オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

29 / 71
モモンガ分、アルベド分の補充です。
今回の話が書けて満足。きっと色々二人は上手く行くに違いない。
未来は明るい。(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン



第23話+1:アルベド、お前の全てを許そう。

アルベドから相談があると言う事で、ジョンは玉座の間に来ていた。

 

「カルバイン様、どうして玉座の間を?」

 

訝しげなアルベドにジョンは肩を竦め、「モモンガさんいないのに、モモンガさんの部屋でアルベドと二人ってのはなぁ」と頭を掻いた。

その言葉に込められた意味。それに思い至ったアルベドの表情はだらしなく崩れ、黒い翼がパタパタと喜びに振られている。

 

……俺も尻尾に注意した方が良いんだろうか? 思わず振り返って自分の尻尾を見るジョン。

 

玉座を見上げる場所に用意された(ジョンからすると無駄に)高級感溢れる簡易テーブルと椅子に腰を落ち着けながら、至高の41人に改めてモモンガの嫁だと気遣われた喜びに震えるアルベドを眺めながら、ジョンは一般メイドの入れてくれた紅茶を一口飲む。

うん、カルネ=ダーシュ村では作れない最高級茶だ。どっかにお茶の木ないかな、などと考えながら、一般メイドを声の聞こえない位置まで下がらせた。

 

「で、アルベド。相談って何?」

 

 

/*/

 

 

至高の存在であるジョンに気遣われた意味にアルベドは天にも昇る気持ちであったが、自らがジョンへ伝えなければならない事を思い出し、同時に自らの醜さまでもが思い出され、自らを責める自らの心の声に身体は震え、喜びは自責の念へと変わっていた。

 

転移直前にモモンガへ別れを告げに来た至高の41人。

彼らの「どうしようもない」「残念」「一緒に連れて行けない」と言った寂しさや悲しさを感じていたが、それでもアルベドは、ナザリックを一人で維持するモモンガの寂しげな背中を覚えていた。

 

愛しい方を悲しませる至高の存在が許せなかった。

 

最後に来たジョンも、モモンガへ別れを告げて、モモンガを悲しませるのか。モモンガを連れて行ってしまうのか。そう思うと、アルベドは自らの想いを止められなかった。

恐れ、悲しみ、嘆き、切なさに胸が張り裂けそうで、それでも涙を流す事も出来ずにいた自分の声無き声。

 

(最後に残って下さったこの方を、私の愛する御方を、どうか私たちから取り上げないで)

 

『泣くな、アルベド。何処にも行かないし、何処にも連れて行かない。俺はこれまで通り、モモンガさんとアインズ・ウール・ゴウンを守る』

 

その声無き声に答えたジョンの言葉に自分は救われた。

だが、その為にジョン・カルバインはどれ程のものを犠牲にしたのだろう。

 

セバスと村の調査に出た際に、セバスへと言った言葉。

 

『我等と盟友は今、遠き断絶の彼方にある。夢見るままにまちいたる盟友たち。だが、我が声は虚無の空を越えてバイアクヘーへ届いた。ならば我等は銀の鍵の門を越え、盟友たちへ声を届ける事も、再び行き来する事も出来るだろう』

 

その言葉の通りならば、至高の御方々は戻れなくなるのを知っていた。

だからこそ――彼等は別れを告げに訪れた。

知っていた上で、自分達の為、モモンガの為、ジョンは敢えてこの地に残ったのではないだろうか?

 

一人でダーシュ村というダミーを用意し、ナザリックの敵対者を引き付け、幾度死すとも戦い続けていたジョンが、ナザリックへ戻った。その直後の転移。

まるで転移する事を知っていたように、的確な行動を取るモモンガと、精力的に活動するジョンは、今また、カルネ=ダーシュ村という形で外部と接触する拠点を作り出している。

 

モモンガの雰囲気もあの日から変わった。良く笑うようになり、ナザリックを覆っていた重苦しい冷たい空気は明るくなった。

それまで使う事のなかった《自己変身》を使うようになり、守護者達と食事を取り、守護者だけではなく、メイドや料理長にまで、仕える喜びを与えてくれるようになった。

 

そんな慈悲深い御方。自分の愛する御方を孤独にした41人を恨んでいた。憎んでいた。

 

――けれど、それは正しかったのだろうか。

 

