オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~ 作:ぶーく・ぶくぶく
・オリジナル魔法が出てます。D&Dの魔法を参考に独自解釈しています。
・今話と次話には人によってはオーバーロードの否定と受け取れる独自解釈(だと思います)が存在します。ぶーくはモモンガさんやナザリックの面々の救済が欲しいと書き進めておりますが、許容できる範囲は個人によって違いがありますので、場合によっては不快に感じる方もあるかもしれません。
二次創作における独自解釈、捏造は心の健康を損なう場合もあります。
用法用量を守って正しくお使い下さい。(私が言われる方ですね。すみません。
2015.10.20 7:00頃 誤字修正コンプクレックス→コンプレックス
この世の全ての財宝が集められたようなナザリック地下大墳墓宝物殿を、ジョンは《フライ/飛行》で進んでいた。
源次郎が整理したのだが、余りに量が多くなり金貨や宝石、聖遺物級未満のレアリティの低いアイテムは、既にもう無造作に保護の魔法だけをかけて積み重ねられている。
ドラゴンであれば喜んで寝床にするのではないだろうか。
見慣れている光景だが、現実になると迫力が違う。ゲーム時代は放置したアイテムでも現実となってはカッコ良く見えるかもしれない。あれとかこれとかどうだろうと考えている内に宝物殿の奥の扉へ辿り着く。
宝物殿の奥の扉、黒い闇が扉の形をとったような扉に浮かび上がった金の文字。それに対応するパスワードで扉を開くと、ジョンは更に奥へ進む。
『Ascendit a terra in coelum, iterumque descendit in terram, et recipit vim superiorum et inferiorum. 』
「かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう……タブラさん、早くこないとタブラさんの分なくなっちゃうよ」
常になく、その声は寂しげでもあり、何れ仲間が戻ると信じているようでもあった。
開かれた闇の扉の向こう。これまでとは打って変って、整理の行き届いた博物館の展示室のような中をジョンは歩を進めていく。
目的地は終着の待合室だ。がらんとしたその部屋にはソファーとテーブルだけがおかれ、それぞれの壁には各宝物庫からの出入口と霊廟への入口が口を開いている。
「ようこそおいで下さいました、至高の41人が御一人カルバイン様!」
カツンと踵を合わせる音と共に、現れたパンドラズ・アクターがオーバーアクションで敬礼をした。
ご苦労と、ジョンもパンドラと比べれば、大分、砕けた敬礼を返す。
モモンガからすれば悶える動く黒歴史だが、ジョンからすれば『軍服+オーバーアクション+びしっと決まった敬礼=カッコイイ!!!』である。
つるっとしたタマゴ顔に、マジックで塗りつぶしたような黒い3つの丸でしかない眼と口も好印象だ。表情の無い顔で、表情が無いからこそのオーバーアクション。
「ご依頼ありましたアイテム、無事に発見致しました」
互いに敬礼を解くとパンドラは早速ジョンに依頼されて捜索していたアイテムを取り出す。
それはハンカチの上で鈍く輝く、飾り気の無い指輪だった。
「ありがとう、パンドラ。これはレア度の低いアイテムだが、重要度で言えば、今後はモモンガさんにとって神器級に匹敵するアイテムとなる。この短時間で良く見つけてくれた。お前がいてくれて本当に良かった。ありがとう」
「勿体無い御言葉です!」
ジョンの感謝の言葉にパンドラズ・アクターは勢い良く踵を打ち合わせ、指先までピンと伸ばした綺麗な敬礼で応えた。
モモンガがギルメンの思い出を残す為に創造した彼は、宝物殿から出た事が無かった。
その彼が至高の御方より初めて頂いた感謝。それが自らの創造主たるモモンガにとって極めて重要なものであった事に、パンドラズ・アクターは心から感謝し、忠誠を新たにしていた。
ジョンからすれば、現実となった宝物殿の中からレア度の低いアイテム――この場合は魔力系第四位階の魔法が一つだけ使える――を雑多な平置きの中から探すのはゲーム時代の検索機能でもなければ無理な話であったし、規模の小さい自室のドレスルームも探せば同じ物がある筈だが、自分で探すより宝物庫の領域守護者であるパンドラに頼む方が早いと食事の際にメッセージを送り、アイテム捜索を依頼していたのだった。
パンドラは設定上マジックアイテム・フェチであるし、モモンガに創造されただけあって律儀に平置きのアイテムもある程度把握している――モモンガも自身の取得魔法700以上を暗記している――だろうと考えての事だった。
「いや、本当に助かったよ。これだけある宝物を把握してるとか、流石はモモンガさんのシモベだ」
