オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第102話:王と皇帝

 

 

/*/ バハルス帝国 皇帝執務室 ジルクニフ視点 /*/

 

 

ジルクニフは広い執務室に一人佇んでいた。

眼前の地図には、帝国の都市と街道、そして国境を越えた先に広がる魔導国と王国が描かれている。

 

「……帝国は変わり果てた。貴族どもを抑え込み、官僚制を整え、ようやく強国の形を成したと思った矢先に――あの化け物が現れた」

 

拳が机を打つ。

彼にとって、魔導国は「支配者としての自分を試し、そして完膚なきまでに叩き潰した存在」であった。

 

「だが、王国と比べれば……まだ俺の帝国は"生きている"」

 

王国は腐敗貴族と内乱に疲弊し、魔導国に依存せざるを得ない。

それに対して帝国は――確かに魔導国の庇護下に入ったとはいえ、まだ国制は保たれ、軍も行政も動いている。

 

「……王国の王ザナック。お前はどう見ている?」

独白のように呟く。

彼にとって、ザナックは"同じ時代に生きる支配者"として無視できぬ存在だった。

 

 

/*/ リ・エスティーゼ王国 王都・執務室 ザナック視点 /*/

 

 

ザナックは山のように積まれた書類を前に、深く溜息をついた。

北部は魔導国に切り取られ、南部はようやく復興の兆しを見せている。

だが――

 

「……国力そのものは、既に帝国の比ではないな」

 

ザナックは冷静に認めざるを得なかった。

帝国はジルクニフの下で中央集権化を進め、組織としての骨格を備えている。

一方、王国は寄せ集めの貴族と、古き慣習に縛られた行政が足を引っ張る。

 

「……ジルクニフ殿下。あなたの帝国は、魔導国に膝を屈したとはいえ、まだ"国家"の体を保っている」

 

小さく呟きながら、彼は自嘲気味に笑った。

「王国は……既に、魔導国の"庭"に過ぎないのかもしれない」

 

だが同時に、ザナックの瞳には強い光が宿る。

「それでも私は、この国を諦めない。たとえ形骸だけの王国でも――守るべき民がいる限り」

 

 

/*/ 比較の余韻 /*/

 

 

帝国皇帝ジルクニフと、王国王ザナック。

二人は互いを直接語り合うことはない。

だが、魔導国という絶対的存在を前にして、二人の胸中には奇妙な共鳴があった。

 

――帝国は生き延びるために膝を屈した。

――王国は生き残るために、必死に足掻いている。

 

その違いを理解するのは、彼ら支配者自身だけだった。

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓 第9階層 執務室 /*/

 

 

分厚い机の上に二冊の報告書が広げられていた。

デミウルゴスとアルベド、それぞれの手になる帝国と王国の比較分析。

 

モモンガは骨の指でページをなぞりながら、赤い光の宿る瞳窩を細めた。

「……ふむ。帝国はジルクニフが魔導国の庇護を受け入れて、中央集権を維持。民衆の暮らしは安定、か」

 

横に腰掛けるジョンが、椅子を揺らしながら鼻を鳴らした。

「現実的だな。自分の威信を削ってでも国を残す。……支配者としては正しい判断だろうが、孤独なもんだぜ」

 

「そうかもしれん。……私は彼を評価すべきなのか、それとも利用すべきなのか……」

モモンガはぼそりと漏らす。

 

ジョンは腕を組み、報告書を覗き込みながら苦笑した。

「どっちにしろ、魔導国の影響下に置かれるんだ。利用できるもんは利用しとけばいいさ。孤独の重さなら、モモンガさんが一番よく知ってんじゃねぇの?」

 

赤い光がふっと瞬く。

モモンガはほんの僅か、感情の波を覚えたように視線を落とした。

「……そうだな。私も……孤独であることに変わりはないが、ジョンさんがいる」

 

ページを繰り、王国の報告へと移る。

 

「王国は……貴族の腐敗で機能不全。ザナックは必死に抗ってはいるが、国力は落ちている。……魔導国の庇護なしではいずれ滅ぶ、か」

 

