オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第118話:北部遠征

 

 

/*/ 北部遠征 ― 出立

 

 

 帝都の冒険者組合の掲示板に貼られた依頼書。

 その文面は、見る者の背筋をぞくりとさせるものだった。

 

――〈ギガント・バシリスク〉討伐。難度八十三。

 目撃地点:北部山岳地帯。被害多数。至急対応を要す。

 

「……来やがったな」

 依頼書を引き剥がしたペテルの声は、低く重かった。

 肩越しに覗き込んだルクルットが口笛を吹く。

「うへぇ、八十三って。普通なら軍隊呼ぶレベルじゃねぇか」

 

「蛇にも蜥蜴にも似た怪物。視線で石に変え、毒は即死級。分厚い鱗はミスリルにも匹敵……と記されているである」

 横から読み上げるダインの声は淡々としているが、険しさを帯びていた。

 

 アウレリア・オーリウクルスは依頼書を見つめ、拳を握りしめる。

「……北部の村々を脅かしているのですね。ならば、見過ごすわけにはいきません」

 

 ニニャが小さく頷いた。

「難度は高いですけれど……私たちなら」

 

「おう、やってやろうじゃねぇか。ギガント・バシリスクだろうが、四人と……いや、五人でな」

 ペテルの視線が姫に向く。

 アウレリアは真っ直ぐにその視線を受け止め、頷いた。

 

 討伐依頼を正式に受け、彼らは組合を後にする。

 外に出れば、北風が吹き抜け、空は灰色に曇っていた。

 重苦しい雲を仰ぎながら、ルクルットが肩をすくめる。

「ま、縁起でもねぇ空だな。けど、俺たちの旅にゃ似合ってるか」

 

 荷を背負い、街道を北へ。

 街並みが遠ざかるごとに、舗装された石畳は土の道に変わり、やがて荒野と林が広がっていく。

 

 野営の支度もまだ不慣れな姫は、歩きながら深呼吸を繰り返した。

 胸の奥に膨らむのは不安だけではない。

 未知の地へ挑む冒険者としての高揚もまた、確かにそこにあった。

 

/*/北部遠征 ― 道中の野営

 

 北部街道を外れて、さらに人里離れた荒野を進む。

 風は冷たく、夜になると山裾から凍りつくような空気が下りてきた。

 

 アウレリア姫にとっては初めての「本格的な遠征」だった。

 宮廷の庭園の散策や学院の宿舎生活とはまるで違う。

 草を刈り払い、焚き木を拾い、テントを張り、火を起こす――そのすべてが冒険者の生きた技術。

 

「よっ……と。ペテル、杭はこれでいいか?」

「おう、悪くねぇな。風上は少し角度を変えておけ」

「はーい」

 

 ルクルットとニニャが慣れた手つきで天幕を整え、ペテルが火を熾す。

 ダインは周囲の地形を見回し、低い声で呟いた。

「この辺り、夜は狼の群れが降りてくる可能性がある。警戒は二重である」

 

 その光景を見て、姫は目を丸くしていた。

「……皆さん、手際が……」

「はは、慣れっこだからな」ペテルが肩をすくめる。「俺たちの生活の半分は野営みてぇなもんだ」

 

清潔の魔法

 

 問題は風呂だった。

 

「えっ……お風呂は? 浴室は……?」

 思わず問いかける姫に、ニニャが苦笑いする。

「ありません……ので、これで」

 

 彼女が小声で詠唱すると、淡い光が姫を包んだ。

 すっと肌にまとわりつくような清涼感。汚れや汗が消えていく。

 

「……きゃっ……! こ、これは……」

 驚いて身を縮める姫に、ペテルが笑う。

「清潔の魔法だ。匂いも取れるし、まあ便利だぞ」

「そ、そういうものなんですね……」

 姫は頬を染めつつ、なんとか納得するしかなかった。

 

/*/川での水浴び

 

 夕暮れの小川。焚き火の煙が風に流れ、赤く染まった水面が揺れている。

 

「今日はここで水浴びできそうだな」

 ペテルが荷物を下ろし、周囲を見回す。

 