ジョンの言葉に感極まった様に静止するパンドラズ・アクター。
そんな彼を前に、ジョンは課金アイテムのインベントリ拡張バックを幾つも取り出す。ショートカット登録などは出来ないが、ギルドを持たないPCも大量のクリスタルなどを保有できるよう追加されたアイテムだ。当然、廃課金者であるジョンが持っていない訳も無い。
「これはアインズ・ウール・ゴウン以外の者達から貰ったアイテム類なんだが、俺も中身を全部見ていない。整理して宝物庫にしまって置いてくれないか」
「今、この場で少々覗いても宜しいですかな?」
「構わないぞ」
宝物庫に追加される久しぶりの外部からのアイテムと言うことで、マジックアイテム・フェチであるパンドラズ・アクターはフェチズムを刺激されたのだろう。
早速許可を取り、ざっと中身へ目を通し始める。
「ふむ、確かに何人分ものアイテムが雑多につめられておりますな。――これは!?」
「どうした?」
「ご覧下さいカルバイン様」
驚愕の声を上げたパンドラズ・アクターに示された拡張バック。パンドラに示されたアイテムの魔法鑑定の結果はジョンには分らないが、ユグドラシルで最重要アイテムであったそれは、見ただけで何か理解できてしまった。
「ワールドアイテム、だと?」
搾り出すようなジョンの声は一瞬の後に宝物庫全体に響くほどの大音声となった。
「――あああほかぁぁぁ! 引退するからって!! サプライズにもほどがあるわぁぁぁッ!!!……メッセージと動画スクロール? これは……はぁ、こっちの方がマジでサプライズだ。パンドラ、ワールドアイテムは使わないから、このまま片付けてくれ」
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モモンガの私室もジョンの私室と見た目は同じだ。
二人とも自室は特にカスタマイズをしていないので、デザイン担当が製作したロイヤルスイート私室基本セットの厳かで趣きのあるつくりそのままである。
その扉から延びる真紅の絨毯の先、階段を上って巨大な執務机がある広間は、メイド達によって晩餐の用意が済まされ、既に食事も始まっていた。
前々回のジョンの食事は、今朝の早朝と言っても良い時間だったが、今回はナザリック時間で19時少々、夕食に相応しい時間と言ったところか。
壁際には凛と背筋を伸ばした姿勢で一般メイド達が立ち並び、一歩前にプレアデスとセバスが並んでいる。
長テーブルの主人席にはモモンガ、その右手側の席にはアルベド、左側にシャルティア。主賓席には人狼形態のジョンの姿があり、食事を取りながら、主にジョンとモモンガの間で会話が弾んでいるようである。
しかし、広間にいる者達はメイドどころか、シャルティアやアルベド、セバスですらも、気もそぞろにモモンガへちらちらと視線をやるのを止められないでいた。
上座に座る至高の41人の頂点たるモモンガ。
だが、その姿はなんと黒髪黒目の青年だった。骸骨ではなく、きちんと肉があり皮もある生身の姿。
それは彫りの深い顔立ちで温厚そうに見えるが、眼差しは鋭く獲物を狙う鷹のようだった。服装はいつもの豪奢なローブではなく、ジョンが持つものと同じ、ホワイトブリムのデザインした宇宙騎士の衣装をモチーフにした前合わせの服で、色だけがローブと同じく藍色を主体とし、金糸の刺繍の入ったものとなっていた。
「モモンガさん、良く似合ってるじゃないか」
「こんな方法、良く思いつきましたね」
黒髪黒目の
料理長が腕を奮った料理に舌鼓を打つその姿に、ジョンは目を細めながら、水も飲めただろうと問う。
「ええ、飲めましたし、食事も美味しく頂けています。
魔力系第四位階魔法《自己変身》。自分より強いものには変身できないし、肉体的な弱点――呼吸の必要性――も再現されるし、肉体的な強さも精々50Lvぐらいまでしか再現できないと使い出の無い魔法でしたが……」
まさかこんな使い方があるとは……モモンガはしきりに感心していたが、ジョンがそれに気がついたのは偶然だった。
食事の際にクミンの香りのような、ゲームではフレーバーテキストに記載されているものまで現実になっている事に気がつき、過去、弱体化する為に良く使っていたアイテムの効果、魔力系第四位階魔法《自己変身》のテキストに『変身した生物の通常の範囲内での基本的な肉体能力を得る(スライムの酸の分泌など特殊攻撃に属するものは得られない)』と言った説明があったのを思い出したのだ。
変身した生物の呼吸方法を得られる。通常の範囲内での基本的な肉体能力を得る。
これは逆に言えば、呼吸をしなければ死ぬと言うことだ。
呼吸の必要があるのなら、新陳代謝をしていると言う事だ。ならば、通常の範囲内での基本的な肉体能力に同じ新陳代謝である《飲食の必要性》も含まれるのではないだろうか?
