オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第138話:最後は力技

/*/ナザリック地下大墳墓:影の王による情報収集

 

地下大墳墓の深奥。冷気が床石に染み渡り、微かに光る魔力の結界が辺りを包んでいる。盟主は黒い霧に覆われ、意志を奪われたまま広間の中央に鎮座していた。

 

その前に立つのは影の王、オーバーロード・ワイズマン。黒い法衣を纏い、杖を手にした魔法使いの姿だ。魔力と威圧感だけで空間を支配している。

 

オーバーロード・ワイズマンは「アンデッド支配」で、対象のアンデッドの意思を完全に掌握する。盟主はその力の前に、抵抗する余地を与えられず、目の光が虚ろに揺れるだけだった。

 

「盟主よ……全てを話すが良い」ワイズマンの低く響く声が石壁に反響する。

 

ワイズマンは杖を掲げることなく、能力の気配だけで盟主を縛り上げる。アンデッドである盟主は、自らの意志を保つことすら許されず、記憶と知識がワイズマンの思考に流れ込む。

 

十二高弟の現在の所在と能力

ズーラーノーンの暗躍計画

都市国家連合内での潜伏先や拠点

「深淵なる躯」との接触計画

 

盟主は口を開かずとも、全ての情報がワイズマンの掌中に集まる。

ワイズマンは得た情報を心の中で整理し、必要な部分をナザリックの他者のために転送可能な形に整える。

 

「なるほど……深淵なる躯は単なる伝説ではない。計画は着実に進んでいる」

 

盟主に残る霧を再び纏わせ、安全に隔離した後、ワイズマンは広間に静かに立つ。ナザリック地下大墳墓は、彼の生得の力によって掌握された盟主の知識で満ち、重苦しい沈黙が支配した。

 

「これで、次の手を打つ準備は整った……深淵なる躯も、十二高弟も、我が掌中にある」

 

影の王の瞳は微かに光り、至高の御方もお喜びになるであろうことを思わせる静かな決意を映し出していた。

 

 

/*/ ナザリック・報告会議

 

 

ナザリックの一室。静かな書斎のような広間に、モモンガ、ジョン、ぐりもあが揃っていた。ワイズマンから得られた盟主の情報がテーブル上に並ぶ。

 

モモンガは眉を寄せ、魔力の流れを頭の中で整理する。

「なるほど……『深淵なる躯』との接触計画は、ここまで具体的な内容があるのか」

 

ぐりもあは黒髪の少女の姿で浮遊し、魔力の残滓を観察しながら小声でつぶやく。

「でも、情報としては少し不確実ですね……接触計画の日時や場所は特定できません」

 

ジョンは肘をつき、考え込むように視線を上げる。

「ふむ……確実性に乏しいな。単純に待ってるだけじゃ埒が明かん」

 

ぐりもあは頷く。

「僕にできることはありますか?」

 

ジョンは口角を少し上げ、提案する。

「ぐりもあさん、魔力視覚を持ってたよね? 上空から大きな魔力を探すってのはどうだ? 竜王クラスの魔力なら、空からでも感知できるだろ」

 

ぐりもあは光を揺らし、思案する。

「……なるほど。直接潜入するより安全ですし、魔力の発生源を特定するには良い方法かもしれません」

 

モモンガも手を組み、真剣な眼差しでうなずく。

「よし、それで行こう。ぐりもあさん、上空からの偵察を頼む。発見できれば、我々の作戦は格段に有利になる」

 

ぐりもあは光を輝かせ、浮遊位置を調整する。

「了解です。可能な限り正確に探します」

 

書斎の空気が引き締まり、ナザリックの三者は新たな一手に備え、黙々と準備を整え始めた。

 

 

/*/ 高高度偵察

 

 

ぐりもあは光の少女の姿で空中に浮かび、ナザリック上空から地上の魔力の発生源を探し始める。ジョンはその傍らを護衛するように飛び、軽く身構えたまま観察する。

 

「オーロラが出た時は綺麗だったな」ジョンが、どこか懐かしげに空を見上げる。

 

ぐりもあは眉をひそめる。

「この低緯度では、オーロラは見られないでしょう」

 

ジョンは肩をすくめて、少し楽しげに説明する。

「いやー、俺がマイクロブラックホールに飲み込まれて脱出した時に、マイクロブラックホールを蒸発させて爆発させちゃって……なんかガンマ線とかが放出された影響で、オーロラみたいな現象が出たんだ」

 