「姫様がいらっしゃる。男女は分けるべきだな」ダインが即座に言った。

「だな。こっちで先に入るから、姫様は向こうの茂みで」ルクルットが槍を肩に担ぎ、男組を促す。

 

 結局、交代制で川に入ることになった。

 だが裸になるのは危険な行為だ。片方が水浴びしている間、もう片方はすぐ近くで武装して待機し、警戒にあたる。

 

 ――その事実が、アウレリア姫の心を落ち着かなくさせた。

 

 ニニャが「さ、こちらで」と優しく手を引き、姫は渋々衣を脱ぐ。

 けれど木立の向こう側、わずか数歩の距離で男たちが槍や剣を手に待機しているのだ。

 

(……すぐ近くに、男の方々が……)

 

 頬が熱を帯び、指先がもどかしく震える。

 川の水は冷たい。なのに胸の奥はむしろ熱く、落ち着かない。

 

「姫様、肩まで浸かると楽になりますよ」

 ニニャがそっと声をかける。

「は、はい……」

 

 姫は水に身を沈めながら、耳に届く鎧の音や低い男たちの声に、さらに心を乱されていた。

 

「……これも……冒険なのですね」

 小さく呟いたその声は、水面の揺らぎに溶けて消えていった。

 

/*/夜の見張り

 

 野営の夜は冷え込んだ。焚き火の炎が揺れ、遠くで狼の遠吠えが響く。

 

 アウレリア姫は毛布にくるまれて横になったものの、なかなか眠れなかった。

 慣れない天幕、草の匂い、そして耳に残る見張りの足音や鎧の擦れる音。宮廷では決してなかった静けさと物音が、かえって眠気を追い払う。

 

(……どうしてこんなに落ち着かないのかしら)

 

 ついに姫は寝返りを打ち、焚き火のそばに立っている人影へと歩み寄った。

 見張りをしていたのはペテルとルクルットだった。二人は槍と剣を傍らに置き、低い声で交代の時刻を確認しているところだった。

 

「……眠れないのです」

 姫が小さく声をかけると、二人は振り返った。

 

「おや、姫様。やっぱり慣れないか」ルクルットが苦笑する。

「まあ、最初は誰でもそうだ。俺たちだって最初の遠征じゃ、夜通し起きてたぜ」ペテルが肩をすくめる。

 

 姫は火のそばに腰を下ろし、毛布を膝に掛け直した。

「……皆さんは、どうして眠れるのですか? こんな場所で、いつ獣が襲ってくるかもわからないのに」

 

「慣れ、だな」ルクルットが槍を撫でながら答える。

「それに、仲間を信じてるから。見張りがちゃんと起きてるって分かってりゃ、安心して眠れるんだ」

 

「信じて……」姫は小さく繰り返す。

 

 ペテルは火の粉を払いながら、真剣な声で付け加えた。

「姫様。あんたも俺たちを信じていい。狼が来ようが盗賊が来ようが、絶対に寝床までは寄せねぇ。……それが見張りの役目だ」

 

 姫は胸の奥に温かいものが灯るのを感じた。

 同時に、川での水浴びのとき耳にした鎧の音を思い出し、頬がほんのり赤くなる。

 

「……ありがとうございます。少し安心しました」

 

 焚き火の灯りに照らされた横顔は、王宮では決して見せなかったほど柔らかい笑みを帯びていた。

 

 やがて交代の合図でダインが現れた。

 彼は短く頷き、姫を見るとわずかに声を落とした。

「眠れぬのも経験のうちである。だが、体を休めることも戦いであるぞ」

 

「はい……分かりました」

 

 姫は毛布を胸に抱きながら天幕に戻った。

 火の温もりと男たちの言葉を胸に刻み、今度こそ眠りに落ちていった。

 

/*/翌朝

 

 夜明け前、空の端が薄紅に染まり始めた。

 冷え込みは厳しく、草葉には白い霜が降りている。

 

