オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~ 作:ぶーく・ぶくぶく
この場を借りてお礼申し上げます。ちょっとパラレル入ってます。
モモンガ「駄犬は開拓楽しそうで良いなー」(執務室でお仕事中)
2015.12.01 誤字修正
完成したばかりの風呂屋の二階では、囲炉裏を囲んで5人のワーウルフ達《チーム時王》と村長が、これからの開拓について話し合っていた。
今、村で使われている農地は連作障害を避ける為、1年毎に交互に耕作地を使っている。
休耕地にはクローバー等の牧草を植えて家畜の餌にしているが、この家畜は農作業用であり食料にするものではない。食用の家畜を育てるには現状の農業生産力が脆弱であった。
チーム時王としては食料増産の為に、森を切り開いた分とあわせて四輪農法にしたいのだが、これはこれで長期的に見ると問題があるとジョンは言う。
「でも、リーダーは何をそんなに嫌がってんだ?」
「四輪農法して生産増やさないと村人が自立できないだろ?」
「うーん、土地を囲い込んで管理しないといけないから、長期的には村人が皆、小作人とかになってしまうだろ。それが嫌」
ジョンが、マッシュとナーガンに四輪農法による問題点として、地主と小作人が固定化される事が嫌と答えると、メンバー達は「ああ」と納得した顔をするが、「でもさぁ」と続ける。
「村長に聞いたけど、皆で協力して農作業してるようだから、あんまり気にする事無いじゃない?」
「10年後20年後にそれぞれ自作できるように開拓を進めるとか、子供達を教育するとかしかないんじゃないか?」
「村人40人ちょっとしかいなくて、半分が子供で男手が10人いないだから、もう詰んでるぜ」
「……分かってはいるんだけど、はぁ……やるしかないよなぁ」
ヤーマ、コークス達からも、今はそれでもやるしかないと言われ、渋々ジョンも頷く。
四輪農法によって、経営者と労働者という自分が苦しめられた経済構造が出来上がるのが、ジョンは嫌だった。それは感情的な問題であり、特に先の事を考えてのものではなく、感情を優先しても良い事は無いぞとサポートキャラクター達に指摘され、理性では分かっていたのでジョンは頷いたのだった。
サポートキャラクター達と数日過ごして分かった事がある。
彼等は拠点NPC達と違って直接PCに紐付けされている為か、拠点NPC達よりも距離感が近く、自分が躊躇ってる迷いも的確についてくるし、言い難い事も言ってくる。また設定していない点も、自分からイメージを読み取っているのか自分を経由してモデルの影響を受けているように見えた。
結局、カルネ=ダーシュ村はもう詰んでるので、四輪農法でもなんでもやらなあかんと言う結論に達し、今度は隣村では作られていたが、カルネ村では作られてなかった作物について、彼等は村長に聞く事にする。
「村長、ジャガイモは作ってないの?」
「何年か作ると収穫が極端に悪くなってしまい、休耕してもダメだったので、私が生まれる前には作るのを止めたと聞いています。隣村は戦争で男手が取られるようになった数年前から、種芋をエ・ランテルから買って植えつけましたが、昨年から収穫量が極端に落ちたと隣村の長が言っていました」
村長の言葉に《チーム時王》は顔を見合わせ、ジョンが呟くように言葉を漏らす。
「……ジャガイモシストセンチュウだ」
ジョンの言葉にマッシュとナーガンがそんな筈はないだろうと疑問の声を上げる。
「この世界にプレイヤーが持ち込んだゴールデン芋なら、ジャガイモシストセンチュウはいない筈だろ?」
「近縁種がいて、平行進化したとか?」
ジャガイモシストセンチュウとは、簡単に言うとジャガイモの根に寄生し、瘤をつくる虫だ。
発症までに数年を擁するが、一旦、虫が高密度に生息するようになると栄養不良から収穫が6割も落ち、更に卵は土中で10年以上も生存し、農薬も効き辛い。
挙句、根絶には30年以上かかると言う。どこぞのギルメンのように性質の悪い虫だ。
元々この世界にジャガイモがなく、異世界からゲーム経由で持ち込まれたならば、存在しない筈の虫である。
「だとすれば、自然は面白いなぁ。昆虫採集したがってたアバさんが、この場にいたら畑を掘り返して寄生虫を探しただろうな。一緒に来てたら、蜂とか使って受粉も手伝って貰えたろうに……」
ジョンは身体を壊し、ゲームが出来なくなってしまったギルメンを懐かしく思い出す。最後に会った時は入院すると言っていたが、無事に退院できたのだろうか?
