オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第161話:魔導投射砲《セレスティアル・ランチャー》

 

 

 

/*/ トブの大森林・偽ナザリック・上昇管制区画(仮設射出試験場) /*/

 

 

 

 マーレの魔法で作られた岩盤が立ち上がった巨大な竪坑。その先は、魔法で穿たれた“空への抜け道”――上昇管制路だ。

 坑口には、重厚な魔導装置群と多層結界の陣列が組み込まれ、ナザリックとしては前例のない――打ち上げ実験場――が構築されていた。

 

 中心に据えられたのは、漆黒の球体。

 直径二メートルほどのその物体は、表面を覆う金属ではなく、“魔力の膜”そのもので形を保っていた。

 環状の符文がゆっくりと回転し、浮遊魔法陣が淡く光を放つ。

 

 ぐりもあは安全帽のような防御結界装置を頭にかぶり、両手に制御杖を構えていた。

 その顔には緊張よりも――興奮の色が濃い。

 

「エネルギー充填、九十五パーセント! 魔導炉〈深淵核〉安定稼働確認!」

 報告する声は震えながらも朗々としていた。

 

 ジョンが隣で腕を組み、魔力制御板を監視する。

「浮力場、安定。補正角ゼロ。よし、いつでもいける」

 

「はいっ!」

 ぐりもあは顔を輝かせ、天井の魔導通信球へと声を上げた。

 

「こちら発射班、モモンガさん、準備完了です!」

 

 通信球の中で、紫紺の光が瞬いた。

『……了解した。全員、退避位置を確保せよ。――《アインズ・アイズ・プロトタイプ0号》、打ち上げを許可する』

 

 その瞬間、空気が震えた。

 竪坑全体に張り巡らされた魔法陣が一斉に点灯し、金色の符文が上昇方向へと流れていく。

 ぐりもあが杖を突き上げる。

 

「――ナザリック発、初の星へ! 発射ぁっ!!」

 

 轟音。

 

 しかしそれは爆発音ではない。

 空気を震わせ、魔力が収束する――圧縮魔力推進の唸りだった。

 

 漆黒の球体がふわりと浮かび、次の瞬間、青白い尾を引いて垂直に駆け上がる。

 爆風ではなく、魔力圧による風が巻き起こり、周囲のローブを大きくはためかせた。

 

 ぐりもあの目が、光を追う。

 その光は瞬く間に竪坑の上へ、岩盤の天蓋を突き抜け、夜空の向こうへと消えていった。

 

「上昇角、良好! 速度上昇! ……突破確認!」

 報告の声が、魔導通信に重なる。

 

『観測班より報告。対象、雲海を突破。飛行高度、五千メートル……一万……二万……』

 

 やがて、報告がひとつ止まり、代わりに静寂が訪れた。

 

『……通信遅延確認。重力圏の外縁に到達しました。ナザリックの魔力波と共鳴維持。……衛星、軌道安定しました!』

 

 ぐりもあの杖が、がくりと下がった。

 瞳には、涙が浮かんでいた。

 

「やった……ほんとに……行った……!」

 

 ジョンが口の端を上げ、静かに言う。

「おめでとう、ぐりもあさん。“地上の底”から、“空の果て”まで。……夢、叶ったな」

 

「……っへへへ……!」

 

 遠い夜空――地上では誰も気づかぬほど小さな光。

 だがその一点は、確かに輝いていた。

 

 ナザリックの“星”、アインズ・アイズ。

 その目は、ゆるやかにこの世界を見下ろしていた。

 

 

 

/*/ 軌道上空――《アインズ・アイズ》 /*/

 

 

 

 そこは、沈黙そのものだった。

 音も、風も、温度すらも存在しない。

 ただ、果てしなく広がる闇と、遠く瞬く光。

 

 黒曜石のような球体――《アインズ・アイズ》。

 ナザリックの魔導技術によって創造された、初の“星にして目”。

 無限に近い真空の中を、静かに漂っていた。

 

