オーバーロード~狼、ほのぼのファンタジーライフを目指して~ 作:ぶーく・ぶくぶく
2020.11.28 全面的に差し替え。元の35話は後で修正して再度投稿予定。
もう何年も夢の中にいるような状態でした。
拙い文章だけど続きが書きたくて差し替えて書き直します。
第35話:うちはほのぼの24時です。
朝食を終えたジョンはナザリック地下大墳墓第九階層の私室を出て、モモンガの私室へ向かう。
住人が2人しかいないロイヤルスイートにはかつての騒がしさはなく、静謐さだけが漂っていた。かつてを知る身としては寂しい限りだが、いつかまた活気を取り戻してやると密かに思いながら、ジョンは歩を進める。
モモンガの私室のドアの前に立つと、供をしていたルプスレギナが素早く前に出てモモンガ番のメイドたちに取次ぎ、彼女たちによって扉が恭しく開かれた。
友人を訪ねるのに「モモンガさん、おっはー」と軽く扉を開けられないのが残念であったが、メイドたちの誰もが誇らしげに「くぅ、私、仕事してる!」という感じで自分の仕事ぶりを喜びと共に噛み締めていて、それでジョンはこの自動的手動ドアのシステムを愛おしく見守っていた。
「モモンガさん、おはよー!」
「おはようございます、ジョンさん」
ジョンは執務机でアルベドから報告を聞いていたモモンガへ挨拶しながら、真紅の絨毯を進むと応接セットの重厚なソファーに腰かける。同時にルプスレギナへ珈琲を頼み、応接机に回ってきた報告書を手に取り新聞代わりに目を通し始めた。
朝食のバフ効果が切れる前に読んでおかないとデミウルゴスやアルベドの難解な報告書が頭に入ってこないのがジョンの秘かな悩みであった。「素で読み解けるモモンガさんすげぇ」とジョンは思っていたが、モモンガも涙目で読んでいるのは秘密である。
朝の定時報告が終り、こちらへ顔を向ける余裕の出来たモモンガへ向かってジョンはおもむろにルプスレギナの左手をとると掲げて見せた。実に清々しい気分だった。
「俺たち結婚しました!」
「……は……?……」
ジョンとルプスレギナの左手薬指には結婚システムで使われる指輪が燦然と輝いていた。
それを認めたその瞬間、モモンガはこの3日で調査していた事全て。特にマスターソースで確認していたルプスレギナがレベルアップしていた事も頭から抜け落ちた。
「3日ぶりに出てきたと思ったら!あんたって人は!なんだそれ!聞いてませんよ!」
衝撃の余り素の鈴木悟が出ている。
アルベド、メイドたち呆然。
「そりゃ本邦初公開だもん。あの後、部屋に戻ってヤる事ヤって、朝チュンしてプロポーズしたんだZE!」
かたわらのルプスレギナを見下ろす。それは優しい眼差しだった。
自分を慕ってくれる気持ちを受け入れる。自分が慕う気持ちを受け入れて貰う。それがこんなにも尊い気持ちに、満たされた気持になれるとは思わなかった。
「ZE!(ゝω・)キラッ☆とか言えば許されると思うなよ!」
脊髄反射で叫び返しながら、モモンガの内心は散り散りに乱れていた。
え? なんでコイツこんなキラキラしてるの?
リアルになった獣人だから、リア獣とでも言うつもりか!?
こんなので精神が沈静化すると思うなよ!
…………ふぅ。
同じオタクだろう!?
オタクってもっとくすんでるだろう。纏えよ! 絶望のオーラ!(Lv5)
落ち着くのには意外と時間が掛かりそうである。
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変わらぬジョン・カルバインの姿に安堵の息をついたモモンガであったが、その後に続くルプスレギナの姿に、つい声を失った。
真紅の髪を高く結い上げ、うなじを白々とさらすばかりか、肩を大胆に露出させたバニーガール姿。身体の曲線をいやというほど際立たせる光沢のボディスーツは、明らかに「見せるため」の衣装だった。
(……な、何を着せているんだ……!? いや待て、いやいや待て……確かに自分も昔、こういう衣装を収集していた……気はする。だが、実際にNPCに着せて動かすなど、想像だに――)
モモンガは頭を抱えたい気持ちを抑え、遠い目をした。近くから舌打ちが聞こえたような気がしたが、気のせいだ。引っ越しの際、自分のコレクションを余さずチェックされたなどという悪夢は存在しない。……存在しないのだ。
その間にもルプスレギナは、まるで舞台の女優のように一つ一つの所作を計算して見せている。わずかに腰を傾ければ髪の房が流れ、火照るような肌がちらりと覗く。胸の谷間に挟んでいたライターを取り上げる仕草すら、官能的な演出にしか見えなかった。
「……」
モモンガは無言で視線を逸らしたが、ちらりと横を見ると――案の定、ジョンはその谷間に視線を落としていた。
(やはり……。だが、それも人として自然な……いや、我が同僚よ、あまりに自然すぎるぞ……!)
