オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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第202話:第3412号抜粋

 

 

/*/ 帝国魔法省治安局提出報告書 第3412号抜粋 /*/

 

 

件名:辺境狩人失踪・異常発見事案

提出先:帝国治安局第一課

報告者:第三軍団治安連絡官 クレイド・ハルス

 

一、概要

 

本件は、バハルス帝国北辺境にて発生した「狩人の精神異常発見事案」についての報告である。

被害者は辺境村居住の成人男性(以下、被害者Aと記す)。

当該人物が夜間に猟行中、未確認集団による儀式行為を偶然目撃し、

その後、精神錯乱状態に陥ったものと推定される。

 

二、経緯

 

帝国暦二百三十四年 第八月十六日夜半、

被害者Aは獲物の追跡中に南方丘陵地帯において、

地中から微光の漏れる“陥没地形”を発見。

不審に思い接近したところ、

黒衣の人物群(推定十名以上)が環状に配置され、

中心に長身の黒衣の男が立っていたとのこと。

 

被害者の後日の証言によれば、

 

「男の肌は夜よりも黒く、服は神父のようだった。

けれども、その胸の印が星の形に捻じれていて……見ていると、星がこっちを見返してきた。」

 

儀式の間、周囲の空気が異様に静まり、

鳥獣の声が完全に消失したことを確認。

続いて、男が両腕を広げ、聞き取れぬ言葉を唱えた直後、

周囲の地面が波打ち、地中より数体の大型亜人(オーガ種、トロール種と推定)が出現した。

当該亜人は目視時、瞳孔が恒常的に星形に変形していたとの記録がある。

 

被害者Aはこの時、物陰より観察していたが、

地表の石を誤って転がし、音を立てた模様。

その直後、黒衣の男が確実に視線を向けたとされる。

 

以後の記憶は断続的であり、

 

「星が、降ってくる……見てはいけない……」

との断片的発言を残して逃走したとされる。

 

翌朝、村の入口付近で発見。

被害者は全身が白化しており、毛髪・虹彩を含むすべての色素が失われていた。

発見時、呼吸・脈拍は正常、言語反応は不能。

ただし、両眼を大きく開いたまま星空の方向を凝視していた。

 

三、医療観察報告

 

医療班による診断では、

身体的損傷・毒物反応ともに認められず、

極度の恐怖刺激による脳機能障害と判定。

外傷・呪詛的影響・幻覚誘発魔法の痕跡なし。

精神干渉系魔法による影響が疑われるが、

**既知の体系とは一致しない“非言語的干渉波”**が観測された。

 

四、現場調査結果

 

現地調査班が翌日夜間に同地点を訪問。

既に儀式痕跡は存在せず。

地表には円形に焦げた岩石層、ならびに星型の窪みが十数箇所確認された。

魔力残滓反応は極微弱ながら、天体由来の魔素成分(通常の大気中に存在しない波長域)が検出されている。

 

五、分析・所見

 

黒衣の男の特徴および儀式内容は、既報の「星の智慧派」儀式事例と一致。

特筆すべきは、儀式実施時刻が他地域で観測された同一現象と完全一致している点である。

これにより、当該“星導師ルメナ・クレア・ナイ”が複数箇所に同時出現している可能性を否定できない。

 

なお、被害者Aの精神崩壊後も、夜間に「星を見上げ続ける」行動を止めないことから、

“観測者を媒体として星の智慧を拡散する”行為が推測される。

 

六、結論・措置

 

・儀式地点周辺は封鎖。

・被害者Aは帝国医療局観察下に収容。

・同様の症状者発生地域との関連を調査中。

・「星の智慧派」関係文書の所持者は宗教法第十六条に基づき即時拘束対象とする。

 

以上。

 

第三軍団治安連絡官 クレイド・ハルス

付記:報告者個人の見解では、本件は“儀式”ではなく“観測”である可能性が高い。

我々は見られている――その自覚を持つべきである。

 

 

/*/ 帝国医療局精神観察記録 第2報 /*/

 

 

件名:被害者A(北辺境狩人)経過観察報告

提出先:帝国魔法省治安局第一課

報告者:帝国医療局・精神医術科主任医官 ロステル・ヴェイン

 

一、被験者概要

 

識別名:A(男性・年齢推定三十前後)

発見時状態:意識混濁、無言凝視、皮膚および毛髪全域白化

収容後経過日数:七日

 

二、初期観察

 

初期段階において被験者は終始沈黙状態にあり、

刺激反応(呼名・灯光・魔力干渉)すべてに無反応。

ただし、夜間のみ眼球が自発的に上転し、北天の一点を注視する。

 

脳波計測の結果、通常の睡眠・覚醒いずれにも該当しない波形を確認。

波長域は微弱ながら天体観測で記録される星光干渉波(ルメン波)と一致。

 

三、発語記録

 

第四夜、被験者Aが断続的に発語を開始。

音声は非常に低く、単語の連結が不規則である。

以下は観測魔導書による自動記録の一部抜粋。

 

〔00:41〕「……星が……おちる……」

〔00:43〕「おちる……いや、のぼる……」

〔00:45〕「あの黒い……神父が……数えた……」

〔00:46〕「ひとつ、ふたつ……見えない……なのに……見られている」

 

以後、同内容を夜ごとに繰り返す。

言語構造は解体的であるが、特定の韻律的周期を有し、

分析班の試算によれば北天星座群の軌道周期に一致。

 

四、発光現象について

 

第五夜以降、被験者Aの瞳孔内に微弱な光輝を確認。

肉眼では蒼白色、魔法感知下では星素反応。

当該発光は外部照明を遮断した状態でのみ顕著となり、

医療班の魔導師2名が視認時に一時的な幻視症状(星空の反転)を訴えた。

 