 表面に刻まれた黄金の符文がわずかに輝き、内部で魔力が脈動する。

 その中心には、ナザリック第九階層より転送された人工精神コア――〈観測思念体:ラ=グラヴィス〉が宿っていた。

 

 その“声”は無機質でありながら、どこか子供のような響きを持っていた。

 

『起動確認……魔導炉稼働安定。通信リンク確立。視界――展開開始』

 

 符文が花弁のように開き、外殻の一部が透過状態に変化する。

 世界が、姿を現した。

 

 漆黒の宇宙の底に、青白く輝く惑星。

 巨大な大陸と、銀の筋のような河。

 点々と光る都市の魔力源、そして濃密に渦を巻く〈魔力嵐〉の層。

 

『視認データ送信――ナザリック本部へ』

 

 地上――第九階層の観測室に、次々と映像が投影されていく。

 

 ぐりもあの目の前に浮かんだ魔導ホログラムには、惑星全景が映し出されていた。

 息を呑む。

 まるで神々の視点。

 ナザリックの最深から、世界の最上を覗く瞬間だった。

 

「……見えた……」

 震える声。

 モモンガも思わず立ち上がっていた。

 骸骨の眼窩の奥の紫光が、揺れ動く。

 

「これが……我々の“地上”か……!」

 

 ジョンは黙って画面を見つめ、低く呟いた。

「ここまで来たか、ぐりもあ……」

 

 ぐりもあは小さく頷く。

「はい……でも、これはまだ“観測”の始まりです。

 この目が、何を映すのか――それが本番です」

 

 

 

/*/

 

 

 

 「あと五、六機を打ち上げれば、大陸中央部は常時カバーできるね。雲の流れも観測できるから、天気予報の精度も上げられそうだ」

 

 ジョンの呟きに、ぐりもあの顔がぱっと輝いた。光を反射する丸眼鏡の奥で、紅い瞳がきらりと揺れる。

「そうですね! あと五、六機で大陸中央部の常時カバーが可能になります。衛星同士で位相をずらせば、夜間でも昼間でも、雲の流れも魔力嵐の発生もリアルタイムで追えますよ。これで『魔力気象予報』の精度も格段に上がるはずです!」

 

 彼女の背後の壁には、すでに何枚もの魔力投影図が貼られていた。観測データを記録する符文の列、軌道を示す螺旋状の線。まるで神々が天を織り上げる工程を写したかのような複雑な図面である。

 机の上では魔導ペンが自動で走り、次なる軌道計算を書き込み続けていた。

 

 アルベドがゆっくりと腕を組み、白磁のような横顔で慎重に言う。

「情報収集の利点は明白ですが、その分、外部に認識されるリスクも増えます。周波数――いえ、魔力スペクトルの分散、自己消滅術式の改良、そして万が一の回収計画を必ず用意してください。」

 

 デミウルゴスが顎に指を当て、黄金の縁眼鏡の奥で冷たい知性を光らせた。

「衛星群をネットワーク化すれば、単体が失われても即座にカバリーできます。観測データは分散保存し、解析は複数のコアで二重三重に行う。加えて、雲流解析に基づく気象予測モデルを組み込めば、作物管理や作戦行動の最適化にも活用可能です。──“神の視界”の構築も、もはや夢ではありませんね。」

 

 玉座に腰かけていたモモンガが、その言葉を静かに聞いていた。

 漆黒のローブがゆっくりと動き、骨の指先が軽く宙を撫でる。その一動作で、部屋の照明が落ち、窓の向こうの夜空に投影された衛星の光跡が鮮明に浮かび上がる。

「よろしい。では追加生産と打ち上げを許可する。ただし、次の条件を守ること――機密保持、落下事故のリスク最小化、そしてナザリックの名が暴露されないことだ。ジョン、発射計画と安全基準を取りまとめよ。」

 

