オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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・オリジナルスキルが出てきます。現実にあるとされる技法の漫画的解釈です。



第2部
第14話:ようやく異世界デビュー。


「モモンガさん、おはよー。久しぶりの睡眠はどうでした?」

 

朝食を終えたジョンがモモンガの部屋を訪ねると、遠隔視の鏡を前に骸骨が不思議な踊りを踊っているところだった。

部屋には紅茶の香りが残っており、モモンガは朝食を楽しめたのか。それとも紅茶の香りを楽しんだのか。どちらにしても良い傾向だとジョンは思う。

 

「アンデッドに疲労というバッドステータスは存在しませんので、疲労は感じてませんでしたが……なんだか頭が軽いと言うか、すっきりしたと言うか、不思議な感じです。感じないだけで疲れていたのでしょうかね?」

 

作業を中断し、振り返ったモモンガの言葉にジョンは肩を竦めて答えた。

 

「そりゃ、皆が挨拶に来るからって、ずっと待機してたんでしょう? 疲れもしますよ。……アルベド、週一でモモンガさんに守護者達と食事を摂らせるから、その日はモモンガさんの枕になるか、添い寝してやってくれ。当面、それ以上(ギシアン)は無しだ。出来るな?」

「勿論でございます! 愛する御方の為であれば、どのような苦難でも耐えられます!」

 

あ、そこは耐える苦難なのね。男女が逆じゃない? などとジョンは思い。

続けて、こんな事になるのなら、もう少しソフト路線に設定すべきだったかと考えたが、(一部のリア充を除いて)俺ら童貞だしな。この位の方が返って良いよなと、自分を納得させた。

モモンガが「え?」とか言っていたが、本気で嫌なら「え?」以外のリアクションをとるので無視をする。

 

(あー、俺も、添い寝とか同衾とかしたいなー)

 

誰か余計なお世話を焼いてくれないかなーと、ルプスレギナを眺めながら自分からは言い出せないヘタレのジョンであった。

 

「? カルバイン様、如何なされましたか?」

「いや、なんでもない」

 

視線に気づいたルプスレギナに頭を振って答えていると、モモンガは今気がついたとジョンへ問う。

 

「ところで、何故にルプスレギナを供に?」

 

モモンガの問いにジョンは疲れきった様子で頭を掻く。

 

「あの後、セバスにめちゃくちゃ叱られて。動画でワールドチャンピオン・ヨトゥンヘイムに()られてたろ。あれが地雷だった……」

「それで回復役にルプスレギナを連れて歩けと。愛されてますね、ジョンさん」

 

確かに生きているジョンに回復役は有用だろう。アンデッドの自分には通常の回復魔法やポーションは意味がない。

ポーションも蘇生アイテムも大量に持っているし、モンクでもあるので気功治療も出来るし、人狼の再生能力もある。そんなジョンが、自分より低レベルの回復役を連れていても邪魔になるだけだが、()()するとはそんな理屈では無いとモモンガは思う。

 

そう思い、ジョンを心配したであろうルプスレギナを見れば、ジョンの背後に控えていたすまし顔の彼女(ルプー)がモモンガへ一礼してくる。

目を細め、ジョンを頼むと言った意志を込めて軽く頷き、視線をジョンへ戻す。

 

自分が仲間達を愛していたように、仲間達の残したNPC達も自分達を愛してくれているのだと、今日のモモンガは信じる事が出来た。

 

自分はここで友人と言うものを初めて知った。だから、ここは特別で、彼らの残したアインズ・ウール・ゴウンを何を犠牲にしてでも守りたかったのだ。

だから、そう、だからこそ、『アインズ・ウール・ゴウンそのものに殺されるなら――俺は本望だ』

 

そうだ。ジョンの言葉の通りだ。

 

何よりも大切だった仲間達の残したNPCも信じられず、どうして仲間達の残したアインズ・ウール・ゴウンを何を犠牲にしてでも守りたいと言えるのか。

 

 

「セバスの叱り方が、たっちさんそっくりで断れなかったんですよ」

「それは確かに断れませんね」

 

他にもシャルティアはフル装備になって、ワールドチャンピオン・ヨトゥンヘイム殺しに行くって聞かないし、返り討ちになるから止めろって言ってるのにと、ジョンの話は続く。