ジョンは小さく笑い、肩を竦めた。

「だが、あいつは最後まで足掻いてる。民を守ろうとするその姿勢は評価できるぜ。……滅びを悟ってもなお抗うのは、愚かでも誇り高い選択だ」

 

モモンガは両手を組み、机に肘をついて顎を寄せた。

「帝国は生存を選び、王国は滅びを選ぶ……デミウルゴスとアルベドはそうまとめているな」

 

「結局、どっちも魔導国に取り込まれるのは変わらねぇよ」

ジョンはわざとらしく笑いながらも、瞳の奥に真剣さを滲ませた。

「けどな……支配者の姿勢は、確かに心に残る。俺はそう思う」

 

モモンガは短く息を吐き、ゆっくりと報告書を閉じた。

「……覚えておこう」

 

執務室に、紙の擦れる音だけが落ちた。

二人の砕けた会話は、やがて魔導国の未来を決める静かな礎となっていった。

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓 執務室 /*/

 

 

ジョンは報告書を置き、ぽつりと呟いた。

「ザナックも……必死に抗ってるな。涙なしには見られねぇ。……あんな上司が欲しかったよ」

 

モモンガは静かに頷く。

「同感だ。ああいう誠実さは……この世界では稀有だな。民のために足掻く姿は、本当に立派だ」

 

「なにかしてやるかな」

ジョンは真剣に顎をさすり、考え込む。

 

「例えば……王都の防壁をオリハルコンで全面補強するとか?」

「いや、それは王国どころか帝国も驚愕するぞ。城塞都市を一瞬で無敵要塞にするなんて……」

 

「じゃあ、ザナックの寝室に"自動給仕するゴーレム執事"を置いてやるとか?」

「いやいや、それは支援じゃなくて生活改善だろう……」

 

二人は顔を見合わせ、同時にため息をついた。

「「……普通の支援ができない」」

 

モモンガは肩を落としながらも、小さく笑った。

「……結局、我々がやれることは、どこまでも規格外になってしまうんだな」

 

ジョンも苦笑しつつ、机に肘をつく。

「ほんとだな。……せめて、ザナックの努力が無駄にならねぇように、陰から見守るくらいか」

 

モモンガはしばし黙し、報告書に視線を落とした。

赤い光を湛えた瞳が、わずかに揺れる。

「……もし彼が最後まで抗い抜いたなら。その時は……ナザリックの名において、何か形にしてやりたい」

 

ジョンはその言葉に口元を歪め、頷いた。

「そうだな。俺も賛成だ」

 

二人はしばし無言で視線を交わす。

その沈黙には、ほんの少しの敬意と、奇妙な温かさが宿っていた。

 

ジョンは腕を組み、ちょっと得意げに言った。

「まあ、俺はザナックにカルカとケラルト、それにレメディオスを送ってやったけどな」

 

モモンガの赤い瞳がぱちりと瞬いた。

「……は? お前、もうやってるのか!?」

 

「当然だろ? あいつ一人で踏ん張ってんのが気の毒でさ。せめて嫁さんくらは良いだろうと思ってな」

ジョンは胸を張って言い切る。

 

モモンガは呆れたようにため息をつきつつ、しかし頷いた。

「……なるほど。それなら、確かに王国の象徴になるな。戦士長と聖騎士団長、さらにあの二人の聖女……王国民にとっては希望の灯火だ」

 

「だろ? 俺にしては気が利いた支援だろ」

ジョンはニヤリと笑う。

 

「……うむ。実にナザリックらしからぬ、まともな支援だな」

モモンガは冗談めかして返した。

 

二人は一瞬顔を見合わせ――そして同時に吹き出した。

 

「「……やっぱり俺たち、普通じゃないことしかできねぇな」」

 

モモンガの執務室。積み重なった報告書の中から王国関係の分厚い資料を抜き出すと、モモンガはジョンに手渡した。

「……リ・エスティーゼ王国の現状だ。北部を直轄地として失い、国土は半分。だが――治安と経済は持ち直してきている」

 

ジョンが目を通しながら口を尖らせる。

「デスナイトを治安維持に回したのは正解だな。魔獣も盗賊も寄りつかねぇ。南部諸侯の減税と産業振興で民の暮らしも少しマシになったか……これ、昔ラナーが出した案だろ? 皮肉だよな」