ぐりもあは唇を引き結び、小さくつぶやく。

「……その大騒ぎで、今回の奴に目をつけられたんじゃないですか?」

 

ジョンの目が一瞬輝く。

「なるほど! そうか、今回の敵が俺の過去の大騒ぎに注目して……だから今こうして警戒されてるのか!」

 

ぐりもあは空中で光を揺らし、少しため息をつく。

「……君は本当に、いつも人類が関わるレベルの騒ぎを起こしますね」

 

ジョンはにやりと笑い、空中で手をひらひらさせる。

「だって、俺にできるのは全部やらなきゃ意味ないだろ?」

 

二人のやり取りを背に、ぐりもあは魔力視覚を通して地上の異常な魔力の兆候を追い、都市国家連合内の「深淵なる躯」とズーラーノーンの動向を探っていった。

 

 

/*/ アーグランド評議の偵察

 

 

ぐりもあは高高度から目を凝らし、ジョンが指差す方向を見やる。

 

「あっちがアーグランド評議で、竜王が五柱いるんだけど、見えるかな?」ジョンが軽く身を乗り出すように尋ねる。

 

ぐりもあは魔力視覚を広げ、空中から地上の魔力を探査する。すると、巨大なドーム状の光の層が複雑に重なり合う光景が浮かび上がった。

 

「ああ……なんか、巨大なドームみたいな魔力光が重なって見えますね」ぐりもあが答える。

 

ジョンは目を細め、笑みを浮かべる。

「なるほど……竜王が五柱もいると、この光の層が干渉してこうなるのか。すごいな、やっぱり竜王クラスはスケールが違う」

 

ぐりもあは光を揺らしながら頷く。

「ここまで強力な魔力が同時に存在している場所は、私でも少し感覚が混乱します……でも、こうして確認できるのは、かなり有益ですね」

 

二人は空中で互いの視覚をすり合わせながら、都市国家連合内の重要な魔力拠点の状況を把握していった。

 

ぐりもあは高空で魔力視覚をゆっくりと巡らせながら、ため息混じりに呟く。

 

「これ、しらみつぶしに見るとなると、かなり時間かかりますね……」

 

ジョンは翼を羽ばたかせながら横で答える。

「まぁ構わないさ。ゆっくりでも確実に情報を押さえればいい。それに、上空からの景色も悪くないだろ?」

 

ぐりもあは視覚を広げ、下界の街並みや森、川の流れを眺める。

「……確かに。自然の景色が綺麗で、飽きませんね。魔力の光景と相まって、ちょっと幻想的です」

 

ジョンはくすりと笑う。

「ほら、任務中でもこういう楽しみがあると、気分が楽になるだろ」

 

ぐりもあは光をゆらりと揺らしながら頷き、再び魔力視覚に集中した。

「ええ、任務の効率を上げつつ、こうして眺めるのも悪くないです……さあ、次のエリアを探しましょう」

 

二人は魔力の翼を広げ、上空をゆったりと巡りながら、地上の魔力の痕跡をひとつひとつ確かめていった。

 

ぐりもあは魔力視覚をさらに拡大し、眉をひそめた。

 

「……あれ? アーグランド評議国からもっと離れた位置に……なんか、変な色の魔力光が見えます」

 

ジョンが横から覗き込むように身を寄せる。

「変な色?」

 

「うん……普通の魔力光なら滑らかに光が広がるのに……あれは、まだら模様っていうか……なんだろう。気持ち悪い、ぶつぶつの集合体みたいに見える」

 

ぐりもあは視覚をさらに拡大して観察する。すると、魔力の斑点が脈動するように動き、光が寄せ集まっては散り、また一つにまとまる奇怪な挙動を見せた。

 

「……大きさは竜王級。けど……ただの竜王の魔力とは質が違う。もっと……不気味だ」

 

ジョンは腕を組み、真剣な表情を浮かべる。

「ぶつぶつの集合体……まるで何かの群体みたいだな。竜王クラスの個体がそんな魔力光を持つなんて聞いたことがない」

 

ぐりもあは小さく震えた。

「……これは、もしかして……『深淵なる躯』に関係してるのかも」

 

ジョンは目を細め、ぐりもあの言葉に頷く。

「……だとしたら、でかい収穫だな」

 

冷たい風が高空を吹き抜ける中、二人は奇怪な魔力光を注視し続けた。

その光は、ただの竜王級存在ではあり得ない、不穏な気配を放っていた。

 

――まるで、見られていることすら気づいているかのように。

 

 

