オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ナザリック婦人会
ナザリック第九階層、温かな光に満ちた談話室。
今日は女性守護者とプレアデスの一部、そして新たに「ジョンの妻」となったルプスレギナを交えてのお茶会が開かれていた。
銀食器に盛られた菓子、香り高い茶葉の匂い。和やかな雰囲気のはずだったのだが――
「いやー、昨日も朝までね?」
にへらっと笑いながら爆弾を投下するルプスレギナ。
「!?!?!?!?」
椅子を軋ませ、アルベドが立ち上がった。
「詳しく聞かせるでありんす!!」
シャルティアが身を乗り出し、赤い瞳を輝かせる。
「……また地雷踏んだなコイツ」
アウラは呆れ顔で額を押さえた。
ユリとナーベは無言のまま目をそらし、紅茶に視線を落とす。
「わ、私だって……! モモンガ様に夜伽を許される日を心待ちにしているのです!」
ルプスレギナに対抗心を燃やし、アルベドは胸を張って宣言する。
「でも実際は手も握ってもらえてないんでありんしょ? がっかりサキュバスでありんす!」
シャルティアの容赦ない突っ込みが飛ぶ。
「なっ……そ、それは戦略的焦らし! モモンガ様の御心を焦らさないための布石なのです!」
必死に言い返すアルベド。
「……いや、それ絶対ただの奥手じゃん」
アウラの冷静な一言が鋭く突き刺さった。
ルプスレギナは頬杖をついてにやにやしながら、さらに追撃。
「うちの旦那様はねー、もう毎晩たーいへん? 朝起きると床の軋みで隣の部屋のメイドさんにバレちゃってるの」
「……業務に支障が出るので節度を持ちなさい」
真っ赤になったユリが、たしなめるように低い声を出す。
「えぇー、だってぇ。旦那様が求めてくるんですものぉ」
悪びれもなく返すルプスレギナ。
「……羨ましいでありんす」
シャルティアは羨望の眼差しを送った。
「モモンガ様だって、本当はお求めになっているのです! ただ、御心が深淵のように奥深すぎて、私にさえ読み切れぬだけ!」
必死に言い募るアルベド。
アウラは紅茶をすすりながら小声でつぶやく。
「……要するに全然進展してないってことか」
「じゃあ、うちの旦那様に相談してみたら? 経験豊富だから色々アドバイスしてくれるかも」
ルプスレギナが悪ノリで爆弾を投下。
「きぃぃぃぃ!!」
アルベドがわなわなと震えながらテーブルに突っ伏す。
「どうすればモモンガ様をその気にさせられるか……」
「やっぱり服装? それとも隙を作るとかでありんす?」
アルベドとシャルティアは真剣に議論を始める。
「……また始まった」
アウラとユリは同時にため息をついた。ナーベは無表情のまま、しかし耳が赤い。
そんな中、ルプスレギナだけはご機嫌に菓子をつまみ、にへらっと笑う。
「やっぱりお嫁さんの席っていいわねぇ」
「……やっぱり、次の手は必要でありんす」
シャルティアが身を乗り出し、テーブルに身を乗り出した。
「次の手?」アルベドが食いつく。
「そうでありんす! いくらなんでも今のままじゃ埒が明かないでありんしょう? だったら――再び仕掛けるでありんす!」
「……仕掛ける?」アウラが怪訝そうに眉をひそめる。
「そう! 例えば――全員でバニーガールになってお迎えするとか!!」
「ばっ……!」
アルベドの顔が真っ赤に染まる。
「よい案でありんす! モモンガ様は間違いなく動揺なさるでありんす! その隙に――」
「……いや、隙突くってアンタ」アウラが呆れ声を漏らす。
ユリは紅茶を置き、額に手を当てた。
「……業務命令として、そういった“接待”を繰り返すのはどうかと」
「だってぇ、前にやった時もモモンガさん、すっごい嬉しそうだったじゃん?」
