オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~   作:ぶーく・ぶくぶく

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冒険王ビィト連載再開と聞いて!うちも再開!

男が出ない話があっても良いと思う……と言うか、うちはモモンガさんとジョンよりも女性の方が出番があるような気が……問題はないですね。
ペロさん大活躍。あ、活動報告に弐式炎雷さんの想像設定を書いてみました。宜しければどうぞ。



第3部
第27話:女性守護者の定例報告会(お茶会


モモンガの私室の一角では、この部屋の女主人でもあるアルベド主催のお茶会が開かれていた。

執務室に寝室が複数、居間に応接室、厨房まである第九階層の私室は、モモンガとジョンからすれば私室と言うよりも居住区だが、ここで生まれた彼女達にすればこれが普通なのだ。

憧れから作ったものだが、広すぎて落ち着かないと思っているのは、主であるモモンガとジョンだけだ。

 

今日のお茶会の参加者はアルベドの他は新たな任務についたシャルティア、トブの大森林でダミー拠点を建設中のアウラ。

そして、もう一人。

借りて来た猫のように大人しく席に着く人狼のメイド――ルプスレギナ。

 

 

「……あ、あの、アルベド様! 私もそっちの方が……」

 

 

壁際に控える一般メイドと姉妹達へ目を向けながら、恐る恐る切り出すルプスレギナだったが。

 

「それは駄目よ。今日は貴方が主役なのよ」

「そうでありんすえ。こうでもしないと、私やアウラは話を聞く機会もないでありんす」

「カルバイン様のお話を聞かせくれるんでしょう」

 

アルベドとシャルティア、アウラの期待に満ちた眼差しにルプスレギナは「ですよねー」と、がっくり肩を落とした。

一般メイドや姉妹達が立っている中、自分だけが守護者達と席についているのは違和感が凄い。

 

自分は至高の御方に仕えるメイドであって、守護者達に仕えるメイドではないのだから、対等なのだと……理解はしているが……与えられた役割上、自分は使用人であり、……ああ、自分はこんな考えるタイプではないのに。

 

 

「まあまあ、難しく考えないでよ。ぶくぶく茶釜様達がやっていた女子会みたいなものだって思ってくれればさ」

「そうでありんすぇ。アルベドはメイド達から話を聞けるでありんすが、上の階層にいる私や、外に出ているアウラにも至高の御方の話を聞かせてほしいでありんす」

 

 

瞳をきらきらさせながら、ルプスレギナの話が楽しみで仕方ないと見上げてくるアウラ。

対照的にシャルテイアは瞳に粘っこい光を宿らせている。これはユリを見る時の目だ。

どっちを……と言うか、なにを話せば良いのか。上か? 下か? 両方か!? アウラにまでシャルティアが望んでいるような話を聞かせるのは、流石に気が咎めるのだが……。

 

「何を……でしょうか?」

 

なので、ルプスレギナは普段は大きく開かれている瞳を伏せ、素っ呆けて見せた。

「決まっているでありんしょう!」と、鼻息も荒くシャルティアは身を乗り出す。その可憐な唇から聞く者(ルプスレギナ)を押し流す言葉の奔流が溢れ出した。

 

 

「カルバイン様のお情けを受けたんでありんしょう? 二人で夜の森へ出掛けて昼まで帰ってこなかったとか……どうだったんでありんすか! 至高の御方は? 不敬でありんしょうが余す事無く話を聞かせてもらいたいでありんすえ。良く獣のようにと言うでありんすが、カルバイン様は本当に獣だったんでありすんか!? イヌ科の動物は放ってからが長いとペロロンチーノ様から聞いた事がありんすが、カルバイン様もそうだったんでありんすか!? その前は気絶するまで求められたとも聞いてるでありんすよ!! 私、ペロロンチーノ様の嫁として創造されたけれど、未だ経験も無くて……同性経験はありんすが……だから、いつかペロロンチーノ様をお迎えする時に失望されないよう用意をしたいのよ! アルベドはいまだモモンガ様のお手つきになってないし、おチビがそうなれば、ぶくぶく茶釜様がお怒りになられるでしょうし。ルプスレギナが至高の御方と経験したのであれば是非ともその話を私達に、と言うか私に――!!」

