オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ 帝国・帝都アーウィンタール /*/
カッツェ平野を越え、幾つもの関所を抜けて――。
私たち漆黒の剣は、ついに帝国の首都アーウィンタールへと足を踏み入れた。
城壁は巨大な石造りで、まるで山脈のように空へとそびえ立つ。
内側に広がるのは、放射状に延びる大通り。行き交う人の波は帝都の名にふさわしく、威容と熱気を兼ね備えていた。
竜王国の首都とは異なる。ここにあるのは、荒涼とした必死さではなく、整然と磨き上げられた秩序と力。
「すごい……! 本当に国の心臓部って感じだな」
ペテルが感嘆の声をあげる。
戦士の目にも、この都市の堅牢さは圧倒的に映っているのだろう。
だが、私は逆に背筋に冷たいものを感じていた。
――あまりにも整いすぎている。まるで都市そのものが、誰かの意思に操られているかのように。
「……用心した方がいいわ」
小声で言ったのはニニャだ。年若い少女の姿をしていても、その頭脳は冷静だ。
「ここは帝国、皇帝ジルクニフの庭よ。
彼は賢王と呼ばれると同時に、最も危険な存在。
魔導国とも竜王国とも違う……私たちは、もう彼の視線の中にいるの」
「歓迎されるか、監視されるか……どっちだと思う?」
ルクルットが肩をすくめる。
その目は周囲を警戒していた。帝都の民衆の視線は好奇の色を帯びながらも、どこか探るようだった。
竜王国から噂と共に渡ってきた「黒衣の冒険者たち」――それが私たち、漆黒の剣。すでに話題になっているのだ。
「……どちらでも、気を抜くな」
私はそう答え、腰に下げた杖に自然と指をかける。
宿へ向かおうとしたその時――。
黒衣に身を包んだ使者が、いつの間にか群衆を割って進み出た。
深々と頭を垂れ、朗々と声を響かせる。
「――帝国皇帝陛下よりの御招待です。
漆黒の剣の皆様、どうか御足労願えますか」
一瞬、空気が張り詰めた。
ペテルは拳を握り、ルクルットは視線を鋭く走らせる。ニニャは黙って唇を噛みしめていた。
皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス――。
竜王国での出来事とは異なる、別の緊張と駆け引きが、ここから始まろうとしていた。
/*/ 帝国・アーウィンタール王城・謁見の間 /*/
扉が重々しく開かれ、私たちは煌びやかな赤絨毯の上を進む。
列を成す貴族や官僚の冷ややかな視線が突き刺さる。
彼らにとって、竜王国を渡り歩き、魔導国と接点を持つ冒険者――漆黒の剣は異物でしかないのだろう。
玉座に座すのは、若き皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。
金髪を背に流し、眼差しは猛禽のごとく鋭い。
だがその表情には、王者としての冷静さと、どこか愉悦を含む影が混じっていた。
「――ほう。これが“漆黒の剣”か」
低く響く声が、謁見の間に満ちる。
私(ダイン)は自然と胸を張った。
背後でペテルが姿勢を正し、ルクルットが無意識に周囲を探り、ニニャが冷静に観察しているのがわかる。
「竜王国にて、民の間に名を轟かせたと聞く。
さらに、魔導国とも交わりを持ったそうだな」
皇帝の言葉にざわめきが広がる。
帝国の重臣たちが一斉にこちらへ注視した。
あの魔導国――今や世界の脅威。その名が出ただけで、この場の空気が張り詰める。
「……はい、陛下」
私は深く頭を下げた。
「我らはただ、旅路の中で出会った人々に応え、力を尽くしたのみです」
ジルクニフの口元に、皮肉めいた笑みが浮かぶ。
「謙虚な答えだ。だが――お前たちは“力”を持つ。
力ある者がただ漂うだけで済むと思うか? この帝国は、力を持つ者を常に値踏みする」
ペテルが思わず拳を握りしめる気配が伝わる。
