*キィィィィ……*
クリミナルの断末魔が響き、戦闘は終了する。結果は見事な勝利だ。
「…………」
しかし、誰もその顔に達成感、喜びはなく、ばつが悪そうだったり、顔を伏せていたり、不機嫌そうだったり、居心地が悪そうだったり、ただただ暗く、暗く……。
「……先、進もうか」
そんな彼女達の心境を感じていると言うのに俺にはただ先導するしかできない。
もう最初の時のようにバカなことすら言えない空気になっているのだ。何かを言った瞬間、それが爆発のスイッチとなってしまってもおかしくない。
この空気を打破するなにかをしなければいけないはずなのに、できない。
そんな葛藤が俺をイラつかせ、心を磨り減らす。
これが俺への試練なのだとしたら、見事にやられている。
そう思った瞬間、乾いた笑いが口から溢れる。
「あの、みなさん……!」
先に進んでいると、一緒に着いてきていたヒメカミが声をあげる。
「わたし、そろそろ自分のチームを探しに行こうと思うの」
「そんなこと言っても……一人で大丈夫なわけ?」
「ええ、なんとかなると思うわ」
「だ、だけどそんな急に……」
「あ!もう行かなくちゃ!それじゃ、またね!」
そう言ってヒメカミは手を振りながら、一人で走っていってしまった。
「またひとり……いなくなったの……」
アリスがぼそりと言う。
それに言葉で反応するものはいない。
探索を再開した俺達の前にあの憎たらしいものが現れた。
「……また門扉」
その姿を確認した瞬間、体から力が抜けたような感覚に襲われたが、大きく深呼吸をして力を入れ直す。
扉門に書かれている文字を見付けて読み上げる。
『四人のうち一人をこの場に置き捨てよ。さすれば扉は開かれん』
また、置いていくのか。しかも、一人で。
ここがクリミナルが出現しにくい場所だとしても危険だ。
なら、一人でも無事でいそうな戦闘力を持った奴がいい。
そうすると、サコは絶対になしとして……
と、考えていると、キサラギ達がじゃんけんを始める雰囲気になっていた。
「あ、ちょっと待っ「もう、じゃんけんしなくていーよ」」
俺の言葉を遮って、サコがそんなことを言い始めた。
「サコ?あんた、なに言ってんの?」
「サコはよわくなって、ユコはもういない……だから、サコがここにのこるよ。みんな、さきにいっていーぞ」
「バカなこと言うな!」
俺は思わず声を荒げた。
「サコ、お前今の状態で一人クリミナルと遭遇したらどうするんだよ!下手したら死んじまうぞ!」
「だいじょーぶ。よわくなっても、あしははやいし。それに……はなれちゃっても、できるだけユコのちかくにいたいから!」
そう言ってサコは気丈に微笑む。
胸が痛い。苦しい。今すぐ心臓を握りつぶせたらどれほど楽か……。
「自棄になるなよ……!」
「ヤケなんかじゃないぞ!みんなことかんがえて……こーするのがいちばんなんだ!もう、サコはやくにたたないから……めーわくはかけたくないから……」
そう言って、笑顔を見せるサコを前に俺は何も言えなくなった。
地をならし、扉が開く。
ここを潜る前に俺は振り向いてサコの姿を確認する。
俺と目があったサコはなにを察したのか笑顔でこう言った。
「サコはもーいーんだ。ユコがいなきゃいきかえるいみもないし……。ほら、はやくいけよな!しまっちゃうぞー!」
「ッッッ…………!」
「サコ……」
「ごめん……なの……」
俺だけではなく、他の生徒らもサコの覚悟に胸を打たれていた。
「絶対、迎えに行くからな!間違っても死ぬんじゃねぇぞ!」
それだけ言って俺は門を潜る。
門の先には階段があった。
階段を昇るとさっきと変わらない銀世界が視界に広がる。その景色の向こう側に見知った人影が見えた。
「あ!!あのシルエットって、もしかして……」
確かめる為に、走って向かうとそこには予想通りの人物がいた。
茶髪、眼鏡、橙マフラー、高身長のしっかりとした体が特徴の少女。ランがそこにいた。
「お、オヤジ!!それに、みんなも……!!」
ランは俺達に気付き、こちらに走ってきた。
「ラン……!!無事でよかったの!!」
「無事も無事!みんな合流できたのかよ!よかったなぁ~!!……あれ?ユコとサコ、トモエは……?」
その言葉に俺達はみな、口をつむる。
「俺が説明するよ」
俺は代表してランにこれまでの経緯を説明した。
雪はいっそう強く吹雪く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
《???》
適当に探索をしていた時のことだ。
ふらふらとしていると、俺はあるものを見つけた。
金色の額縁に入れられた賞状だ。
本当に、変なものがよく置いてあるよなぁ。そんな風におもいながら賞状を眺める。
なんとなく子どもの頃を思い出した。
「先生、なにしてるの?」
すると、ユコが近付いてきた。
ユコは俺と賞状を見比べる。
「そんなもの拾ってどうするの?捨てちゃいなよ」
そうは言ってもな……。
「そう言えば、あっちに変なもの見つけたの!先生、来て!」
そう言ってユコは俺の手を強引に取り、引っ張っていく。
その時、少しバランスを崩してしまい、額縁入りの賞状を落としてしまった。
でもまあ、いっか。
そう考えを切り替えて、俺はユコに合わせて走った。