ルプスレギナがニヤニヤしながら割り込んできた。
「人化してたから、耳まで赤くなってたもんねぇ~」
「ぐっ……!」
アルベドの拳がわなわな震える。
「確かに……! あの時のモモンガ様の視線は、明らかに私を見ていた……!!」
「いやいや、絶対に全員見てたよ? ね、ユリ」
「……否定はしません」ユリが無表情に言うと、アルベドは椅子からずり落ちそうになる。
「と、とにかく! 今度はもっと徹底的にやるのです! 服装も、演出も、全てを! モモンガ様を虜にするには、全力で挑まねば!」
「ほぉ~、アルベドがやっと腹括ったってこと?」
アウラが面白そうに目を細める。
「ふふっ、そうでありんす! で、どうする? バニーガールに加えて――」
シャルティアが顎に指を当て、にやりと笑う。
「今度は“ナース”とか“メイド服アレンジ”とかで責めるでありんすかねぇ?」
「な、な、な、ナース!?」
アルベドが真っ赤になって椅子からずり落ちた。
「いいじゃないっすかー! 旦那様も絶対喜びますよ! えへへ、じゃあ今度、私も混ざっちゃおうかなぁ」
ルプスレギナが楽しげにお菓子を口へ放り込みながら、頬を緩ませる。
「お前は余計だ!」
アルベドが叫び、ルプスレギナが「ひどぉい」と笑い転げる。
その横でアウラとユリは、同時に大きくため息をついた。
「……どうせまたモモンガ様が困惑するだけだと思うんだけど」
「……ですが、止めると余計に拗れます」
ナーベは黙っていたが――紅茶のカップを持つ手が小さく震えていた。
(……私も、参加すべきでしょうか……?)
心の奥で密かに悩むのだった。
/*/ナザリック第九階層、玉座にて。
報告に来たアルベドの背後に、妙に挙動不審な面々が揃っている。
シャルティアは頬を引きつらせ、アウラはやけに目を逸らし、ユリは表情を固め、ルプスレギナはにやにやしていた。
「……で、要件はなんだ?」
玉座の上から、モモンガが静かに問いかける。
「はっ……あの、その……」
珍しく言葉に詰まるアルベド。普段の冷静沈着さはどこへやら、手をもじもじさせている。
(な、なんだ……? この雰囲気……。いや、待てよ。部下たちが、自主的に行動しようとしている? これは――支配者として望外の喜びではないか!)
感極まるように胸を押さえるモモンガ。
しかし、その期待はすぐに打ち砕かれる。
「も、モモンガ様……その……」
アルベドが深呼吸し、真剣な眼差しで告げる。
「次のお出迎えに――バニーガールやナース姿で……皆で揃えて接待を、と」
「……………………」
モモンガの脳内が一瞬真っ白になる。
(……これが、これが彼女たちが自主的に考えた計画……!? いや、確かに“考えて”いる! 行動力もある! 守護者たちが一致団結して“俺を喜ばせようと”している……! その気持ちは嬉しい! 嬉しいのだが……)
「……はぁぁぁぁ」
思わず深いため息が漏れる。
「も、モモンガ様!? お気に召しませんか!?」
「わ、私はナース役を……っ」
「でありんすなら、わっちがバニーを……っ」
「旦那様は絶対喜ぶと思うんですけどねぇ」
わいわいと盛り上がる女性陣を見下ろしながら、モモンガは心の中で叫ぶ。
(もっとこう……! 国策とか! 統治のための施策とか! そういう“自主的な働きかけ”を俺は期待していたのだがぁぁぁ!!)
「う、うーん……うーん……」
玉座の上で、モモンガは骨の顎に手を当てて唸っていた。
部下たちの熱意は痛いほど伝わる。
――せっかく自主的に、考え、動こうとしてくれている。
それを「くだらん」と切り捨てては、せっかく芽生えた自主性を殺してしまう。
それだけは、支配者として絶対に避けねばならなかった。
(だが……っ! 主題が……っ! なぜそれが“バニーガール”なのだ!!)
