更に主人公の性格がIS学園にいるときと変わっております。且つ主人公の性能、桜新町の方々の性能が若干チート化します。ついでに、桜新町偏は後一話続きます。すみません。
ついでについでに、四捨五入して一万文字あります。ごめんなさい。
とまぁ、今回は作者の実力不足、文才の無さが招いた読み辛いものとなっております。どうにか読んで頂ければ幸いです。
あと章管理始めました。
真理side
比泉生活相談事務所を出てから十分。アオさんからの質問をのらりくらりと躱し、秋名さんの質問に俺自身の苦労話を交えながら答えつつ槍桜道場の前まで来ていた。ちなみにアオさんからの質問のほとんどがやれ可愛い娘はいるのか、やれ仲が良い娘は出来たのか、やれ好きな娘はいるのか、という物だったので出来るだけおちょくられないような回答をしていた。
それはさておき、道場には外からでも入れるが今日は師範の家の玄関から入ってから行くことにする。恭助さんと桃華さんに挨拶するためだ。なんでも2人は玄関先で出迎えてくれるらしいが、師範だけは道場にいるらしい。どこの魔王城だ。
さて、十年に渡り通い続けてる師範の家は大きな武家屋敷のようだ。当然、扉は引き戸。ノックが出来ない、いや、しようと思えば出来るけど壊れたら怖いし、大きめの声で来たことを知らせなければならない。
「毎度でーす!」
引き戸を軽く開け、その隙間から声をかける。
「真理も律儀だなぁ。普通に入りゃいいのに」
「親しき仲にも礼儀ありですよ、秋名さん!真理ちゃんは偉いねー」
「子供扱いしないでくださいよ」
背伸びしてまで頭を撫でようとしてくるアオさんをどうにか遇いつつ、家主、ではないけどこの家に住む人が出て来るのを待つ。
数秒もしない内に二つの足音が聞こえて来た。そして、薄く開かれた扉が全開する。
「真理くん、いらっしゃーい!」
「よく来たな」
「毎度です、桃華さん、恭助さん」
「毎度ー!とーかちゃん、恭助さん」
俺の後からアオさんも続く。
この2人の兄妹は幼い頃から師範の家に住んでいる。以前聞いたことがあるが、岡山出身で町長として修行中だった師範の言葉によって桜新町で暮らすようになったらしい。現在恭助さんは町長の秘書をやってるし、桃華さんも大学時代に弓道で全国優勝したらしい。凄い兄妹だな。
「ありゃ?桃華ちゃん、紫はいないの?」
「はい。あ、でも、夜には元老院から直接、椎名さんと来るそうです」
「そっか」
桃華さんと秋名さんが話している脇で、俺と恭助さん、アオさんも別の話をしていた。
「真理、鍛錬は欠かしていないな?」
「勿論です。師範の教えを一日たりとも忘れたことはありません」
「あ!それ昔ヒメちゃんも言ってたよね」
「そうなんですか?」
「うん!」
話が脱線した。
「ごほん。道場でお嬢様が待っている。いけるか?」
一人で道場まで行けるか、ではない。師範と試合をする準備は出来ているか、という意味だ。
勿論、答えは決まっている。
「いけます」
「ふっ。おい、お前等。いくぞ」
「ほーい」
全員が靴を脱いで上がっていく。俺はついでに靴下も脱ぐ。裸足のが動き易いしね。あ、臭くないよ。
それはともかく、武家屋敷の縁側を歩き、家と道場を隔てる扉の前に着く。この先には師範がいる。
扉に手をかけた所で、悪寒が走る。
「皆さん、五歩以上、俺から離れてください」
それだけ言うと察してくれたのか言う通りにしてくれる。恭助さんだけは口元に笑みを浮かべていたが。多分師範が何をやっているか知っているからだろう。
深呼吸して、集中する。
そして、俺は扉を開けた。
まず視界に入ったのは、俺に向かって来る一本の槍だった。
一歩前に出て、掬い上げるように槍をキャッチしてその場から離脱する。
次に目に入ったのは、黒をオレンジで挟む形で編まれたマフラーだ。
俺がさっきまでいた場所を強襲した師範が、いつも巻いているものだ。
槍桜ヒメ。
俺の師範にして、桜新町の町長。槍桜流槍術の使い手にして、龍の化身。この人とまともに渡り合えるのは、人間に絞ればいるかさんくらいだろう。
