オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第167話:剣の回収

 

 

/*/ ナザリック第9階層 執務室 /*/

 

 

 モモンガの執務室で、ジョンが机の上の白銀の鏡を眺めながら呟く。

「この鏡だけど、ねこさま大王国で持ってた奴だ。ミリヤさんに聞いてみよう」

 

〈伝言〉の向こうでミリヤが淡々と答える。

「草薙剣の竜特攻を狙ったエルフ王に目をつけられて、ギルド拠点が侵攻された時に奪われ、行方不明になったんだよ。で、今回無事見つかった、と」

 

ジョンが眉をひそめる。

「返却する?」

 

「拠点がボロボロだし、返却されても安全に保管できないから、ナザリックで持ってて良いよ」ミリヤは肩をすくめる。

 

ぐりもあが机の書類を整理しながら口を挟む。

「それなら、エルフ国から草薙剣も回収しておきますか? 返却の際に取引材料にできます」

 

モモンガが指先で鏡を軽く弾く。

「剣を回収しても問題ない。食料や資源を提供する必要はないでしょう。取引の目的は、あくまで外交的な安全保障と、ナザリックへの干渉回避です」

 

ジョンがにやりと笑った。

「なるほど、表向きは剣を返して友好の象徴、裏ではナザリックへの不干渉を引き出すってわけか」

 

ルプスレギナは少し腕を組み、眉を上げる。

「あと、防衛戦力としてのアンデッド貸し出しも一応材料っすか? 万一の竜や侵攻に備えて、数体なら派遣しても良いかも」

 

ミリヤが頷く。

「それなら表に出るのはあーしがやるよ。剣の返却を求めるのはあーしの役目で問題ない」

 

ジョンが鏡と剣を交互に見ながら指示を出す。

「了解。ミリヤさんが表に立ち、返却要求を行う。その際の交渉材料は、剣+必要に応じたアンデッド貸し出し。ナザリックとしての要求は非公開で、安全保障と干渉禁止。食料は渡す必要なし。準備は整ったな?」

 

「それでよいよ」ミリヤが微笑む。

「鏡はきちんと保護して、封印札を施してあります。アンデッドも移動可能な状態で待機中です」

 

ぐりもあはファイルに手を置き、にやりと笑った。

「さて、交渉の舞台は整いましたね。後は表向きの儀式と裏での交渉次第」

 

モモンガが重々しく頷き、淡く光る鏡に視線を落とす。

「ナザリックの力は見せすぎず、しかし十分に圧力として伝える。それが最重要です」

 

ジョンが立ち上がり、剣を軽く持ち上げる。

「じゃあ、行動開始だな。表に出る者と、回収・封印担当に分かれて手際よくやろう」

 

 執務室には静かな緊張が漂う。鏡の淡い光が床に反射し、四人の影を長く伸ばした。その先には、エルフ国との外交とナザリックの威光を駆使した、巧妙な取引劇が待っているのだった。

 

 

/*/ エルフ国 王都宮殿 /*/

 

 

 広間の中央、紫がかった黒の毛並みの妖精ネコ、ミリヤが堂々と立つ。小さな体ながら威厳を漂わせ、瞳は冷静に王と側近たちを見据えている。

 

「貴国に保管されていた宝剣を、このたび返却いただけるとのことで承りました」

 ミリヤの声は小さいが、広間に響き渡り、その重みを感じさせる。

 

 エルフ王代理は剣を差し出す手元を見つめ、微かに息をつく。

「長らく我が国に保管されていたこの剣……暴君デケムとその父の負の遺産でもあった。ミャウルディア王国に返還されることで、過去の争いの清算となろう」

 

 側近たちの表情には安堵の色が見える。もともと多くのエルフは、王家の一部による侵攻や戦争政策に反対しており、宝剣の返却は象徴的な和解として歓迎されていたのだ。

 

ミリヤは軽く尻尾を揺らし、剣を受け取る手を差し出す。

「ありがとうございます。安全に保管いたします。ミャウルディア王国としても、貴国の安全と平和を尊重いたします」

 

 王代理はゆっくりと頷き、剣を手渡す。

「これで過去の禍も一区切りつく……民にとってもありがたいことだ」

 

 広間には静かな安堵が漂う。宝剣は長らく争いの象徴であったが、妖精ネコの手に渡ることで、ナザリックとエルフ国双方にとって、平和的な解決となったのだった。

 

 ジョンやぐりもあ、ルプスレギナたちも遠くから見守り、交渉がスムーズに運んだことを内心で喜んだ。過去の禍を清算し、ナザリックとエルフ国双方に利益をもたらす――今回の作戦の成果は、まさにこの一瞬に象徴されていた。

 

 

/*/ ナザリック第9階層 モモンガ執務室 /*/

 

