二度手間っていうなっ!   作:祐弘千尋

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初投稿です。ちなみにまだデュエルはしません。
タイトルの意味が分かるのも次回だったりします。


1.始まりっていうなっ!

 ここに古ぼけた“いかにも”なアラビア風のランプがある。これは掘り出し物を求めてフリーマーケットをぶらぶらしていたところ、春先ということで花粉症なのかマスクとサングラスをつけていた人から、

 

「お兄さん、安くしとくよ」

 

 といわれ、面白半分で買ってしまったのだ。

…300円だったので特に問題がある訳でもないが。

 

 さて、この“いかにも”なランプ、買ったは良いがこのご時世に光源が不足している訳でもなく、しかも少し汚れている。置物にするにも微妙ということもあっ て捨てるかどうか悩んでいるのだが、一度ぐらい使おうと思い、とりあえず汚れを落とすことにした。ひとまずは眼鏡拭きでこするとするか…

 

 キュッキュッキューっとな

 

 するとどうだろう、ランプの先から紫色の煙がもくもくと…

 もくもくと…

 もくもくと…

 

 …これは窓を開けるべきなのだろうか、空気より重いようだから煙が床に溜まっていくのが不安を煽る。喫煙禁止の学生アパートなので、窓を開けたらそれはそれで怒られる気がする。ひとまず袋に入れよう、そして明日捨てよう。

 

『お待ちくだされ、もうすぐ出られますので』

 

 何か聞こえた気がするが、隣室や上下階の音が漏れることなんてよくある話だ。友人同士で盛り上がっていたり、恋人を連れ込んでお盛んだったり、毎夜のように安眠を妨害してくれる。

 

 軽く気分が滅入ってきたが、袋だったな。台所の棚からゴミ袋を取ってこないと、いい加減に煙が鬱陶しい。香りは嫌いじゃないが、見た目が毒々しい。

 

『よっ、ほっ、お待たせいたしました』

 

 袋を持って戻ってきた俺が見たのは、

 奇妙な帽子と棒を持ち、胡散臭い笑みを浮かべた筋肉がむきむきなヒゲの男だった。

 ただし皮膚は紫色で下半身は煙なうえ、ランプとつながっているらしい。

 

「えっと…どちら様?」

 

『どうもはじめまして、某、こういうものです。どうぞよろしく』

 

 そういって名刺?を差し出す紫男。

 

「あ、これはどうもご丁寧に」

 

 思わず正座をして両手で受け取ってしまった。

 ひとまず名刺に軽く目を通して…

 

[どんな願いもお任せあれ! 魔人派遣のジーニー社]

[魔法部ランプ課 シハーブ=サイード=バーキル]

 

 よし、見なかったことにしよう。

 

『それではご主人様、願いをおっしゃって下さい。某が叶えてさしあげましょう』

 

「いえ、間に合っているので、お引き取りください」

 

 新聞屋しかり、宗教団体しかり、こういう手合いはさっさとお帰り願いたい。更に言うならば可愛い女の子に言われるならまだしも、紫肌の男にご主人様と言われて喜ぶ趣味はない。

 

『そんなご無体な!生まれてただの一度もお呼びいただけず、ようやく呼び出していただけたというのに!』

 

 悲壮な表情を浮かべて嘆く紫男。このまま放置するのも面倒な気配がぷんぷんするし、簡単な願いを言って帰ってもらおう。だがその前に確認すべきことがある。

 

「もし願いを叶えていただくとして、対価などは必要なのでしょうか?」

 

『いえ、そういったものは必要ありません。魔人はご主人様に絶対服従ですので、好きなだけ願いをおっしゃっていただいても結構です』

 

 よし、言質は取った。ちなみにボイスレコーダーを起動してある。人外…自称魔人らしい…相手にこういうものが有効かどうかは不明だが、保険はあるにこしたことはない。

 

「えっと…それじゃあお部屋の模様替えの力仕事をお願いします」

 

『申し訳ございません。某は実体を持っておりませんので、物に触れることはできないのでございます』

 

 その弾けんばかりの筋肉はなんのための筋肉なのだろうか。さっき名刺渡された気がするんだが、アレは例外なのかもしれない。ひとまず、一つ確認を取ることにした。

 