 

 

「シャルティア様、落ち着くっすー!!」

 

 

後半から遊郭言葉も忘れて、ぐいぐい迫る銀髪赤眼の吸血少女がそんな言葉で落ち着く筈も無く。ペロロンチーノに全力全開でエロ知識を注がれたシャルティアの具体的かつ生々しい言葉責めに、デザイン上は年上である筈のルプスレギナ(壁際で聞き耳を立てているメイド達を含む)は顔を赤らめ、あうあうと狼狽するばかりだ。

 

この場で唯一対抗できる清らかなサキュバスであるアルベドは、話を自分とモモンガに置き換えて妄想しているのか鼻息も荒く、金の瞳をぎらぎらと輝かせながら狂おしく身を捩っており、残念吸血美少女を止める役には立たない。

 

アウラはアウラで「あーあ」と呆れた様子で二人の様子を見守るばかりだ。

 

 

……30分後。

 

 

「……私達の早とちりで、まだ事に至っていないでありんすか」

 

「私まで一緒にしないでくれる?」

 

先ほどの騒ぎでも『こいつら何を言ってるんだろう』と、疲れた表情だったアウラが一緒にされるのは心外だとシャルティアへ疲れた声を掛ける。

アルベドはアルベドで、散歩の際にあったグルーミングの件を自分とモモンガに置き換え(モモンガに舌は無いのだが)、また狂おしく身を捩っていた。

 

「至高の御方に顔をぺろぺろされるなんて羨ましすぎるぅ。ああ、モモンガ様ぁ……くふー」

 

アルベドはまだ正気に戻っていないようだった。

モモンガ様が絡むと途端に残念になるなぁ、と疲れきった表情でアルベドを見るアウラだったが。

 

「顔ねぇ……あ! 私もカルバイン様にされた事あるよ!」

 

 

「「「え"!?」」」

 

 

予想外のアウラの一言に、その場の空気が凍った。

それに気がつかず「えーと、どこだったかな?」と、インベントリをごそごそとあさり出すオッドアイの男装の少女(アウラ)

 

「え……っと」「お、おチビ?」「……幼女趣味が?」「ペロロンチーノ様はぺったんが好み……」「で、でも、モモンガ様もカルバイン様も大きい方が好みだって……」「ルプーに手を出さないのは…もしかして」「もしかする?」「事実に目を向けるべき」

 

アルベド、シャルティア、ルプスレギナにメイド達までがアウラから距離をとり、赤い顔を見合わせ、ひそひそと言葉を交わす。

ジョンはぺったんが好みだから、ルプスレギナに手を出さないと言う謂れ無き冤罪が発生していた。

いいえ、駄犬は大きい方が好きだけど、そこまでの度胸が無いだけなんです。ペロロンチーノと一緒にしないで下さい。

 

あった! と元気良くアウラはインベントリから一枚の写真(スクリーンショット)を取り出すと、自慢げにアルベド達へ掲げる。

 

 

「ぶくぶく茶釜様にお仕置きされてたカルバイン様が、子犬とじゃれあう子供ってテーマで……ほらっ! これこれ」

 

 

自分の言葉に一斉に気が抜けたと突っ伏す周囲。「あれ、皆どうしたの?」と、首を傾げるアウラだった。

ペットの動物(?)達とじゃれあう事の多いアウラは動物(子犬)との触れ合いと捉えており、男女の意味合いにとらえていないのは眩しい笑顔からも明白だった。

不敬にも不埒な想像をしてしまった者たちは自分を恥じつつ、安堵のため息をついた。

 

「あー」「うん」「子供と子犬」「そ、そんな事だろうと……」「私のどきどきを返せ」

 

 

「ふぉぉッ! こ、これはぁぁッ!!」

 

 

