問 以下の問いに答えなさい。
『⑴ 4sinX+3cos3X=2の方程式を満たし、かつ第一象限に存在するXの値を一つあげなさい。
⑵ sin(A+B)と等しい式を示すのは次のどれか、①~④の中から選びなさい。
①sinA+cosB
②sinA-cosB
③sinAcosB
④sinAcosB+cosAsinB』
姫路瑞希の答え
『⑴ X=π/6
⑵ ④ 』
教師のコメント
そうですね。角度を『°』ではなく『π』で書いてありますし、完璧です。
土屋康太の答え
『⑴ X=およそ3』
教師のコメント
およそをつけて誤魔化したい気持ちもわかりますが、これでは解答に近くても点数はあげられません。
吉井明久の答え
『(2) およそ③』
教師のコメント
先生は今まで沢山の生徒を見てきましたが、選択問題でおよそをつける生徒は君が初めてです。
前原玲奈の答え
『⑴ わかりません。
⑵ およそ④』
教師のコメント
先生は今から吉井くんに謝りに行こうと思います。
「それで、えっと…明久がご飯をちゃんと食べていないからしっかり食べようねって事でいいのかな…?」
「あー…うん、そうだね…」
「あの…」
私と明久がまるでコントのように小言を言い合っていると、可憐な声がその空気を切り裂くように吹き抜けた。
「……あの、良かったら…私がお弁当作ってきましょうか?」
「ゑ?」
「『え』の発音がどことなく違うような…」
どちらかというと『ゑ』だった気がする。
私と同じで古典が得意なのだろうか。
「本当にいいの?僕、塩と砂糖以外のものを食べるなんて久しぶりだよ!」
なんて不憫な青年なのか。
「……ふーん。瑞希って優しいんだね。吉井“だけ”に作ってくるなんて」
「(嫉妬してる美波も可愛いなぁ)」
思わず口元が緩み、にこにこしていると。
「あ、いえ!その、皆さんにも…」
「俺達にも?良いのか?」
「大丈夫?瑞希ちゃん…また体調壊しちゃったりしない?7人分も大変じゃないかな?」
「はいっ 大丈夫ですよ!」
「そう?だったらいいんだけど…体調には気をつけてね?何だったら私、数人分くらいなら作ってくるよ?」
せめて自分の分だけでも、と言うと、瑞希ちゃんは少し悩んだが、私が明久“だけ”に作りたいだとかそういう疚しい気持ちではなく、純粋に自分を心配しているのだと分かったのか、ふんわりと笑顔を見せた。
「それじゃあ、3人分だけお手伝いして貰えますか?」
「うんっ!頑張る!」
ガッツポーズで意気込むと、美波はちょっと息を吐いて、「あんたも無理しないでよ?」と言ってくれた。
美波はどことなくお姉さん気質な気がするな、と思って、私は美波にお礼を言いながら笑った。
「ふむ、2人共作ってきてくれるのか。それは楽しみじゃのう」
「…………(コクコク)」
「………お手並み拝見ね」
「さて、話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」
とりあえず戻らないと、何のためにここにいるのかわからないし…と考えていると、秀吉くんが坂本くんに何か尋ねようとしていた。
「雄二。ひとつ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」
「そういえば、確かにそうですね」
妙に納得したように言う瑞希ちゃんに、皆もその通りだと坂本くんを見る。
「……そうかな?」
『え?』
あ、今度は発音正しかった。
とそんなどうでもいいことが一瞬脳内を掠めたが、とりあえず気にしないことにする。
「…だって、今Fクラスには姫路さんがいて、多分…他のクラスはそれを知らないでしょ?姫路さんがいればEクラスは戦うまでもない相手だと思うんだけど…」
「…ほう。なるほどな。じゃあAクラスを攻めない理由は?」
面白そうに私を見ている坂本くんに、私は恐る恐る、という風に続ける。
「“
「その通りだ。流石だな」
「え、っと…どうも…?」
当たっていたなら何よりだ。
「明久。理解出来ていないようだから一から説明してやる。周りの面子を見てみろ」
えーっと、と自分の周りを見渡す明久。
私は結構簡潔に言ったんだけどな、と小首を傾げていた。
「……っ、と、美少女が二人と馬鹿が二人、ムッツリが一人と天使が一人いるね」
「誰が美少女だと!?」
「ええっ!!? 雄二が美少女に反応するの!!?」