「何が出来るんですか?」

 

 もう少しオブラートに包めばよかったかもしれない。紫男がうなだれてしまった。心無しか空気も重くなってしまった。

 

『某は下位の魔人ですので魔力も強くなく、かといって知識も豊富という訳ではございません。せいぜいお話相手になる程度でしょうか』

 

 それなら何故最初に願いを叶える等と豪語したのか聞きたくなったが、きっと様式美なのだろう。オカルト相手に深く考えてはいけない。

 

「魔法とかあるんですねぇ。出来るなら魔法を使ったり魔物を召喚したりしたいもんですよ。ハハハ…」

 

 乾いた笑いしか出せなかったが、紫男の表情が突如輝きに満ちあふれだした。なんだというんだ気持ち悪い。

 

『魔法を!使いたいのでございますね!』

 

 ずずいっと寄ってくる紫男。とりあえず近すぎるので離れて欲しい。香木の匂いが強すぎて鼻が曲がりそうだ。

 

『承知いたしました!その願い、叶えてさしあげます!』

 

 どうやら魔法を教えてくれるらしい。最近の科学も大概魔法のようなことができるが黙っておこう。上機嫌になってはやく帰ってくれると嬉しい。

 

『それでは早速、§☆£‰⁂†』

 

 なにやら呪文を唱え始める紫男。全く聞き取れないし、選択肢を失敗したような気がする。動いて大惨事というのも嫌だし、大人しくしておこう。しかし急すぎやしないだろうか。

 

『ハァッ!』

 

 すると辺りの景色が歪み、目の前が暗くなってきた。

 

「まて、煙の中に倒れ込んだら窒息する気が…」

 

 その呟きを最後に、俺は意識を手放した。

 

_____

 

「知らない天井…でもないな」

 

 知らない天井どころか自室の天井であるため、当然といえば当然の発言をしてしまった。おかしな夢をみたと思いつつも、ひとまず起きてそこで違和感に気付く。

 

 確かに自室なのだ。だが俺は今大学生でアパートに下宿して生活している。何が言いたいかというと、実家の自室だったのである。

 

「葵ー、いつまで寝てるのー?」

 

 台所方面から母の声がする。早急に起きてリビングに行かねばなるまい。もしかしたら大学に合格してからが全て夢である可能性も捨てきれない。少なくとも実家では母は絶対であるので、ここで惰眠を貪ってお叱りを受けるのは嫌だ。

 

「おはよう」

 

 挨拶というのは大切だ。それを言わなかったがために、朝ご飯がなくなることもあるぐらい大切だ。何度でも言おう、我が家では母は絶対である。

 

「はい、おはよう。そうだ、葵宛に封筒が届いてたわよ」

 

 席に着くと母から青いA4封筒を渡された。しかも中が詰まっているのか、結構重たい。中身が気にはなるものの、ひとまず横において先に朝食を食べてしまうことにした。

 

「いただきます」

 

 挨拶というのは…えっ、もういい?…今俺はどこから電波を受信したのであろうか。もっとも実家にいると近所の子どもの声が聞こえることが多いので、あまり気にしていないのだが。

 

「ごちそうさまでした」

 

 食器を台所に運び、封筒を持って自室に戻る。

 部屋を出る時には気付かなかったが、アタッシュケースが机の上に置いてあった。実は正しい発音だとアタッシェケースなのだが、一般的にアタッシュケースと呼ばれるのでアタッシュケースということにする。

 

 それよりも今は封筒の中身を確認しなければ。光に透かしても中身はわからない。あれこれ眺めていると、裏面に送り主が書いてあった。

 

[デュエルアカデミア]

 

 思わず二度見してしまった。どうやら本気で[デュエルアカデミア]と呼ばれる場所から届いたらしい。俺の記憶ではアニメに登場する架空の教育機関であるはずなのだが、そんなところから一体何が届いたというのだろう。

 

 …受験票だった。写真が貼ってあり、試験日程と試験会場も書いてある。

 試験会場は童実野町ですか、そうですか。他にも入っていた学園案内等でなんとなく状況は把握したが、とりあえず極力見ないようにしていたランプに聞くとするか。

 

 キュッキュッキューっとな

 

