オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第170話:一方その頃のナザリック

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓 第9階層・ぐりもあの私室 /*/

 

 

棚の奥から取り出された古びた羊皮紙は、長い年月を経たにもかかわらず、魔力の封印によって損なわれてはいなかった。

淡い金色のインクで記された紋章と、見慣れぬ文様。

 

ジョンはそのページに手をかけ、低く呟いた。

「――金の黄昏錬金術師団?」

 

隣に立つぐりもあが頷く。

彼女の指先には、淡い魔光を宿した検知魔法が揺れていた。

 

「ええ。あの地下迷宮から回収した資料の中に記されていました。どうやら、あの主――あの迷宮の支配者は、その“金の黄昏錬金術師団”に所属していた魔術師兼技術者だったようです」

 

ジョンは眉を寄せる。

「錬金術師団……つまり、個人ではなく組織。魔術師の秘密結社の一つってわけか」

 

「その可能性が高いです。文献によると、この団体は“人間という種の上位化”を目的にしていた模様です。生体錬金、魂転写、魂錬成、記憶融合――禁忌とされた術式の集大成」

ぐりもあは淡々と説明しながらも、どこかで興奮を抑えきれないように微笑む。

 

ジョンは腕を組み、書物に視線を落とした。

「人間を、上位種へ……。神人(デミゴッド)を目指していたということか」

 

「はい。そして、その過程で“人間という種族レベルを万能にする”という理念を掲げていました。つまり、“スキル〈天才〉を基礎能力に組み込んだ人間”を創ろうとしていたようです」

 

ジョンの表情が静かに変わる。

「……〈天才〉を人の種族レベルに組み込む、か。おもしろいな。成功したら確かに人間は亜人に負けない力を持つかもしれない」

 

「しかし、もしそれが実現していたなら――」

ぐりもあの声がわずかに熱を帯びる。

「今の魔導国の研究にも応用できるかもしれません。人間の進化の方向性として」

 

ジョンは小さく息をつく。

「……その言葉、モモンガさんが聞いたら胃を痛くするぞ」

 

ぐりもあは、くすりと笑った。

「ふふ、だからこそ私たちが調べる価値があるんです。〈金の黄昏〉の理念は、ただの狂気ではなく、理論として成立していました。これは、完全に失われた“人間製神格技術”の一端です」

 

ジョンは再びページをめくる。

そこには、〈太陽炉〉、〈魂錬成炉〉、〈黄金の坩堝〉などの設計図が細かく描かれていた。

 

「……こいつは、本物だな」

彼の瞳に、久しぶりに研究者としての光が宿った。

 

「ぐりもあ、これを解析する。錬金術ではなく、魂工学として。もしこの“金の黄昏錬金術師団”が到達した境地が再現できれば――」

「ナザリックの技術体系そのものを、さらに上位層へ進化させられる……ですね」

 

二人の声が静かに重なった。

冷たい光に照らされる古文書の金文字が、まるで眠りから覚めたように微かに輝いていた。

 

 

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