シャルティア大興奮の声の先にはアウラの掲げる写真(スクリーンショット)。それは子犬にぺろぺろされて、輝く笑顔の少女(アウラ)のスクリーンショットだった。

眩しい日の光の中、小動物と戯れる子供の笑顔を切り取った非常に健全な一枚。……子犬の中の人がヘタレ狼で社会人である事を除けば。

 

アイドル写真を取り囲む女子会のように、それぞれの立場を忘れて写真を取り囲んで姦しくなる中、ルプスレギナ一人だけが、むすっとした表情になっていた。

 

「あれ、ルプスレギナ。どうしたの?」

 

それに気づいたアウラが不思議そうに首を傾げる。

 

「え、あ…そ、その、なんでもないっす!」

 

とっさに誤魔化したルプスレギナだったが、横合いからアルベド「嫉妬ね!」の一言に今度こそ、しどろもどろになる。

 

 

「うぇ!? ちょっ、ち、違うっす! アウラ様に嫉妬だなんて、私……」

 

 

アウラとアルベドの間を行ったりきたりするルプスレギナの視線。それを興味深げに見つめるメイド達。

普段は悪戯などでメイド達を驚かせ、振り回しているルプスレギナが、悪戯っぽい表情を浮かべるアルベドとアウラに翻弄されているのは彼女達からすると新鮮だった。

 

「自分に正直になりなさい。私なら――潰すわ」

 

悪戯っぽい表情から一転、無表情になって「潰す」と告げる守護者統括の本気に、ルプスレギナを含むメイド達は震え上がり、アウラは苦笑した。

 

「ちょっと、アルベド。怖いって」

「あら、アウラ。ぶくぶく茶釜様とマーレで想像して御覧なさい」

「――うん、潰すわ」

 

この場、唯一の良心も守護者統括殿に陥落し、殺気を撒き散らし出す。

 

ピンクの肉棒に絡まれる男の娘(マーレ)って、絵的にOUTのような気がします。

でも、何故だろう? 想像したら、ぶーくの胸がドキドキする。

 

その場の100Lv未満の者達を恐怖で震え上がらせた後、アルベドは雰囲気を和らげ、色気を感じさせる流し目でルプスレギナへ助言した。

 

「カルバイン様におねだりしてごらんなさい。殿方はおねだりされるのを待っているものよ」

「ちょっと、アルベド。至高の御方に強請るなんて」

「いいえ、アウラ。あの方はルプスレギナがそう言った我侭を言うのを待っているのよ」

「えー、そうなの?」

 

守護者統括の不敬と取れる助言にアウラが苦言を呈するも、アルベドが暴走するのはモモンガに対してであり、ジョンに対しての助言であれば信頼しても良いのか?と、アウラに迷いが生じる。

 

「そうよ。間違いないわ」/(ルプスレギナのおねだりから、そのまま勢いに乗ってゴールしてしまえば……それを知ったモモンガ様もカルバイン様に続いて自分も…と、お考えになる筈)

 

大きく胸を張って、間違いないと断定するアルベドの姿には常に無い説得力があった。

その為だろうか。それまで黙っていたシャルティアも、何かを思い出したのか。そう言えばと口を開き出す。

 

 

「確かに……ペロロンチーノ様も、女からのおねだりは男の自尊心を満たしてくれて、満足度が高いと仰っていたでありんす」

 

 

「!! そ、そうなんすか!? ど、どんな、おねだりをすれば良いっすか!!」

 

ルプスレギナはその赤い髪のように頬を紅潮させならが、ぐっと拳を握って気合を入れるとシャルティアへ詰め寄り、その視界の外でアルベドは「計画通り」と言った悪い笑顔を浮かべていた。

(ルプゥゥゥ!?)