「………………(ポッ)」
「ムッツリーニまで!!? どうしよう僕だけじゃツッコミきれない!」
「明久、天使って人間なの?」
「あんた自覚してるのね…」
「え?何が?天使って人間の部類に入るのかなって思っただけなんだけど…」
「自覚してなかったみたいですね…」
呆れている美少女二人。
秀吉くんはそんなに馬鹿じゃないと思う。
「まぁまぁ。落ち着くのじゃ、三人とも」
「…そ、そうだな……コホン。要するにだ」
咳払いを一つして、坂本くんは続けた。
「姫路に問題のない今、正面から戦り合ってもEクラスには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんかと戦っても意味はないということだ」
「?それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」
「個々の戦力差を考えると確実とは言えないな」
Fクラスの彼らがテストでどれだけ点を取っていたか、が問題になってくるものの、恐らくFクラス生徒の平均点数は100を越えれば良い方だろうと、誰もが分かっている。
「だったら最初から目標のAクラスに挑もうよ」
「それだとAクラスに勝てないよ、明久」
「でもDクラスは確実だと言えないんでしょ?どうせ負け戦なら最終目標に挑む方が…」
「私は坂本くんの作戦の全てがわかる訳じゃないけど…初戦だし、いきなりAクラスに挑んで負けてしまうと景気付けにならないんじゃないかな?…それに、」
「それに?」
坂本くんは面白そうに、明久や美波は本当に純粋に疑問符を浮かべながら、秀吉くんや土屋くんは何となく察したように、姫路さんは納得したように私を見る。
「えっとね、うーんと……ゲームや漫画で例えるなら、
「……それは、勝てないね」
「でしょ?でも瑞希ちゃんのいる私たちがDクラスに挑むことは、最終兵器を手にした騎士達が、そんなに強くない中途半端な部下…?手下?…に挑むのと同じことなんだよ」
「……」
「可能性のレベルが全然違うでしょ?」
「うん、よく理解できたよ」
「ほんと?良かった」
ほっと一息つくと、坂本くんが拍手する。
「明久が理解しやすそうなゲームや漫画で例えたのは良い案だったな。まあ、要するにそういうことだ。初陣だから派手にやって景気付けにしたい。それに、さっき言いかけた打倒Aクラスの作戦に必要なプロセスだからな」
「(やっぱり私のまた何歩も先のことを考えてるんだな…)」
凄いな、と純粋に尊敬していると、瑞希ちゃんが大きな声を上げた。
「あ、あの!」
「ん?どうした姫路」
「えっと、その。さっき言いかけた、って…吉井くんと坂本くんは、前から試召戦争について話してたんですか?」
そういえば、と坂本くんと明久を見ると、坂本くんはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、
「ああ、それか。それはついさっき、姫路の為にって明久に相談されて________ 」
「それはそうと!!」
ああ、優しい明久は体の弱い瑞希ちゃんの為に、Aクラスの設備を整えてあげたいのか。
そう考えて、やっぱり優しいな、なんてほのぼのしてしまった。
「さっきの話、Dクラスに勝てなかったら意味がないよ」
「負けるわけないさ」
軽く笑い飛ばして、坂本くんは自信に満ち溢れた顔で私達一人一人の顔を見た。
「お前らが俺に協力してくれるなら勝てる。良いか、お前ら。ウチのクラスは______最強だ」
力強い言葉。断言。
彼の自信が私達一人一人に伝わってくる。
「いいわね。面白そうじゃない!」
「そうじゃな。Aクラスの奴らを引き摺り落としてやるかの」
「…………(グッ)」
「が、頑張りますっ」
「うん。絶対皆でAクラスに勝とう!」
彼らもそんな坂本くんの策略に乗ったようだ。
「…ふふ、楽しみ!」
初めて彼女を見たとき。
それは自己紹介ではなくて。
彼女は覚えていないかもしれないが、僕は彼女のことを片時も忘れたことはなかった。
________『明久くん!』
あの花が咲いたような笑顔も、まだ幼かった僕に恋心を教えてくれたのは、間違いなく、あの笑顔で。
「…ふふ、楽しみ!」
そう言って綻ぶような笑みを浮かべた玲奈ちゃんは、お人好しで優しいところも、その笑顔も、やっぱりあの頃と変わってはいなかった。