 

 紫がかった黒の妖精ネコ、ミリヤが宝剣クサナギノツルギを手にして執務室に戻ってきた。剣の刃は薄く光り、手に取る者の覚悟を試すかのように淡く反射する。

 

ジョンが剣を見つめながら口を開く。

「竜王も不穏なところがあるし、この剣はどう扱うのが一番安全だろうな」

 

モモンガは考え込むように指を組む。

「……コキュートスに預けておくのが最良でしょう。武人としての誇りを持つ彼なら、むやみに振るうことはありません。我々とその盟友からの信頼に応え、命を賭しても守るはずです」

 

ぐりもあが頷き、少し嬉しそうに言った。

「確かに、戦士としての矜持がある者なら、暴走や誤用の心配は少ないですね」

 

ルプスレギナも目を細め、慎重な声で付け加える。

「なるほど。コキュートス様が管理していれば、ナザリック全体としても安心感があります」

 

モモンガは剣の向きを微かに調整し、封印札を確認する。

「これで準備は整いました。管理者はコキュートス、封印と保護はナザリック側で徹底。万が一の事態にも迅速に対応できます」

 

ジョンが軽く微笑み、剣の柄に手をかける。

「なら決まりだな」

 

 ミリヤは宝剣クサナギノツルギを自分の手元で軽く回しながら、にこやかに言った。

「うちの三種の神器。神話級としてはナザリックのみんなが持ってる武器より弱いんですけど、設定の書き込みの為か、こっちにきてからやたら危なくなってしまって」

 

 ジョンは苦笑しながら肩をすくめる。

「わかってたら、俺ももっとフレーバーテキスト書き込んでたよ」と、楽しそうに笑う。

 

 ミリヤの目が少し輝く。

「でも、こうしてナザリックで安全に管理されて、コキュートスが守ってくれるなら安心です」

 

 ジョンも頷き、少し冗談めかして言った。

「なるほどな……強力になったとはいえ、管理するのがコキュートスなら心強い。命懸けで守ってくれるし」

 

 部屋の空気は穏やかで、少しの緊張感とともに笑い声が混じる。危険な神器でありながら、こうして仲間同士の信頼と冗談のやり取りで和らぐ瞬間が、ナザリックの日常の一片を垣間見せていた。

 

 

/*/ ナザリック第9階層 執務室 /*/

 

 

 紫がかった黒の毛並みの妖精ネコ、ミリヤが宝剣クサナギノツルギを抱え、コキュートスの前に立つ。剣の刃は淡く光り、触れる者にその危険性と威厳を伝えている。

 

「このクサナギノツルギ、封印を施してから預けます」ミリヤが静かに告げる。

 

 コキュートスは両手を胸の前で組み、剣を見つめながら目を輝かせる。戦士としての矜持と、信頼を預かる重責への感激が交錯する表情だ。

「コノ……クサナギノツルギヲ我ガ手デ護ルコト、誠ニ光栄ナリ……ッ! 至高ノ御方、盟友ノ信頼ニ応エ、命ヲ懸ケテモ守リ抜ク覚悟ダ!」

 

 ミリヤは手早く封印札を施す。神聖魔法と結界魔法を組み合わせた複合封印で、剣が不用意に抜かれたり暴走したりすることを防ぐ。紫色の光が剣を包み込み、封印文様が浮かび上がる。

 

「封印完了。これで剣の力は管理され、必要な時以外は暴走の心配もありません」

 

 コキュートスは深く息を吸い込み、剣を自らのインベントリに収納する。物理的な保管ではなく、彼の体内空間で安全に封印された状態で保護される。

「我ガ使命……コノ剣ヲムダニスルコトナク、護ル覚悟ハ鉄ノ如シ! 我ガ心、魂、全身全霊ヲ以テ、此ノ神器ヲ守リ抜ク!」

 

 剣は封印の光に包まれながらも、コキュートスの存在によって常に戦場へ即応できる状態にある。竜王の侵攻があれば、彼が瞬時に取り出し、ナザリックの防衛に役立てることができるのだ。

 

 ミリヤは微かに尻尾を揺らし、満足そうに微笑む。

「これでナザリックとしても安心です。必要な時にのみ、あなたの判断で剣を使えます」

 

 コキュートスは拳を握りしめ、剣を見つめる。

「至高ノ御方、盟友……我ハ必ズ、命ヲ懸ケ、此ノ神器ヲ護リ抜クッ!」

 

 封印札の光が淡く揺れ、宝剣クサナギノツルギはコキュートスのインベントリ内で安全に保護されつつも、いつでも戦場で役立つ準備を整えていた。信頼と覚悟に支えられ、神器は静かに、しかし確実に守られている。

 

 

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