メイドとして側に控えていたユリは、まんまと守護者達(?)にのせられたルプスレギナを後でしばき倒す決意をした。

 

だが、そうは言っても(プレイヤー達の会話と設定の所為で)耳年増であっても、NPC達は創造主である至高の41人に対しては純情健気で一途の上、わざわざ設定に記されていない限り、未経験な拗らせ系である。だから、こうなるのも仕方がない。

 

 

珍しく仲間から頼られたシャルティアは、得意げに(本来は薄い)胸を大きく張り、ペロロンチーノに与えられた知識で持って助言を始めた。

 

 

「それは勿論、『○○○しい、○○○○なルプスレギナの○○○れ○○○○に○○○○下さい』で『私の○○○○で○しい○○○○。○○○な○で○○○○○○に○った○○○○にカルバイン様○○○○○、○っ○い○○○○、○っ○○で○○○○○○にして○○○○○○○○して下さい』ぐらい言えれば問題ないでありんすえ」

 

 

アルベドを除き、一同どん引きである。

 

「シャルティアぁ、あんた何を言ってるの?」

 

どん引きの一同を代表し、アウラが呆れた口調でシャルティアへ突っかかるが、シャルティアはシャルティアで、これだからお子様はと見下す視線で応じる。

銀髪赤眼の美少女の見下しの視線。概念存在「俺ら」であれば、至高の御褒美となるだろう。

 

 

「おねだりでありんすえ。お子様には刺激が強かったでありんすか?」

 

 

お子様は何を言っているのかと見下すシャルティアの視線であったが、アウラには通じない。

「いや、そうじゃないでしょうよ」

こいつは何を言ってるんだろう。アウラは頭痛を堪えるように頭を掻きながら答える。だが……。

 

 

「ペロロンチーノ様なら、これでも足りぬと仰るでありんしょう」

 

 

自らの創造主を誇るよう殊更に大きく胸を張ったシャルティアには、どんな言葉も無力だった。

 

「……ペ、ペロロンチーノ様……」

 

呆然と至高の御方の名を口にしてしまったアウラだったが、このシャルティアにしてあの創造主(ペロロンチーノ)有りなのかなと考えてしまい。それは流石に不敬すぎると慌てて頭を振って考えを追い出した。

 

「そうね。最終的にはそのぐらいは言えるようになるとして……」

「い、言うっすか」

 

アルベドの言葉に頬を赤らめ、愕然とした表情のルプスレギナ。それに気の毒そうな目を向けるアウラだったが、アルベドの真摯な表情に今度こそお遊びは終わりなのかと気を引き締めてアルベドの言葉を待つ。

 

「ルプスレギナ。貴方、カルバイン様の事で何か悩んでいるでしょう?」

「え……」

 

不意を打たれ、息を呑むルプスレギナ。

対してアウラは、素直に流石は守護者統括と感心した。

 

どんなに馬鹿を言っていても、そこは至高の大錬金術師タブラ・スマラグディナによって定められた『ナザリックの者には全てを包み込むほど大きな慈愛を与え、ナザリックの者でないならば久遠の絶望と無慈悲という名の愛を振りかざす者』。

仲間の悩みを見抜き、相談にのって助言を与える。それでこそ、慈悲深きモモンガの伴侶に相応しいと言うものだ。

 

アルベドの慧眼にアウラ以外の者達も素直に感心し、自信ありげなその言葉に耳を傾けた。

白磁の肌に映える艶やかな唇から零れるその言葉は……。

 

 

「カルバイン様へ悩みを打ち明けて、『○○○下さい。○をカルバイン様で○○にして○○○○○○に○き○して○○○れさせて、○っ○○っ○○しく○いて、カルバイン様だけで○を○して下さい』と言えば、貴女の悩みは解決よ!」

 

 

「……私はこれから何度、『こいつら何を言ってるんだろう』と、思えば良いんだろう」

その場の者達を代弁するかのようなアウラの呟きに、メイド達は内心で大きく頷いた。

 

一方、アルベドは自分の助言に俯いてしまったルプスレギナへ気遣わしげな表情を向ける。

 

「どうしたの?」

 

下唇を噛んで俯いているルプスレギナが不意に顔を上げると、いつも大きく開かれている金色の瞳からは、ぼろぼろと大粒の涙が零れ落ち、周囲の者達をぎょっとさせた。

 

「言えないです。ジョン様へ、私が、私などが……」

「ど、どうしたの、ルプスレギナ?」

「消えないんです! 創造して下さった方が、私の中で一番のままなんです! ジョン様が、ジョン様だけにお仕えしたいのに! 消えないんです!」

 

