オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

237 / 237
第24部:MASS FOR THE DEAD
第226話:竜王狩り計画


 

 

/*/ 魔導国・第九層 戦略司令区画 /*/

 

 

卓上に立体映像の地図が浮かんでいた。

雪を被った山脈の奥深く、龍王国旧都。その上空に、人工衛星ゴーレムが軌道を描く。

 

「……対竜王戦を想定するなら、“単独で勝てる”かどうかの議論じゃねぇ。問題は――どれだけ残ってるか、だ。」

 

ジョンが低く言い放つ。

青白い毛並みの獣腕が、山岳地帯に赤い光点を落とす。

 

「八欲王が狩り尽くしたとは言われてますけど、情報が五百年前の話です。

仮に百体中二十体でも生き残ってたら、戦力比でこちらが不利になりますね」と、ぐりもあが指を滑らせる。

 

「でも、なんでそんなに戦う方向で考えてるんです? 一応、国交あるんですよね?」

ぐりもあの問いはもっともだった。

 

ジョンは腕を組んで、静かに答えた。

「だからこそだ。――“こっちの力”を測ってる。奴らは様子を窺ってる。

平和交渉の裏で、いつでも“試し撃ち”できる構えを崩してねぇ。」

 

モモンガが沈黙を破った。

「始原の魔法を使える竜王が複数確認されている。特に“滅魂の吐息”。

あれを複数体が同時に放てば、即死級。……先手を取られたら終わりだ。」

 

「衛星軌道からの《柱状タングステンゴーレム落下》ならどうだ?

一体を狙い撃ちすれば……命中すれば倒せる可能性はある。」

 

ぐりもあが即座に首を振る。

「精密誘導に失敗すれば、ただの岩石雨です。

竜王の鱗は〈強化魔法無効化層〉を持つ。質量兵器だけで押し切れる保証はない。」

 

ジョンは顎に手をやった。

「……なら、潜水艦の魚雷で牽制。地上の“気配”を断ち、衛星攻撃で同時多発。

奴らが空に逃げるなら、タングステン。潜れば、魔力魚雷。

俺たちは“空と海”の三次元で狩る。」

 

「問題は――始原級が他にどれだけいるか、ですね」

ぐりもあが呟く。

 

モモンガは腕を組んだまま、淡々と結論を下す。

「先制を取る。それだけが唯一の生存条件です。」

 

 

 

静寂の中、ジョンが口角を上げた。

「じゃあ――始めようぜ、“竜王狩り計画《ドラゴン・スレイヤー・オペレーション》”。」

 

 

/*/ 魔導国・戦略司令室 /*/

 

 

静まり返った作戦室に、ジョンの低い声が響く。

立体映像に映るのは、白金の竜王――“正義の化身”を名乗る存在。

その神々しい光が、まるで嘲笑うように照り返っていた。

 

「……結局、俺たちも我儘なんだよ。」

 

モモンガとぐりもあが目を向ける。

 

ジョンはゆっくりと、牙を見せずに笑った。

「“我こそ最強”だの、“世界の守護者”だの――そう言って、他者の自由を奪う。

あいつらは“正義”の名を盾にして、力を正当化してやがる。」

 

沈黙。

壁の水晶板に映る竜王の残骸写真が、無言の証拠のように沈む。

 

「でもな……俺たちも同じだ。」

 

ジョンの声は静かに、しかしどこか哀しげに落ちた。

「俺たちは“俺たちの世界”を守るために戦ってる。

けど――その“守る”って言葉が、どこかの誰かにとっての“押し付け”になるんだ。」

 

モモンガが眼窩の光を細める。

「……それでも、守らねばならないものがある。」

 

「そうだな。」

ジョンは立ち上がり、窓の外――星々を映す衛星軌道を見上げた。

「だから俺は止まらねぇ。ドラゴンでも神でも、“押し付けの正義”はぶち壊す。

それが――俺の我儘だ。」

 

 

 

その背を見て、ぐりもあは苦笑した。

「……あなたの“我儘”が世界を救うなら、悪くありませんね。」

 

ジョンは振り返らずに答えた。

「救う気なんてねぇ。ただ、ムカつく奴を殴るだけだ。」

 

 

 

──青い光が、彼の背を照らした。

人工衛星ゴーレムが、静かに軌道を回り始める。

 

 

ジョンはしばらく星を見上げたまま、低く続けた。

 

「結局な……“世界の痛み”がどうこう言ったって、現実はどうだ?」

 

ぐりもあが顔を上げる。

 

ジョンは指先で空間の地図を弾いた。

ホログラムの地図が変わり、海岸線の都市が浮かび上がる。

魚のような紋章が赤く点滅していた。

 

「インスマウスみたいな浸食は、今も起きてる。

深きものどもは増え続けてる。人間の街を少しずつ食ってる。」

 

モモンガが静かに頷く。

 

「竜王たちもそれを知らぬわけではないはずだ。」

 

「知ってるさ。」

ジョンは肩をすくめた。

 