 

「そうだな。冒険者組合は仕事を失い、今や冒険者はこっち――魔導国に流れ込んでいる。戦力としてはありがたいが……王国の"自立"を阻む要因にもなる」

 

「しかも、魔術を軽んじすぎたツケで学校も研究機関もねぇ。将来を担う魔術師を育てられない国なんて、どうやって発展すんだか」

ジョンは机に報告書を叩きつけ、肩をすくめた。

 

モモンガは赤い光を揺らめかせながら、深く頷く。

「……致命的な弱点だな。いずれ国力は頭打ちになる。だが、そのぶん抗う力はまだ残っている。ザナックの意志と南部の連中の努力で、王国はそう簡単には潰れないだろう」

 

「だからこそ、見てて面白ぇんだよな」

ジョンはにやりと笑った。

「普通ならとっくに崩壊してる国が、足掻きながらも立ち続けてる。ああいう国は、下手に手を出すより観察してるほうが勉強になるぜ」

 

「……ふむ。ならば私たちは"観測者"であるべきか。もっとも、私の場合は気まぐれで何かしてしまうかもしれんが」

モモンガは苦笑する。

 

ジョンは肩をすくめた。

「その"気まぐれ"が一番オーバーパワーなんだよ、モモンガさん」

 

二人は顔を見合わせ、同時に笑った。

 

モモンガの執務室。積まれた報告書を片手に、モモンガがふと呟いた。

 

「じゃあ、王国に魔術学校を作ってやりますか? 王都につくってやって、魔術と普通の勉学を教える王立学校にするのが良いな」

 

ジョンが驚いたように眉を上げる。

「お、教育支援か? モモンガさんらしくねぇな」

 

「いや、単純に……帝国の魔法省と技術競争できるようになれば、面白いものが生まれそうだと思ってな。競争は発展を生む。王国にも少しは未来を与えてやれるだろう」

 

ジョンはニヤリと笑い、報告書を指先で軽く叩いた。

「……でも技術ってのは秘匿すべきもんだぜ? 下手に広めりゃ牙になって返ってくる」

 

「そこは抜かりないですよ」

モモンガは骨の指を軽く振った。

「学校の講師はいないだろうから、アンデッドの連中を派遣してやればいい。彼らは忠実だし、知識も豊富だ。しかも……」

 

「技術も知識も全部吸い上げられるってわけか」

ジョンは声を出して笑った。

「なるほどな。表向きは王国の未来のため、実際はナザリックの利益のため。いやぁ、悪党の考えることは抜け目ねぇ」

 

モモンガはわずかに肩を揺らし、赤い光を細める。

「ふふ……だが、王国の民は"恩恵を受けている"と信じるだろう。それで十分じゃないか?」

 

「……あぁ、確かにな」

ジョンは椅子に背を預け、にやりと笑った。

「そういうのを世間じゃ"WIN-WIN"って言うんだぜ、モモンガさん」

 

 

/*/ 王都 王城執務室 ザナック視点 /*/

 

 

「……王立学校、だと?」

 

差し出された魔導国からの文書を読み、ザナックは眉間を押さえた。

王都に“魔術と一般学問を教える学校”を設立する。資金援助も講師の派遣も魔導国が全面的に行う、という内容だ。

 

「かつて……ラナーが似たような案を出していたな」

記憶の底から浮かぶ、妹の冷たい笑み。

教育によって王国に新たな人材を育てる――当時は無視された提案だ。

 

(……ラナー。お前が動いてくれたのか? だとしたら、ありがとう)

ザナックの胸に小さな感謝が灯った。

 

そこへ三人の顔ぶれが揃っていた。

 

ケラルト・カストディオが書状を手に取り、低い声で呟く。

「これは……次代の知識層を丸ごと魔導国に染める策ですね。講師は彼らが派遣する。学ぶ知識も価値観も……すべて魔導国の色に染まるでしょう」

 

その言葉に、カルカ・ベサーレスは小さく震えた。

「……な、なんて恐ろしい……。民は未来を託すつもりで子を通わせる。だが、十年、二十年後に育つのは“王国人”ではなく“魔導国の人材”……!」

 