幼い頃から俺を鍛えてくれた俺の恩人。親父とはどういう関係だったのか知らないが、それでも親しい仲だったのだろう。門下生を作らない方針だったこの道場で、俺という異分子を、まるで我が子のように育ててくれた。まあ、鍛錬の時は超厳しかったけどな。
この人がいてくれたおかげで、俺はあのクソみたいな家で折れずにいられたんだと思う。
師範の一撃を避け、槍を握り直し、構える。
勝つ。今日こそ。
師範の一挙手一投足を見逃さないように、『眼』を凝らす。
行くぞ。
side out
秋名、アオ、恭助、桃華の4人は道場の入り口から道場内を覗いていた。
「にしても、よくヒメが突っ込んで来るって分かったな、あいつ」
「勘がいいからな。お嬢様も『避けられないようじゃあまだまだね』と言っていた」
「お兄ちゃんは知ってたんだよね?」
「ああ」
そう。恭助はヒメから事前に、真理が扉を開けたら突撃するという旨を伝えられていた。それを真理に言うなとも。
久しぶりに訪れた弟子くらい普通に持て成してやればいいのにと思わなくもないが、真理の師はヒメだ。自分が口を出すことも無い、と言われた通りにしていたのだ。案の定、真理はそれを察し、ヒメの一撃を躱してみせた。厳密に言えば、槍の投擲とヒメの突進による二撃だが。
「毎度のことながら、速いですよねぇ、真理ちゃんとヒメちゃん」
アオが思ったことをそのまま口にする。
視線の先では真理がヒメの突きの連撃を摺り足のステップで躱している。そして、ヒメの攻撃の間を縫うように槍を薙ぎ払う。宙返りで薙ぎ払いを躱すヒメだが、真理がその隙を見逃す筈も無く、槍を突き出すが去なされてしまう。
着地と同時に、上半身が床スレスレの体勢で突進し、足下に薙ぎ払いを掛けるヒメ。真理は跳んで避けるが、次の瞬間には吹き飛ばされていた。ヒメが薙ぎ払いの勢いのまま独楽のように体を回転させ、遠心力を乗せた二撃目を放っていたのだ。
幸いにも槍の柄で防ぐことが出来たが、防いだ部分は折れているだろう。
「あ、勝負あったかな」
「いーや、よく見てみな桃華ちゃん。真理が飛ばされた方の壁」
「え?…あ」
真理side
痛ってぇ…。
跳んで避けたは良いけど、あの速さのぶん回し食らったら流石に吹っ飛ぶわ。しかも槍も折れてるし。
でも、まぁ。ラッキーと言わざるを得ないな。
壁に着地し折れた槍を師範に投げつける。この程度じゃ足掻きにすらなっていないけどな。
そして俺は、壁にかかっている竹刀を手に取った。
side out
飛び出した真理は一足でヒメの懐へと入り込み、抜刀術の要領で振り抜いた。
真理がヒメから習ったのは槍術と合気道。合気道に関しては桃華も一緒になって教えていたが。
そんな真理が、まるで今までも使っていたかのように竹刀を振るえるのは何故か。それは偏に真理の才能と、それを開花させた真理の家族が原因だ。
真理の才能。それは『眼が良いこと』。
視力には十種類があり、それぞれ、静止視力、動体視力、眼球運動、調節と輻輳機能、瞬間視力、深視力・立体視、視覚反応時間、目と体の連動力、中心周辺視野、視覚化能力である。
例えば瞬間視力とは見たものを瞬間的に記憶する力であり、動体視力と合わせて使えば、動いているものを瞬間的に記憶することが出来る。
視力とはこの十種類を総じて言うのだが、真理は全ての力が高い。
するとどうなるか。相手の動き、空間、自身の行動範囲、視野の広さ等の把握。そして、『相手の動きのコピー』。
つまり、真理は他人の動きを真似することができる。
無論、アニメやマンガのように、無限に覚えて真似することが出来る訳ではない。真理が出来るのはたった一人。ヒメが高校生の時から幾度となく手合わせし、真理がヒメの元で修行を始めてからずっと見て来た人のモノだからこそ、今では見なくとも真似が出来るようになったのだ。
その人物とは。
「…あ、真理君来てたんですね」
九条院入鹿。古道居合術九条院流第13代家元。ヒメの良き手合わせ相手であり、真理にとっての目指すべき目標。
人間にして妖怪と渡り合えるほどの強さを持った人間はそう多くない。だからこそ教えを受けるのはヒメ、目標は入鹿となったのだ。
「おう、いるか。鈴とざくろは?」
「出前を終えてから来るそうです」
それだけ言って2人の試合に眼を向ける。