仲間達の心の欠片はNPC達一人一人の中に宿っていた。

和を重んじ、仲間を大切にしていたペロロンチーノ。メンバーが何かやらかす度に正座させ、叱ってくれたたっちさん。

仲間達は今ここにいないけれど、仲間達の心の欠片は確かにここにあった。

 

 

……しかし、セバスの叱り方は、たっちさんそっくりなのか。自分も注意しよう。

 

 

「うっかり死んでもいられない。モモンガさん並みに愛が重いよ」

「ええ、ですが――それも悪くない。私は死に損ない(アンデッド)ですけどね」

 

自身の境遇、アンデッドである事も笑いに変えたモモンガを、ジョンは目を細めて笑った。

 

そして、モモンガの側に控えるアルベドを見る。普段の優しげな微笑とは違い、飛び上がらんばかりに上機嫌なのが見て取れる。

そのアルベドが右手でさする左手の薬指には、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが燦然と輝いていた。

 

「お、アルベド、その指輪は?」

「はいぃっ! この指輪は今朝、モモンガ様より忠義の証として……」

 

「え?」

「え?」

 

ジョンの驚愕にアルベドも驚き、しばし、天使が通り過ぎた。

忠義の証としてでも、至高の御方の持ち物であるリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを頂いたのは不敬だったのだろうか……そう、アルベドが不安を感じた頃。

 

 

「モモンガさん、そこは一晩、膝を貸してくれた感謝とか、これからも俺を支えてくれ( ー`дー´)キリッとか言葉を添えて渡すとこじゃないの?」

 

 

人の事なら幾らでも言える。安定のヘタレであった。

 

「いや、でもジョンさん、アルベドみたいな美人にそれを言うとか……」

「美人! 今、私の事を美人と仰いましたか!?」

「あ、いや」

 

一晩眠ってリラックスした所為か、ぽろっと余計な事まで言ってしまう残念モモンガになっていた。

 

「いえ、私、耳はかなーり良い方でございます。今確かに『美人』と。きゃーーー!!!」

「お、落ち着くのだ。アルベド」

 

アルベドは金の瞳をギラギラと輝かせ、狂乱する。モモンガに宥められているが、紫のオーラも漏れているところを見ると、変なスイッチが入ったようだった。

「式の準備ですか! それとも子作り? 私いつでも準備は……!!」

今日も守護者統括アルベドは平常運転だった。

 

 

/*/

 

 

その後、アルベドが落ち着くのを待って、遠隔視の鏡でニグレドの探知に引っかかった南西の村を見てみる事にした。

予め位置が分っていた為、さほどの時間も掛からず村の様子が鏡に映し出される。操作方法はモモンガが朝食後に多少弄って把握していた。

 

近くには森があり、村の周囲に麦畑が広がる。まさに牧歌的という言葉が似合うそんな村だ。

モモンガは村の風景を拡大しようとして、違和感を抱いた。

 

「祭り?」

 

朝早いと言うのに人が慌しく家に出たり入ったり、走ったりしている。

俯瞰図を拡大し、モモンガは有る筈の無い眉を顰めた。

先日ジョンが調査した村で確認した遺体と同じようなみすぼらしい格好の人々が、きちんと鎧を身につけた騎士風の者達に追い回されている。一方的な光景。

騎士達が剣を振るう度に1人づつ村人が倒れていく。村人達は対抗手段がないのだろうか、必死に逃げ惑うだけだ。それを追いかけ殺していく騎士達。麦畑では騎士が乗っていたであろう馬が麦を食べている。

 

これは虐殺(PK)だ。

 

モモンガは一方的なその光景に胸がむかつく気分を覚えた。

 

一方のジョンは、虐殺の様子から調査した際の戦闘力予想がそれほど外れていないと確信し、逃げ惑う村人と殺戮を行う騎士を観察していた。

殆どの騎士は淡々と村人を切り捨て、村人達は互いに助け合いながら逃げているが、調査した村のように中央に追い立てられているようだった。

 

モモンガは村の光景を見渡す俯瞰まで拡大すると、鋭く視線を送り、生きている村人の居場所を見つけようとする。

ある箇所を映した時、一人の少女が騎士を殴り飛ばす光景を目にした。

そして、妹だろうか? より小さい女の子を連れて逃げようとするが、背中を切られ倒れる。それでも妹を守ろうと、逃がそうと手を伸ばし続けていた。その光景に、モモンガの隣から喜色溢れる声が上がる。

 

 