/*/ ケイテニアス山麓 /*/

 

 

山を覆う濃い霧と夜の闇。その中を、地上の目には映らぬ影が蠢いていた。

シャドウデーモンの群れが、石壁の裂け目を縫うように音もなく滑っていく。

その足取りは風よりも軽く、存在そのものが空気に溶けるかのようだ。

 

さらに空の高みを飛ぶのは、ナザリックの異形――バイアクヘー。

巨大な翼を持つ異次元の怪物は、耳障りな羽音とともに、異界の感覚器で山全体を観察していた。

その視覚は、光を超えた魔力の波長をも捉え、山脈にこびりつく「死の瘴気」の流れを丸裸にする。

 

「報告します……」

影界を通じて、彼らの声は直接ナザリックの会議室に届く。

 

オーバーロード・ワイズマンの影に寄り添うように、立体映像が浮かび上がる。

ケイテニアス山全体を俯瞰する地図が描き出され、点々と黒い霧の塊が瞬いていた。

 

「……確認されたのは大量の死霊反応。規模は都市ひとつを埋め尽くすほど。

 しかも、その中心……洞窟網の奥深くに、異常に巨大な魔力核を検出」

 

バイアクヘーの複眼に映るその核は、ただの竜王級ではない。

ぶつぶつとした集合体のような光、数十万の魂が凝縮され、うねり、脈動している。

 

「……深淵なる躯。あるいはそれに連なる存在。

 瘴気の質から推測するに、アンデッドを操る竜王――キュアイーリム」

 

報告を聞いたモモンガは腕を組み、沈黙した。

その背後では、ジョンとぐりもあが不気味な地図を見上げている。

 

ジョンは苦笑しつつ呟いた。

「……山ひとつが丸ごとゾンビの巣かよ。面倒どころじゃないな」

 

ぐりもあは冷ややかに答える。

「しかも、この密度……放っておけば、動くだけでアーグランド評議国が消える」

 

ワイズマンは静かに杖を突き、影の中から次の指令を下した。

「偵察を続行しろ。洞窟の位置、出入り口、死霊の配置――

 全て洗い出せ。キュアイーリムを抑えるには、一瞬の隙を突かねばならん」

 

シャドウデーモンたちは闇に溶け、バイアクヘーは不気味な羽音を残して山奥へと消えていく。

 

ケイテニアス山脈――その深淵に潜む竜王の棺が、徐々にナザリックの目に曝されつつあった。

 

 

/*/ 偵察報告 ケイテニアス山 /*/

 

 

ナザリック会議室。

闇より現れたシャドウデーモンが跪き、バイアクヘーの幻視が空中に投影された。

 

1.地形と洞窟構造

 

ケイテニアス山の南側に、隠された大規模洞窟の開口部を確認。

螺旋状に掘られた地下迷宮は深度およそ1,000メートルに及ぶ。

中央の大空洞は直径約400メートル、そこで異常な魔力を観測。

 

2.アンデッド戦力

 

山中に存在するゾンビは推定120万体。

これらは散開しているのではなく、中央の大空洞に集結。

ゾンビは融合・凝集し、高さ150メートルを超える竜王の外装を形成している。

 

外装は常に蠢き、崩壊と再生を繰り返しており、攻撃が通用するか不明。

 

3.竜王本体 ― キュアイーリム

 

外装の中心に「竜王の核」と推測される存在を確認。

外装のゾンビ群は、すべてその意思によって自在に操られている。

魔力反応は竜王級。ナザリックの上位守護者に匹敵、あるいはそれ以上。

移動はせず、ケイテニアス山に留まって「潜伏」している。

 

4.特記事項

 

外装ゾンビの再生速度が異常。斬撃や炎熱では完全破壊に至らず、瞬時に補填される。

 

核に直接干渉しなければ撃破は不可能と推測。

外装の維持には膨大な制御魔力が必要なため、活動範囲は限定的。

ただし、山そのものを揺るがす規模で外装を動かす潜在力を有する。

 

報告が終わると、広間に重苦しい沈黙が落ちた。

投影に浮かぶのは、蠢くゾンビの集合体が作る竜王の輪郭――

それは「朽棺の竜王」の異名にふさわしく、死と腐敗の巨躯だった。

 

モモンガは沈黙を破り、低く呟く。

「……つまり、山そのものに巨大なアンデッド竜王が棲みついている、ということか」

 

ジョンは口笛を吹き、肩をすくめる。

「ゾンビが外装ってのは気持ち悪いな……。斬っても撃っても意味がないなら、どうやって核まで辿り着くかが問題だ」

 