ルクルットは低く息を吐き、ニニャは黙して睨むように皇帝を見上げていた。
「……我らを、どうされるおつもりでしょうか」
私が問うと、ジルクニフは愉快そうに目を細めた。
「利用する。それが答えだ」
その声音は冷酷にして明瞭だった。
「帝国は今、魔導国という化け物と隣り合い、竜王国の瓦解を見た。
世界は変わりつつある。……だからこそ、私は欲するのだ。
勇気と名を持つ者を、この手中に」
彼は玉座から身を乗り出し、鋭く言い放った。
「漆黒の剣。お前たちに選ばせよう。
――帝国の旗の下に加わり、我と共に歩むか。
あるいは……この帝都の石畳に血を散らすか」
一瞬にして謁見の間が凍り付いた。
兵の槍がわずかに動き、貴族たちの息が詰まる音が響く。
私たちは互いに視線を交わした。
ペテルの目は怒りを含み、ルクルットは険しく唇を噛み、ニニャは静かに頷いていた。
私は一歩前に出る。
胸の奥に湧き上がるのは恐怖でも屈辱でもなく――確かな意志だった。
「……陛下。私たちは“漆黒の剣”。
誰かの道具ではなく、己の意志で進む者です。
けれど――国を守りたいと願う人々の声に応えるのならば、我らは剣を取る」
ジルクニフの目が細められた。
笑みとも冷笑ともつかぬ影が、その口元に浮かぶ。
「……面白い。ならば――試させてもらおう」
その声は、帝国という巨獣が牙を剥いた宣告のように響いた。
/*/ 帝国闘技場 /*/
轟音のような歓声が帝都アーウィンタールの闘技場を包んでいた。
数万の観衆が詰めかけ、中央の砂地を取り囲む。
その注目を一身に集めるのは――帝国最強と謳われる武王ゴ・ギン。
全身を覆う鎧は黒光りする強化アダマンタイト合金。
ウルフ竜騎兵団のジョンフェルト強化繊維型アダマンタイト合金、アダマンタイト級冒険者ですら容易には傷をつけられない。
その手に握る棍棒は、興行人オスクが全財産の五分の三を費やした特注品。
一撃を食らえば、並の戦士は肉塊と化す。
そして何より、ゴ・ギンの正体は――ウォートロール。
四肢を斬り飛ばされようが、胴を断たれようが、驚異的な再生能力で立ち上がる怪物。
審判の合図と同時に、巨体が地響きを立てて突進した。
観客席が揺れるほどの衝撃。
「――来るぞッ!」
ペテルの叫びに、ダインはメイスを構える。
ゴ・ギンの棍棒が唸りを上げて振り下ろされ、ペテルの盾が火花を散らす。
防ぎきれない衝撃に、砂煙が爆ぜた。
「ペテル!」
「まだだッ! 俺が刺す!」
ペテルが火を纏わせた剣を構え、神速の突きを繰り出す。
燃え盛る炎が槍先に集束し、ゴ・ギンの鎧を一点突破――。
「火の串刺しッ!」
轟音と共に、赤熱した剣が黒い鎧を貫通した。
ゴ・ギンの動きが一瞬止まる。
「今よ!」
ニニャの詠唱が雷鳴のように響く。
「――《龍の雷(ドラゴン・ライトニング)》!」
蒼白の稲妻が一直線に降り注ぎ、ゴ・ギンを直撃する。
轟音に続き、ルクルットの弦が鳴る。
「――《チャージショット・氷結矢》!」
光の尾を引く氷の矢が稲妻を浴びた巨体に突き刺さり、熱と冷気が交錯する爆裂が走った。
だが、ゴ・ギンはまだ倒れない。
肉体が焼け、凍り、裂けてもなお、呻き声と共に立ち上がる。
「化け物め……! なら、これでどうだ!」
ダインは大気に祈りを捧げ、メイスを振り上げた。
あらかじめ《雲操作》で曇天へと変えた空が――轟きと共に裂ける。
「――《雷を呼ぶ・コールライトニング》!」
天空から奔流のような雷光が落下し、ペテルの剣が導線となってゴ・ギンの体を焼き貫いた。
その巨躯が白熱し、砂地に崩れ落ちる。
観衆が息を呑み、静寂が闘技場を覆った。
――やがて、ゆっくりと立ち上がるゴ・ギン。
全身は焦げ、鎧は歪み、再生が追いつかない。
それでも彼は、巨体を震わせて笑った。
「……認める。
四人で、我をここまで追い込むか。
漆黒の剣……貴様らは、帝国の誇りをも超える強者だ」
