月一で更新ができるよう頑張ります…
授業前、クロノス教諭に呼び出された。もちろん校則違反をした記憶も、何か目を付けられるようなことをした記憶もない。…十代と仲がよかったり、イエロー食堂に入り浸ったりしているのが原因かもしれないが。
「ノース校との交流デュエルは知っているノーネ? カンツォニエーレ?」
「えぇ、今年も代表はカイザーだと噂されていますね」
どうやらお叱りというわけではなく、交流デュエルに関係することらしい。アニメでは代表が十代になったのは覚えているが、その経緯は正直ほとんど覚えていない。
「今回はノース校代表が1年生ということで、各寮の1年生代表でトーナメントマッチを行うノーネ。そこでシニョール代田には我が寮代表として戦ってもらいまスーノ」
「…ブルー代表なら、天上院さんのほうが適任のように思うのですが」
明日香さんは1年女子だけでなく、全学年の女子の中でも上から数えた方が早い程の実力を持っていると噂されている。ラーイエローからのぽっと出である俺よりは適役のように感じるのだが…
「シニョール明日香は女子寮代表ナノーネ。それに、カイザーとあれだけのデュエルができるシニョールなら、必ずや本校代表となってくれると信じていまスーノ」
確かにオベリスクブルーの1年男子だけだと、かつての万丈目ほどの目立つ生徒はいない。特別課程の生徒もいるらしいが、あくまで噂話なので真意は不明だ。それならばカイザーのライフを後少しのところまで削ったという実績がある俺の方がマシということなのだろう。
「わかりました」
…とは言ったものの、このトーナメントで一番弱いのは恐らく俺なのではないだろうか。レッド代表になることがほぼ確定している十代とは明日香さんとのタッグマッチで敗北しており、イエロー代表になると思われる三沢にはイエロー時代に成績で勝てたためしがない。女子寮代表の明日香さんとはデュエルしたことがないので何とも言えないが、間違いなく強敵である。
トーナメント表は当日に発表されるらしいが、誰と当たってもそう簡単に勝てはしないだろう。アカデミア代表なんてどうでもいいのだが、楽しいデュエルになることは想像に難くない。
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トーナメント当日、一回戦第一試合は俺と三沢のデュエルのようだ。入学からブルーになるまでは授業で対戦することも多かったのだが、ブルーとなってからは対戦する機会がなかった。
「まっていたぞ、葵」
決闘場では三沢が腕を組んで待っていた。寮としてはこちらが格上のはずだが、俺が挑戦する側という扱いである。実力としては間違ってはいないとは思うが、何か釈然としないものがある。
「三沢、そういえば授業以外でデュエルするのは初めてだな」
十代や翔は普段から寮内でデュエルをすることもあるそうだが、レッド以外の部屋は個室のため、部屋にこもっているとそう言った機会がほとんどない。三沢も他のデュエリストの研究で部屋にいることが多いのも一因だろう。
「そうだな、だが授業では41戦20勝18敗3分で俺が勝ち越している。お前への対策も万全だ。今回も勝たせてもらう」
「引き分けの原因はお前の《破壊輪》だろうが。自爆したお前の黒星で、21勝20敗で俺の勝ち越しの間違いじゃないか?」
三沢とデュエルする時、お互いに下級モンスターでも攻撃力1500以上のモンスターが多いため、最後のトドメを刺す場面で《破壊輪》を使われて引き分けになりやすいのだ。
「デュエルをすれば俺の数式に間違いがないことが分かるさ。どちらが強いのかハッキリさせよう」
「その案には賛成だな。負けて計算を一からやり直すといい」
お互いにセットポジションにつきデュエルディスクを構える。
「「デュエル!」」
「俺の先攻、ドロー! 《カーボネドン》を守備表示で召喚し、ターンを終了する」
《カーボネドン》DEF/800
炭を連想する黒いモンスターが防御姿勢であらわれた。機械族のような見た目だが、一応恐竜族らしい。機械族である《サイバー・ダイナソー》とどちらが恐竜族に近いか悩む。少なくとも《メカ・ザウルス》の方が恐竜族らしい見た目だ。
「俺のターン、ドロー。《巨人ゴーグル》を召喚してバトルだ。《巨人ゴーグル》で《カーボネドン》に攻撃!」
《カーボネドン》に巨人の拳が襲いかかり、その衝撃で身体があっさりとへし折れた。炭素は構造次第で強度や弾力性がまったく違うのだが、どうやら《カーボネドン》を構成する炭素は鉛筆の芯のような脆いものだったようだ。
《巨人ゴーグル》ATK/1500
《カーボネドン》DEF/800
「俺はこれでターンを終了」
「俺のターン、ドロー。俺は《ハイドロゲドン》を攻撃表示で召喚する」
《ハイドロゲドン》ATK/1600