 アウレリア姫は、少し寝不足の目をこすりながら天幕から顔を出した。

 だが、表情には疲れよりも爽やかさがあった。

 昨日までの宮廷育ちの姫ではなく、どこか冒険者らしい凛とした雰囲気を漂わせている。

 

「お、姫様。ちゃんと起きられたじゃねぇか」

 焚き火の傍で朝食の干し肉を炙っていたペテルが、にやりと笑った。

 

「……ええ、寒さで目が覚めてしまいました。でも……不思議と嫌ではありません」

 姫は吐息を白くしながら答えた。

 

 ルクルットが槍を点検しながら茶々を入れる。

「寝不足顔だな。夢でも見張りやってたんじゃねぇのか?」

 

 姫は少しむっとして、頬を染めた。

「そ、そんなことは……! ただ……少し、考えごとをしていただけです」

 

 ニニャが小声で笑いながら、姫の肩に毛布を掛け直す。

「姫様、顔が少し赤いですよ。夜更かしはお肌に悪いです」

 

「……っ!」

 からかわれて、姫は言葉を詰まらせる。

 

 一方で、ダインは冷静に呟いた。

「夜に眠れぬのは自然である。だが、体力の消耗は遠征の敵だ。休めるときは必ず休むこと。……それが一人前の証である」

 

 その言葉に、姫は深く息をつき、真剣に頷いた。

「はい。心に留めておきます」

 

 焚き火の炎がぱちぱちと弾け、東の空に朝日が昇り始める。

 冷たい風の中、姫は干し肉を齧り、温められた木の実のスープをすすった。

 

(……眠れなかったけれど。みんなと同じ焚き火を囲んで、こうして朝を迎えるのは……悪くない)

 

 その小さな笑みを、漆黒の剣の仲間たちは確かに目にしていた。

 

/*/北部遠征 ― 初戦闘

 

 昼を過ぎ、北部の荒野は灰色の雲に覆われていた。

 吹きすさぶ風の中を進んでいると、ダインが立ち止まり、低く告げた。

 

「……来るぞ。魔獣の匂いである」

 

 ペテルが剣を抜き、ルクルットが槍を構える。ニニャは素早く呪文の詠唱に入った。

 アウレリア姫の胸が高鳴る。空気が張り詰めていく。

 

 次の瞬間――岩陰から灰色の巨狼が飛び出した。

 通常の狼の倍はある体躯、血のように赤い瞳。牙は岩をも噛み砕くといわれる魔獣《ロックウルフ》だ。

 

「でかっ……!」ルクルットが呻く。

 

「姫様、下がれ!」

 ペテルの声に、姫は反射的に腰のメイスを握りしめた。

 

 ロックウルフが一気に距離を詰め、咆哮とともに突進してくる。

 ダインが地に掌を突き、詠唱を放つ。

 

「――〈エンタングル〉!」

 

 地面から蔦が伸び、狼の足を絡め取った。だが、巨体の力に引きちぎられ、わずかに動きを鈍らせただけ。

 

「くそっ、暴れるぞ!」ペテルが剣で飛びかかる。

 刃が閃き、狼の肩を裂く。血飛沫が散った。

 

「――〈フレイム・ボルト〉!」

 ニニャの放った火球が狼の横腹を撃ち抜き、黒煙を上げる。

 

 しかしロックウルフは止まらなかった。

 蔦を引きちぎり、怒り狂ったように跳び上がる。狙いは――アウレリア姫。

 

「……っ!」

 

 巨獣の影が迫る。牙が振り下ろされる刹那――。

 姫はメイスを胸の前に構え、短く息を吐いた。

 

「――〈ショック・ウェーブ〉!」

 

 目に見えぬ衝撃がメイスの先端から放たれ、空気が爆ぜた。

 不可視の衝撃波が狼の顎を直撃し、巨体を跳ね上げる。

 ドンッ! と地を揺らす音とともに、ロックウルフは地面へ叩きつけられた。

 

「なっ……!」

 ルクルットが目を剥く。

 

 ペテルとルクルットが即座に左右から飛び込み、剣と槍で狼の体を貫く。

 さらにニニャの火球が重ねられ、とどめを刺した。

 