「おお! あのコ、(妹を守るのに)騎士を殴って(自分の)拳を砕いたぞ!? ナイスガッツだ!!!」

 

 

その言葉にモモンガが反応する前、既に鏡の中では飛び蹴りで騎士を爆散させている駄犬(ジョン)の姿があった。

 

 

「え?」

「ジョン様!?」「カルバイン様!?」

 

 

ジョンの居た場所には、アイテムで開いたと思しき《転移門》が口を開いている。

 

 

「ナイスガッツだ! お嬢ちゃん!!」

 

きらーんと、某ゲキ眉先生のように牙を剥き出し、()()の姿のまま笑うジョンの姿に……モモンガは膝から崩れ落ちた。

 

 

「「モ、モモンガ様!?」」

 

 

(え? 何?

昨日、自分で『人間種の姿しか発見できてないので、異形種に対して忌避感がある事も予想される。その為、今回は完全に人間形態を取れる者のみでチームを編成した。俺も人間形態を取る。 ( ー`дー´)キリッ』とか言ってたよな?

だから、俺もこの姿で出るの躊躇ったのに、なんで駄犬(アイツ)は飛び出してんだ? しかも部屋着(武道着のズボンのみ)装備のままだし……。

 

 

……料理長の料理(知力向上バフ付)を毎日くわせないとダメなのかなぁ)

 

 

/*/

 

 

ジョンは少女を追いかけてきた騎士の片割れをスキル《カキエ/聴勁》を発動させながら、片手で顔面を掴んで掴み上げていた。

 

《カキエ/聴勁》はユグドラシルでは『…皮膚感覚を通して相手の動きを察知し、反応する技。それにより、粘りのある動きを作り出す…』と言った説明で、近接戦での命中と回避のボーナス。接近戦限定での盲目耐性が付与されるスキルだったが、ここでは触れた相手の反応や筋力、身長体重などから動作を予想、察知する事でゲーム時代の性能を再現しているようだった。

 

(10Lvぐらいだろうと思って手加減したつもりだったけど、まさか蹴った奴が鎧ごと爆散するとか。うーん、リアルの人間より強いみたいだけど、比較物がないからな)

 

騎士は必死になって逃れようとジョンの手を掴んだり、叩いたりしているが、Lv差がありすぎて何の影響も与えられていない。

ジョンはもう一つスキルを試してみようと、スキルを発動させ、掴み上げていた騎士の腹を殴る。今度は爆散もせず、気絶で済んだようだ。

 

アウラのモンスターテイムの際に多用されたスキル《手加減》である。

 

拠点NPCであり、ナザリックから出られなかったゲーム時代のアウラの為に、ぶくぶく茶釜の指揮の下《手加減》《峰打ち》等を取得していたメンバーはモンスター捕獲に引き回されたものだった。

たっち・みー、弐式炎雷、武人建御雷。そして、たっち・みーと喧嘩しながら、火力職の癖にきっちり補助魔法まで駆使し、最後までフォローしてくれたウルベルト。なんだかんだ言って、仲間思いで面倒見の良い悪の魔法使いだった。

 

 

気絶した騎士と爆散した騎士の頭部を拾って、まだ機能している《転移門》へ放り込むと、メッセージをアルベドへ繋ぐ。

 

 

《アルベド、今すぐ宝物殿まで一っ走り頼む。パンドラをモモンガさんの部屋まで連れて来い。獲物を確保したから、パンドラにタブラさんモードで《脳喰らい》させて、こいつらの記憶を喰わせろ。その後、モモンガさんとパンドラで思考時間加速の魔法で情報のやりとりを高速メッセージでやってもらって、モモンガさんに作戦考えさせてくれ。

 

あと、ニグレドにバックアップを。もし、覗いてくる奴がいれば反撃と逆探でこの世界の魔法のレベルを調べさせろ。

アウラとマーレに隠密に長けたシモベをつけ、村を包囲させて索敵を頼む。何か発見しても手を出さず、見つからないようにさせろ。村の周囲には俺も眷属を放っておく。アウラとマーレは万一の際の撤退援護だ。

 

騎士のレベルは遠隔視の鏡での観察と直接蹴った感じからすると10Lv以下、おそらく5Lv前後。脅威度は低いが装備(の見た目)がしっかりしてる。囮かもしれないから油断するな。先日の調査からすると、最低もう一つの別勢力のグループがある。

 

モモンガさんは取り敢えずは来ないでバックアップ。頭脳担当でよろしくと伝えてくれ》

 