その宣言と同時に、観客席が爆発した。
割れんばかりの歓声が闘技場を震わせる。
――この瞬間。
漆黒の剣は、帝国のアダマンタイト級漣八連をも凌駕する存在として認知された。
探索に優れた漣八連とは異なり、
純粋な戦闘力では、わずか四人で帝国最強を超えたのだ。
/*/ 帝国闘技場・決戦の後 /*/
ゴ・ギンの敗北宣言が響いた瞬間――
それまで張り詰めていた観客席が、地鳴りのような歓声に包まれた。
「やったぞォォ――ッ!」
「漆黒の剣だ! 四人で武王を倒したぞ!」
旗が振られ、帽子が宙を舞い、涙を流して抱き合う観客まで現れる。
だが、その熱狂は次の叫びによって一線を越えた。
「天位だッ!」
誰かの声が響き渡る。
「天位に挑戦権を持つ者たちが現れたぞ!」
「漆黒の剣こそ、帝国を導く英雄だ!」
「天位を超える新しき力! 帝国に栄光あれ!」
波のような声援が一斉に押し寄せ、観客席の石壁が振動するほどの熱狂となる。
まるで帝都そのものが震えているかのようだった。
兵士たちが慌てて観客を制止しようとするが、もはや誰も耳を貸さない。
老若男女が叫び、踊り、涙を流して漆黒の剣の名を連呼する。
「天位に挑む者! 漆黒の剣!」
「漆黒の剣! 漆黒の剣! 漆黒の剣!」
四人の名が波となり、帝国全土に響き渡るかのように広がっていった。
/*/ 皇帝席 /*/
ジルクニフはその光景を見下ろし、顔を引きつらせた。
「……馬鹿な」
黄金の髪を揺らし、震える息を押し殺す。
「漆黒の剣が……ここまで帝国民を煽るとは」
彼は理解していた。
“天位”――帝国最強の象徴。
その挑戦権を持つと叫ばれた者たちが現れた以上、もはや単なる冒険者ではない。
それは帝国の象徴を揺るがす存在であり、皇帝としての権威さえ脅かしかねない。
「……この熱狂は、制御できん」
ジルクニフは冷や汗を流しながら呟く。
帝国民衆は、漆黒の剣を“帝国に新しい時代をもたらす英雄”と見なしてしまったのだ。
彼らが求めるのは、強さの証明ではない。
“帝国を変える旗印”――その幻想を、漆黒の剣に押し付け始めている。
ペテルたちは、まだその事実を理解していなかった。
だがこの日。
帝国の闘技場は、確かに新しい熱狂の種を生んだ。
それは皇帝の思惑すら越えて、帝国の行く末を揺るがす炎となる。
/*/ 帝国闘技場・退場口 /*/
武王ゴ・ギンを退けた直後。
ペテル、ルクルット、ニニャ、ダインの四人は、闘技場裏手の石造りの通路を進んでいた。
勝利の余韻に浸る暇もなく――頭上から轟くような民衆の叫び声が響いてくる。
「天位に挑む者! 漆黒の剣だッ!」
「帝国の未来は彼らの手にある!」
「漆黒の剣こそ、新しい時代の旗印!」
地鳴りのような歓声が、石壁を震わせる。
それは祝福のはずなのに、四人の背中を冷たく撫でるものでもあった。
「……なんだ、これは」
ペテルが重い声を洩らす。
戦士の眼差しは鋭いが、今は剣戟の余韻ではなく、民衆の熱狂の異様さを測っていた。
「俺たち、ただ勝っただけだよな」
ルクルットが苦笑を浮かべ、首を掻く。
「天位? 旗印? そんな大層なもんじゃねえだろ……」
「でも……皆、本気で信じてる」
ニニャは怯えるように囁いた。
少女の指が、抱えた杖の端をきつく握りしめている。
「私たちが……帝国を変える力を持ってるって……」
ダイン――私――は口を閉ざし、通路の先に差す光を見つめていた。
民衆の叫びは、祝福と期待に満ちている。
だがその裏に潜むものを、私だけは感じていた。
(……これは、求められているんだ。
私たちが“ただの冒険者”であることを、誰も望んでいないのである)
扉の向こう、外へ出れば――数千の観衆が待ち受けている。
歓喜の渦に呑まれ、漆黒の剣はもはや冒険者ではなく、帝国の象徴へと仕立て上げられようとしていた。