鋭い剣閃をいくつも放つが、所詮は物真似。偽物でしかない。本来の得物である槍も道場の壁に掛けられてはいるが、ヒメの後ろ側だ。手にする為には一度ヒメと居場所を入れ替え、その上で間合を取らなければならない。真理もヒメもそのことを分かっているのか、真理は鍔迫り合いに持って行こうとするもヒメがそれを阻止している。
「ちょっと…きびしそうですね」
「またヒメちゃんの勝ち?」
アオが少しだけ残念そうに首を傾げる。今までの試合でもこんな場面が何度もあった。それを真理があの手この手を尽くして攻略しようとするが、圧倒的な実力差故に攻略できたことは一度も無かった。
だが。
「………いえ、今回はひと味違うみたいです」
以前までは槍を取りに行くことに終始していたが、今回は違うようだ。
竹刀を持ったまま一気に後退した真理。ヒメも以前までと違うことで訝しんでいるようで攻撃を仕掛けない。真理は熊にでも遇ったかのように、じりじりとゆっくり後退し壁に掛けてある竹刀をもう一本手に取った。
そして、ヒメの真横の壁に向かって走り出す。ヒメも迎撃しようと真理に突っ込み、鋭い突きを放つ。
「ああ、その手がありましたか」
真理は跳躍し壁に足を着き、左手の竹刀をヒメに投げつけた。首を傾けて竹刀を躱すが、真理はその瞬間を狙い、先程までヒメがいた場所。つまり槍が掛けてある壁に向かって駆ける。
ヒメに背を向ける形になるが槍を取る為には仕方が無いと割り切る。が、それをヒメが許す筈も無く、すぐに追撃に出た。
「私と稽古するときもそうですが、ヒメさんの初撃は大抵突きで始まります。私は槍術には精通していないので分かりませんが、ああやって追いかけたり、正面から突っ込んでくるときはほぼ突きです。正面からまっすぐ突かれると距離感が掴みにくくなるからだとは思うんですけど…」
「でもそれがどうしたの?むしろあの状態じゃあ真理君負けちゃいそうなんだけど」
「まぁ、見てればわかりますよ」
真理side
後ろから師範が迫っているのが分かる。足音を聞くに、あと三秒で師範の突きが届いてしまう範囲だ。
以前までなら焦って振り向いてしまってただろう。振り返って、出来もしない迎撃をしようとして、逆に倒される。だが今回は違う。
……よし。
3
2
1
今!
目の前に迫った壁に向かって跳躍し、槍を取らずに壁を蹴って、宙返り。
一気に回転し、師範が突いて来た槍を左足で踏みつぶす。
バキィッという槍が折れる音を聞く余裕も無く、右足を後ろに踏み出し、体ごと竹刀を持った右手を横一線に振る。
ピタッと止めた数ミリ先には、師範の頬が。
side out
「…勝負、ありましたね」
道場内ではヒメと真理、2人の師弟が動きを止めている。
「ヒメさんと真理君の間には実力差があります。それ故に、今まで真理君はヒメさんと正面から倒すには竹刀を囮に槍でトドメ、といった形で戦っていました」
「…言われてみればそうだったかも」
「ですが、今回は槍を囮に剣で勝負を決めました。ヒメさんの癖、今までの試合の流れ、そして自身に出来る最高のパフォーマンス。それら全てを理解しシュミレーションしてこなければあの動きは出来ないでしょう」
入鹿の説明に一同息をのむ。そして思う。やっぱり真理はヒメに似ている、と。
性格は全く逆で、似るどころか喧嘩しまくりそうなのに、今まであの2人が喧嘩したことと言えばご飯のことだけだ。
2人の師弟は表面上の性格は異なるが、本質的なところでは同じ信念を持っているのかもしれない。
すなわち、『誰かの為に強くありたい』
ヒメは言わずもがな、町民と亡き祖母の為だろう。幼い頃にこの世に暮らす者として、町長として育ててくれた祖母への感謝と、町長としての自らを支えてくれる町民の為に、ヒメは強くあろうとする。
真理は父のため。そして、本人は隠しているつもりなのだろうが、桜新町に住む全ての人の為。女尊男卑を傘にかけ、事有る毎に暴力を振るう母親と妹、その暴力から幼い頃の性格故逃げることが出来なかった真理を助けてくれた父親、その父が避難場所として選び、事情も聞かずに受け入れてくれた桜新町に対する感謝。そして女尊男卑の社会を受け入れても、屈しないように強くあろうとする。