 

前線に必要なのは思考の瞬発力。思考と視界は常に広く持ち、その上で必ず敵を上回る数で組織的に行動する事。後衛に全体の情報を見る総指揮官を置いて行動すべし。

 

それはギルメン達による薫陶のたまものだった。ぷにっと萌え、ウルベルトやたっち・みー、ぶくぶく茶釜などの教えは、ダーシュ村攻防戦で場数を踏んだジョンに確かに根付いていた。特によく覚えてるのは、簡潔で覚え易かったウルベルトの悪の組織五か条だ。

 

 

この場合はこれだ。

ウルベルト悪の組織五か条その4『常に組織で行動しろ』

 

 

アルベドから了解の返事を受けてメッセージを切ると、ジョンは助けてしまった少女達へ向き直る。

 

「大丈夫か?」

 

返事が無い。震えており、血と汗などの匂いからすると、相当に緊張しているようだ。

近づくと、びくりと二人が身体を震わせる。片膝をついて少女の顔を覗き込むが、怯えの色が濃い。

骸骨と比べれば、全然、愛嬌のある生物らしい顔立ちをしていると思うのだが、何が悪いのかと首を傾げる。

 

「……人狼、知らないのか?」

 

ぶんぶん、こくこくと音が出そうな勢いで首を縦横に振る少女達。背中を切られてるわりに元気な娘さんだとジョンは思う。

(それにしても人狼を知らないのか? 首を縦横ってどっちだよ?)

これは失敗したかもしれない。だが、こんな時はウルベルトの悪の組織五か条を思い出せ。

 

 

ウルベルト悪の組織五か条その3『失敗しても気にするな』

 

 

良し、反省終わり。

もう一度、首を傾げ、この子らを安心させるには何を言えば良いか考える。

 

「そうか。じゃあ……そうだな。実は俺、毛深くてさ。そう、俺は一寸だけ毛深い! 通りすがりの旅人って事でどうだ?」

 

ジョンの無理やりな解釈に、氷結牢獄に移動したモモンガがクリスタルモニター越しに盛大に突っ込みを入れていたが、その彼とて別の世界線では帝国奴隷市場で買ったひょろい奴隷とデスナイトを入れ替え、同一人物だと押し通したのだから、ある意味似た者同士だろう。

 

その無理やりな解釈を言って見せると、ジョンは肩を竦め、安心させるようにおどけ、「あんまりにも毛深くて人里に近づけないんだよなー」と、がっくりと肩を落として見せる。

様子を窺えば、取り敢えず会話の出来る相手と思ってくれたようだ。

 

「妹か? その娘を助けるのに騎士を殴ってるのが見えて手を出した。……怪我は大丈夫か?」

そう言って、下級治癒のポーションを取り出し少女に差し出す。

 

「治癒のポーションだ、わかるか?」

「え、ええと私の知っているポーションと色が……」

「え? 違う? 色?」

 

予想外の一言にポーションを自分の目の前で光にかざす。

 

「薬師の友人が作るポーションは、青色です」

 

間の抜けた調子でポーションを光にかざす仕草が可笑しかったのか、少女は表情を少しだけ和らげて自分の知っているポーションの色を教えてくれた。

 

「作り方が違うのかな? 薬効成分が違うと不味いな」/《モモンガさん、生きてる方の騎士。そいつの腕でも脚でも切り落として、ポーションかけて見て下さい》

 

それなら気功治療で治そう。気配とか感知できてるから、大丈夫だろう、多分。

 

「ポーションが体に合わないと不味いから、普通に手当てする。背中を見せてもらっても良いか?」

「は、はい」

 

まだ、震えているがそれは恐怖では無く傷の痛みだろう。結構な深さの傷なので、そろそろ手当てしないと本格的に不味いだろう。

姉が傷を見せようと身体を動かすと、姉に抱えられていた妹が不安に揺れた瞳でジョンを見上げてくる。

 

「狼さん、お姉ちゃん、食べない?」

「ネム!」

 

恩人に何を言うのかと叱る姉と、姉を案じる妹――ネムに、ああ、とジョンは納得する。

古くには狼は害獣を追い払う聖獣であったが、人の領域においては時に人間を襲う害獣でもあったのだ。

それでなくても子供など丸飲みに出来そうな狼の頭がついてるのだ。怖くないわけがないだろう。

 