「……ペテル、俺たちどうするんだ?」
ルクルットが低く問う。
戦士は答えず、ただ無言で剣帯を握り直す。
ニニャの視線は不安げに揺れ、私もまた返す言葉を失った。
歓声がさらに大きくなる。
帝国民衆は、私たちに“未来”を背負わせようとしていた。
/*/ 帝国闘技場・退場口 /*/
「天位だ! 天位の資格を持つ者たちだ!」
「ブレイン殿以来の快挙ぞ!」
「漆黒の剣が帝国の未来を拓く!」
闘技場の観客席から轟く歓声は、祝福というよりも熱病めいていた。
天井を突き抜けるような熱狂が、通路の石壁を震わせる。
ペテルは額に冷や汗を浮かべた。
「……天位……。あれは、確かブレイン殿が己の剣で勝ち取った称号だったはず」
「だよな。帝国じゃ……あんなに神聖視されてんのかよ」
ルクルットは乾いた笑いを洩らす。
「俺ら、ちょっと勝っただけなのに……」
ニニャは唇を噛みしめ、杖を胸に抱いた。
「……期待が……重すぎる……」
私――ダインは無言で耳を澄ます。
民衆は我らを“ただの冒険者”としてではなく、“帝国の未来を背負う者”として叫んでいる。
その熱気に背筋が凍った。
その時だった。
「……お前たち、このまま外に出る気か」
低く鋭い声が通路に響く。
振り向けば、鮮やかな赤衣をまとい、紫の瞳を鋭く光らせた皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが立っていた。
背後には近衛兵。だがその威容に負けぬ存在感を放っていたのは、皇帝ただ一人。
「そのまま外に出れば……お前たちは民衆の熱狂に呑まれる」
ジルクニフの声音は冷徹で、しかしどこか焦りを帯びていた。
「天位は帝国において特別だ。権力や思想をも動かす象徴となりうる……。
今の民衆は、お前たちを“英雄”以上のものに仕立てあげようとしている」
四人は顔を見合わせ、言葉を失った。
英雄? 象徴? そんなものを背負う覚悟など、誰も持っていない。
ジルクニフは長衣の裾を翻し、歩み寄ると、低く告げる。
「……ついて来い。帝国の主として命じる。
このまま群衆の前に晒すわけにはいかん。お前たちは、まだ“冒険者”であれ」
その金の瞳が、鋭く四人を射抜く。
「いいな。これは、お前たちを守るための命令だ」
ペテルは一瞬ためらい、やがて頷いた。
「……承知しました、陛下」
ジルクニフの背に従い、漆黒の剣は裏通路の奥へと導かれていった。
背後ではまだ、万雷の声が鳴り止まない。
天位。帝国が熱狂の中に求めた“夢”の響きが、いつまでも四人の耳に残っていた。
/*/ 帝国王城・私室 /*/
厚い絨毯に覆われた部屋。窓の外では、まだ闘技場からの歓声がこだましていた。
ジルクニフは玉座ではなく、一つの机を背にして立っていた。
その顔には、先ほどまで群衆の前で見せていた冷静な笑みはなく、むしろ深い疲労と焦燥がにじんでいる。
「……座れ」
促され、私たち漆黒の剣――ペテル、ルクルット、ニニャ、そして私ダインは、恐る恐る椅子に腰を下ろした。
ジルクニフは、葡萄酒の杯を持ち上げると一口だけ飲み、低く口を開いた。
「……お前たち、天位とは何かを知っているか」
ペテルが硬い声で答える。
「……帝国で最強の剣士に与えられる、唯一の称号……。私の知る限り、ブレイン殿がそれを得たはずです」
ジルクニフは頷き、杯を机に置いた。
「そうだ。天位はただの称号ではない。帝国において“人の限界を超えた証”として扱われる。
民はそれを神話のように語り継ぎ、憧れ、祈り、時に依存する」
彼の声には、鋼のような響きがあった。
「天位を得た者は、英雄を超えた存在だ。王よりも重んじられ、神よりも近く感じられる。
……だからこそ、危険なのだ」
ルクルットが眉をひそめる。
「危険……?」
ジルクニフは鋭くこちらを見渡す。
「お前たちが今、民衆の前に立っていたらどうなっていたと思う?