しかしレメディオスは腕を組み、怪訝そうに首を傾げる。

「待て。生徒がどうして魔導国に染まるんだ? 学問を学ぶだけじゃないか。剣の修練だって先生が帝国人だろうと、学んだ者は立派な王国騎士になる。そうだろ?」

 

ケラルトは深いため息をついた。

「……価値観を教えるのです。彼らが『魔導国の力によって学べた』と思えば、その感謝は忠誠に繋がる。教育は洗脳と同義。だから恐ろしいのです」

 

ザナックは三人の顔を順に見渡し、手の中の書状を強く握りしめた。

「……だが、受け入れざるを得ない。国を立て直すには人材が必要だ。例え魔導国の掌の上でもな」

 

その声には、どうしようもない諦念と、それでも王国を繋ごうとする意志が滲んでいた。

 

 

/*/ 王都 王城執務室 ザナック視点 /*/

 

 

「……自業自得、か。魔術を軽んじた国の末路がこれか」

ザナックは硬い表情で呟き、机の上に積まれた文書を睨みつけた。

 

魔導国の使者が残した言葉――「構わないけど、自分で探せよ」。

それは王国に残された最後の余地であり、同時に残酷な現実の突きつけでもあった。

 

カルカは肩を落とし、震える声で言う。

「陛下……師範を見つけるのは不可能に近いかと。冒険者も、魔術師も……」

 

ケラルトが冷静に付け加えた。

「陛下。残る可能性は、南部の有力者を頼ることくらいでしょう。レェブン侯爵家は比較的魔術を理解し、研究を奨励する気風がございます。あるいは……」

 

彼女は少し言葉を切り、ザナックに目を向けた。

「エ・ランテルにいる“青の薔薇”のラキュース殿。あの方ならば、まだ冒険者の誇りを保ち、魔導国との協調の中で人材を見出せるかもしれません」

 

「……そうだな」

 

ザナックはゆっくりと頷き、執務机に向き直った。

羽ペンを取り、羊皮紙に言葉を連ねる。

 

一通は南部のレェブン侯爵へ。

「王立学校設立に際し、魔術師の師範を探している。南部に適任者がいれば推薦してほしい」と。

 

もう一通は、エ・ランテルの冒険者ラキュースへ。

「王国再建のため、魔導国との協力の下に王立学校を設立する。冒険者の中から師範に相応しい者を推薦してほしい」と。

 

ペン先から滲むインクは、ザナックの迷いと必死さを映すかのようだった。

 

「……滅びを避けられぬとしても、せめて未来に残せるものは残したい」

 

封をし、蝋で王家の印を押す。

それを受け取った従者が深々と頭を下げ、部屋を後にする。

 

レメディオスが不思議そうに呟いた。

「ラキュース……あいつはまだ王国に忠義を尽くしているのか?」

 

カルカは苦い笑みを浮かべる。

「いいえ。あの方が尽くしているのは“人々”でしょう。だからこそ、陛下のお手紙に応える可能性があるのです」

 

ザナックは黙って窓の外を見やった。

暗雲垂れ込める王都の空。その下で、民は必死に生きている。

 

「……せめて、民に未来を」

 

小さく呟き、彼は次の書類に手を伸ばした。

 

 

/*/ エ・ランテル 魔術師組合 /*/

 

 

組合の建物は静まり返り、廊下には魔術書の埃の匂いだけが漂っていた。

ラキュースを出迎えたのは、組合長テオ・ラケシル。

ローブを纏い、頬のこけた非常にやせ細った神経質そうな男だ。

 

「王国が魔術を軽んじてきたのは事実です。だからこそ……今さら『王立学校を作るから協力してほしい』と言われても、再び仕えたいと望む者など……」

 

テオは言葉を濁した。

ラキュースは強く唇を結び、答えを探して沈黙する。

 

その時だった。

 

「……あの!」

 

声を上げたのは、組合の授業を受けに来ていた一人の少女――漆黒の剣のメンバー、ニニャだった。

まだ十代半ば、華奢な体つきだが、瞳には強い意志が宿っている。

 

「わ、私の最初の師匠が……まだ王国に残っているはずなんです。魔術の素養を見抜く“魔眼”を持つ人で……その人ならきっと役に立てると思います!」

 