そんな中、ジョンは珍しくシガーケースを取り出した。重厚な銀細工の蓋が開かれると、濃密な香気がふわりと広がる。葉巻特有の甘く乾いた匂いに、わずかな土と樹皮のニュアンスが混じる。
「おや、珍しい」
「まあな」
気分が良いのだろう、ジョンは上機嫌に笑った。
ルプスレギナはすかさずシガーカッターを取り出し、恭しくジョンの手元に添える。金属の刃が吸い口を滑らかに断ち切り、芳香がいっそう際立った。
続いて彼女は谷間からライターを摘み上げ、豊満な胸の起伏をわざと強調するように火をかざす。その動きに、わずか三日前には感じられなかった艶やかさが宿っていた。
ジョンは葉巻を唇に咥え、先端を斜めに傾けてゆっくりと火を焦がす。炎はじわじわと葉を炭化させ、赤い環が広がっていく。
一度火を離し、再び遠火で熱を送りながら、今度は深く吸い込む。濃厚な煙が肺に満ち、鼻腔へとゆっくりと押し出される。
「……ふぅ」
重厚な香りが執務室に広がった。熟成された木材のような苦み、土を思わせる渋み、そして後を引く甘さが混じり合い、紫煙となって漂う。
モモンガは思わず肩をすくめた。
(こいつ……実にイイ空気すってんなぁ……。しかも隣には艶やかな美女……これはもう、完全に“大人の嗜み”じゃないか……)
葉巻の煙は天井へとゆらめきながら昇り、重苦しいはずの空気をむしろ豊饒に染め上げていた。ルプスレギナは満足げにその様子を眺め、わずかに口角を上げる。
ジョンは、変わらぬ笑みを浮かべながら紫煙を吐き出した。
その姿は、戦場で荒ぶる獣ではなく、権力を掌に収めた王の風格すら漂わせていた。
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「イヌ科のコレって持続時間凄いのな。最初ルプーが気絶してたのも気が付かなかったわ」
「……友人の赤裸々な話を聞かせられるとか、どんな拷問ですか?」
女性もいるのに何を言い出すんだコイツと、嫌そうな視線をモモンガが向ければ「ワリィワリィ」と頭を掻くジョンだったが、続く言葉にモモンガは目を剥いた。
「あ、あと特別な……ってリクエストに応えて、ちょっとアウラに手伝って貰ったんだけど……」
「アウラ!?アウラにまで!?……貴方、ぶくぶく茶釜さんに殺されますよ」
「(。´・ω・)ん?……って、違うわッ!!第1階梯の使い魔召喚を使うのに4km四方の小動物散らすのを手伝って貰ったんだよ!!」
「ああ、そういうことか。……何か使い魔を?」
「使い魔召喚で使い魔を選ぶのに効果範囲内に指定の小動物しかいない状態にして、望んだ動物を使い魔にする方法があったじゃん?」
「ありましたね」
「だから、効果範囲の小動物が黄金の林檎を食べて小動物(子犬)になったルプーだけの状態を作って、使い魔召喚をやってみたんだ」
「ふむ」
「結果は無事成功。今の俺たちの間にはマスターとサーヴァント(使い魔)のラインが通じてる」
「そんな事が可能とは・・・ああ、アルベド。期待させて悪いが、私は使い魔召喚は持ってないからな」
仕方なしとモモンガは、熱い視線をモモンガへ送りながら分をわきまえ隣に立つアルベドへ声を掛ける。
「ですが、主従関係がなくとも魔術師は体液の交換でマナをやり取り出来るとか?万一に備えて私とラインを繋いでおく必要があるのでは!」
わきまえた分は旅立ったようだった。
熱く語るアルベドにモモンガはやれやれと肩をすくめてみせる。
表情の無い身体で感情を表現するのに大分慣れてきたようだった。
「そもそも私に体液はない。
大体、魔術師は体液の交換でマナをやり取りできる?……誰だ?そんな事を教えたのは?」
「ペロロンさんじゃね?」
エロゲ大好きなメンバーの名前をジョンがあげるも、当のアルベドの口から出た答えは……
「お父様から教えて頂きました」
「タブラさ―――ん!?」
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バニーガールを侍らせ、葉巻と珈琲を楽しむジョンだった。
気分良さげに口を開く。
「なんだか凄く気分が良いんですよ。全能感?って感じが溢れてて、今ならヨトゥンヘイムとも良い闘いが出来そう」
「童貞卒業特有の躁状態では?」
それだけ好き放題してれば、そうだろうよとモモンガの返答は冷たい。
「……言ってくれる。そういう自分はどうなんだ。骸骨野郎」
「何を言ってるのかわかりませんね。……ところで、ユリとペストーニャ、ニグレドから村に孤児院と学校を作って欲しいと要望がきてますよ」
「話逸らしてない?」
「いいえ、ちっとも」
ユリとペストーニャ、ニグレドからダーシュ村に孤児院と学校を作って欲しいと要望が上がってきていたのだった。