内心で叫びつつも、逃げ道はない。
皆が固唾を呑んで見守る中、支配者はゆっくりと頷いた。
「う、ううん……。お前たちの気持ち……嬉しく思うぞ」
カラカラと乾いた声が広間に響く。
それは王の威厳を装ったつもりの声音だったが――中身は限界を迎えつつあるゲーマーそのものである。
「そ、そうだな。以前の……し、白バニーのアルベドは、見ていて……とても魅力的だった。また来てくれると……うれしいぞ」
「――――っっ!!!」
玉座下でアルベドが真っ赤になり、手を組んで身を震わせた。
シャルティアも「な、なんと! モモンガ様が自らご所望を!」と赤い瞳を輝かせる。
/*/ナザリック衣装作戦会議
「さあ! モモンガ様のお言葉を無駄にしてはならないわ!」
アルベドが会議卓を叩き、真剣そのものの眼差しで宣言する。
「白バニーに続く次の一手! モモンガ様をよりご満足させる衣装プランを出し合うのです!」
「おう! 任せとけ!」
ガガッと拳を打ち合わせるシャルティア。
「……また始まったわね」
アウラが呆れ顔をしながらも席についた。
ルプスレギナはにへらと笑いながら手を挙げる。
「じゃあさ、逆バニーってどう?」
「な、な、な……っ!」
アルベドがわなわなと震え、顔を真っ赤にする。
「そ、そのような破廉恥な……だが、モモンガ様の御心を惹くかもしれない……っ!」
「賛成でありんす! 逆バニーならギャップ萌え間違いなしでありんす!」
シャルティアも食いつく。
「……やめといた方がいいと思うけど」
アウラは両手を広げて肩をすくめた。
「ユリ姉、どう思う?」
「……業務効率が低下するため反対です」
ユリはきっぱりと断言。
ナーベは無言で紅茶を飲み続けているが、耳は真っ赤だった。
――そして、後日。
衣装プランをまとめた分厚い書類が玉座の間に提出された。
モモンガは震える指でページをめくり、そして顔を覆った。
(うああああああああああ!! な、なんだこの逆バニー案は!! どこからどう見ても地雷! いや、地獄だろこれ!!)
玉座の王はカラカラと咳払いし、冷静を装って言葉を紡いだ。
「う、ううん……。その案は……そうだな……。ふ、二人きりの時にしてくれると……嬉しいぞ」
「――――っっ!!!」
アルベドが絶叫し、床に崩れ落ちた。
「モモンガ様が……わ、わたくしと二人きりで……逆バニーをご所望に……!」
「なんと羨ましいでありんす!!」
シャルティアが机に突っ伏す。
アウラは両手で顔を覆い「……もう知らない」と呟き、ユリは「……業務命令と受け取ります」と敬礼。
ルプスレギナは腹を抱えて笑い転げていた。
(あああああ……やっぱり骸骨でよかったあああああああ!!)
羞恥で死にかける支配者をよそに、会議はさらなる暴走へと突入していった。
アウラは額を押さえ、ユリは石像のように固まり、ナーベは無表情のまま耳まで真っ赤。
ルプスレギナはにへらっと笑いながら「いやー、モモンガ様、ノリノリじゃないですかぁ」と呟いた。
(ああああああああああっっ!! よ、骸骨で良かった……!! これが生身の顔だったら羞恥で爆散していたぞおおおお!!)