ヒメの強さは妖怪なんかの問題があるからこの町限定になってしまうが、真理の強さは人間としての強さだ。
秋名達は、その強さを自分たち以外の人たちにも使って欲しいと、願わずにはいられなかった。
「…凄いですね、真理ちゃん」
「ああ。俺たちがあいつと同じ年の頃は、あんなに強くなかったもんな」
感慨深そうに呟くアオと秋名を横目に、入鹿は道場内に入って行った。
未だに突きつけている竹刀に手を添えると、ヒメと真理、2人にしっかりと聞こえるように宣言した。
「この勝負、真理君の勝ちです」
ゆっくりと竹刀を降ろした真理は、開いた左手で小さくガッツポーズをとった。
「ふぅ。強くなったわね、真理」
「ありがとうございます、師範」
真理の後ろで立ち上がったヒメの言葉に、真理は感謝を述べる。ちなみにこれが真理とヒメが三ヶ月ぶりの再開を果たしてから初めての会話である。
「でも、まだまだです。今のは運に頼っていた所がありましたし、実力で師範を上回ったとは言えないですから」
自分が強くなる為にはどこまでもストイックな真理に、ヒメは軽いチョップを入れる。
「運も実力のうちよ。負けは負け、勝ちは勝ち。今はアタシに勝ったことを喜びなさい」
「………はい!」
「いや〜、初めてじゃない?真理君が勝つの!」
「そうですね。え〜と、何戦でしたっけ?」
「832戦1勝831敗だ。四年間負け続けだったからな」
「壮絶だね…」
真理が11歳になってからはひたすらヒメと試合をし続け、そのペースは一週間に四回。並の人だったのなら心が折れていただろう。その点から見れば、真理は一般人ではない。それこそ妖怪と言っても過言ではないだろう。
真理を囲んで今にも胴上げを始めそうな雰囲気の道場に、新たな人物が来たのは、試合が終わって五分後のことだった。
「おっ、試合終わっちゃった〜?」
「あ、八重さん!」
黒い修道服を着た、真理どころかヒメ達が幼い頃から容姿の変化が見られない、桜新町の土地神、士夏彦八重。
「毎度です」
「まいど〜。久しぶりだねぇ真理君。試合、どうだった?」
「真理ちゃん初めて勝ったんですよ!」
「へぇ〜!見たかったなぁ。2人の試合は未来予測してないからねぇ」
神である八重は、ヒメや真理、全ての人間の今までを知っている。そのことから、未来をも予測できるのだ。真理とヒメの勝負を娯楽としていた八重は、未来予測をせず、毎回のように観戦に来ていた。しかし今日は兄である士夏彦雄飛にセクハラをされていたり、りらの手品によって服を剥かれていたりと、様々な邪魔が入り遅れてしまったのだ。
「ま、試合も一段落したし、昼飯でも食うか」
「そうですね〜。出前取ります?」
「鈴もざくろもこっちに向かってるから無理なんじゃないか?」
「そういやそうか。……ん?」
「どうした?」
「いや、とりあえず先に居間に行っといて」
秋名の言葉には裏があった。その真意に気づけたのは小さい頃からの親友である恭助だけだった。
「わかった。よろしく頼む」
「おう、まかせとけ」
秋名は両手をひらひらと振ってアオに桃華、いるか、八重に真理、最後に恭助が出て行くのを見送った後、道場に残ったヒメに声をかける。
「お疲れさま。どうだったよ、真理は」
「強くなってたわ。アタシが鍛えたんだから、当然でしょ」
「そっか」
「次は負けないけどね!今日使った手は使えないし」
「まぁ、そうだろうな。あれ、渡すのか?」
「うん。決めてたから」
秋名は道場の壁に背を預けて、ヒメと話す。ヒメも折れた槍を拾いながら話す。その声は若干振るえている。
「それにしても、真理も変わったな」
「そうね。来たばっかりの頃はもっと暗かったし」
「とりあえず行くか。気持ちも落ち着いたろ」
「うん、ありがと、秋名」
「おう。ちなみに今日の飯は米だからな」
「どぇー!?麺は!?」
真理side
道場から移動して、屋敷の居間にて昼飯会議が始まった。ちなみに俺はお米が大好きだ。それはもうアオさんと同じくらい。そして、俺と師範の与り知らぬところで、一つの賭けが成立していたらしい。すなわち、俺が勝てばその日のご飯は米、師範が勝てば麺。つまり。
「いえーい!やったね真理ちゃん!」
「ちょっと見てくださいよアオさん!この米めっちゃ良いやつじゃないですか!?」