そうであればモモンガを《自己変身》させれば食事を共にする事も出来るのではないだろうか。
ジョンはそう考えたのだ。
そうして宝物殿から《自己変身》の効果が込められた指輪をパンドラに捜索させ、モモンガを説得して人間に変身させた。その際、モモンガのイメージで変身させると自分だけ元の(鈴木悟の)姿になると思われたので、クリエイトツールを使って人型の外装イメージを予め設定しておいたりもした。
だが、この方法はモモンガが一人で転移していたならば、決して使わなかっただろう。
ステータスが50Lv相当まで減少すると言う事は、下手をするとプレアデスにも劣る能力になるという事だ。アンデッドが持つ様々な肉体的特殊能力も変身中は封じられる(精神作用無効化、魔法使用能力など内面に属するとされるものは基本的に維持される)。何より窒息死、首切りによる即死など、物理的に大幅に弱体化する事を、慎重なモモンガは決して受け入れなかっただったろう。
しかし、この世界線におけるモモンガには、共に転移した仲間がいた。
共に背を守りあう仲間。最後までナザリックを共に守った仲間。
その仲間がシモベ達を信じ、シモベ達がその信頼に応える姿を見せていた事が、モモンガにこの選択肢を選ばせた。
其れは夢幻の中で見る奇跡に違いない。
この透き通るような奇跡の雰囲気は、モモンガがとても大切に想うNPCの一人であるアルベドのとても荒い鼻息と、仲間であるジョン本人によってぶち壊されていたけれど。
「これで、アルベドを阻む障害がまた一つ減ったな!」
そう言って、ぐるるッと喉を鳴らすような笑い声を上げるジョン。
「く、くふー! カルバイン様、ありがとうございます!!」
「あ、あの、カルバイン様。カルバイン様は、私……わらわは、私は、モモンガ様に相応しくないとお考えなのでしょうか」
席次の関係でモモンガから見て、2番にアルベド、3番にシャルティアとなっている事。またジョンが用意したモモンガの外装がアルベドと同じ黒髪であった事にも不安を覚えたのだろう。シャルティアは郭言葉モドキも崩れ、縋るような目でジョンへ問いかける。その姿にジョンではなく、罪悪感を覚えたモモンガがフォローに入った。
「そ、そんな事は無いぞ。シャルティア、お前は我が友ペロロンチーノさんが作り出したNPCだ。そのお前が私に相応しくないなどあるわけがない」
「ああ、モモンガ様」
「おい骸骨、無闇に好感度を稼ぐんじゃあない。――シャルティア、俺は今からお前に辛い事を伝えなくてはならない。俺は、今のお前の想いを応援してやる事は出来ない」
「「「え?」」」
三者三様に驚愕する中、何時になく真剣で真摯な眼差しでシャルティアに語りかけるジョン。
脳裏には熱くエロを語った友の姿。自身の理想を詰め込んだシャルティアの素晴らしさを、言葉では語り尽くせぬと、しかし、それでも語り続けた友の姿が蘇っていた。
「ペロロンチーノさんは自分の理想全てを詰め込んでシャルティアを創造した。お前の全て……胸のサイズにコンプレックスを持ち、パッドをメガ盛りで恥じらう様さえも、ペロロンチーノさんの理想の姿。今、ナザリックに残る41人の2人、俺とモモンガさんでは設定的にお前がモモンガさんに想いを寄せてしまうのもわかる。だが、俺にとってお前は――
「嫁! 私が!! ペロロンチーノ様の!!!」
「最初からペロロンチーノさんはそのつもりでお前を創造したんだ。ペロさんと再会できる可能性もまだある。だから、お前の大事なものは、ペロロンチーノさんの為に取っておいてほしいと俺は思っている」
「も、勿体無いお言葉です」
く、くひっ、くひひひっ。
変な笑い声のような音を漏らしながら「嫁、私が、ペロロンチーノ様の」と、壊れた音声再生機の様に繰り返すシャルティア。
「……シャルティアの誕生秘話もしたし、せっかくだからアルベドの話もしようか」
「私の、ですか?」
「タブラさんが自分の理想を詰め込んだんじゃないのですか?」
