雪を踏む音だけがはっきりと聞こえる。
今、俺が引率している生徒はサコとシンの二人だけになってしまっている。
先ほどまで、いざこざがあったせいでサコを中心に空気が重い。
俺を含め、誰も話そうとしない。ただ、視線をバラバラに向けて極力会話が発生しないように意識しているみたいだった。
暫く、そうやって歩き続けていると前方に三つほど人影を見つけた。
「あっ!あんた達!!」
「キサラギ、アリス!それに……ヒメカミも……!?」
「どーゆーことだよ!なんで3にんがここにいるんだ!?」
「そうよ!どうやって門を通ったわけ?代償は?」
さっきまで無口だった二人が急に饒舌になる。
それもそうだろう。俺達が今までの困難を切り抜けて来たのは、目の前にいる彼女らを救出するためだったのだから。
これはつまり、俺達の努力は無駄だったと言っても過言ではないかもしれない。
キサラギはシンとサコが話した勢いと同じように話し始める。
「ハァ?あんた達こそ、助ける来るって言ったのに、なんで先に行っちゃうのよ!?寒いし、クリミナルは出るし、すっごく危ないめにあったんだから!」
なるほど、キサラギ達も苦労していたようだ。
「そう言えば……お前達、どうやって門の扉を開けた?あと、ランはどこだ?」
「……ヒメカミが、鍵を見つけてくれたの……」
「そうよ!なのに、門を開けたらあんた達はいなしさ!」
キサラギはかなりご立腹のようで俺達を責めるように言う。
「はぁ!?なに言ってんのよ??私達はあの階層を全部探し回っていたのよ!?ようやく鍵を見つけて戻ってみたらあんた達は居なくなってるし……無駄骨だったじゃない!そのうえ勝手に仲間まで増やしちゃってさ!!」
キサラギに反発するようにシンが怒声を吐く。何故か、ヒメカミにも火の粉が飛んだ。
「ご……ごめんなさい……やっぱり、一人で待ってるの寂しくて……」
シンに矛先を向けられ怯えた声で弁明しようとする。
流石に可哀想なので、軽くシンをたしなめる。
「シン、少し落ち着け」
「ッッ……ふん……」
シンは俺を睨み付けると鼻をならし、そっぽ向いた。
ちょっと傷つくなぁ。
そんな俺達のやり取りを見て、キサラギがタメ息を吐く。
「はぁ……それより、ユコとトモエは?二人はどこ行ったのよ?」
「ふ、ふたりは……むこうのドアのでまってる……」
「もしかして、ランが居ないのって」
「うん、こっちも扉のせいでランとはぐれたのよね」
「……なんだか、寂しいの……」
みんな複雑な表情をして黙り込んでしまった。
なんとかしないと。
「はいはい!下向くのは終わりな。今の俺達にはやらなきゃならないことがあるはずだ。ここで立ち止まってる時間はないぞ」
「……それも、そうよね」
「わかったわ。先に進みましょう」
みんな前に進むきはなったようだ。だが、表情は決して晴れていると言えるものではなかった。
それでも今は、なにもしないのは間違っていると思う。だから、少しずつでも前に進んでここを抜ければ、また彼女達に笑顔が戻るはずだ。
キサラギとアリスの状態を確認して先に進む準備を済ませると、ヒメカミがサコに近付いていった。
なにか話したいようだが、どうも様子が変だ。まるで、医者が末期がんを宣告するよなあの……
「あの……サコさん……」
「ん?なんだ?」
「あの……ずいぶん弱くなっちゃったのね……」
「おう!ユコのかわりにな!だけど、すぐにまえよりつよくなるんだ!」
「あの……言いにくいんだけど……それ、もう元に戻らないよ……?」
「……え……?」
ヒメカミの言葉にサコの表情が固まる。
「わたしの仲間も、そうだったから…………あっ!!で、でも、サコさんは別かもしれないし……!あんまり気にしないでね!」
「元に……戻らない……」
ヒメカミの必死のフォローは気付くのが遅すぎた。
再び、重い空気に。
……とにかく先に進もう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
探索を再開してすぐのこと。
四角に近いスペースで大きな裂け目が対角線上に出てきている場所に出た。
俺とシン、そしてサコには見覚えのある場所。
此方の足場には俺達が今歩いて来た道と先に進む道が繋がっており、対岸の道の先には扉の場所……ユコとトモエがいる場所だ。
そんなことを思っているとちょうど二人の声が聞こえてきた。
「トモエが一緒に残ってくれて良かった!」
「ううん!うち、ユコさんの考えてることよう分かるし……」
「えへへ……ユコ、サコ以外の人と一緒にいることが少なかったの」
「そうなんや!ほな、仲良くやりましょ!」
「うん!」
楽しそうな会話。
それを聞いたサコ。
「……ユコ……やっぱり……サコのこと、じゃまなんだ……」
その呟きを俺は聞き逃していた。
なんでサコばっかいじめるんだよ!
百合ッ子で、シスコンで、生意気で、アホっぽいけど、それが魅力的で可愛いじゃないか!
なんでここまで、精神フルボッコにされなきゃならんのだ!
てなこと考えて書いてた。