オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~ 作:ぶーく・ぶくぶく
これが全年齢対象に見えない人は心が汚れていますね。
勿論、ぶーくの心は汚れてますよw
2015.11.6 20:50頃 修正「一頭の狼として、狼として」→「一頭の狼として、女として」
ルプスレギナはうつらうつらと夢現にいた。
温かく包み込まれる感覚が心地よい。
至高の御方の盾となり、最後には散る為に創造された身とは言え、この感覚は心地よい。もし、両親などと言った庇護者に守られているのであれば、このような感覚を持つのではないだろうか。
夢現でそんな事を考えていたが、眼に強い光を感じて瞳を開く。
目の前には大きな青い
(え!? あれ、どうしてジョン様がいるっすか? と言うか、私、狼形態になってるっす?)
軽くパニックを起こして身動ぎするが、狼形態になったルプスレギナを抱え込むように、同じく狼形態のジョンが丸まっている為、僅かに身体が動いただけだった。
昨晩、ジョンと遠乗りに出掛け、アゼルリシア山脈の頂で力を解放したジョンの咆哮を至近距離で受け、予め用意していた《サイレンス/静寂》を消し飛ばされ、そのショックで狼形態に戻り、眼を回してしまったようだ。
ルプスレギナの身動ぎに、薄目を開けたジョンは寝ぼけた様子で、ベロリとルプスレギナの鼻先を舐め上げて、彼女を硬直させる。
(~~~~~~ッ!!)
敬愛と忠誠は揺ぎ無い。だが、それ以上に彼女は先日アルベドに指摘され、気づいてしまった。
愛している。慕っている。
一頭の狼として、女として、至高の御方を愛していると自覚してしまったルプスレギナに、これは些か刺激が強かった。
ジョンの側は寝ぼけてるのもあり、いつも以上に身体に引っ張られ、言葉にすれば「おはよう」ぐらいのつもりで、意思表示を狼と示しているだけなのだが。
犬や狼は口で世界を探る。知らないものの正体を確かめる、モノを運ぶ、グルーミングする、子供をあやす、コミュニケーションを取るなど、人が手で行う事を口で行っているのだ。
なので、身体に引っ張られ、言葉ではなく行動でジョンがコミュニケーションを取っても何もおかしな事は無い。
だが、気絶して、無意識の内に人間形態から狼形態になってしまったルプスレギナは、人間的な意識で受け止めてしまっているようだった。
驚きと羞恥、それ以上の喜びで身体を硬直させたルプスレギナの様子に、大狼はスンスンと鼻を鳴らして耳の辺りの臭いを嗅ぐ。
(ひッ! だ、だめっす…そ、そんなされたら…ひゃぅッ!)
同じ価値観を共有できる同族である筈なのに起こる得る
悲しいかな。世界の一部であるナザリックにも当然のようにあるようだ。
ジョンはルプスレギナの耳の後ろを丹念に舐め上げ、毛筋にそって首まで丹念に舐め上げる。
(ッぁ……あっ……ぁんっ……ッふ…ぁ……ッッ)
毛並みが揃った事に満足すると、ジョンは次にルプスレギナの目元の辺りから頬から鼻先にかけての毛並みを揃える。
ピンク色の分厚い舌が毛並みを整える熱い感触に瞳を蕩けさせながら、ルプスレギナは自身の鼻先から離れるそれが、別れを惜しむかのように銀糸を引く様に身体を震わせた。
(……う、ん……っあ…気持ち……い…ぃ…っす)
顎を持ち上げられ、顎の下から首にかけてをざらついた舌がヌルヌルと蠢き、本来は感じない筈のぞわぞわと粟立つような刺激。
「っひゃ……ぁ……ッッッ!!!!」
つい思わず声を上げてしまっていた。
驚いた顔で自分を見つめる
狼形態でなければ茹ったタコのように真っ赤になっているのが知られてしまっただろう。
「ち、違うんです! ジョン様、これは、その」
不思議そうに首を傾げる青い大狼の金の瞳に、あたふたとしている赤い狼の姿が映っている。
少し考え込むような様子を見せた
「その、あの、ち、違い…ますっす! 気絶して、びっくりして、その、いま、いま…人間の、感覚の…ままで!」
「…あ、はい」
そう言われても狼形態になってるジョンには今一つピンと来ないのだが。
それでも人間形態であったら、同じ事は絶対に出来ないだろうな。ぐらいは何と無く理解したつもりだった。
ジョンは狼形態のままでは強く意識しないと言葉を使わずに済ませようとしてしまう自分に気がつき、ルプスレギナを困らせているようだし、そろそろ形態を変えるべきだろうと考える。
そうして身体を起こし、立ち上がると四足歩行のまま大きく伸びをした。
「夜の内に帰るつもりがすっかり遅くなったな。ルプー、帰ろう」
次いで、人狼形態を取りながらルプスレギナへ言葉を発する。
眼下に見える世界は朝日に照らされ、夜とはまた違った輝きを見せている。日の光を浴びて活動を始めて木々や花々の香りも、麓からの風にのって頂まで届いていた。
生命力に溢れる香りを吸い込み、視線をルプスレギナへ戻すと、上半身を起こした状態で人間形態に戻ったルプスレギナは、横座りの体勢から立ち上がろうとしていたが、びっくりし過ぎたのか、未だ立ち上がれないでいた。
「い、今、《大治癒》を使うっす」
そう言ったルプスレギナをジョンは、「教会までは抱えて行く。びっくりさせたようだしな」と抱え上げた。
横抱きに抱え上げられ、(ま、また姫抱っこっす~~うきゃ~~ッ!)今度は意識がある状態でだ。ルプスレギナは真っ赤になりながらも、この幸運を逃すまいとジョンの胸元の白い毛に掴まり、甘えるようにジョンへ出来る限り身を寄せる。
ジョンが人間形態であれば、首に腕を回す事も出来たのだが、人狼形態では背中や首周りの筋肉の発達が凄くルプスレギナの腕が回らなかったのだ。
《大魔術師の護符》で《転移門》を開き、教会へ直接戻った二人だったが、戻ったところで、朝食を用意しに厨房へ来ないルプスレギナに代わり、朝食のワゴンを運んできたソリュシャンと鉢合わせする事になる。
狼に限らず、神でも人でも悪魔でも、繋ぎ止めるにはグレイプニールよりもピンク色の鎖が一番だろう。
この鎖が
わんこのグルーミングです。
どこかの宇宙的蜘蛛さんの毛繕い強要と違い、ごくごく普通の常識的な、自分で出来ない顔の毛繕いです。つまり、健全。