あの緑色の外装はカッコ良かった。
余りにもライダーっぽかったので、拝み倒してダーシュ村でヒーローショーをやったのも良い思い出だ。
あの時の動画に釣られ、ニチアサヒーロータイム好きが集まり出したお陰で、ダーシュ村攻防戦がDQNによる一方的なものから、攻め手も守り手も楽しめる。【さよなら、僕らのダーシュ村】へ続く流れに変わってくれた。
在りし日のギルメンを思い出し、ジョンは笑う。
本当に、自分達は今一人でも、決して孤独では無い。
アインズ・ウール・ゴウンの仲間達がいて、ダーシュ村の仲間達がいて、その思い出が自分を支えてくれるから、自分はモモンガさんを支えられる。
虫好きが過ぎて、源次郎さんに会う度に「お義父さん、エントマちゃんを僕に下さい!!」「お前に義父さんと呼ばれる筋合いは無いッ!!」から始まるPvPを幾度となく繰り返していたアバ・ドンさん。
虫愛の彼は人間形態なんて無かったので、変身ポーズからの形態変形をやって貰えなかったけれど。
あのPvPは見ていて本当に羨ましかった。
当時、シャイな自分は「お義父さん、ルプスレギナを僕に下さい!!」とは言えなかった。
あれはぜひともやっておくべきだった。
本当に残念だ。
彼となら、またヒーローショーも出来ただろう――その時は是非とも自分が悪役で、また、
「リーダー、どうしたの?」
「……いや、
ジョンは、訝しげなヤーマの声になんでも無いと首を振って答える。
「正攻法だと転作して、長期間……10年以上は間をあけるぐらいしか対策が無いよね」
「あとは誰かに殺虫魔法の開発させるとか?」
「一応、42℃以上の環境なら24時間で死滅する筈だけど……」
「畑全部を42℃で24時間とか無理っしょ」
マッシュとナーガンが話し合い。そうだよなーと肩を落とす。ジョンは先ず出来る範囲からやろうとメンバーと村長へ向けて口を開く。
「出来る範囲だと、カブの苗なり種なりを手に入れて、転作ローテーションのジャガイモの間隔を出来るだけ大きく取れるようにするぐらいだな。……村長、このあたりでは作物を手に入れたい時、どうしてました?」
「近隣の村と交換か、エ・ランテルまで買い付けに行っていました。」
村長の答えに「どっかで出稼ぎは必要か……」とジョンは腕組みをする。
モモンガがユグドラシル金貨を使いたがらないのもあるが、当座の復興には仕方ないにしても、開拓は出来るだけ現地のものでやって行きたい。
村長とジョンが話している脇では、マッシュとナーガンが明日は休耕地を耕す算段していた。
「後は最初の肥溜めの発酵が済んだら、畑にすき込んで冬麦を植える準備をしようぜ」
「いや、その前に畑の土が硬過ぎるから休耕地は一回、
重機ってのは俺の事だよなーと思いながら、ジョンは村長に持ってこさせた種籾をヤーマと手分けして調べながら、脳裏に村の麦畑の様子を思い出す。
畑の様子と種籾の状態からすると、大体のところは想像通りのようだった。
「ラール麦ってライ麦に見えるんだけど、これ小麦と混ざってるよな? 畑も種籾も、どっちも混ざってる。わざとじゃないようだけど、これのお陰で不作の時とか全滅を免れたんだろうな。でも、今年の冬蒔きからは出来るだけ、ライ麦、小麦になるよう……選別するか」
「冬も麦が作れるのですか!?」
「え? 村長、作ってなかったの?」
驚く村長に対して、気候的に十分、冬蒔きいける筈だけど、と首を傾げる。
種類が違うのかな? まぁ、それなら自分の種籾から何か出すよ、と村長へ答えながら、ジョンはこれから行う種籾の地味で面倒な分別作業を思いうんざりした。
思わずヤーマ達もうんざりした声をあげてしまう。
「うへぇ」
「……今こそ使えよ、《建築作業員の手》」
ナーガンの恨みがましい声に、ジョンはがっくりと肩を落とした。