 「了解です。」ジョンの声は冷静だった。

 「打ち上げはローテーションで行い、軌道投入後すぐにネットワーク同期を開始します。地上局は第九階層と第三階層に分散配置。補修用の移動ユニットも同時に準備します。」

 彼の瞳は、すでに図面ではなく、その先の“空”を見据えている。魔法による軌道安定、衛星間通信の転送遅延、魔素の干渉――どれも未知の領域だ。だが、それこそが彼を奮い立たせる。

 

 ぐりもあは満面の笑みを浮かべ、両手をぶんぶん振って跳ねた。

「わーい! じゃあ早速設計の量産化に取り掛かります。観測器の帯域も拡張して、雲の運動だけでなく魔力嵐の予兆も検出できるようにします! 次の衛星には新型の高感度結晶眼を搭載しますね!」

 

 アルベドは一抹の不安を隠さずに言った。

「外部勢力の動き次第では、観測網自体が誘い水になる可能性もあります。防御(カモフラージュ)と欺瞞手段も同時に用意しておきましょう。偽装された“流星”として観測される程度に。」

 

 モモンガはゆっくりと頷き、命令を下す。

「よかろう。《アインズ・アイズ艦隊》計画、正式採用。ぐりもあ、ジョン、デミウルゴス、アルベド――各自の役割に従って動け。進捗は週単位で報告せよ。」

 

 その声は静かでありながら、確かに大墳墓全体に響いた。まるで天命を告げる鐘の音のように。

 

 ぐりもあは喜びを抑えきれず、光る図面を胸に抱え込む。

 ジョンは微笑みを浮かべ、デミウルゴスは深い思索へと沈み、アルベドは玉座の主を見つめながら静かに頷いた。

 

 そして夜空のどこかで、すでに一つの小さな“星”がゆらりと光を放つ。

 それは人ならぬ叡智が天にまで届いた証であり、ナザリックの意志がこの大地を覆うかのような、静かなる征服の灯だった。

 やがて次の星たちも、その列に加わり、空を覆う光の網を成すだろう。

 ナザリックは、地の底から空の果てまでも――すべてを見通す存在となる。

 

 

 

/*/ トブの大森林・偽ナザリック・発射実験区画 /*/

 

 

 

 静寂が支配する広大な空間。

 かつて偽ナザリックの南端に設けられた“禁呪試験場”は、今や新たな使命を帯びていた。

 黒曜石の床に刻まれた無数の魔法陣が淡く輝き、その中心に鎮座するのは、金属光沢を帯びた球体――第二号観測衛星《アインズ・アイズⅡ》。

 

 その表面には流線型の装甲板が幾重にも重なり、符文の光が血管のように脈打っている。

 魔力収束炉の共鳴音が低く唸り、空気がわずかに震えていた。

 

 ぐりもあは端末状の魔導制御盤を両手で操作しながら、興奮を抑えきれない笑顔を浮かべる。

「魔力圧縮率、正常! 符文配列安定! 姿勢制御陣、臨界点通過!」

 彼女の声に呼応するように、魔導円の一部が青白く輝き出す。

 

 ジョンは隣で、冷静に計器を見つめていた。

「外殻温度は問題なし。魔力濃度も基準内。──打ち上げコース確認。大陸西方へ三十度傾斜、上昇角七十五度。軌道投入は高度八万二千リルで自動切り離し。」

 その口調は落ち着いていたが、手元の符文板を操作する指先には確かな緊張が宿っていた。

 

 発射準備完了を告げると、上方の観測桟橋からアルベドが静かに見下ろす。

「……これで、本当に空へ届くのね。」

 その声はわずかに震えていた。

 彼女にとって“空を征する”という概念は、かつての地上支配とはまるで異なる、神話の領域だった。

 

 デミウルゴスは眼鏡を押し上げ、淡く笑う。

「ふふ……地の底から天をも見渡す。まさに主の御威光にふさわしい成果です。」

 

 そして、最上段の観測席。

 漆黒の玉座に座る魔導王アインズ・ウール・ゴウン――モモンガが、ゆっくりと片手を掲げた。

 その骨の指先から、漆黒の霊光が放たれ、天井の魔法陣群が一斉に点灯する。

 