ぐりもあは瞳を細め、投影を見つめた。

「……核を暴く術を見つけない限り、直接対決は自殺行為ですね」

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓 作戦会議室 /*/

 

 

長卓の上には、バイアクヘーの幻視が投影するケイテニアス山の光景が浮かんでいた。

腐臭漂う巨竜の外装――120万のゾンビがうごめく姿に、誰もが言葉を失う。

 

最初に沈黙を破ったのはジョンだった。

「なあ、魔法拡大で――『全ての生あるものの目指すところは死である』をぶっ放したら、外装のゾンビ全部ぶっ殺せるんじゃない?」

 

モモンガは仮面越しに静かに首を振る。

「……理屈としては可能ですが、問題は距離です。あれだけの外装に魔法を届かせるには、かなり近づかねばならない」

 

「まあそうだよねぇ」ジョンは頭をかき、苦笑する。

「じゃあ俺の『雷の暴風』で一気に焼き払うかと思ったけど……あれも範囲は広いけど、全部を巻き込むのは難しいな」

 

ぐりもあが机に頬杖をつきながら、冷静に口を挟む。

「しかもどっちも超位階魔法扱いですよ。片方が発動したら、同じパーティ内だとクールタイムを共有する……つまり連発は不可能ですね」

 

「……なるほどな」ジョンは肩を竦め、椅子の背もたれに身を投げた。

「だったら――オーバーロード・ワイズマンとかアンデッド部隊を突っ込ませて、一度様子を見るのはどうだ? 威力偵察ってやつだよ」

 

モモンガは一瞬沈思し、頷いた。

「……悪くない案です。ワイズマンはアンデッド支配でこちらの被害を抑えつつ、敵の反応を探れるでしょう。核を暴く手掛かりが掴めるかもしれません」

 

ぐりもあも静かに同意した。

「直に挑むより安全です。まずは“彼”を送り込み、竜王の力を測りましょう」

 

投影に映る巨体の竜王は、ただ沈黙のまま蠢いていた。

だがその腐敗した巨影の内側に潜む核こそ、ナザリックの狙う標的だった。

 

 

/*/ ケイテニアス山・地下洞窟 /*/

 

 

洞窟の奥深く、暗く冷たい空気が漂う中、巨大な竜王キュアイーリムがその巨体を揺らし、外装として構築された120万体のゾンビの群れが地面を踏みしめる。ゾンビたちはすべてキュアイーリム自身が生み出したものであり、外部の力では掌握できない。

 

「くそ……深淵なる躯が我を裏切ったのか……!」赤い瞳が怒りに燃え、周囲のゾンビは竜王の意思に従い巨体を形作り、振動が洞窟全体に伝わる。

 

オーバーロード・ワイズマンは黒い法衣を纏い、杖を手にして立つ。彼のアンデッド支配能力は周囲の配下に対して完全であったが、外装のゾンビには通用せず、キュアイーリム自身の巨体に対して直接の支配はできない。

 

「なるほど……外装は操れないか……」ワイズマンは冷静に分析し、杖を振ることなく魔力を放ち、周囲の配下アンデッドで戦場を固める。彼の指示は完璧に届き、支配可能なゾンビや幽霊、ペイルライダーたちは洞窟の各所で戦闘態勢を整える。

 

キュアイーリムは怒りと警戒を交錯させ、巨体を振り回して攻撃を仕掛ける。尾や翼で岩壁を砕きながらも、外装ゾンビは一糸乱れず、全身を巨大な竜王の姿に再構築して防御と攻撃の両方を行う。

 

洞窟上空にはシャドウデーモンとバイアクヘーが飛翔し、戦闘の全容を観察する。

「外装ゾンビは完全にキュアイーリムの掌中。アンデッド支配では介入不可……」シャドウデーモンが思念で報告。

「攻撃パターンは複雑だが、動きのクセや巨体の弱点は観察可能」

 

バイアクヘーも情報を整理し、ナザリックのモモンガへ送信する。

「滅魂の吐息は未使用。全て物理攻撃と死霊魔法の局所使用で押している」

 

ワイズマンは配下アンデッドで周囲の洞窟環境を封鎖しつつ、慎重に戦術を探る。

キュアイーリムは怒りの咆哮を上げるも、外装ゾンビが巨体を維持することで攻撃が分散され、直接の致命打は得られない。

 