モモンガは心の中で転げ回りながらも、外見だけは玉座の王として沈着冷静に見え続けていた。
感情抑制が効いても羞恥で死ねるほどの羞恥ってあるんだな、嫌な発見をした日だった。
/*/ ナザリック婦人会・衣装相談出張編
「バニーのアレンジ案……か」
ルプスレギナが顎に指を当て、ぽんと手を打つ。
「そうだ、うちの旦那様に聞いてみるのが一番早いじゃない」
「なっ……!? ジョン様に!?」
アルベドがぎょっとして身を乗り出す。
「だって旦那様、実際に男性の立場だし? モモンガ様とも仲良いし?」
にへら、と笑うルプスレギナ。
かくして女性陣は連れ立ってジョンの執務室へ。
/*/
「えーっと……皆がモモンガ様のために衣装を考えてる、と」
ジョンは困ったように頭をかきながらも、あっさり答えを返した。
「でも俺もモモンガさんも、やっぱ通常のベーシックなバニーが一番好みだよ」
「べ、ベーシック……!」
アルベドが胸を押さえ、真剣な顔でメモを取る。
「それと……そうだなぁ。モモンガさん、この前飲んでるときに言ってたよ。セーラー服とかブレザーとか、学生服系にも憧れがあるって」
「~~~~っっ!!!」
アルベドが耳まで真っ赤になって硬直する。
シャルティアは「や、やっぱり純情なお方でありんすなぁ!」と感極まって涙を浮かべた。
「あと、スクール水着とかも」
ジョンは何気なく追加爆弾を投下。
――静寂。
「…………」
全員の視線がゆっくりとアルベドに集中した。
「ち、違いますわよ!? わ、私はまだ……っ!」
顔を真っ赤にして両手を振るアルベド。
「ふーん? つまりモモンガ様の本性はそっち……っと」
ルプスレギナはにやにや笑い、シャルティアは「なんと尊い……!」と膝を抱え、アウラは頭を抱えた。
ユリは咳払いし「……業務に差し支えるので詳細は控えていただきたい」と目をそらし、ナーベは無表情のまま手がぷるぷる震えている。
ジョンは紅茶をすすりながら、のほほんと呟いた。
「いやぁ、言わない方が良かった?」
「駄犬ッッ!!」
アルベドの絶叫がナザリック中に響き渡った。
/*/ ナザリック婦人会・衣装対立編
「セーラー服こそ至高!」
「いやいや、ブレザーの清楚さも見逃せんでありんす!」
「スクール水着だろ。シンプルな機能美が一番だ」
アルベド、シャルティア、アウラの三者が真剣に机を叩いて論戦を繰り広げる。
ユリは紅茶を飲み干し、ナーベは無表情で黙っているが耳は真っ赤。
「……また始まった」
誰ともなく、ため息が漏れる。
そんな中、ルプスレギナがぽんと手を打った。
「じゃあさー、いっそスクール水着の上に制服着たら最強っすね」
――静寂。
「………………」
アルベドの目がカッと見開かれ、シャルティアの赤い瞳が揺れる。
アウラは紅茶を噴き出しかけ、ユリはカップを持つ手を止めた。
ナーベはわずかに眉をひそめる。
「な、なにを言っているのですか貴様ぁぁ!!」
アルベドがテーブルを叩いて立ち上がる。
「ま、まさかそんな発想が……で、でもありんす……っ!」
シャルティアは震える手で口を押さえ、赤面。
「ちょ、ちょっと待って! それ……いろんな意味で反則じゃん!!」
アウラは真っ赤になって叫んだ。
ルプスレギナはにへらっと笑い、菓子をつまみながら肩をすくめる。
「えー? だってどっちも捨てがたいなら重ね着すればいいじゃないですかぁ。スク水セーラーとかスク水ブレザーとか、最強じゃん」