「――打ち上げを許可する。」

 

 その言葉と共に、空洞全体が震えた。

 魔力の奔流が螺旋状に収束し、衛星を包み込む。

 圧縮された空気が爆発的に押し出され、床に描かれた転移陣が閃光を放つ。

 

 轟音。

 重力が歪み、空気が焼け、光が柱となって天を貫いた。

 発射孔の上空では、夜空が一瞬だけ昼のように輝く。

 

 地上からも、その閃光が“流星”のように見えたかもしれない。

 だが、それは落ちる星ではない。昇る星――ナザリックの新たな眼である。

 

 ぐりもあの声が高鳴る。

「上昇中! 第一段魔力噴射、安定! 回転数良好、姿勢保持率九十九・八! 加速成功!」

 彼女の手が符文盤の上で踊る。

 魔力の波が空間を渡り、通信結晶が淡く光った。

 

 ジョンが短く息を吐く。

「……行ったな。」

「はいっ!」ぐりもあが満面の笑みで頷く。「高度五万リル突破! 軌道投入まで、あと二十秒!」

 

 そして、ナザリックの最深部にある巨大魔法陣が静かに輝きを落とした。

 衛星は完全に大気圏を離れ、漆黒の虚空へ。

 

 そこから送られてきた最初の映像は――

 蒼と白が織りなす、この世界の“地平線”だった。

 

 ぐりもあは息を呑み、モモンガも思わず立ち上がる。

 「……美しい。」

 彼の声は、ただそれだけを呟いた。

 だが、その声に込められた感情は、誰の耳にも届くほど深く、静かだった。

 

 衛星は落ちなかった。

 安定した軌道を保ち、ゆっくりと大陸上空を滑るように進む。

 その眼は、地上に点在する魔力反応――複数の高位魔法使用者の存在を感知し、微かな光点として映し出した。

 

 モモンガが低く呟く。

「……興味深いな。位階魔法の行使能力、六階以上の者を複数感知したか。」

 ジョンが頷く。

「はい。今後の行動域を監視すれば、勢力の把握も容易になるでしょう。」

 

 ぐりもあは、嬉しさと誇りを胸にそっと言った。

「これで、本当にナザリックは“地の底から空の果てまで”を見通す存在になれますね……」

 ジョンがぐりもあに語り掛ける。

「ぐりもあさん。衛星作ったけど、これに神の杖って搭載できる?タングステンとかでつくった全長6m直径30cmの金属棒を軌道上から地上に発射する兵器。マッハ10に到達して激突による破壊力は核爆弾に匹敵するだけではなく、地下数百メートルにある目標を破壊可能だとされている奴」

 

ぐりもあは一瞬、頬を赤らめて嬉しそうに答えた――だが、その笑顔はすぐに硬くなった。

 

「あー、宇宙兵器いっちゃいます? 搭載は可能だし、杖そのものをゴーレム化しておけば、精密誘導も可能ですね。でも……タングステンで作ると、その杖8トンくらいになりますよ」

 

ジョンは俯き、符文板に指を走らせる。息が、その胸の内を表していた。

 

「8tか。用意するの大変だな。でも、防衛の為には必要かな。キュアイーリムみたいな奴がまた現れないとも限らないし。……良し!材料は俺の方で調達しますから、3号機以降に搭載できるように開発お願いします」

 

「竜王級への対処……確かに必要ですね」

 

「物理攻撃無効の奴が相手でも、杖をゴーレム化しておけば対処可能ですね」

 

 そして、夜空の彼方で小さく光る衛星が、ゆるやかに回転しながら、微かな魔光を放った。

 それはまるで、主に忠誠を誓うように瞬く――ナザリックの“眼”だった。

 

 

 

/*/ 地上・エ・ランテル北部 占星術塔 /*/

 

 

 

 夜空が、いつもより少しだけ輝きを増していた。

 北部の占星術塔に集まった者たちは、双眼鏡や水晶球をのぞき込み、眉をひそめる。

 