 

「――あ」

「それは……」

 

 

魂が千切られるような悲痛な声に、同じく至高の御方を女として慕うアルベドとシャルティアは、何か気づいたように小さく声を漏らした。

創造して下さった方を一番に思うシモベとしての心と、女として至高の御方を慕う心。ルプスレギナの悲鳴に初めて、自分達の思い、心が、至高の御方の定めと矛盾する事があると知った彼女達は声も出ない。

その場の誰もがルプスレギナへ声を掛けられない中、アルベドはごくりとつばを飲み込み、覚悟を持って言葉を紡いだ。

 

「……ルプスレギナ。貴方と同じ苦しみを、私も持っていたわ。私は私を創造して下さったタブラ様を始めとする至高の御方々を恨み、憎んでいました」

「アルベド!?」

 

何を言い出すのか、驚愕するシャルティアを安心させるように微笑み。アルベドは何時かの自分のように迷い子となって震えるルプスレギナへ語り続ける。

 

 

「愛するモモンガ様を孤独にし、哀しませ、私達から最後に残って下さった慈悲深き君(モモンガ様)まで取り上げようとする至高の御方々が許せなかった。

 それが誤解であると知り、私はカルバイン様に処刑して頂く為、罪を告白しました。愚かな私へ、あの方は何と仰ったと思いますか?

 

俺たち(至高の存在)を舐めるなよ――アルベド』

『良くそこまでモモンガを愛した。俺たちに『定められた限界』を、自らの意志で良く踏み越えた。お前の選択(叛意)、お前の意志(殺意)を――俺は、俺達(至高の41人)は祝福しよう』

『――お前は、俺達の誇りだよ』

 

 私の叛意を、殺意を、全て知った上で『全てを許そう』と仰って下さったモモンガ様(誤解です)。それすらも自分達の誇りだと仰って下さったカルバイン様(勢いです)。……貴方を創造して下さった至高の御方が『それ』を許さないなど、どうしてあるでしょう――ルプスレギナ。女なら、愛する人の下へ、全てを飛び越していきなさい。至高の41人はそれをお許しになるわ」

 

 

アルベドは、そっとルプスレギナを抱きしめる。

 

「私がそうしたように貴女にも『それ』が出来ればね……ルプスレギナ。ですが、誇りなさい。その苦しみは至高の御方々が与えて下さった試練なのよ。たとえどんな事になろうとも、私は貴女を応援しています。そして至高の41人も貴女をお許しになり、祝福されるでしょう」

 

白いドレスが涙に濡れるのも構わず、ルプスレギナを抱きしめ、安心させるように微笑むアルベド。

涙で濡れた顔を上げ「アルベド様……」と小さく零すルプスレギナ。

 

「わ、私だって応援しているでありんす!」

「私も応援してるからね!」

 

その様子に張り合うように声を上げるシャルティアとアウラだったが、シャルティアはちらっとアウラを見て、勝ち誇った表情を浮かべた。

 

「ふっふっふ、お子様なおチビと違い、わらわには出来る事がありんすぇ。ペロロンチーノ様より頂いた魅惑のビスチェをレンタルいたしんしょう。ルプスレギナの悩みなんかカルバイン様にズバッと一発ヤられてしまえば、どうでも良くなるに違いありんせん!」

 

「ちょっと、シャルティア……」

 

「まぁ! それは良い考えね、シャルティア!」そのアルベドの歓声にアウラはお前もかとの表情を浮かべるが、アルベドは意に介さず言葉を続ける。「結局、ルプスレギナはシモベとしての本能と、愛する方が違うギャップに苦しんでいるのだから、カルバイン様の愛を物理的にも注いでいただければ、他家へ嫁に出た娘のように、愛する御方を一番に考えるのに何の躊躇いもなくなるに違いないわ」/(そうすれば、私もモモンガ様のお情けを頂ける事でしょう)

 

「えー?」そうなのかぁ?と、首を傾げるアウラ。

 