「でもな、あいつらは“世界の均衡”とか“理”とか言って、基本は放置だ。

理由は簡単だよ。」

 

ジョンは振り返る。

瞳の奥に、冷たい光が宿っていた。

 

「自分たちの支配が及ばない場所だからだ。」

 

室内の空気が静かに凍る。

 

「深海も、辺境も、地下も。

あいつらの秩序の外で何が起きても、“世界の循環”で済ませる。

でも――」

 

彼は衛星軌道を指さした。

 

「俺たちが動くと、“世界が悲鳴を上げる”とか言って止めに来る。」

 

ぐりもあが苦笑した。

 

「……つまり、“世界のため”じゃなくて?」

 

ジョンは鼻で笑った。

 

「縄張りの問題だ。」

 

モモンガが腕を組む。

 

「竜王たちは“管理者”。

そして我々は“侵入者”。

ゆえに衝突は避けられぬ、というわけか。」

 

ジョンは頷いた。

 

「そういうことだ。」

 

少しだけ間を置いてから、続ける。

 

「俺はな、ツアーのこと嫌いじゃない。

あいつは本気で“世界”を守ろうとしてる。」

 

ぐりもあが静かに言う。

 

「でも、あなたは?」

 

ジョンは窓の外の星を見た。

 

「俺は、“世界の中の奴ら”を守る。」

 

その言葉は静かだったが、重かった。

 

「世界そのものがどうこうより、

今ここで生きてる奴が食われてるなら、そっちをどうにかする。」

 

衛星ゴーレムの光が、ゆっくりと動く。

 

「……だから竜王と喧嘩になる。」

 

モモンガが小さく笑った。

 

「なるほど。

“世界を守る者”と、“世界の住人を守る者”の違いか。」

 

ジョンは肩を回しながら言った。

 

「どっちが正しいかは知らねぇよ。」

 

そして最後に、静かに付け加えた。

 

「でも、放っておくのは性に合わねぇ。」

 

 

 

衛星軌道上。

人工ゴーレムがひとつ、またひとつと位置を変える。

 

 

 

――竜王とナザリック。

その戦いは、もう避けられない。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:オーバーロード)

こちらは「オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~https://syosetu.org/novel/61986/」の小話、パラレルetcのまとめとなります。▼かつて〈ユグドラシル〉のプレイヤーであり、今は青と白の毛並みを持つ人狼として異世界に存在するジョン。▼戦場や陰謀、そして強者の権謀渦巻く魔導国で、彼が目指すのは意外にも「のんびり、ほ…


総合評価:575/評価:7.15/短編:429話/更新日時:2026年07月01日(水) 00:00 小説情報

オーバーロード <物語の分岐が確認されました>(作者:ヒツジ2号)(原作:オーバーロード)

DMMO RPG『ユグドラシル<Yggdrasil>』のサービスが終了する2年前、ある男がもたらした情報により、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンのとあるギルドメンバーは、わずかに行動を変更した。▼これにより、物語は大きく分岐を迎えることとなる。▼モモンガさんや、その他の至高の御方々がもう少し幸せになってもいいと思い、素人ながら書かせていただきます。▼現地人も…


総合評価:7974/評価:8.99/連載:156話/更新日時:2026年07月15日(水) 19:07 小説情報

オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた(作者:連載として再構築)(原作:オーバーロード)

▼鈴木亜理紗はアーコロジーの下級階層の民として、鈴木悟の妹として生まれた。▼▼人の命が非常に軽いアーコロジーにおいて、必死に生きて、今を、自分の周りを少しでも良くしようと奮闘する亜理紗だったが、その運命は容赦なく彼女を襲う。▼▼アリサは、定められた運命を変えることができるのだろうか。▼▼過去投稿したTS転生者物です。見切り発車だったのでプロットなど組みなおし…


総合評価:3861/評価:8.01/連載:57話/更新日時:2026年02月10日(火) 08:55 小説情報

オーバーロード 傾国狐の異世界日記(作者:破戒僧)(原作:オーバーロード)

ユグドラシル最終日。『傾国の悪女』(ロールプレイ)として知られる1人のプレイヤーが、ギルドホームと共に異世界に転移した。ナザリックが転移して来るよりも、400年も前の時間に。▼これは、わけのわからん状況にパニック寸前になりつつも、頼れるNPC達に手伝ってもらいつつ、なんだかんだで割と欲望のままに異世界生活を楽しんでいく、一人の『狐』がしたためた、なんてことは…


総合評価:5266/評価:8.27/完結:122話/更新日時:2026年06月28日(日) 10:18 小説情報

転生したらオバロ世界のエルフだった件について(作者:ざいざる嬢)(原作:オーバーロード)

気がついたらオーバーロードの世界に転生していた前世男の女エルフ、アレーティア。▼原作知識うろ覚えの彼女がこの過酷な世界で生き抜く話。▼主人公知識:原作14巻辺りまで、漫画、WEB版▼8/24 日間ランキング4位になっていました▼応援ありがとうございます


総合評価:24899/評価:8.74/連載:113話/更新日時:2026年06月28日(日) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>