「うわホントだ!」
過去稀に見るくらいにテンションが上がっていた。
いやだってこの米超高いやつだよ?なんでこんなのが師範の家に置いてあんの?うらやましい。
IS学園のご飯も美味いけど、アオさんの炊くご飯が一番おいしいんだよなぁ。家で飯食えない時とか、いやほぼ毎日朝と晩飯無かったけど、稽古がある日の帰りとかはアオさんがおにぎり作ってくれたり、ざくろさんが漬け物くれたり、鈴さんがラーメン出してくれたり、秋名さんが牛丼作ってくれたりしたけど、やっぱりアオさんのおにぎりが一番美味かった気がする。それ以外も普通に美味かったんだけど、やっぱりおにぎりが一番美味かったわ。
「うぅ〜………麺〜…」
あ、師範が来た。しかも秋名さんにしがみついて。
師範は麺食いだ。それはもう俺やアオさんと喧嘩するくらい。過去師範と喧嘩したことが二度あったが、そのどちらも原因は米と麺のどちらが良いかだった。最終的には秋名さんが牛丼の米が麺になったやつ、鈴さんが宝々
蘭特製ラーメンの麺が米になったやつを作ってくれて決着が着いた。
「おーい。昼飯何食うか決まったかー?」
「いや、真理とアオのテンションが上がり過ぎて何も決まってない。多分このままだとおにぎりになる」
「麺〜…」
「それは諦めてください、お嬢様」
「にしたって、昼飯おにぎりはねぇわな…。おい真理とアオ!昼飯どーすんだ?」
え、おにぎり駄目なの?
今までのテンションが嘘のように下がり、ふと隣を見るとアオさんもズーンと沈んだ空気を醸し出していた。
「あはは…。夜は宴会になるんだし、昼は軽くでいいんじゃない?」
「ですよねぇ。じゃ、俺が適当に作りますか。ヒメ、じゃないな。桃華ちゃん、冷蔵庫の中身勝手に使っちゃっていいかな?」
「はい!ていうか私も手伝います!」
「おう、じゃあ頼むわ」
秋名さんの手料理が食えるということもあって、俺とアオさん、師範ですらテンションが上がる。それほどまでに秋名さんの手料理は美味い。学園の食堂で働いてくれたら確実に毎日行くまである。
そうして秋名さんと桃華さんが台所で料理をしている間、俺は全員から質問攻めにされていた。あれ、アオさんはここに来るまで質問して来てましたよね。まだあったんですか。
「さっきの試合、あれ運の要素が強いって言ってたけど、どこら辺が運だったの?」
「そうですね、師範が追いかけて来るタイミングとかですね。あれがもうちょい遅かったら多分負けてました。あのタイミングで師範の突きを躱せたから槍を壊せたんですし、師範と立ち位置が逆だったらそもそも槍を折られた時点で負けてましたし」
「…てことはアタシが突きを撃つって分かってたの?」
「ええ。師範の癖くらい分かりますよ。あれが薙ぎ払いとかだったらタイミング掴めずに槍を壊すとか不可能でしたよ」
「うっそぉ…」
「ちなみに私も知っておりましたよ」
「いるかも!?なんで組み手の時に言ってくれないのよぉ〜」
「聞かれませんでしたから」
「うぇ〜…アタシの麺がぁ〜…」
「じゃあほぼ真理君の作戦通りだったわけだ。ちなみにいつから考えてたの?」
「一年前くらいからですかね…」
「「「一年前!?」」」
「そのくらいしないと師範に勝てる訳ないじゃないですか…」
「いや、意味がわからないみたいな顔されても」
だって意味分かんないもん。だから次からはまた違う作戦考えないといけないし、つーか次の試合はいつになるか分かんないし、多分夏休みくらいになるかもしれんしな。それどころか、試合できるかも分かんないし。あんな物騒な学園に通っている以上、いつ死ぬかもわからん。そういう意味も含めて、今日、師範に勝てて良かった。
「…どしたの?」
「どーせまた何か変なことでも考えてたんでしょ。アンタそーいうとこ、ことはに似てるもんね」
「あー確かに。真理ちゃんはヒメちゃんとことはちゃんといるかちゃんを足して三で割った感じするし」
「なんすかそれ」
「そういえば、そのヘアピンどーしたの?えらく可愛らしいじゃない」
八重さんが額を指差して聞いて来る。
「ルームメイトの先輩に貰ったんです。試合するときは髪が邪魔になりますから」
「あー、確かにね。でも邪魔なら切っちゃえばいいのに」
