愛用していた本棚です』
教師のコメント
正解です。姫路さんと前原さんはきちんと勉強していますね。
土屋康太の答え
『これは 』
教師のコメント
訳せたのはThisだけですか。
吉井明久の答え
『☆●◆▽」♪*× 』
教師のコメント
出来れば地球上の言語で。
若干ではあるが傷ついてしまった吉井くんを連れて教室に帰る。
「本当に大丈夫…?保健室に行くなら、一緒に…」
「大丈夫だって!ありがとうね、前原さん!前原さんのお陰でこんな軽傷で済んだんだから!」
「でも……」
あの後。
宣戦布告をした吉井くんに、私の予想通り Dクラスは襲いかかった。
そのタイミングを狙って、(本来渡すはずだった)資料を手に私はDクラスへと入っていったのだ。
今後の為にも私がFクラスにいるという事は黙っておきたかったので(優子にはバレてしまうだろうが)、同じ図書委員であるDクラスの女子生徒に資料を渡しにきた、という名目で教室に入り、吉井くんを助けるという作戦だった。
途中で別れた私が現れたことで吃驚したのか、吉井くんは掴みかかられたまま私を見てきょとんとしていた。
私はそんな吉井くんに口元が緩みそうになるのを必死にこらえて、表情を作る。
「……え?」
「…っ前原!!?」
Dクラス代表の平賀くんが私を見て大きな声を上げた。
「なぜ君がここに!!?」
「え、なぜって…あ、その、わたし」
震えているフリをして、私はまるで何も知らなかったみたいに彼らを見た。ただの本バカじゃないんだから。
これでも中学時代は演劇部だったし、一年の時から優子と仲が良かったから、(秀吉くんは私のことを知らないと思うけど)演劇部に関わる機会は多かった。優子に頼まれて演劇部のモブとして出演したこともあったりして。
だから、ちょっぴりだけど、演技力には自信がある。人よりは少し、嘘をつくのが得意なのだ。
「図書委員の資料を渡そうと、思ったんですけど…あ、あの…わたし、今日は帰りますね…
吉井くん、だよね?」
「え、ああ、うん」
「あの、怪我…してるよね?保健室に行かないと…傷跡が残っちゃうよ」
焦っているフリをして、私は「失礼しました」と言うと、Dクラスの教室の扉を半ば無理やり閉めて走り去ったのである。
____そして、今に至る。
「それにしても…凄い演技力だね、前原さん」
「そうかな?…えへへ、ちょっとだけ演技には自信あるんだぁ」
でも、やっぱり怖かったよね…
そう続けると、吉井くんは困ったように小さくはにかんで「ごめんね」と言った。
「え…?どうして?」
「だって、僕が騙されていると思ったから、怖いのについてきてくれて、しかも僕を助けてくれたんでしょ?やっぱり前原さんは優しいね」
ふんわりと笑う彼に、私はまさかそんなことを言われるとは思っていなくて、顔を赤らめてあたふたしてしまう。
「そ、そんな大層なものでは!」
「照れてるー??」
「あ、う、あのっ、」
「可愛いー♪」
「い、いじわる…!」
吉井くんは結構 意地悪なんだと分かった。
「おかえり明久……っておい、お前…」
「…雄二」
「な、なんだ?」
怒りに震える吉井くんの声を聞いてか知らずか、坂本くんの声が少し上擦っている。
「僕を騙したね?雄二…」
「何のことだか」
「とぼけるなーっ!前原さんがいなかったら僕は今頃ボロボロだよ!!?」
涙ながらにそう語る吉井くんに、私は苦笑いで返した。
『やっぱり前原さんは優しいな』
『ああ、吉井を助けるなんて…』
『まさに人間国宝だな』
吉井くんを助けることは人間国宝に任命されるほど珍しいことなのだろうか。
どうやらこのクラスで、彼はかなり不遇の扱いを受けることになりそうである。
私は多分、今 驚愕に目を見開いていることだろう。
「雄二たちの扱いがおかしいんだよ!もっと僕を一人の人間としてそれなりに扱ってよ!」
「ま、まあまあ吉井くん、落ち着いて…私、姫路さん以外あまり面識がないから、お話したいな、って思うんだけど…」
なんとか吉井くんの気をそらすためにそう言うと、吉井くんも「そういうことなら」と考えを改めてくれた。
やっぱり常識人のような気がする。
「それもそうね。こっちが一方的に前原さんのことを知ってるけど、前原さんは私達のことは分からないわよね」
「お恥ずかしながら…」
私がそう言うと、「別に恥ずかしいことなんてないわよ」と言いながらポニーテールを揺らして二度目の自己紹介をしてくれた。彼女は島田さんだ。
「名前はもう知ってると思うけど、島田美波よ。女子がいてよかったー!って思ってた矢先に吉井と一緒に行っちゃうから、挨拶できなかったの」
