クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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氷ノ試練

二つ目の試練を突破し、遂に『ヨミガエリ』も折り返し地点だ。

順調。怖いくらい順調。次々と壁が現れても協力して突破できている。

お陰で彼女達の間の絆が強まり、互いに打ち解けてきた。

 

ただ、この順調過ぎる現状が、なにか嫌な予感を暗示しているような気がする。

小さな予感でしかないけど、奥歯に異物が挟まった時のような拭えない感覚。

……なにがあっても。彼女達を守らなければ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぶっ!?」

 

階段を上がった俺達の前に広がる銀世界。

肌を突き刺すような寒さにの細胞一つ一つが縮むような気さえ覚える。

 

「一個前はあれだけ暑かったって言うのに、ここはこの極寒とはね。まあ、ここの試練をクリアさえすればあと一つ」

「ヨミガエリのゴールも間近ってわけか。よっし、ちゃっちゃっと片付けようぜ!」

 

この寒さもものともせずにやる気一杯のラン。

まったくもって羨ましい。

 

「う~っ!!さむーいっ!!ユコ、あっためて♡」

「うふふ。もう、サコったら……」

 

サコユコは互いに抱き合って体を暖め合う。

まったくもって羨ましい。

 

「あ、先生も一緒に暖まる?」

「え?いいのか?」

「おう!ユウもこっちこいよ!」

 

感激。嬉しさが体を電流の如く走り抜けると、気付いた時には脚に力を込めて二人の方に走り出した。

 

「ここの床、滑りやすいな。みんな気を付け「うわぁあん!」って言ってるそばから!」

 

ランが言葉を言い切る前に俺は足を滑らせ、腰から倒れる。

 

「ああぁ、腰打ったぁ……ぁぁ!」

「ちょっとユウ、大丈夫なの?っきゃあっ!」

 

心配して駆け寄ってきたキサラギも足を滑らせる。

 

「いったぁ~い……」

「キサラギ、大丈夫?気を付けないと……アザが残ったら大変だよ!」

 

ユコがキサラギの傷を確認する。

 

「この前はサウナやったのに、今度はスケート場なんやねぇ。なんや、遊園地みたいで楽しくなってきたわ」

「アリス……スケートしたことない……」

「それならアタシが教えてやろうか?」

「私もけっこうできるわよ!シンは?」

「いや、私運動はあんまり……」

「サコもできるぞ!」

「ユコ、滑れるけど、得意じゃないな」

「それなら、みんなで練習したらええんやない?」

 

なにやらスケート談義でワイワイと盛り上がっている少女達。

みんな、自然な笑顔を浮かべている。

 

最初の頃では考え付かない光景だな。

 

「ふふっ♪」

「ん、なに笑ってんだよオヤジ」

「いやなに、本当に仲良くなったなって思って」

「当然だろ?これだけ一緒にいりゃあな」

「みんなのこともいろいろ分かってきたことだし……ね」

「おう!みんなでいっぱいクリミナルをやっつけたりして、せんゆーってやつだ!」

「いいじゃないか、うん。さて、そろそろ行くか!」

 

俺達は新しいフロア、『氷ノ試練』を歩き始めた。

 

 

暫く進んでいるとあることに気が付く。

クリミナルが一向に現れる気配がしない。

一体なんなんだこの不気味さは。戦闘がないのはありがたいが、それじゃあ試練にならない。……ちょっと用心しとくか。

 

「……ん?人影」

「どうした、ラン?……おや?」

 

一番前を歩いたランが突然立ち止まる。

不思議に思っていたら前方誰かがいるのが見える。

 

「おばけ!……じゃないの……」

「あのこ、さいしょにみたこだ!」

「最初って言うと……あの沼ノ試練で三人か四人か言ってたあの時か!」

 

つまり、あの子もヨミガエリを行っている半罪人。

俺達はその子に近付いていくと、彼女は俺達に気がつき、あちらから声をかけてきた。

 

「みなさん……!良かった、また会えて……」

 

人の良さそうな笑顔で駆け寄ってくる少女。

 