モモンガ、アルべドは反対。ジョンは賛成。ルプスレギナは守護者ではないので運営に関わる事に発言はしないでいた。
「心配するほど高度な教育はしないよ」
ジョンは読み書きと四則演算。農業に必要な知識を教える程度だと説明する。
とはいっても、現地の文字を読み書きできないので、法国からの情報と合わせ、クレマンティーヌが高度な教育を受けていた事が分かったので、場合によってはクレマンティーヌに子供たちに教えさせるつもりだと言う。
嗜虐趣味の人間ににこやかに子供たちの面倒みろとかどんな嫌がらせかと笑う。ついでに拾ってきたブレインも農民の出で読み書き出来ないので教育したいとも。
「……ダーシュ村の中の事ですから、ジョンさんの意見を優先しますが知識は武器ですからね」
「そうだねぇ。ユグドラシルでは知識と情報は大きな武器になったものな」
「今は素朴な人たちでも教育が行き届けば不平不満も増えてきます。その時、どうするかも考えて下さいね」
まぁその時になってから対応するのは自分たちなんだろうなぁと思いながら、大丈夫わかってる!と胸を叩く駄犬を眺めるモモンガだった。
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モモンガとジョンの話は尽きる事無く続く。
「……ところでジョンさん、なんだか大きくなってません?なんだか上半身の厚みに違和感が……」
そう。
モモンガから見て、ジョンの上半身は3日前に奇跡の生還を果たした際と比べて一回り厚みを増したように見えたのだ。
それは愛しいもの、守るべきものを得て、精神的にジョンが成長したと言うことなのか。
「え?」
そう言われたジョンは、まさに今気が付いたと言う風にぺたぺたと自分の胸板を触り始めると、腕を後ろに回したり、上に伸ばしたりしながら、全身を触る。
「ん?んーん~なんだこれ?」
爪を伸ばして何か所かを突き刺すようにかいて、なんらかの違和感に今気が付いたと言う風に首を捻っている。
どうやら目の錯覚ではなく本当にジョンの身体が一回りごつくなっているようだ。
「硬い……ひょっとして、これヨロイか?なんてこった……イノシシじゃあるまいし」
「ヨロイってなんですか?」
ジョンはそっと目を逸らした。
「オイ」
またなにかやらかしたのかと自然とモモンガの声が冷たくなる。
「……えーと一部の野生動物では発情期になるとオス同士の戦いで致命傷を負わないように皮下脂肪を硬化させるのがいるんです。人狼も……そうなるとは知りませんでしたが」
「発情期?」
「発情するような事したんだよ。言わせんなよ」
恥ずかしい。
言外にそういったジョンを今更に何をいってるんだと、モモンガはバッサリ切り落とした。
「それで、ルプスレギナにそんな格好を?」
「似合ってるだろ」
そんなことをさせてるのは恥ずかしくないのか胸を張って誇らしげに語るジョンを尻目に、モモンガはジョンの傍らのルプスレギナへ目を向けた。
バニーガール姿のルプスレギナ。オーソドックスな黒いウサギをモチーフにしたウサ耳型ヘアバンドを付け、ウサ尻尾付きの肩出しボディスーツに網タイツだった。
似合ってると言われたのが嬉しかったのか、誇らしげににっこりと笑顔で礼をしてみせるルプスレギナを前にして、モモンガは「セクハラじゃ……」と言いかけたのを飲み込んだ。
改めて見る。健康的な小麦色の肌、細い首、なまめかしい鎖骨、カップに収まった豊かな胸、くびれた腰、張りのあるヒップ、柔らかさと優美さを兼ねそろえた曲線を描く脚、きゅっとしまった足首……。
ふむ……と、モモンガは顎に手をやって考え込む。精神効果無効で本来は湧き上がるリビドーなどは抑制されているが、仲間たちが心血を注いだNPC。その美しさ、魅力は十分に感じ取れた。
なにより、ジョンに褒められ、その大きな肉球ハンドで頭をわしわしと撫でられて金色の丸っこい瞳を満足そうに細めているルプスレギナと、得意そうな青い毛並みの人狼の組み合わせが愛おしく
「そうですね」
簡潔に答えただけでも、(物理的に)空虚な胸の内を愛しさが温かくしてくれた。それは風のない冬の日差しのようにじんわりとした温かさだったが、精神効果無効の呪いをすりぬけてモモンガの精神を温めてくれた。
袖を引くアルベド。唇を尖らせながら、小声で言う「モモンガ様がお望みとあらば、私も……」
完璧に見えるアルベドも嫉妬する事があるのだなと、その対象が自分である事を気恥ずかしく思いながら骨の手で
「そうだな……次の休みにはアルベドのファッションショーを見せて貰おうか」
そう言った。
その答えは勿論yesであった。
稲作楽しいです。
う〇こー!!!