「農作業員の手じゃないからなぁ。無理してでもワールドアイテムをゲットして運営にお願いしときゃ良かったよ」
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「リーダーが畑借りて試してたケレースの小麦は?」
ヤーマの問いに、ジョンは先ほど見てきた畑の様子を思い出しながら、頭を掻いて答える。
「昨日撒いたのが、もう花咲いた。ただ土地の痩せようが酷い。そのままではダメだ。――はい、これ。筆と小瓶な」
「うえ――マジかッ!?」
試しに異世界に蒔いたケレースの小麦。数日で収穫できそうだが、土地がその数日で一年分以上疲弊していく。
作物における
ナザリック第六階層のような閉鎖空間で、ドルイドであるマーレが地力の回復まで行う環境なら問題ないが、外部での栽培は危険すぎるとジョンは判断した。
これを敵対勢力にばら撒くと、それだけで数年待たずに土地が砂漠化するんじゃないだろうか。
バイオテロは勝手に繁殖されると手に負えなくなるので、やるつもりは無いが。
一応、花粉が飛び散らないよう《フィルター》で囲って虫除けも設置したが、しばらく周辺を注意して見ないとダメだろう。
数日で収穫できて、収穫倍率180倍なんて化物麦が勝手に繁殖し出したら世界が終る。
それでも21世紀初頭の日本の米は収穫倍率140~150倍あったと言うのだから驚きだ。
同じ時代に麦は、日本で50倍。米の国で25倍前後だったようなので、運営は神器級なのだからと、現実より収穫倍率を高く設定したのではないかとジョンは思っている。
麦と米では元々の収穫量が違うので、そこで比べて張り合うのはどうかと思うのだが、ゲームを余りリアルにされても困るし、ゲーム内で収穫までリアル3ヶ月~半年と言われても、もっと困る。ここは、ありがたく使わせてもらおう。
「花粉を取って、ラール麦と掛け合わせてダーシュ麦を作るしかないね」
「まあ、収穫倍率3~5倍じゃーねぇ」
ジョンの言葉にヤーマも仕方ないと答えながら、筆と小瓶を受け取る。
ラール麦1粒から収穫できる麦は3~5倍。地球における10世紀~15世紀ぐらいの収穫量らしい。
当然、それだけでは足りないので、アワやヒエなどの雑穀、オート麦も栽培されているそうだが、それだけは家畜に食わせる分が不足するので、家畜の数が(特に食肉用)増やせないでいたらしい。
現実では小麦の花粉でライ麦は受粉させても実がならないが、ゲーム内で壊れ性能だった女神の麦ならライ麦と交雑できる筈。
……出来ると良いな。
「ライコムギを作るのかぁ。上手く優良種が出来ると良いねぇ」
「神器級の小麦なんだし大丈夫だろ。寧ろ優良すぎると困る」
収穫まで数ヶ月掛かるぐらいに劣化してくれれば良いのだが。
ダメならこの面倒な作業を数回以上繰り返さないとならないだろう。
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ナザリック地下大墳墓第九階層。
深紅の絨毯がしかれた絢爛豪華なモモンガの私室は、異世界転移をしてよりモモンガの執務室を兼ねるようになり、先日は絶世の美女が同居する愛の巣(アルベド談)となっていた。
モモンガはパンドラに書かせた《脳喰らい》で集めた情報の報告書に目を通しながら、ちらりと横目で傍らに控えるアルベドの様子を窺う。
今日もアルベドは優しげな微笑を浮かべている。
ゲーム時代の微笑みよりも温かみのある微笑みに感じるのは自分の気のせいだろうか。
仲間達にそのように設定されたとは言え、
だが、これほどの美女に心底愛されるほど、自分は立派な人間なのだろうか、とも思う。
たっち・みーのような。リア充なギルメンのように、人間として立派になれば、気後れする事も無く。NPC達の想いに自分は応えられるようになるのだろうか?