五、通信波形の検出

 

第六夜、医療局付属天文課が併行観測を実施。

その結果、被験者Aの発声時に周波数帯 1013Hz 前後の干渉波を検知。

同波形は、先に報告された「星導師ルメナ・クレア・ナイ儀式」観測時の天体変動と一致。

 

当該現象を以下の仮称にて分類:

 

“多相共鳴現象(LUMENA-SYNC)”

すなわち、被験者を通じて遠隔地の儀式と天体事象が同時共鳴する現象。

 

六、最終経過

 

第七夜、被験者Aは突如として立ち上がり、

病室窓から夜空を凝視したまま、静かに一言のみ発した。

 

「……おわりじゃない。星は、まだ、降りてくる……」

 

直後、全身の発光が消失。

脈拍・呼吸停止。

ただし、死後も瞳孔が収縮し続けるという異常を確認。

その動作は正確に星座の回転速度と同期していた。

 

医療班は死後硬直の遅延および肉体内に微弱な“外来魔素の脈動”を観測。

その成分は大気中の魔素とは異なり、

既知の分類体系に属さない“宇宙魔素(Celestial Mana)”の特性を持つ。

 

七、結論・所見

 

被験者Aは、星の智慧派儀式における観測媒体となり、

生命活動停止後も何らかの“星的情報伝達”を継続していると考えられる。

本件をもって「生体による星界通信現象」と定義、

遺体は厳重封印の上、帝都地下収蔵庫へ移送済。

 

なお、観測後より当報告者を含む医療班の数名が、

夜間に同様の低周波音(心音様の脈動)を聴取している。

現段階では業務上の疲労による幻聴として処理するが、

星空を見上げることは控えるよう通達済。

 

以上。

 

帝国医療局精神医術科主任医官 ロステル・ヴェイン

付記:

 

報告書の提出後、当医官室の天窓に新たな星が出現したと職員より報告。

当夜、当該方向は雲に覆われていたため、実際の天体観測とは矛盾する。

現象の再確認は行わない。

 

 

/*/ 帝都地下封印庫異常記録 第七次報告書(抜粋) /*/

 

 

提出先:帝国魔法省治安局/医療局合同調査委員会

報告者:帝都封印庫監察官 ハーリス・ゲイン

 

一、経緯

 

先般、被験者A(北辺境狩人)遺体の封印保管に際し、

当局の定める第四級呪的封印処理を施したうえで、帝都地下封印庫第七室に安置。

本室は恒常的に魔力遮断結界を展開し、外界との干渉は理論上不可能とされている。

しかしながら、封印後三日目夜半より複数の異常事象が報告された。

 

二、第一観測:発光現象

 

当該遺体の安置区画において、

封印符の下層部より微弱な蒼白光が透過。

警備班が確認した際、封印結界に変形は認められず。

照度測定の結果、星光と同波長の短周期脈動が検出された。

 

本局天文課による同時刻観測記録によれば、

帝都上空において実在天体に対応しない一等星の瞬光を確認。

位置は北天の第八象限。

波長一致率 99.72%。

 

三、第二観測:聴覚現象

 

翌夜より、当直官三名が同時に“心音に似た低周波振動”を聴取。

音源方向を特定できず、封印室全体が微弱に共鳴していたとの報告。

記録魔導具による波形解析の結果、

周波数は既知の呪的振動とは異なり、人間の鼓動周期と星の自転周期の中間値に該当。

 

四、第三観測:視覚的異常

 

第五夜、監察班が点検中に「封印室内で影が増えている」と報告。

照明・灯火の数に変化はなく、

影の数のみが通常の三倍に増加していた。

映像記録を再確認したところ、

各影が遅延を伴って“動作を追随”していることが判明。

 

この際、映像内で遺体の眼球が開眼していることを複数の職員が証言したが、

実際の記録媒体では確認されず。

 

五、終末事象

 

第七夜、封印庫全域で一時的に照明が消失。

復旧後、封印符表面に不明文字列が浮かび上がる。

文字列は帝国言語・古代語・エルフ語のいずれにも一致せず。

解析班はその形状を星図と照合し、

北天星座の反転配置であることを突き止めた。

 

同時刻、帝都全域で天候が急変し、

雲間に“星導師ルメナ・クレア・ナイ”と同一の人影を複数確認。

報告数:十六件。

そのすべてに共通する特徴は「黒衣・長身・黒い肌・星印の胸飾り」。

 

封印庫監察記録では、

安置遺体の姿が消失している。

代わりに、封印石床面に焦げ跡状の“星印”が残存。

中心部より極微弱な魔素放射を検出。

 

六、分析・所見

 

現象全体は既知の復活・転移・召喚術式のいずれとも一致せず。

同時発生地点の天体座標において観測された光度変化の周期性は、

先に報告された「多相共鳴現象(LUMENA-SYNC)」と完全一致。

よって本委員会は、

 

被験者Aは死亡後、星導師ルメナ・クレア・ナイの多相存在体の一部に再構成された可能性がある

と結論する。

 

七、勧告

 

封印庫第七室を無期限封鎖。

 

帝都における夜間観測・祈祷・天体儀使用を一時停止。

 

全職員に対し、**「星を見るな」**との緊急通達を発令。

 

報告者署名:帝都封印庫監察官 ハーリス・ゲイン

付記:

 

報告書作成中、窓外にて不明の星影を確認。

当該星は北天の正中線上に位置。

以後、夜間観察を控える。

 

 

/*/

 

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