自分達シモベを見捨てられなかった慈悲深きモモンガ。

そのモモンガの伴侶として、愛し、愛される存在として、モモンガの為に至高の存在が総力を結集し、創造されたのが自分なのだと告げられた。

 

その自分の為に至高の存在が用意していた数々のアイテム。至高の存在が手ずから製作した花嫁衣裳。

モモンガの黒に映える白い衣装。魔法詠唱者であるモモンガが最も必要とする盾となる前衛職。

モモンガの隙間をぴったり埋めるように創造されていた自分自身。

 

――至高の御方々はモモンガが残ると理解していたのだ。

 

慈悲深きモモンガは、自分達シモベを見捨てられない。

一人が去り、二人が去り、もう来る事も出来ない最後の時を越えて、それでもモモンガはシモベ達の為に、この地に留まり続けると知っていたからこそ、その無聊を慰める存在として御方々は自分を創造したのだ。

 

それなのに自分は――

 

アルベドは静かに席を立ち、ジョンの前に跪いた。裁きを待つ罪人のように、処刑を待つ殉教者のように、静かに頭を垂れた。

 

 

「至高の41人、ジョン・カルバイン様。守護者統括アルベド。この愚かな身の話を、どうかお聞き下さいますよう伏してお願い申し上げます」

 

 

/*/

 

 

ジョンは目の前で跪き、金の瞳からはらはらと涙を流しながら、地に額をつけ、懺悔するアルベドを前に困っていた。

相談があると言うので、てっきりモモンガが手を出してこないとかのサキュバス的な相談だろうと思っていたのだ。

 

……想像以上に愛が重かった。流石はモモンガの嫁である。

 

それにしても、とジョンは思う。

アルベドは、定められた範囲を超えてモモンガ愛しで、ギルメンを憎み、誕生秘話とギルメンが用意していた衣装から自分の憎しみが誤解であると判断し、そのような愚かな自分はモモンガに相応しくないと自責し、ジョンに懺悔している。

 

本当に仲間達と作り上げた。この愛するアインズ・ウール・ゴウンは素晴らしい。NPC達が盲目的に愛するのでは無く、愛する為に自ら行動し始めるとは……。

 

この変化が、何れNPC達の絶対の忠誠すら揺るがせる変化へ繋がろうとも、自分はこの子等の意志を祝福しよう。

愛を知らぬ者が 本当の強さを手にする事は永遠にないだろう――だったか? いや、それよりも、最愛に比べれば――最強なんて意味が無い、と言うべきだろう。

 

本当に、恋する乙女と言うものは無敵だ。

 

自分達がゲームの中で競っていた力など、彼女達の意志に比べたら、ちっぽけなものだ。

本当に、ああ、本当に強いと言う事は、こうあるものだろう。

 

心に耳を傾けるを恥といい、いとかしこきメイデアの姫君は恥を知る。

 

不意にジョンは、古いゲームの一文を思い出す。

それは言うのだ。

黙っていれば、その耳に自分の心の声が聞こえ始めると。どんな屈辱よりも身を焦がす、己を糾弾する自分の声――それを恥と言う。

 

アルベドは自らの心に耳を傾け、自らの意志の下で許されざる想いを募らせた。それは創造主に対する叛意と殺意。

 

メイデアの姫君のように慈悲深いわけでもない。愛の重い魔王の妃(アルベド)だが、それでいい。()()()()()

悪は自らを蝕む。魔王への愛故に自分達(悪のギルド)を滅ぼすと言うなら、それは素敵な事じゃないか。それでこそ、アインズ・ウール・ゴウンの守護者統括に相応しい。

心の中の仲間達に語りかける。ウルベルト、るし★ふぁー、ぷにっと萌え、タブラ達が、満足気に、愉快そうに、煽り立てるように、それぞれ頷き返してくる。

 

 

「アルベド、顔を上げろ」

 

 

びくりとアルベドの羽が震え、顔を上げる。裁きを、神の試練、恩寵として受け入れる悟りきった殉教者の表情がそこにあった。

ジョンは、優しげで、悲しげで、けれど、誇らしげな瞳でアルベドを見下ろす。

 

「あの日、あの時、玉座の間でモモンガは言った。『アルベド、お前の全てを許そう』と。お前の罪も、何もかも全てをモモンガは許した」

「で、ですが、私の叛意、殺意は許されざるもの――」

 

俺たち(至高の存在)を舐めるなよ――アルベド」

 