「なんかことはさんが切るなって…」
確か、受験前の正月だったかな。散髪が面倒くさくて肩まで伸びてたんだ。で、師範が邪魔っていうから切った後、ことはさんに会いに図書館行ったらめちゃくちゃ怒られたんだよなぁ。なんでだろ。
「女の子みたいだからじゃない?」
「女子みたいですから」
「ことはちゃんは百合っこだからねぇ」
「恭助さん、この人たち何言ってるんですか?」
「いや、悪いがあの時のお前は女子にしか見えなかったぞ」
そんなバカな。フツメンの俺が女子に見える顔をしている訳がない。
「普通って中々凄いことよ?大多数の人間から同じ感想を持たれるってことはあまり無いわ。それが容姿なら尚更ね。ついでに言うと、普通ってことは顔のパーツの大きさやバランスが整ってるってことよ。だから真理君の顔はイケメンって言っても差し支えないわ」
「じゃあなんでモテないんすかね?」
「モテたいの?」
「いやまったく」
織斑とかを見てるとモテたいという感情が完全に失せる。元からモテたいなんて思ったことは無いけど。生きること、強くなることに精一杯だったからなぁ。
「まぁ敢えて言わせてもらうなら、眼ね」
「うん、眼よ」
「眼だね」
「眼ですね」
「眼?」
「真理君、私たち以外の人には睨んでるように見えてるわよ、きっと」
ああ、そうかも知れない。俺が心を許してるのはここの町民と親父くらいだ。
それ以外の人間は、信頼できない。
お互いにメリットが発生する契約関係ならば信用はできる。例えば更識先輩は俺を守ることで国から見返りを受けている。俺は守られ、更識という組織のメンツを保たれる。互いにメリットが発生している訳だ。しかしこれにはデメリットも存在する。即ち、俺のプライベートが極限まで減り、更識先輩も最悪命を掛けることになる。
そういった関係ならば信用は出来る。
そしてその信頼が、俺の場合は眼に現れると言う訳だ。どんまい、俺。
「なら、しょうがないですね」
「改善する気ゼロだ!」
しょうがないじゃん。
「おーい、皿持ってってくれー」
「はーい」
台所から聞こえる秋名さんの声に反応して八重さん以外の全員が立ち上がる。まぁ神様だからね。別にいいけど。
「真理君」
「はい?」
寝転んでいる八重さんが一番後ろから台所に向かう俺を引き止める。なんだ?にやにやしている時の八重さんは大抵変なことを言って来るからな。
「月並な言葉だけれど、いつか貴方は絶望し、大きな選択を迫られる。それはもう、世界の命運を掛けたような、ね」
「はぁ。世界、ですか」
「うん。その時、貴方がどうするかは誰にも分からない。だから、後悔しない選択をできるようになさい」
世界、か。
そんな選択が俺の元に訪れるなんて思えないけど、八重さんが、神様が言うのなら、それは来るのだろう。
「後悔するかは分かりません。後から悔いるから後悔なんですから。でも、師範達もその選択を乗り越えたんでしょう?なら、弟子の俺が乗り越えられなきゃ、師範達にも、親父にも、顔向けできません」
「……ふふ。良い答えね。さぁ、私にご飯を持ってきんさい!」
さっきまでは神様っぽかったのに、急に態度が変わった。
まぁそっちのが話し易いしな。
「分かりましたよ。ただ何を持って来ても後悔しないでくださいね」
「えぇ〜!ちゃんとおいしいもの持って来てよー!」
「はいはい」
どんな絶望が来ようとも、どれだけ残酷な選択を迫られようとも、俺が師範の、一度世界を救った人たちの弟子である以上、乗り越えてみせる。
その為には強くなる。
まずは、腹ごしらえからだな。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
一応次回からの流れを伝えておきたいと思います。
次回で主人公と桜新町の絡みを終え、出来ればティナ楯無組の触りまで持って行こうと思います。それが出来なければ、次々回でティナ楯無組、長ければその次で一夏巧組をやって、桜新町と週末編は終わりです。
その次からは金髪銀髪コンビが登場します。そのときにタグも増やす予定です。
クソ長い本編に続いて読んで頂きありがとうございました。次回からもよろしくお願いします。