「人語を喋る奴は、ドラゴンしか食べないよ。お嬢ちゃん、考えて見ろよ。鶏絞める時に『止めて! 殺さないで! 食べないで!』って命乞いされたら食べ難いだろ?」

 

両手を羽根のようにパタパタしながら、コケーッコッコと鶏の真似をしながらネムにおどけてみせる。

 

だが、ドラゴン。

てめーはダメだ。苦労に見合った美味さがあるし、どうせこっちを見下してるんだから、美味しくステーキにして食ってやる。

ああ、ドラゴンステーキ美味かったな。

 

 

「うん……狼さん、ありがとう!」

「あ、あの! 助けて下さってありがとうございます!」

 

少女達の真っ直ぐな感謝に少々照れ、手を振って答えると少女の背中の手当てを始める。

(本当に手当てなんだけどな)

照れ隠しに内心そんな事を考えながら、少女の背中に手を当てると気功治療で傷を癒す。

同時に続けて発動させた《カキエ/聴勁》で少女の身体能力を推定する。把握した少女の能力値とLvを1~2Lvと仮定すると、騎士達のそれはやはり5Lv前後だろうとジョンは判断する。1LvUPでのステータス上昇率が分らないので、あくまで推定だが。

 

「うそ……凄い、魔法?」

 

少女は右手を触り、続けて背中を触る。

急に痛みがなくなった事が信じられないのか、何度か自分の右腕を触ったり叩いたりしている。

 

その様子に喉を鳴らして笑うと、ジョンはこの世界に来て始めて、サポートキャラクター5名全ての召喚と眷属召喚《狼》を行った。

 

召喚した狼はムーンウルフ。ユグドラシルではLv20程度の雑魚だが、騎士のレベルからすれば十分すぎる強敵だろう。

それを20体と50Lvのサポートキャラクターの5名ならば、それが生産系であっても十分過ぎる戦力である筈だ。召喚時間を把握して置く為、時計のタイマーをセットしつつ、召喚した者達を見回す。

 

狼とは精神的な繋がりが出来ているようで、服従の意思や命令を待ち望んでいる事が伝わってくる。この程度の感覚であっても、彼らを周囲に展開するだけで簡易的な警戒網がつくれそうだった。

 

 

「リーダー、開拓……じゃ、無いみたいだね」

 

 

4名の人狼形態のワーウルフが、設定した通りにリーダーとジョンへ呼びかけてくる。

 

その事にジョンは少しだけほっとした。

 

わいわいと楽しく開拓をやっていると設定に書き込んでいたお陰か、ナザリックのNPC達のように問答無用で五体当地してくる雰囲気で無い事に安心したのだ。

実際は忠義の塊であっても、表面上は気の置けない感じでつきあえるなら十分妥協できる。

 

「この先の村が騎士に襲われてる。4人は村人を助け、騎士を村の中央に追い立ててくれ。騎士のレベルは推定10Lv以下。情報が取れるに越した事は無いので、なるべく殺さないように。

 サペトンはこの場で、この姉妹を護衛して下さい」

 

サペトンと呼ばれたのは5体目のサポートキャラクターでワーキャット。体長1m少々の年老いた直立猫の姿をしていた。

 

「あいよ。このお嬢ちゃん達の面倒だな。おぉ、ルプーちゃんのようにめんこい子だなぁ」

「サペトン。ルプーはもう大きくなってるよ」

「そうだけ? おら、もう呆けちまったかな」

 

ゆったりとした喋りの直立猫のサペトンは喉を震わせて笑う。

少女達は丸くて白い、もふもふの直立猫に目を輝かせている。やはり、もふもふは正義か。

 

「狼は各員に2頭ずつ付ける。残りは村の周辺に展開させ、伏兵の警戒を行う」

 

ぐるりと見回し、ジョンは自分の言葉が《チーム/群》に伝わっているかを確認する。

それぞれが頷き返し、瞳に十分な理解の光がある事を確認し、ジョンはこの世界に来て最初の《チーム/群》の狩り。

その開始を宣言した。

 

 

「良し、じゃあ、行くぞ! チーム時王、Go!Go!Go!」

 

 




・駄犬なので名乗っていません。名乗りを忘れてます。エンリとネムの名前も聞いていません。
・チーム時王(サポートキャラクター)はゲーム的には眷属召喚や騎乗生物召喚扱いだったので、デスナイトなどと同じく召喚時間に制限があるとしています。

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