そう言って、ジョンはにやりと肉食獣の笑みを浮かべ、椅子から立ち上がった。

何処までも高慢で鼻持ちならない上に無謀だが、それだけでは終らない表情(かお)でアルベドに笑いかける。

 

「良くそこまでモモンガを愛した。俺たちに『定められた限界』を、自らの意志で良く踏み越えた。お前の選択(叛意)、お前の意志(殺意)を――俺は、俺達(至高の41人)は祝福しよう」

 

アルベドへ向けて差し出した手を握り締める。その手に決意を握るように、力強く握り締める。

その拳が、どん!と音を立てて力強くジョンの厚い胸板を叩いた。

 

 

「立て、アルベド。立って、胸を張れ。それこそが俺達の誇り。誇り(こだわり)こそが俺達の証」

 

 

――お前は、俺達の誇りだよ。

 

 

/*/

 

 

冒険者としてエ・ランテルへ出て行くにあたり、モモンガは守護者達の説得にあたっていたのだが、それも一段落した。

デミウルゴスやセバスの反対、心配が大きいのはモモンガの予想通りであったが、当初は反対であったアルベドが途中からモモンガを擁護する側となったのが、モモンガとしては予想外ではあった。

 

話の最中の一コマ

「ナザリック地下大墳墓は私達も愛する所。至高の御方々と比べれば不甲斐無い我らでありますが、ご不在の間は、我ら全身全霊を以てナザリック地下大墳墓をお守り致します。不敬にあたるかもしれませんが……モモンガ様。これまで玉座の間に戻られるモモンガ様のお姿は常に哀愁を帯びておりました。その悲しみを晴らす事の出来ない我が身の無力が悔しく。しかし、先日、カルバイン様がお戻りになられ、近郊にカルネ=ダーシュ村の開拓を始められてより、モモンガ様は良くお笑いになるようになりました」

 

そう言って微笑むアルベドに、どきっとしながら「え? 俺そんなにしかめっ面だった? 骸骨だけど」と、内心で焦るモモンガ。

焦りながらも、普段の捕食されるような雰囲気は微塵もなく。その艶やかな微笑は、モモンガを包み込むような慈愛に溢れ、年上の大人の包容力、母性を感じさせ、そう言ったものへの免疫の無いモモンガはアルベドに見惚れてしまった。

 

「理性ではなく、感情で判断するのですか。アルベド、私達が忠義を尽くせる御方を、護衛もなく送り出すと言うのですか!?」

「至高の御方々は、これまでもそうしてこられたわ」

 

珍しく感情を露にしたデミウルゴスをアルベドが受け流す。コキュートスは彫像のように動かない。

理詰めで危険を説くデミウルゴス。その判断の根拠にはジョンに見せられた【さよなら、僕らのダーシュ村】がある。

PC達がナザリックの外で何をしていたのか知らない彼は、モモンガとジョンが慎重に情報を集めていた事から、あれを基準としてモモンガの警備を考えるべきと判断していた。そうであれば、ナザリックの現有戦力でも十分とは言えない。

それに対し、全面的にモモンガの望みを叶えようとするアルベド。

両者の意見は平行線であり、遂にはデミウルゴスが金剛石の眼を見開いて声を荒げる事態となった。

 

「その保証が何処にある!!」

 

デミウルゴスの感情をむき出しにした声に、モモンガは思わずビクッと身体を震わせ周囲を見回す。

コキュートスは動じず……と言うか、さっきから発言がないのだが、モモンガがよくよく考えてみるとアルベドとデミウルゴスしか喋っていない。

 

(ごめんなさい。俺はちょっと異世界冒険に出たかっただけなんです。コキュートス、お前も何か言ってくれ)

 

思わず立ち上がり、アルベドを責めた形となったデミウルゴスだが。

 

 

「主人を信じなさい。それが創造された者の務めよ」

 

 

そのアルベドの言葉には、歯を食い縛って席に戻るしかない。

 

「……万が一があった場合、貴方には守護者統括の地位を降りてもらう」

「至高ノ御方々ノ定メタ役割ヲ降リロト言ウノカ。デミウルゴス、ソレハ不敬ダ」

「良いでしょう。……モモンガ様も宜しいでしょうか」

 

「あ、ああ。…ごほん。お前達の忠義嬉しく思うぞ」

 