「…………」
全員が黙り込み、頭の中でその姿を想像してしまった。
――衝撃。
「ルプスレギナ……お前……天才か……」
ぽつりとシャルティアが呟く。
「きぃぃぃぃ!! 負けてたまるかあああああ!!」
アルベドが両手を天に掲げて絶叫した。
/*/ ナザリック婦人会・禁断の合意
「試すしか……ない」
アウラがぽつりと呟いた。
「う、うむ……理論上は完璧でありんす……」
シャルティアがぶんぶん頷き、頬を紅潮させる。
「ふ、ふざけてなどいません! これは最早、必然の流れなのです!」
アルベドは自分を納得させるように宣言する。
「待ちなさい、あなたたち……」
ユリが冷静に口を挟むが――その頬も赤い。
「業務に支障をきたすような過剰な装備は……」
「でもユリ姉さん。もしこれでモモンガ様が『素晴らしい!』って仰ったら、ナザリックの威光はさらに増すと思うんだよ?」
アウラがずるい説得を仕掛ける。
ユリは一瞬だけ固まり、そして視線を逸らした。
「……試験運用に限り、認めます」
「やったぁぁぁ!!」
ルプスレギナがガッツポーズ。
「き、決まりですね! では……次のお茶会では『スク水+制服』でモモンガ様をお迎えするという事で!」
アルベドが高らかに宣言する。
「わ、私セーラー担当でありんす!」
「じゃあ私はブレザーだな」
「アルベドは白バニーと並ぶ伝説としてスク水ブレザーを!」
皆の目が異様な熱を帯びる。
――こうして、ナザリック婦人会は「スクール水着+制服」計画を試す方向で一致したのであった。
/*/ 第九階層・謁見の間
荘厳な謁見の間に――なぜか、妙な緊張感が漂っていた。
玉座に座るモモンガ。
その視線の先に、ずらりと並ぶ婦人会の面々。
「お待たせしました、モモンガ様……」
アルベドが一歩前へ。
白いセーラー服。その下には……黒のスクール水着。
ぴったり張り付く生地が、制服の布越しにもシルエットを浮かび上がらせる。
続けて、シャルティアはブレザー+紺スク水。
アウラはポニテセーラー+スポーティな紺スク水。
ユリやナーベまで律儀に従って……。
最後にルプスレギナが両手を広げ、
「じゃじゃーん! どうですモモンガ様! 最強装備ぃ?」
「…………」
(おおおおおお落ち着け俺!!これは部下たちの自主性!!尊重せねば!!)
「ど、どうでしょうか……」
アルベドが恥じらうように裾をつまむ。
「モモンガ様ぁ……可愛いでありんすか?」
シャルティアが上目遣い。
(し、死ぬっ!!羞恥で死ぬっ!!感情抑制よもっと頑張れぇぇぇ!!)
玉座の上で痙攣しかけていたその瞬間。
――パァンッッ!!!
大音響と共に、紙吹雪と共に舞うきらめき。
ジョンが両手に「完全なる狂騒クラッカー」を掲げていた。
「さぁモモンガさん! 本当の気持ちを解放してぇぇぇ!!!」
「やめろおおおおおおおお!!!!」
ズガァァァァァァンッ!!!
抑え込まれていた感情が、一気に解放される。
羞恥。困惑。感激。愛しさ。
あらゆる感情が雪崩れ込み、骸骨の顔が――真っ赤に染まった(気がした)。
「も、ももも、もももも、ももももも……っ!!!!」
玉座の間に奇声が響き渡り、アルベドたちは「キャーッ!」と歓声を上げる。
シャルティアは両手を合わせて震え、ルプスレギナは腹を抱えて転げ回る。
(やっちまったあああああ!!なんで俺、あんなコレクションの話フルコンボで実現させてんだよおおおお!!!)