シャドウデーモンとバイアクヘーはナザリックへの報告を続ける。

「キュアイーリムは外装のゾンビを完全に制御下に置いているため、短時間での全力制圧は不可能」

「観察と情報収集が重要。攻撃手段の検討と巨体の弱点特定に専念すべし」

 

洞窟内に響く巨体の咆哮と地響き。ワイズマンはその全てを冷静に解析し、ナザリックに次の作戦に繋がるデータを送り続ける。

キュアイーリムは怒りに震えつつも、外装ゾンビと自身の力で戦場を支配し、戦闘は両者の知略と力量の均衡状態に突入していた。

 

 

/*/ ケイテニアス山・地下洞窟・続き /*/

 

 

洞窟の奥深く、巨体を揺らすキュアイーリムの周囲で、ワイズマンの指揮下にある配下アンデッド・ペイルライダー・デスナイト達が慎重に陣を敷く。シャドウデーモンとバイアクヘーが高空から情報を集め、ナザリックに報告を送り続ける。

 

「巨体の尾の動きは左翼から右翼にかけて順番に振り回す……弱点は後方の関節部、特に尾の付け根」シャドウデーモンが思念で報告。

「外装ゾンビは完全に制御下。外部からの支配は不可。物理・死霊魔法の局所攻撃で分散させるしかない」バイアクヘーが補足する。

 

ワイズマンは冷静に指示を出す。

「分散攻撃で巨体の動きを制限しろ。無理に正面から殴り込むな。観察こそが勝利への鍵だ」

 

キュアイーリムは怒りに身を震わせ、外装ゾンビを再構築しながら洞窟内で圧倒的な存在感を放つ。その巨体が岩壁を砕き、踏みつけるたびに振動が洞窟全体を揺るがす。

 

しかしワイズマンは焦らず、配下アンデッドを巧みに操作して攻撃を分散させる。シャドウデーモンとバイアクヘーは、キュアイーリムの行動パターン、攻撃範囲、ゾンビ再構築の間隔などを細かく記録し、ナザリックへ転送する。

 

「これだけの観察で、戦略は見えてくる……強引な全力攻撃は無意味。次の手を練るべきだ」ワイズマンの声は冷徹で、洞窟内の闇と調和している。

 

キュアイーリムは外装ゾンビの巨体を維持しつつ、怒りに任せて攻撃を繰り返すが、ワイズマンと配下のアンデッドによって巧みに誘導され、決定的な隙を与えられない。

 

戦闘は均衡し、洞窟内に響く咆哮と地響きが続く中、ナザリックはこの戦場を詳細に分析し、次の作戦へと繋げるための情報を蓄積していた。

 

 

/*/ ケイテニアス山・地下洞窟・決着 /*/

 

均衡状態が続く洞窟内。キュアイーリムの巨体が揺れ、120万の外装ゾンビが周囲を覆う。シャドウデーモンとバイアクヘーは戦闘の全容を観察し続け、ナザリックへ情報を送り続ける。

 

だが、ワイズマンの冷静な指揮も、巨体の圧倒的な存在感と怒りの前には限界があった。キュアイーリムはついに耐え切れず、赤い瞳を燃やし叫ぶ。

 

「この竜帝の汚物がぁぁっ!」

 

洞窟内に轟く咆哮と共に、黒光りする滅魂の吐息が放たれる。光線は暗黒の刃のように一直線に伸び、全てを飲み込む。その威力は計り知れず、ワイズマンの存在は一瞬で消滅した。

 

シャドウデーモンとバイアクヘーは飛翔しながら、光線の軌跡を観察しつつ急いでナザリックへ情報を送信する。

「ワイズマン消失……滅魂の吐息、使用確認。外装ゾンビに直接影響はなし」

「危険度:極大。直近の接触は一切不可能」

 

キュアイーリムは外装ゾンビの制御を維持しながらも、怒りに震え、洞窟内を圧倒する力で支配する。巨体が振動するたび、岩壁は微かに崩れ、床の石が砕ける音が響く。

 

これにより、オーバーロード・ワイズマンを用いた観察・制圧作戦は完全に終焉を迎えた。ナザリックは戦闘データを整理し、次の作戦を検討する必要に迫られる。

 

洞窟内に残るのは、巨体を誇示するキュアイーリムと、外装の120万ゾンビ、そして観察を続けるシャドウデーモンとバイアクヘーの存在だけであった。

 

 

/*/ ケイテニアス山・地下洞窟・戦闘後 /*/

 

 