守護者達の視線が一斉に向けられ、モモンガは強い支配者ロールを必死に取り繕う。

デミウルゴスが不満と言うか、悲しげな様子だった。部下の不満を放置し、カリスマ――支配力が低下するなどあってはならない。自分が外に出ると言う話はアルベドのお陰で実現できそうだ。となれば、警備や連絡などバックアップ体制を構築しなければならないだろう。それで上手くデミウルゴスの不満が解消されれば良いが。

 

「デミウルゴス、お前の心配は仕える者として当然の事だ。何の問題もない。アルベドよ。お前の信頼、嬉しく思うぞ。だが、それに甘えて心配を掛けすぎるのも問題であろうな。これより互いの妥協点を探ろうかと思うが、如何だ?」

 

「勿体無いお言葉です。至高の御身。どうか、この身を如何様にもお使い下さい」

 

 

/*/

 

 

話し合いの結果、周囲を隠密に長けたシモベが警護する事。緊急離脱用のアイテムを持つ事で話はまとまった。

執務室に戻ったモモンガは革張りのゆったりとした椅子に腰を落ち着け、かたわらに立つアルベドへ視線を向けた。

 

咲き誇る大輪の花のような華やかさはいつも通り。だが、ここしばらくの間に、余裕あると言うか、包容力が増した深みのある笑顔になってきたように、モモンガには感じられていた。

 

今も、アルベドに口添え助かった。何か望むものはあるかと訊ねたところ。週一で報告会を兼ねて晩餐会を継続してほしいとの願いがあった。

以前であれば自身が寵を受ける為に、がぶりついて来てもおかしくなかった。

だから、うっかり褒美に何が良いかと聞く事も出来ないでいたのだが、今は身構えずに聞く事が出来る。

 

「捨てられたのではないと分っていても、どなたもいらっしゃらないのは寂しいものですから……。守護者だけではなく、料理長、メイド達にも至高の御方にお仕えする喜びをお与え下さいますよう、お願い申し上げます」

 

そう言って、甘く儚げな微笑を浮かべ、深々とモモンガへ頭を垂れるアルベドだった。

 

モモンガは初日からの過激なアタックでアルベドが何を望んでいるのか嫌でもわかっている。そのアルベドが自身の欲望を抑え、配下の者達の為にお願いをしてくる姿が、ユグドラシルでの自分の姿と重なった。その一途に自分を想い、健気にギルドに尽くす姿に、モモンガは初めて――自分がこれほどの美女に相応しいかどうかなど関係なく――アルベドに何かをしてやりたいと思ったのだ。

 

 

「そ、それだけで良いのか? お前自身の望みは無いのか?」

 

 

「偽り無く本心を申し上げますと、その…モモンガ様よりお情けを頂きたく存じます。ですが、モモンガ様は今はその時ではないとお考えなのですよね」

「う、む…まぁ、そうだな。…アルベドの望むものとは違うだろうが、私は仲間達みんなが創造したお前達全てを愛しているが…?」

 

何かをしてやりたいとは思ったけれど、そのナニかは違うんじゃないかなと、ヘタレてしまうモモンガだった。

それでも言葉に出して「愛している」と言えるだけ、何処かのヘタレよりは断然マシなのであるが……こんなものは競っても仕方ない。

 

「…愛して…愛して…愛して」

 

祈るように手を組み、瞳を潤ませ、壊れた音声再生機のようにぶつぶつと同じ言葉を繰り返すアルベド。

それだけ心の内を言葉に出して、きちんと伝える事が効果的であり、どれほど価値があるかと言うことでもあるが、自分の愛の重さに自覚の無いモモンガは、自分の重さを棚に上げてドン引きだった。

 

「お、おい、アルベド。皆をな? 皆をだぞ?」

「で、ですが、私も愛して下さっている! と言う事ですよね!」

「う、ま、まぁ、そうだな」

「くぅぅぅ、私を、私をぉぉぉ」

 

ぴょんとアルベドが両足を揃えて、軽やかに可愛らしく飛び跳ね――どごぉッ!―― 執務室の天井に激突する。砲弾が激突したような轟音にシャンデリアが揺れる。それでもアルベドは鼻歌を歌いだしそうな程にご満悦だ。100Lvの盾職であるアルベドには痛みなどなかっただろう。

モモンガはその様子に溜息をついたが、そのまま床に落とすのも可哀想に思い、落ちてきたアルベドをキャッチし、横抱きにした。

 

「大丈夫か、アルベド?」

「ああ、モモンガ様が私を……私はここで初めてを迎えるのですね」

潤んだ瞳で自分を見上げ、顔を僅かに逸らしつつ発せられたアルベドの言葉に、モモンガは思わず素っ頓狂な声を返してしまう。

「え?」

「服はモモンガ様が? 自分で脱いだ方が宜しいでしょうか? それとも着たままで?」

「は?」

 

一般メイド達が気を利かせて一礼し、退出して行く。エイトエッジ・アサシンも不可視化のまま、カサカサ擬音がしそうな動作で天井伝いに扉まで下がり退出して行った。

こちらを振り返り、一礼するメイド達の表情にモモンガは焦る。

 

(まて! その私達、気が利くでございましょう見たいな表情(かお)はなんだ!?)