「違うよー。タブラさんはアルベドをモモンガさんの嫁って定めてったけど、実はこれ、俺達の総意に近いって言ったら……どう思う?」
「え?」
「至高の御方々の総意!!」
ジョンの言葉に、アルベドは恍惚とした表情で自身の創造主であるタブラ・スマラグディナと、この場にいない41人へ感謝の祈りを捧げ始める。
何か言いたげなモモンガを遮り、ジョンはにやりと笑って話を続ける。モモンガは、まったくもって嫌な予感しかしなかった。
「モモンガさん。ギルマスの側に仕える守護者統括をつくるのにあたって、タブラさん一人でアルベドを作ったと本当に思ってる?」
「? それはどういう……」
訝しげなモモンガへジョンは「例えばアルベドの鎧、ヘルメス・トリスメギストス。神器級のあれだって、タブラさん一人じゃ素材集め切れないよね。タブラさん、たくさんNPCつくったけど、アルベドの装備はずいぶん整ってるって思わない?」そう言って、ニヤニヤと笑い出す。
「モモンガさん、自分の気に入らないNPCを側に置いた? 守護者統括として受け入れた? 設定が化学反応起こして一寸(?)暴走気味になったけど、外見とか側に控えてくれるとことか、どうだった? 好みに合ってたんじゃない? 嫁と言われても否定しなかったよね?」
「え?」
「アルベドを作るにあたっては皆で協力して、モモンガさんの好みをリサーチしたんだよー。いやーモモンガさん中々自分の好みを口にしないからさー♪」
本当に大変だったよーと、とうとう腹を抱えて笑い出すジョン。まさかメイド属性が無いとは思わなかったけどさーと、何が可笑しいのか笑い続ける。
「ええー!?」
驚愕するモモンガを余所に、ジョンはアルベドへせっせと「そう言うわけだから、お前の製作には俺達のほとんどが関わっていたんだゾ☆」と教え込む。
「絶対に設定を書き換えるって思ってたけど、最後まで弄らなかったからタブラさん、自分で書き換えたんだね。まったくさー、改変前後で文字数ぴったり一緒とか凝り過ぎでしょうー」
「で、では私は始めからモモンガ様のお側に……」
「俺達は最初からそのつもりだったよ」
く、くふふふーと変な声を上げながら悶えるアルベドに「がんばれ、アルベド。お前がナンバーワンだ」と、何処かの野菜王子のセリフをせっせとかけてやる駄犬。
「ああ、至高の御方々。偉大なる支配者にして慈悲深き私の創造主。不敬にも一時でも至高の御方々の不在に不安を覚えた私に、このような幸せを下さり、誠に、誠に、ありがとうございます。私は、私は――愛する御方を愛する為に生まれてきたのですね」
細く白い指を組み、この場にいない41人へ祈りを捧げるアルベド。その金の瞳からは、はらはらと喜びの涙が溢れ出す。これだけ見るならまさに聖女のよう――驚きの白さだ。
シャルティアはシャルティアで、壊れた音声再生機のように「嫁、私が、ペロロンチーノ様の」と繰り返しながら、涙どころか鼻からポタポタと忠誠心の発露が溢れ出て、目も虚ろな感じになっている。
そんな二人の様子に、またNPC達を泣かせてしまったとジョンは頭を掻く。
それはそれとしてだ。
「あ、ルプー。ドラゴンの霜降りステーキをもう1枚頼む。今度はレアで。あとデザートのアイスもマシマシでお願い」
まあ、二人とも100Lvであるし、多分、大丈夫だろう。
《おいこら駄犬、あんまり調子に乗ってると超位魔法喰らわすぞ》
《モモンガさんの好みを“皆で”リサーチしたのはマジだよ》
《マジか!?》
《あと言い出したのは、るし★ふぁーさんだから。俺じゃないから》
《ふーん》
《お願い、信じて》
日頃の行いって大事です。大体るし★ふぁーさんの所為なのに自分の所為になるとか。
そう言えば、何処かの駄犬も姉妹に「印象って、大事よね」と、言われていたとか。
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無事に(?)食事も終わり、応接室のソファーではモモンガを中心にして左右にアルベドとシャルティアが座る。