「ご、ごめんね…図書委員の資料を渡すついでに一緒に行こうと思って」
そう返すと、「そうなのね」と納得したように笑って、島田さんはまた話し始めた。
「さっき瑞希とも話してたんだけど、折角女子3人なんだし名前で呼び合いましょうよ!いいでしょ?玲奈」
「うん!どうぞ、お好きに呼んでください!えーと、美波…と、瑞希ちゃん?」
「はい、よろしくお願いしますね、玲奈ちゃん!」
「よろしくねー」
にこにこと可愛らしい笑顔を返してくれた2人と一緒に軽く雑談していると、後ろから声がかかる。
「前原、今から屋上で色々と話をする。前原にも来てもらいたい」
「あっ、はい!」
「姫路と島田も来て貰うぞ」
「は、はいっ」
「ん、了解〜」
じゃあ行くか、という坂本くんの声で、私達は屋上へと足を運んだ。
「明久。宣戦布告はしてきたな?」
私が吉井くんの傷を消毒し、偶然入っていた絆創膏で手当てをしていた途中の言葉。
「一応、今日の午後から開戦予定と告げてきたけど」
「あ、動かないで!」
「はいっ」
ピシリと固まってしまった吉井くんを気にかけず、私は黙々と作業を続ける。
「(カルガモの親子みたいになってやがる)
……そうか」
「午後に開戦予定ってことは、先にお昼ご飯ってことよね?」
「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいはまともなモノを食べろよ?」
「そう思うならパンでも奢ってくれると嬉しいんだけど」
苦笑いしてそう言った吉井くんに、私は最後の傷を消毒しながら聞き返す。
「吉井くんは昼食は摂らないの?」
「いや。一応食べてるよ」
「………あれは食べてると言えるのか?」
じとりとした目で吉井くんを見る坂本くんに、私は疑問を浮かべる。
「どんなもの食べてるの?」
「こいつの主食は________ 塩と水だ」
「えっ」
思っていた以上に深刻な食事事情に驚きを隠せない。
この人は一体どんな生活を送っているのだろうか。
そんな心配をしながら最後の絆創膏を貼り終えて、よいしょ、とおばさんのような掛け声と共に吉井くんから離れる。
「終わったよー」
「ありがと、玲奈ちゃん」
「…はぇ?」
思わず変な声が出てしまったことに口元を抑えると、吉井くんはにこにこと笑いながら私を見ていた。
「…吉井くん」
「うん?」
「その呼び方は…?」
「ダメだった?」
「えっ、いや、そういうわけでは…」
ないんだけど…と、遂に言葉が尻つぼみになって何を言っているのかわからなくなってしまった。
「やっぱり意地悪だ…」
「あはははっ 反応が可愛い〜」
「もう勘弁してください…!」
「____お前ら、付き合ってるのか?」
「「え?」」
なんで?という言葉までハモってしまう。別に付き合ってはいないのだ。何故そんなことになったのだろうか。
「付き合ってないならいかにもなリア充オーラを出すな……」
ハァ、と溜息を吐く坂本くんに、私は小首を傾げる。
「そんなオーラ出てたかな…?」
「満載だったわね」
「付き合っているのかと思ってしまいました…」
目に見えて落ち込んでいる2人。
ナルホド、この2人は吉井くんのことが好きなようだ。恋愛的な意味で。
「そうだ玲奈ちゃん」
「ちゃん付けは定着したんだね……な、何かな?」
「僕らも名前で呼んでいい?」
「えっと…」
私は構いませんよ、と言うと、坂本くんは躊躇っていたようだったが、少し照れながらも玲奈、と呼んだ。
木下くん(弟)や土屋くんは意外と照れなどはなく、するりと口から溢れていた。たらしなのだろうか。
「じゃあ、アキくん」
「えっ」
「仕返し」
ふふ、と笑うと珍しく照れたように顔を真っ赤にしていたので、とりあえずゆでダコみたい、と告げておいた。でもそのあと何を思い出したのか今度は顔が真っ青になったので少し心配だ。嫌だったかな…?
坂本くん達に名前で呼んだ方がいいのかと聞いたところ、木下くんは姉と混じるから名前で呼んで欲しいと言われ、了承。
残り2人は名前+くんで呼ばれ慣れていない為か、少し照れ過ぎのような気がしたので、控えておいた。
「ええと、それで…アキくんの食事事情だっけ…?」
「玲奈ちゃん、やっぱり普通に呼んで。秀吉のように」
「え、明久?」
「秀吉は呼び捨てなの!!?」
「明久が秀吉くんのこと呼び捨てにしてたから、そういう風に呼べって言われてるのかと思って」
「いや、もう、いいよ呼び捨てで…その方が落ち着くし…」
「そうなの?」
じゃあそれで、と言うと、明久は照れた様に、玲奈ちゃんって天然なんだね……と言った。