 

 

「ああ、至高の御方々に心から感謝いたします。その深遠なる智謀で今日、私はモモンガ様と結ばれます」

 

 

……駄犬(ジョン)の入れ知恵か。道理で何かおかしいと思ったぞ。

 

 

「すまない、アルベド。早急に解決すべき問題が出来たようだ」

「は? 畏まりました」

 

モモンガの腕の中で表情を蕩けさせていたアルベドだったが、冷静に戻ったモモンガの声に、色ボケサキュバスから優秀な守護者統括に表情を切り替える。

それでも、その表情の中に、これまでは気がつかなかった小さな不満……不満と言うよりは「意地悪」と小さく唇を尖らせるような微かな感情の色が読み取れ、モモンガは大人の女性に見えるアルベドでも、そう言った感情を持つのかと小さく笑った。

 

「モ、モモンガ様……!」

 

アルベドは自らの感情を見透かされた事に気がつき、白磁の肌を興奮ではなく、羞恥で朱に染める。

腕の中、小さく抗議の声を上げながら恥じらうアルベドに、モモンガはこれまで感じた事の無い感情の揺らぎを感じ、アルベドの額に軽く歯を当て身を離した。

 

「アルベドよ。今はこれで許せ」

 

そして、アルベドを床に下ろすと、そのまま振り向かずにモモンガは執務室から出て行く。

後には「モ、モモンガ様」と全身を上気させ、黒い翼を震わせ、口元を痙攣させながら、表情が崩れるのを必死に耐えるアルベドが残されていた。

 

 

/*/

 

 

モモンガが執務室を出て、バタンと扉が背後で閉じる。

同時に「よっしゃああぁ!!」と、アルベドの雄叫びが通路に響き渡った。

 

「……扉が薄いな」

 

いや、アルベドの声が大き過ぎるだけか。

頭を振って、ありもしない頭痛を振り払うとメッセージをパンドラとジョンへ繋ぐ。

 

《パンドラ、たっちさんの装備と巻物(スクロール)《パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士》の使用を許可する。モードたっちさん、フル装備で闘技場まで急いで来い》

《ジョンさん、30分後に闘技場へ来てください》

 

同時に桜花領域守護者へジョンが闘技場へ入ったら、ジョンの転移を封鎖するよう命令する。

 

 

30分後、

 

 

闘技場に呼び出されたジョンの見たものは、絶望のオーラを纏う死の支配者とそれに従う純銀の聖騎士の姿。

 

「えーと、モモンガさん? 本日はお楽しみでした…ね?」

 

「この駄犬がぁぁッ! 行け、パンドラ!」

「あいぇぇぇ!? 転移できない!? なんで、どうして、本気すぎんだろぉぉッ!!」

 

 

――かてぇッ!? なんだこの装備、本物か!

――Wenn es meines Gottes Wille!!

――おれのまえでやるなといったろうがぁッ!

 

 

/*/

 

 

ジョン・カルバイン下記の通り記す。

 

最終的には、楽しく喧嘩した後に誤解を解き、アルベドから相談された事を"伝え忘れていた"と伝え、また火球を喰らいました。

助言も「がっつかずに、そっと寄り添い、モモンガさんから求めてくるよう仕向けるのがベスト」(意訳)と言っただけと伝えましたが、信じてもらえませんでした。

 

解せぬ。

 

 




きゃー! 至高の41人マジ至高ー!
「さよなら、僕らのダーシュ村」と「アルベド、お前の全てを許そう」まで辿り着けて満足。

アルベドやルプーを呼び水に、NPC達は自分の意志を持ち、目的の再設定を行えるようになって行くでしょう。
モモンガさんが支配力の低下を心配するような生きた存在に変わって……でも、そこに本家のような寂しさは無い筈です。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。