ラキュースの瞳がわずかに見開かれた。

「本当なのですか?」

 

「はい。確証はありませんけど……もし生きておられるなら、きっと力になれるはずです。手紙を送ってみます!」

 

テオは少女を見やり、深くため息をついた。

「……皮肉なものだ。王国が見捨てた人材を、子どもに頼って掘り起こすとはな」

 

だが、その声音には僅かに希望の色が混じっていた。

 

ラキュースは力強く頷く。

「ありがとう、ニニャ。あなたのその一歩が……王国の未来を繋ぐかもしれない」

 

頬を赤らめた少女は、ぎゅっと拳を握りしめた。

 

 

/*/ カロリナ・エステルの教室 /*/

 

 

夕暮れの光が差し込む教室。机に広がる羊皮紙とインク壺、そして子供たちが残していった習字や魔法陣の練習紙が散らばっている。

 

その中で、カロリナは一通の手紙を握り締めていた。

 

「……セリーシア」

 

小さく名を呼ぶ。かつて孤児院に預けられ、魔法の才を見抜いて育てた小さな背中。

今や漆黒の剣の一員として名を馳せ、さらにこうして師に手紙を送るまでに成長している。

 

手紙の中には「王立学校設立」の知らせと、王が知識ある人材を求めていること。

そして「師匠なら力になれるはずだ」と、震えるような筆跡で綴られていた。

 

「……助かるわ、セリーシア。本当に」

 

声に出して読みながら、カロリナは深く息を吐いた。

孤児院の子供たちは日ごとに増え、資金は尽きかけ、もはや存続は難しいと諦めかけていた矢先。

この手紙は、まさに救いの一筋の光だった。

 

窓の外で、孤児院の子供たちが遊ぶ声が聞こえる。

魔法の才を持つ子、持たない子、皆が笑い声を上げている。

 

――この子たちの未来を、守りたい。

「かつて愛した国のために……私にできることがあるのなら」

 

カロリナは瞳を閉じ、ゆっくりと頷いた。

 

「行きましょう。孤児院ごと王都へ。王立学校に力を貸す時が来たのね」

 

その言葉に、部屋の片隅で掃除をしていた年長の孤児が顔を輝かせた。

「先生……王都に行くんですか?」

「ええ。これからは、君たちの学びも守っていかなくてはならないからね」

 

 

/*/ 王都 謁見の間 /*/

 

 

重々しい扉が開かれ、玉座に座るザナックの前で使者が跪いた。

「――カロリナ・エステル殿、孤児院ごと王立学校に協力してくださるとの返答です」

 

「そうか……!」

ザナックは思わず拳を握りしめ、立ち上がりそうになる。

 

「陛下、これは僥倖にございます」

ケラルト・カストディオが冷静に言葉を添える。

「孤児院には既に魔法の才を持つ子供たちが集っているはず。次代を担う知識層を取り込むことができましょう」

 

カルカは息を呑み、レメディオスは腕を組んで難しい顔をしている。

「孤児を王立学校に? 本当にそんなことで国が立ち直るのか……」

 

ザナックはゆっくりと視線を巡らせ、王座から静かに立ち上がった。

そしてはっきりと告げる。

 

「いいや、必要なのだ。今まで我が国は、知識を持つ者を軽んじてきた。だからこそ滅びかけた。……これからは、知識を持つ者をきちんと育てていきたい」

 

その声音は決意に満ち、謁見の間に響き渡った。

 

「身分に関係なく、この国を立て直す力となるなら――誰であろうと受け入れる」

 

ケラルトは深く頭を垂れた。

「陛下……そのお心、必ずや次代へ繋がりましょう」

 

レメディオスはなお腑に落ちない様子で腕を組み続け、カルカは恐れを含んだ瞳で「魔導国の影」を意識して震えていた。

 

だがザナックの表情は揺るぎなく、王として初めて、自ら未来を選び取ろうとする覚悟を見せていた。

 

 

/*/

 

 





遂に第12部開始
三人娘再登場!君たちはここで生きていくのだ!
娘?きっついわぁ

次回!
第103話:王立魔法学校!

大きな声で
宿題なんてお空にポイだ!
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