モモンガの精神が限界を迎えようとしていた。
/*/ 第九階層・謁見の間
羞恥により爆散寸前のモモンガ。
その姿を前に、婦人会は――
「きゃぁぁぁっ! モモンガ様が! モモンガ様が赤くなっておられるぅぅぅ!!!」
アルベドが両手を頬に添えて震えながら、歓喜の悲鳴を上げた。
「なんと尊い……尊すぎるでありんすぅぅぅ!!!」
シャルティアが床を転げ回り、涙と鼻血を同時に噴き出す。
「やっぱり! 最強装備だって言ったじゃないですかぁ!」
ルプスレギナがドヤ顔で両腕を広げる。
アウラは額に手を当てながらも、頬がほんのり赤い。
「……なんか、今のモモンガ様ちょっとカッコよく見えるんだけど……」
ユリは冷静を装いつつ、瞳の奥に熱を宿し、
「……業務に支障が……でもこれは……貴重な観察対象です……」と謎のメモを取り始めた。
ナーベは無表情のまま、しかし耳まで真っ赤にして、
「……あの……すごく……似合っておられます……」と蚊の鳴くような声で呟く。
/*/
一方のモモンガはというと――
(やめろぉぉぉ!!見ないでくれぇぇぇ!!今の俺を直視するなぁぁぁ!!)
羞恥と混乱で頭を抱え、玉座に突っ伏しかけている。
そこへ、ジョンが再びクラッカーを構える。
「さぁモモンガさん!第二弾いきますよぉぉぉ!!」
「やめろォォォォォ!!!」
パァンッッ!!
再び炸裂する狂騒クラッカー。
色とりどりの紙吹雪が舞い落ち、婦人会はさらにヒートアップ。
「次は衣装チェンジで攻めるでありんすぅぅぅ!!」
「スク水セーラーが効いたなら、ブルマブレザーはどうでしょう!」
「メイド服に体操着を重ねるのもアリかも」
「いっそ制服ごと濡らして透けさせるのも……」
――大混乱。
婦人会の熱狂はもはや収拾がつかず、
謁見の間は「世界征服の会議場」から「羞恥の殿堂」へと変貌していた。
(……なぜこうなった!? なぜ俺の部下たちはこんなに元気に自主的に……!!)
羞恥と誇らしさの板挟みで、モモンガの心は限界を突破しようとしていた。
/*/ ナザリック・謁見の間
「さぁさぁ、次はブルマにブレザーで――!」
「いや! いっそ裸ニーソで攻めるべきでありんす!!」
「透ける制服も悪くないですねぇ!」
婦人会が次々と新たな衣装案を叫び、謁見の間は熱気と狂気の渦と化していた。
その中心で――
「う、ううう……」
玉座に座るモモンガの肩がガタガタと震えていた。
(だ、ダメだ……!! 感情抑制が効いても……羞恥で……もう保たん……!!)
赤い眼窩から光がちらつく。
羞恥の極致に達し、ついに支配者の尊厳を保つ余力が尽きかけた、その瞬間。
「し、失礼する!!!」
カッ!
転移魔法の光が広間を走り、モモンガの姿が掻き消えた。
「モ、モモンガ様ぁぁぁぁぁ!!!」
アルベドが悲鳴を上げ、床に膝をついて胸を押さえる。
「お逃げになられた……!? そんな……!」
シャルティアが呆然と口を開けたまま固まる。
「……だろうな。あの流れは誰でも逃げたくなるよ」
アウラが額を押さえてため息をつく。
「逃げても無駄です。次のショーは必ず捕まえてご覧に入れます」
ユリが冷静に宣言し、ナーベもコクリと頷く。
「ふふふ、旦那様と違って純情なんですねぇ、モモンガ様は」
ルプスレギナが頬杖をついて、にへらと笑った。
/*/
その頃、モモンガは――
転移した先の私室で、壁に手をつきながら深呼吸を繰り返していた。
(あ、ああ……骸骨で良かった……!! 肉体があったら今頃羞恥で即死していた……!!)
大の字にベッドに倒れ込み、頭を抱える支配者。
(……も、もう婦人会の奴らには近づかん……絶対に……!!)
そう心に誓うモモンガであった。
嫁が自分の性癖に理解があってしてくれるなんて羨ましい!
羞恥心を捨てろ。それが楽園への扉の鍵だ。
次回!
第95話:漆黒の剣!