「……おや?」

 一人の若い占星術師がつぶやく。

 「この方角、以前にはなかった光点が増えている……?」

 

 古参の星読師が肩を寄せ、視線を天に向ける。

「確かに。あの南東方向、軌道の整った光……まるで星が増えたかのようだな。」

 

 塔の中央、年長の占星術師が杖を握り直す。

「まさか……新しい恒星か? いや、軌道が規則的すぎる。星ではない、何か人工物か……?」

 

 水晶球に映る夜空に、ゆらりと光の列が増えていた。

 いくつもの小さな光点が、まるで列を作るように天を横切る。

 塔の若手たちはざわつき、口々に叫ぶ。

 

「衛星……か? まさか天に神の目が増えたのか!」

「いや、これは……誰かが空を監視しているのだ!」

「新しい星の誕生だ! これは吉兆か、あるいは……!」

 

 年長の星読師は一瞬沈黙した後、深く息を吐く。

「……いや、これは前代未聞だ。我々の知る天体では説明がつかぬ……。しかも、規則正しい軌道を描いている。」

 

 騒ぎは塔の外にも伝わり、周囲の占星術師や見物人たちも、夜空に釘付けになった。

 光の列は、南の方角から北へ、まるで天の川を横切る新たな流星群のように進む。

 

「星が……増えた!」

 誰もが口にし、同時に恐れを抱く。

 天文学的にはあり得ない増加――しかしその軌道の規則性は、まぎれもなく人工物の存在を示していた。

 

 若い占星術師が、手元の観測日誌を叩きつける。

「この夜に……この方角に……一体何が起きているのですか!」

 

 塔の中央で杖を握る年長の占星術師は、暗い笑みを浮かべる。

「……この光は、我々の世界の秩序を変える前兆かもしれぬ……」

 

 夜空に増えた光点――ナザリックの“眼”たちは、地上の人々にただ静かに見つめられていた。

 

 

 

/*/ 地上・エ・ランテル王都 占星術師ギルド /*/

 

 

 

 夜空に増えた光点の情報は、瞬く間に王都の占星術師ギルドに伝わった。

 塔の奥で巻物を広げる年長の占星術師は眉をひそめる。

 

「……確認されたか? 北方の占星術塔から、複数の新しい星が夜空に現れたとの報告だ。」

 若手が慌てて双眼鏡を掲げる。

「はい……本当に、規則正しく並ぶ光点が確認できます! これは偶然の天文現象ではありません!」

 

 ギルドの集会室は騒然となった。

「天の秩序が乱れる前触れかもしれん……」

「いや、これまでの記録に無い、明らかに人工的な光の列だ!」

「衛星……それとも神の眼か……」

 

 議論は白熱し、やがて王都中に情報が伝播する。夜空を見上げる民衆は、口々にささやいた。

 

「星が……増えた……!」

「神々の警告か? それとも新しい魔力の到来か?」

「流れが規則的だ……これはただの星ではない!」

 

 王都の宮廷にも報告が届いた。

 侍従が玉座に進み出る。

「陛下、夜空に新しい光点が複数出現しております。占星術師たちの分析では、これは自然現象ではなく、何らかの意図を持った人工物の可能性が高いとのことです。」

 

 王は静かに、夜空を眺める。

 輝く光点はまるで列を作り、天の川の一部のように整然と並んでいた。

「……ふむ……これは喜ばしい現象か、それとも警告か」

 その言葉には迷いがあったが、宮廷の者たちは恐れを隠せずに俯いた。

 

 各地の占星術師たちは、星の増加を記録し、予兆を読み解こうと必死になった。

 日を追うごとに、星の増加に関する噂は村や都市に伝わり、人々の間でざわめきとなった。

 「新しい神の眼が現れた……」

 「王都も、北の空も、今や見守られているのだ……」

 

 夜空を静かに照らす光点――

 ナザリックの“眼”は、地上の者たちに気づかれる形で、しかし決して干渉せずに、ただその存在を示していた。

 

 

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