戦闘の余韻が洞窟に残る中、シャドウデーモンとバイアクヘーがナザリックに報告を終えると、ジョンたちはその場に立ち尽くした。

 

「なんだあのドラゴン・ブレス……」ジョンの声は、驚愕と戦慄でかすれた。

 

モモンガも冷静に分析する。

「抵抗の余地なく一瞬で消滅しましたね……まさに滅魂の吐息です」

 

ぐりもあは眉をひそめ、飛行視覚で再確認する。

「恐ろしい威力だったけど、物理的な破壊現象ではなかったね。対象は完全に存在を消された、魂ごと消滅する感じ」

 

ジョンは拳を握り、考え込む。

「これ、物理的な攻撃じゃないなら、単純な魔法防御じゃ防げないってことか……どう立ち向かうか、作戦を練り直さないと」

 

モモンガはデータを整理しながら提案する。

「まずはキュアイーリムの巨体や外装ゾンビの挙動を詳細に分析して、物理的・死霊魔法的な攻撃で制御できる範囲を把握する必要があります」

 

ぐりもあは遠くの空を見上げ、冷たい風に髪を揺らす。

「これ、やっぱりただの竜王じゃない……『始原の魔法』とアンデッド化の組み合わせは予想以上に手強いわ」

 

洞窟内に残るのは、巨体を維持するキュアイーリムと、その外装の120万ゾンビ。そして情報収集を終えたシャドウデーモンとバイアクヘーだけ。

 

「……次の手は、慎重に考えるしかないね」ジョンは深く息をつき、仲間たちの顔を順に見渡した。

 

戦闘の衝撃と恐怖が残る中、情報整理と作戦立案が、ナザリックの安全圏で静かに始まろうとしていた。

 

 

/*/ アーグランド評議国・西国境付近 /*/

 

 

広大な平原と山麓に広がる静寂を、突然の異様な気配が切り裂いた。遠くから見れば、黒い塊がうごめく光景――それは無数のゾンビだった。建物は破壊され、農作物は踏み荒らされ、村の住人は跡形もなく姿を消している。

 

「……な、何だこれは……」

現場に駆けつけた評議会の役人は、言葉を失い、顔面を蒼白にして立ち尽くした。山の稜線から谷間まで、見渡す限りにゾンビの群れが徘徊している。

 

魔導国の使者も急ぎ連絡を受け、評議会の者から状況報告を求められた。

「原因不明のゾンビ災害とのことですが……何か心当たりは?」

ジョンたちは現場の被害の広さを地図上で確認し、眉を寄せる。

 

ぐりもあが冷静に分析する。

「……発生の規模からして、人為的な戦争行為ではない。とはいえ自然現象で説明できるレベルでもないわ」

空中から観察できる範囲を拡大すると、ゾンビの数は数十万規模に達しており、まるで地形の一部のように広がっている。

 

モモンガも報告書を整理しながら考え込む。

「表向きには、原因不明の大規模災害として処理されます。だが、誰一人としてこのゾンビの正体や発生原因を把握できていない……」

 

ジョンは地図を見つめ、拳を固く握る。

「……場所的にはアーグランド評議国の西国境、ケイテニアス山の麓付近だな。こんな大量のゾンビを、誰がどうやって……?」

風が荒れ、砂塵を巻き上げる中、ゾンビの群れが地面を踏み鳴らす音が遠くから響いてくる。その音は、まるで死の鼓動のように冷たく、耳を刺す。

 

魔導国の使者は手に書簡を持ちながら、焦りと緊張を隠せずに連絡を続ける。

「原因不明……承知しました。しかし、このままでは評議会としても黙っていられません。この地域全体を封鎖するか、早急に調査団を派遣する必要があります」

 

ぐりもあは、視界の奥の山々に目を向ける。

「……ケイテニアス山のどこかが、この異常の発生源かもしれない」

ジョンは頷き、視線を荒野に落とす。

「現状はただの災害だが、何者かの意思が背後にある可能性も捨てきれない。俺たちは慎重に、そして早急に次の行動を決める必要がある」

 

荒れた大地と遠くに連なる山々を背景に、原因不明の災害の影がじわじわと広がる。生存者はなく、ただ死体の山と群れを成すゾンビたちが、無言の恐怖を世界に刻む――その不可解な災害は、やがてジョンたちに次の作戦への警鐘を鳴らすことになるのだった。

 





90Lvモンスター複数で威力偵察までやられたら、もう丸裸よね。


次回!
第139話:最終決戦!

君は生き残る事が出来るか?
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