 するとランプの先から紫色の煙が…って実家で煙を出したらまずいじゃないか。と思ったが、煙が垂れ流しになることはなく、すぐさま魔人の形を取った。

 

『おはようございます。ご主人様』

 

 見た目が紫肌のヒゲ男…確か名前はシハーブ…にご主人様と呼ばれるのはなんとも嫌な気分だが、それよりも確認すべきことがある。

 

「俺の思っていたのと何か状況が違う気がするんだが、これはどういうことだ」

 

 初対面のときこそ遠慮して丁寧な口調だったが、最早遠慮なんてしない。確かに願いはいったが、これではある意味誘拐だ。…自宅に誘拐されるというのも変な話だが。

 

『何をおっしゃいます。ご主人様が魔法を使いたいとおっしゃったので、魔法の使える世界にお連れしたのですよ』

 

「いや、“遊戯王”の世界でどう魔法を使えって言うんだよ」

 

 そうなのである。デュエルアカデミアが実在する。しかも学園案内には海馬コーポレーションや、インダストリアル・イリュージョン社との関わりにも触れられている。

 

 悪戯と考えることも出来たが、今もリビングのテレビから聞こえる社長の高笑いや新聞の番組欄にある[プロデュエル中継]など、悪戯にしては手が込みすぎている。

 

『それはですな、デュエルディスクをアタッシュケースから取ってみてくださいませ』

 

 アタッシュケースの中身はデュエルディスクだったらしい。それを装着し、セットされていたデッキから《レッドポーション》を取り出した。しかしこのデッキ、最初期のカードしか入っていないんだが。

 

『それでは、それをデュエルディスクにセットして発動してくださいませ』

 

 …それはもしかしてサイコデュエリストのアレなんだろうか。たしかにディバインとかは《サイコソード》を自分に装備とかしてたけどさ。確かに遊戯王は “魔法”をつかったり“魔物を召喚”して戦うんだが、それを実体化させて相手にけしかけるわけじゃないからね?精霊界とかはそれをやってたけどさ…

 

「…魔法カード《レッドポーション》発動」

 

 すると手元にイラストそのままの真っ赤な液体の入ったガラス瓶が現れた。とりあえず飲んでみたが、さっぱりした味で意外に美味しい。LPが回復したのかどうかは定かではないが、心無しか身体が軽くなった気がする。飲み終わった後の瓶は、いつの間にか消えていた。

 

『はい、無事に成功したようですね』

 

 だがしかし、俺は魔法を使いたいと言ったが、決して遊戯王の世界や5年程度とはいえ時間逆行なんて希望した覚えはない。むしろ魔法と召喚で遊戯王にこじつけるのは、いくらなんでも無理矢理すぎるだろう。確かにOCGは友人とそこそこ遊んだりはしていたが、決してガチという程ではない。「ガチは大会だけでいいよ」という集団だったしな。

 

『さて、それでは少々お話いたしますと…』

 

 シハーブの言い方がやたら回りくどい上に仰々しかったので要約すると、

 

・ 魔法を使えるようにするために、創作物を基とした下位世界に降りた。

・ この世界の“代田葵”に成り代わる形になった。

・ 俺は上位世界の生物であるため、余剰分の力がカードに還元された。

・ 還元された力を行使することで、サイコデュエリストまがいのことができるようになった。

 

 ということだそうだ。しかし、どうしたものか…

 この世界の“代田葵”に成り代わったということで、性格などの違和感がでるのでは、と考えたがそれはほぼないらしい。元の世界に戻れないといっても両親はいるし、確認した所友人達も変わりなく過ごしているようだ。とはいえ高校や大学でできた友人とは出会っていない状態なので、こちらに関しては諦めた方が賢明だろう。

 

 

 それはともかくとしてサイコデュエリストになったところで、力の使い道がほとんど思い浮かばないんだが…堂々と能力を使う訳にもいかないしな。《モウヤンのカレー》でも食べていれば良いだろうのか?これの使い道も考えてみるか。

 

 本当にどうしたものかね。カードは一応全種類あるといっていたからデッキは好きなように編集できるし、のんびり考えてみるか。

 




ということで説明回でした。
デュエルは次回からです。
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