 ロックウルフが絶叫をあげ、やがて動かなくなる。

 

 荒い呼吸の中、姫はメイスを握ったまま立ち尽くしていた。

 指先が震えている。それでも瞳は輝き、胸の奥に熱が宿っていた。

 

「……姫様、今の……すげぇ衝撃だったぜ」

 ルクルットが驚愕と興奮の混じった声をあげる。

 

 ペテルは苦笑しつつ、肩を叩いた。

「まさか初陣でショック・ウェーブをぶち込むとはな。……あんた、やっぱ筋がいい」

 

 ニニャは安堵の笑みを浮かべる。

「でも……次は危険に身を晒しすぎないでください。仲間を信じて」

 

 ダインは短く頷き、冷徹な声を落とす。

「今の一撃、竜血との共鳴が表に出ていたである。……己を過信すべからず」

 

 アウレリア姫は深く息を吐き、メイスを下ろした。

 震えはまだ止まらない。それでも、心の奥では燃えるような昂ぶりが広がっていた。

 

(これが……冒険。命を懸けて、仲間と戦うということ……!)

 

 冷たい風の中、姫は初めて「戦場の匂い」を胸に刻みつけた。

 

/*/夜の焚き火 ― 初陣を振り返って

 

 夜。北部の荒野は氷のように冷たい風が吹き抜けていた。

 だが野営地の中央では、焚き火が赤々と燃え、薪がはぜる音が響いている。

 

 その火を囲み、漆黒の剣の面々とアウレリア姫が座っていた。

 干し肉を炙り、スープをすする。だが姫の胸の内には、さきほどの戦いの熱がまだ残っていた。

 

「……あの時、本当に食われるかと思ったぞ」

 ルクルットが肉を噛みながら笑った。

「けど姫様のショック・ウェーブ、効いたなぁ。狼の顎が跳ね飛んだの、俺、目ぇ丸くしちまった」

 

「まさか、あんな不可視の衝撃を直撃させるとはな」ペテルが頷く。

「低姿勢で構えて……突き出す時の踏み込みも悪くなかった。剣じゃねぇのに、武術の形になってた」

 

 褒められて、姫は頬を赤らめる。

「わ、私は……ただ必死で……! 怖くて、気づいたら……」

 

 ニニャがやわらかい声で言葉を添える。

「でも、それを実際に放てたのはすごいことです。訓練だけでは、あの瞬間の動きは出ません」

 

 姫は視線を落とし、手元のメイスを見つめた。

 柄に自分の手の跡が残る気がして、胸が熱くなる。

 

 すると、焚き火の向こうからダインが低く言った。

「ただし――忘れるな。今の一撃は竜血の力がわずかに滲んでいた。己の意思ではなく、血が応じたのだ」

 

「……!」姫は息を呑む。

 

「竜の力は強大だが、制御できねば己を焼く刃である。今日の戦いを喜ぶだけではなく、恐れることも学ぶべきである」

 

 重い声に、姫は神妙にうなずいた。

 けれど、その胸には確かな自負も芽生えていた。

 

(私も……皆の戦いの中で役に立てた。護られるだけじゃない……)

 

 ペテルが空気を和らげるように笑った。

「まあまあ。初陣でちゃんと一撃入れたんだ。大したもんだよ、姫様。乾杯しようぜ」

 

「……乾杯?」姫が首をかしげると、ルクルットが木杯を差し出した。

「水だ水! 冒険者流の祝いだよ!」

 

 焚き火の灯の下、木杯が打ち合わされた。

 姫も両手で杯を持ち、少し照れながら声を合わせる。

 

「かんぱい……!」

 

 火の粉が夜空に舞い上がる。

 それはまるで、アウレリア姫の未来に灯る小さな火のようだった。

 

/*/天幕の夜 ― 友のように

 

 夜は更け、焚き火の音も遠くなっていった。

 アウレリア姫は自分にあてがわれた天幕に戻ると、そこで毛布を肩に掛けて待っていたニニャと目が合った。

 