低い自己評価を終え、視線をそっとアルベドから報告書へ戻す。
溜息をつくような動作で報告書をめくったモモンガを、アルベドはどう受け取ったのか。
「モモンガ様? ……どうぞ! お好きになさって下さい!」
頬を朱に染め、豊かな双球をモモンガへ差し出した。
その絶景に、モモンガの精神作用無効が発動し、沈静化する。
「
「も、申し訳ございません!!」
まったく、アルベドは……と思ったところで、モモンガは気づく。
(俺の好みを調べて設定したって言ってたよな? 俺って一途な処女淫魔が好きと思われてたって事?……えー、うわー、うーわー)
血も肉も無くなったのに、頬がかっと熱くなるような感覚に襲われる。直に再び、精神作用効果無効が発動し、沈静化する。
確かに嫌いでは無いがと考えかけ、照れ隠しに
鏡の向こうでは、ジョンを含む《チーム時王》と村長が、板張りの部屋で囲炉裏を囲んで何かを話し合っていた。
モモンガは声も聞こうと、もう一つ魔法を発動させる。ジョンは《大魔術師の護符》を装備していないようで、声も聞こえてくる。
ジョンの持つ《大魔術師の護符/アミュレット・オブ・ワ○ドナ》は、装備していれば探知系魔法を妨害し、ダンジョン内であればその階層にいる程度の精度でしか探知できなくなる。
当然、装備していれば遠隔視の鏡にも映らなくなるので、今は装備から外しているのだろう。
ジャガイモの話から、病気で脱落したギルメンの思い出話になっている。
あの時は病気という本人にもどうしようもない事であったのに、悲しいアイコンを連発してしまった。
悪い事をしたとモモンガは自省する。自分は彼の見舞いに行く事だって出来た筈なのだ。
(俺ももう少し、自分から動く事を覚えなければならないか)
そう思い、鏡の映像を消しつつ、アルベドへ向き直る。
「アルベドよ。お前に一つ、頼みがある……」
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その日、ジョンが一人で教会の居住区に戻ると、焦げ臭い匂いが充満していた。
何故一人かと言えば、風呂屋が完成したのでメンバー達はそちらに住むようになったのだ。
ジョンもそうしたかったのだが、モモンガから寝る時は出来る限りナザリックに戻るか、教会で休むように懇願されていた。
ルプスレギナも教会にいるので、ジョンが戻らないと教会で一人で待ち続けるようになると言われると辛い。
ジョンは、ふんふんと鼻を鳴らし、臭いの元を辿る。どうやら厨房のようだ。
ナザリックで料理スキル持ちは料理長とユリぐらいだった筈だが? ジョンは首を傾げつつ、厨房へ脚を進める。
スキルによる探知ではルプスレギナと思しき気配しかない。焦げ臭い臭いに混じって漂う柔らかな日向のように感じる匂いも、ルプスレギナのものだ。
現在の彼女の役割はメイドなのかシスターなのか、良く分らないものになっていた。
ヘロヘロやホワイトブリムなどのメイド製作班には「お前はメイドをわかっていない」と叱られそうだが、ここ数日のルプスレギナは、朝は教会を掃除し、畑仕事に向かう村人達がアインズへお祈りしにくるのを受け入れ、その後は気ままに村の中やナザリックをうろうろ徘徊しつつ御昼寝し、ジョンが教会に戻る日暮れになると、夕食をナザリックの厨房から運んで来ると言うものだった。
「ルプー?」
厨房を覗くとこちらに背を向けたルプスレギナの姿がある。
ジョンの声に、びくりと背中を震わせた。心なしか小さく見える背に近づく。
漂う。炭特有の焦げたような匂いは、ルプスレギナの手元のフライパンのようだ。
後ろから覗き込むと、フライパンの中には黒焦げの塊。
「料理をしたのか?」
「……はい。やっぱり、スキルが無いとダメなんですね。ジョン様に……召し上がって頂きたかったのですけれど、至高の御方に『そうあれ』と定められてない事をしては……いけないのですね……」
普段の陽気さは影を潜め、丸っこい瞳は薄く細く尖っていた。その目尻には涙が滲み、言葉遣いすら普段と変わってしまっている。