――あの熱狂の渦の中で、祭り上げられ、利用され、もはや“冒険者”ではいられなくなる」
ニニャは杖を握りしめ、怯えたように声を漏らした。
「……そんな……。私たちはただ、戦って、生きてきただけなのに……」
ジルクニフは短く息を吐き、髪をかき上げた。
「分かっている。だからこそ、私が回収したのだ。
お前たちはまだ若い。名声の重さに押し潰されるには早すぎる」
私――ダインは心の中で、あの万雷のような歓声を思い出していた。
英雄ではなく、神話として求められる存在。
その熱狂は、確かに人の心を奪い、時に国すら狂わせるだろう。
ジルクニフは最後に杯を飲み干し、冷ややかに言い放った。
「いいか。覚えておけ。天位とは――帝国において剣一つで王を超える権威だ。
それを背負う覚悟がないならば、安易に踏み入れるな」
四人は言葉を失い、ただ静かに頷いた。
その瞬間、私たちは理解した。
――今の帝国において“天位”とは、ただの強さではなく、国を揺るがす象徴なのだと。
/*/ 帝国王城・私室 /*/
ジルクニフの言葉が落ちたあと、しばし沈黙が続いた。
重苦しい空気を破ったのは、ペテルだった。
「……陛下。誤解なきように申し上げます。我ら漆黒の剣は――天位など望んでおりません」
その声音は硬く、そして真摯だった。
ルクルットもすぐに頷く。
「そうだ。俺たちは冒険者だ。
森を駆けて獣を狩り、人々を守り……そうして生きていければ十分なんだ」
ニニャが続けて言葉を重ねた。
「天位なんて……背負いきれません。
私は、ただ魔法を学び、皆と共に歩んでいきたいだけです」
最後に、私――ダインが口を開いた。
「陛下。我らは名声を求めてきたわけではない。
ただ、仲間と共に生きて、共に死ねる冒険をしたいだけなのです」
四人の言葉が揃った瞬間、部屋の空気が少しだけ和らいだ。
ジルクニフは腕を組み、じっとこちらを見据える。
やがて深く息を吐いた。
「……なるほど。ならば私が守らねばならんな。お前たちを――民衆の狂気から」
机の上に地図を広げ、赤い線で印を入れながら続ける。
「帝都の熱狂はしばらく冷めぬ。今お前たちを人前に出せば、必ず混乱が起きる。
……よって――お前たちは“帝国の客人”として預かろう」
ペテルが眉を寄せる。
「客人……?」
「そうだ。宮廷に部屋を与える。外部との面会はすべて謝絶とする。
――しばらくは身を休めよ。冒険者としての活動は制限せざるを得ない」
ジルクニフの目は鋭く光っていた。
「これはお前たちのためであると同時に、帝国のためでもある。
天位に匹敵する存在が四人も現れたとあっては、国そのものが持たぬ。
……理解してくれるな?」
四人は顔を見合わせ、静かに頷いた。
その瞳には、不安もあったが――同時に、安堵の色も浮かんでいた。
ジルクニフはワインを注ぎ直し、杯を軽く掲げる。
「よし。ならば決まりだ。お前たちは“英雄”ではない。“客人”だ。
……それならば、まだこの国は回る」
窓の外では、なおも熱狂の声が渦巻いていた。
だが分厚い石壁の中で、漆黒の剣はようやく胸を撫で下ろすことができた。
ゴ・ギンも強いけど、漆黒の剣はそれ以上に地獄特訓されたのでね
イメージと違う?うち10年もやってるんだから、長いキャラは変わっちまうよ。
次回!
第110話:天位に迫る者たち
パーティで天位とったら、扱いどうなんだろ?
明日の僕に丸投げだ!