「そうでありんすぇ。お子様のおチビには難しかったでありんすか?」

「そう言う問題!? じゃあさ、みんなはどう思う?」

 

お子様と連呼され、不機嫌な様子のアウラだったが、シャルティアとアルベドを相手にこの話題は不利と見たか。周囲を見回し、メイド達へ同意を求めた。

個では不利と、群を作り出そうとするアウラにシャルティアは感心したように頷いていた。

 

「おや、メイド達を巻き込みんしたか」

 

ただ、同意を求められても、創造主と慕うお方が違う故の苦しみ。けれども、至高の御方はそれを許しているのであれば、不敬には当たらず。ただ、自らの心が苦しむのみとすれば……ロミオとジュリエット的な障害のある恋と言えるのだろうか。

 

特に問題はないけれど、障害のある大恋愛?……メイド達は何を想像しているのか。頬を赤らめながら、身悶えしている。

 

そう言った発想の浮かばないアウラは、「私ってそんなにお子様なのかな」と少々凹む。

そうは言っても、アウラやユリなどはナザリックでも珍しい(創造主的に)男性的な下心が反映されていないシモベであるので仕方ないだろう。

 

悶える一般メイドと姉妹達を見回し、答えを待つ守護者を見て、ユリは取り敢えず自分が代表して口火を切らねばならないと覚悟を決める。

緊張から伊達めがねをくいっと押し上げ、アンデッドながら緊張した面持ちで口を開く。

 

 

「……メイドとしては主人のお気持ちを察して当然なのですが、こう言った男女の仲の話であれば、言葉に出して伝えて頂ければ何よりも嬉しく思います」

「私はモモンガ様に『愛している』と言って頂けたわ!」

 

 

「「「きゃーー!!!」」」

 

 

無難にまとめたユリの言葉に、すかさず言葉を重ねてくるアルベド。

まさかのモモンガの「愛している」宣言に一気に場が沸き上がった。

 

 

「ど、どうせ、お優しいモモンガ様につけ込んで『皆を』愛しているとか言わせたのでありんしょう」

「そうよ! 悪い! それでも『私も』愛していると言って頂けたわ!」

 

悔しげなシャルティアに図星を突かれ、逆ギレ気味に言い返すアルベド。

 

「悪いに決まってるでしょうが」と、テーブルに突っ伏しているアウラ。

 

 

「……おはようからおやすみまで、ずっと(SNSで)繋がっていたい」

 

 

ぼそっとシズが、空気を読んでるのかいないのか。ナザリック伝統の大事なところを言わない誤解される台詞を口にした。

 

「ちょっ! シズちゃん!?」

 

未だにアルベドの胸に抱かれたままのルプスレギナが、慌てたように身を捩って妹へ視線を向けた。

そのシズはいつもの通りの無表情で「これで」と、インベントリからスマホ大の端末を取り出して見せていた。

 

「あ、なんだ端末か」「動くの、それ?」

「ナザリックの中では動いている。圏内」

 

泡を食い。次いで安心したように息をついた姉たちの問いに変わらず無表情で端末が使えると答えるシズ。

いつもと変わらぬ様子にルプスレギナも。

 

 

「もー、びっくりしたっすよ」

 

 

いつもの様子でシズに笑いかけた。

その泣いたままの顔で笑ったルプスレギナの涙を、アルベドは優しく拭ってやりながら、慈母の笑みを浮かべた。それはこの場にいるものには分からなかったが、姉であるニグレドに良く似た笑みであったかもしれない。

 

 

「やっと、笑ったわね……ルプスレギナ。貴女の思いをカルバイン様へ伝えて御覧なさい。カルバイン様は必ずそれに応えて下さるわ」

 

 

優しく諭すようにアルベドはそう言った。

後ろの方でアウラが「だからって、あれはないでしょうが」と小さくぼやいていたが、受け止める事になるジョンはどう出る事だろうか。

 

 

王国だけではなく、ヘタレにも嵐が迫ってきていた。

 

 




次回本編「第28話:王国の男達」

タイトルだけで不安になれるwww

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