ピンクと紫のグラデーションがかかった長髪をしていて、片目を前髪で隠している。頭には薔薇の髪飾りをつけている。

フリルが付いている囚人服は相変わらず囚人服っぽくな形をしているが特徴的な縞模様は囚人服としか言いようがない。

ただ、俺達のメンバーのと違って彼女のは赤白のカラーリングの服だった。

 

「ねぇあんた。こんなところで一人で何してるの?」

「わたし、名前はヒメカミ……姫上綾乃。みなさんとは違うチームでヨミガエリに参加してたんだけど、仲間とはぐれてしまって……」

「違うチーム?」

「ユコ達の他にもヨミガエリに参加してる子達がいたんだ……」

 

何人かがヒメカミの発言が本当か俺に視線で訴えてくるが、所詮俺はアルバイトでいきなり連れてこられた身で、ろくな話も聞かされていないからわからないとしか言えない。

 

「それにしても、よく一人で無事でいるわね。危ないわよ」

「そうよ。ヒメカミさん、一緒に安全な所へうちらと行こ?」

 

その言葉聞いて、ヒメカミは驚いた表情をみせると、すぐに優しい笑顔を作ると、

 

「……優しいのね。みんなは」

 

と言った。が、

 

「だけど……自分の身に危険が迫ったとき、優しいままでいられるのかな……」

 

突然、顔に影をおとして、低いトーンで話すヒメカミ。

まるで人が変わったようなリアルな暗さに、思わずビクリと体が震える。

 

辺りが一瞬静まる。

そんな中、ユコが恐縮しながらも声をかける。

 

「……あ……あの……」

「ッ!ご、ごめんなさい!変なこと言って。きっとあなた達なら大丈夫よね?とても信頼しあってるんだもん」

 

ユコに声を掛けられ我に帰ったヒメカミは勢いよく釈明するが、どうも微妙な空気が辺りを包む。

 

「わたしはもう少しここで仲間を待ってるから、あなた達は気にせず先を急いで」

「お、おう。だけど一人じゃ……」

「大丈夫。なんでか知らないけどこの辺りはクリミナルも少ないみたいだから」

「ならいいけど……気を付けなさいよ?」

「ふふ……ありがと」

 

その会話を最後にヒメカミとはここで別れた。

 

 

先に進んでいると途中、空から白いものが沢山降ってきた。

 

「……雪、降ってきたの……」

「きれいやけど、少し寒々しいねえ……」

「積もるとやっかいよ」

「う~ん、先に急ぎたいのは山々なんだがらこれじゃあ前がよく見えん」

「オヤジ、あそこにキャンプの入り口があるぞ!」

「ちょうどいい。一旦休もう」

 

俺達はキャンプへと向かう。少し雪がおさまるまで待とうと考えてだ。

 

オオオオン……オオオオン……

 

「ん?今、なにか言ったか?」

「なにも言ってないけど……」

「空耳じゃないかな?」

「……そうか、な」

 

俺達はキャンプに入り、一旦休憩する。

雪のせいか、悪寒が酷かった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

???

 

 

あるときのこと。歩いていたら一枚の紙を拾った。

パンフレットみたいだ。

表紙にはデフォルトされた猫と目の絵が特徴的なロゴマークと、でかでかと書かれた文字がある。

文字はこう書かれている。

 

『ユーリ教の手引き』

 

……あやしい宗教のパンフレットかよ。

「ユウ……!!はやく、それを捨てるの……!!」

アリス?どうしたんだ急に?

「それを持ってると、すごく悪いことが起きるの……!!はやく、捨てるの……!!」

マジか!?アリスがそれだけ言うならそうとうだな。

俺は急いでパンフレットを捨てて、アリスの手をつかんでその場を離れた。

 

その出来事は俺の記憶の中からすぐに忘れ去られた。

ただ、あの名前『ユーリ教』だけが妙に残る。

どこかで聞いたことがある気がするんだ。

 

 

 

 

 

 




できるだけシリアス目指すDAMUDO
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