その言葉に、ジョンはルプスレギナが設定されていない事を――自ら自発的に行った事に気がついた。
スキルも無く、設定でも定められていない事をNPCは実行する事が出来ないのだろう。いや、ひょっとしたら
確かに肉を焼くというのも、好みの焼き加減を狙うと難しくなる。しかし、単に焼くだけすら、ルプスレギナには出来なかったのか。
泣いているように小さく震えるルプスレギナの肩。
ジョンはその震える肩を、後ろからそっと抱きしめてしまっていた。
「ジョン様ぁ……申し…訳、ございません……」
ルプスレギナの震える手が、控えめにジョンの腕に添えられる。
思えばこの短い日々の中でNPC達は、定められた事を、『そうあれ』と定められた延長線上のものだけを行い、考えているように見えた。
それを思えば、それを覆し、設定されていない事を自ら行うと決めたルプスレギナの意志。
設定されていない事を行うなど、
それを自らの意志で覆し、定められた限界を超えようと生き始めた彼女が堪らなく愛おしいとジョンは感じた。
それは、彼女を自らの好みとなるよう設定したからでもなく、人を惹きつける姿からでもなく――始まりは創造者への盲目的な忠誠だったろう。それを始まりとし、自らの目的を設定し、挑み、失敗し、悔やみ、涙を流す。本来の設定上、彼女に喜怒哀楽の哀は殆ど存在しない。子供っぽい純真さと残酷さ――虫をバラバラにして楽しむような――を持つ存在である筈だった。
ジョンの知っているルプスレギナであれば、「いやー、失敗してしまったっすよ」と、笑って終わらせる筈だったのだ。
「……ルプー、お前は凄いな」
そっとルプスレギナの涙を拭い、その赤い髪を撫でる。
気障ったらしいその行動が、自分でも驚くほど自然に出来た。
「うぇ?」
驚くルプスレギナを、もう一度、ぎゅっと抱きしめた後に腕を解き、自分に向き直らせる。
「俺達に創られたお前達は、『与えられた知識』を持ち、『造られた能力』を持っている。その『定められた限界』を自分で超えようってんだ。そりゃ簡単ではないさ。……だが、ルプスレギナ・ベータ。お前の選択、お前の意志を――俺は祝福しよう」
この変化が、何れNPC達の絶対の忠誠すら揺るがせる変化へ繋がろうとも、俺はこの子の意志を祝福しよう。
愛を知らぬ者が 本当の強さを手にすることは永遠にないだろう――だったか?
俺達を思うが故に自らの限界、制限に挑む。子供っぽい感想かもしれないが、それはなんと強い意志だろう。
――ああ、本当に。
仲間達と作り上げた。この愛するアインズ・ウール・ゴウンは素晴らしい。盲目的に愛するのでは無く、愛する為に自ら行動し始めるとは……。
彼女等を守る為にこの生命を使い切っても、アインズ・ウール・ゴウンに殺される事になっても――本当に、俺は本望だ。
ジョンはフライパンの中身に視線を落とした。毒無効もある。いや、無かったとしても、
ジョンは、炭になった元ステーキ肉を摘み上げ、ひょいと口に放り込む。がりがりと、2、3回噛んで炭の風味が口内に広がったところで、ごくりと丸呑みにした。
「ジョ、ジョン様ッ!!」
慌てて止めに入ったルプスレギナを手で制する。
「ルプー。今日は一つ大切な事を教えておくぞ。
物の価値とは物にない。物を扱う者の心にこそ価値がある。宝石を贈っても意味の無い者もいる。万の敵でも恐れない者もいる。……これはルプーにとっては消炭だが、俺にとってはルプスレギナ・ベータが、俺の為に……お前達が至高の方と呼ぶジョン・カルバインに、自らの意志で始めて用意してくれたものだ。お前の気持ち――美味かったぞ」
そう言って、ジョンは笑ってみせた。
泣いた
そのルプスレギナの笑顔が、ジョンには今までのどんな
ルプーのドSなところも演出したい今日この頃。壊しても良い玩具ぷりーず。
恋する乙女が好きな人に料理を作る話を書いてたのに、さらっと混じる『定められた限界』を超えろ!とかバトル漫画のノリ。書いてる人が厨二病だから仕方ない。
次回、第21話:何を隠そう! 俺は特訓の達人だ!