「眠れそうにないのですか?」

「……はい。昼間の戦いのせいか、胸がどきどきして……」

 

 姫が小さく笑うと、ニニャも頬を緩めた。

 毛布を少し広げると、姫はそこに腰を下ろした。

 

 ふたりの距離は、これまでの宮廷や学院では決して得られなかったもの。

 同じ年代の、同じ女の子同士。

 身分の差があっても、そんなことを忘れてしまうほどに、言葉は自然に流れ出した。

 

「……私、ずっと宮廷では年上の人にばかり囲まれていました。友達と呼べる人は、実はほとんどいなかったんです」

「わたしもです。ずっと本ばかり読んでいて、同い年くらいの子と何かを一緒にすることって、なかったんです」

 

 姫の瞳がきらりと光る。

「だから……ニニャとこうして話していると、不思議です。友達って、こんなにあっさりできるものなんですね」

「……わたしも、そう思います」

 

 二人はふっと笑い合い、気づけば自然に声を潜めていた。

 秘密の話をする少女たちの仕草だった。

 

「そういえば……」ニニャが少し茶目っ気を帯びた声で切り出した。

「ヘジンマールは、アウレリア姫のことが好きなんですよね」

 

「えっ……!」

 姫は顔を真っ赤にした。

 毛布を引き寄せ、視線を逸らす。

 

「ち、ちがっ……いえ、その……。どう、なんでしょう……?」

「気づいてないんですか? 姫を見る時のあの目、わたしでも分かりますよ」

 

 姫は心臓を押さえた。胸が跳ねる。

 あの竜の少年が、自分を見ていた視線――それが思い出される。

 

「そ、そんなこと……。私は……」

 言葉に詰まり、声が小さくなる。

 

 ニニャがにやりと笑う。

「じゃあ、姫は? ヘジンマールのこと、好きなんですか?」

 

「……っ!」

 返事を探す唇が震えた。

 否定したいのに、はっきりとした言葉が出てこない。

 

 その沈黙を、ニニャは楽しそうに眺めていた。

「ふふ……答えは、もう聞けました」

 

 姫は毛布に顔をうずめるしかなかった。

 それでも、笑い合える相手がいる夜は、何よりも心強かった。

 

/*/揺れる心 ― 選択の行方

 

 ニニャと笑い合った後も、アウレリア姫はなかなか眠れなかった。

 天幕の布越しに聞こえる焚き火のはぜる音や、外を巡回する足音が、不思議と胸を締め付ける。

 

(……ヘジンマールが、私を……好き?)

 

 ニニャの言葉が耳から離れなかった。

 思い出すのは、竜の姿で空を舞い、自分を背に乗せてくれた日の風の感触。

 人の姿で見せる、不器用で真面目な横顔。

 そのすべてが、胸の奥を温かくしてしまう。

 

 けれど同時に、学院で見た図書塔の光景が脳裏をよぎる。

 積み重ねられた知識の海、魔法理論の講義、芸術に触れる時間。

 自分の未来を広げてくれる可能性が、そこには確かにあった。

 

(……学院に入れば、私はもっと学べる。帝国のために、多くのものを守れるかもしれない)

 

 だが、冒険の道を選べば――。

 漆黒の剣と共に笑い合い、時には命を懸けて戦う日々が待っている。

 不便で危険だけれど、どこか輝いていて、自分の血が沸き立つような感覚を与えてくれる。

 

(冒険か、学びか……そして――)

 

 心の奥深くで、三つの想いがせめぎ合っていた。

 一つは学院での学びによる未来。

 一つは冒険者としての自由で鮮烈な日々。

 そしてもう一つは、ヘジンマールへのかすかな恋心。

 

 毛布を抱きしめ、姫は小さくため息をついた。

「……どうすればいいのでしょう、私は」

 

 その呟きは夜の闇に吸い込まれ、答えはまだ返ってこなかった。

 

 





コイバナ良いですね。ほのぼのやったぜ。
おれはやってやったぜ。

次回!
第119話:北部遠征そして

巨大モンスターを倒した後はお楽しみですよね
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