食後の紅茶や珈琲の香りが漂う中、その向い側でジョンは動画スクロールを展開し、上映の用意を行っていた。
「最後のダーシュ村防衛戦の後、一緒に開拓してた人達から引退するからって色々貰っていたんだけど。今日、宝物殿でパンドラと開けてみたら、びっくり。なんと『【最終回】さようなら僕らのダーシュ村【防衛戦】』ってタイトルのついた動画が入ってました。あー悪い事したな、全然気がつかなかった。お礼のメールも送ってないよ」
「はあ、それは良いんですが、この状況は?」
左右を肉食系女子に挟まれ、居心地悪げにモモンガが言う。ジョンはその表情をしばし眺めると。
「……シャルティア。すまないが、今日はアルベドに譲ってやってくれるか」
そのジョンの言葉にシャルティアは立ち上がり、モモンガへ一礼して下がる。
間髪を入れず「シャルティア、そこで寂しそうな表情を作った後、小さく微笑んでからモモンガさんへ一礼するんだ」と、ジョンから演技指導が入る。
言われた通り、素直に表情を作り、一礼し直すシャルティア。
「……ッ! シャルティア……」
「なっ!?」
効果はばつぐんだった。
シャルティアの寂しげな表情に息を呑み、思わずと言った風に声をかけてしまうモモンガ。それに驚愕するアルベド。
一瞬の後、そこにはアルベドへ勝ち誇った
「カ、カルバイン様! 私にも、私にもご指導を!!」
「嫌でありんすねぇ、おばさんは。せっかく、モモンガ様のお好みの姿を頂いたのに、それを生かせないとか」
《お前いま演技指導を貰ったろ。なんと言うブーメラン》
《はあ、本当に俺の事リサーチしたんですね》
《エロとフェチについては、ペロロンチーノさんが頑張りました》
《ペロロンチーノォッ!!!》
メッセージでそんな話をしながら、上映の用意を終えたジョンはモモンガとアルベドの座るソファーの方へ戻る。
腕を組み、二人を見下ろしながら考えると、アルベドをソファーの端に移動させ、モモンガを引き倒してアルベドに膝枕をさせる。
当然、驚き、次いでNPC達の皆に見られている事に羞恥を覚えたモモンガは立ち上がろうとしたが、アルベドは守護者統括としての能力を存分に活かし、先ほどのシャルティアのような寂しげな表情で微笑みながら、静かに問いかけた。
「……モモンガ様、ご迷惑でしょうか?」
そう言ってのけたのだ。
「……ッ! い、いや、そんな事はない。そんな事はないぞ」
そして、起き上がろうと力の入ったモモンガの肩にそっと手を乗せれば、モモンガは力を抜き、アルベドの膝に身を預ける。
モモンガが自ら身を預けた事に、アルベドはこれまでに無い幸福と達成感を感じていた。微かに聞こえるシャルティアのギリギリと言う歯軋りも良いBGMだ。
《アルベド、GJ! 今日はそのまま肩とか頭を撫でる以上はするなよ。モモンガさん逃げるから》
《カルバイン様、今日は誠にありがとうございます。このアルベド、心よりの忠節を誓います》
《って、アルベド。涎、涎》
セバスに(涎を)拭く物を取らせているアルベドを見ながら、ジョンは(うーん、モモンガさん大丈夫かなぁ)と、チョロイン過ぎるギルマスを今更ながら心配していた。
・《自己変身》はD&Dの魔法を参考に効果を解釈し、描写しました。
精神作用効果無効はなくなりませんが、人の温もり(物理)は感じられます。
ジョンは5~8話にかけて、次のような段階を踏んで今回の行動に出ました。
1.この世界の食材を集めてラーメンとか作って、モモンガさんと美味い不味いとわいわいやりたい。
2.料理長の飯美味ッ!! これはモモンガさんにも食べさせなければ!!
3.肉体がアンデッド(骸骨)になったから、飲食不要。
4.骸骨でなければ良いんじゃね?
5.変身って漢のロマンだよね?
次回は【最終回】さようなら僕らのダーシュ村【防衛戦】視聴となります。