茶色く濁った水が地面から吹き出し、平べったい四足の恐竜へと姿を変えた。一応種族が恐竜族であるため恐竜とはいったものの、見ようによってはサンショウウオのような両生類にも見える。
「バトル、《ハイドロゲドン》で《巨人ゴーグル》を攻撃! ハイドロ・ブレス」
《ハイドロゲドン》の口から吐き出た濁流を岩の巨人は真正面から受け止したが、あまりにも勢いが強かったのか仰向けに転倒して押し流されてしまった。
《ハイドロゲドン》ATK/1600
《巨人ゴーグル》ATK/1500
葵LP4000→3900
「そして《ハイドロゲドン》の効果発動! このモンスターが相手モンスターを破壊し墓地に送った時、デッキから《ハイドロゲドン》を1体特殊召喚する!」
《ハイドロゲドン》ATK/1600
そして地面から湧き出た水が再び形をかえ、先ほど現れた四足の恐竜と同じ形となった。次から次へとわき出してくるのは、水の凝集力でも関係しているのだろうか。もしくは水素のガス密度が低く、拡散が速いからかもしれない。
「そして《ハイドロゲドン》で葵に直接攻撃!」
新たに湧き出た《ハイドロゲドン》がこちらに向けて濁流を吐き出した。ソリッドヴィジョンであり実際には濡れていないはずなのに、水を被ったような冷たさと服が肌にはりつくような不快感に思わず眉をしかめてしまう。攻撃モーションが終わるとそれもすぐになくなるのだが、苦情が来てもおかしくはないと思う。
《ハイドロゲドン》ATK/1600
葵LP3900→2300
「俺はカードを1枚伏せてターン終了!」
「俺のターン、ドロー。手札から永続魔法《金剛真力》を発動。相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札からレベル4以下のデュアルモンスターを特殊召喚することができる。この効果で《サンライズ・ガードナー》を守備表示で特殊召喚し、そして再度召喚だ」
《サンライズ・ガードナー》DEF/500→2300
黄金に輝く戦士が腕をクロスし、身体を低くして構える。
「俺はこれでターンを終了する」
「いくぞ、俺のターン、ドロー! 守りを固めたようだが、それが無駄だと教えてやろう!」
「俺は《オキシゲドン》を召喚し、さらに手札から《ボンディング―H2O》を発動! 俺の場の《ハイドロゲドン》2体と《オキシゲドン》1体、つまり水素2と酸素1を化合して《ウォーター・ドラゴン》をデッキから特殊召喚する!」
《ウォーター・ドラゴン》ATK/2800
2体の茶色い液体の恐竜と緑色の気体の翼竜が《ボンディング―H2O》のカードに吸い込まれ、爆発が起きた。そのモヤが晴れた時に目の前に現れたのは、猛々しい水の龍だった。《ハイドロゲドン》とは違って透き通るその姿は、美しくもある。
万丈目を破ったカードであり、三沢の持つ6属性デッキの内【水属性】のエースである。三沢は授業では試験用デッキという名の【スタンダード】ばかり使うので、実際に相対するのは初めてだ。
「いくぞ、《ウォーター・ドラゴン》で《サンライズ・ガードナー》を攻撃! アクア・パニッシャー!」
必死に守りを固めていた黄金戦士であったが、水の龍から吐き出される水流に押し流されるどころか、丸ごと包み込まれてしまった。立ち上った水柱のなかで破壊されたようだ。
《ウォーター・ドラゴン》ATK/2800
《サンライズ・ガードナー》DEF/2300
「俺はこれでターン終了だ」
「俺のターン、ドロー。よし、《金剛真力》の効果発動! 手札から《エヴォルテクター シュバリエ》を特殊召喚! そして手札から《スーペルヴィス》を《エヴォルテクター シュバリエ》に装備し、再度召喚状態にする!」
《エヴォルテクター シュバリエ》ATK/1900
赤甲冑の騎士が炎を纏って登場する。水の龍は騎士を見下ろして、かすかに笑った気がした。
「だが、《エヴォルテクター シュバリエ》は炎属性、《ウォーター・ドラゴン》の効果で攻撃力は0となる!」
《エヴォルテクター シュバリエ》ATK/1900→0
「ならばこうするまでだ。《エヴォルテクター シュバリエ》の効果を発動! 自分フィールド上に表側で存在する装備魔法1枚を墓地に送ることで、相手フィールドのカード1枚を破壊する! 俺は《スーペルヴィス》を墓地に送り、《ウォーター・ドラゴン》を破壊する!」
赤い甲冑の騎士が鞘から剣を抜き、居合い抜きの要領で炎の斬撃を飛ばす。取るに足らないと判断したのか、水の龍は回避せずに真っ向から受け止めた。しかし斬撃が当たった箇所から爆発し、水の龍はその姿を崩し、ただの水の塊となった。
《エヴォルテクター シュバリエ》ATK/0→1900
「そして、墓地に送られた《スーペルヴィス》の効果発動! このカードが墓地に送られたとき、墓地の通常モンスター1体を特殊召喚する! 蘇れ、《巨人ゴーグル》!」
地面が隆起し、そこから岩の巨人が立ち上がる。そして己の存在を示すように、天に向けて咆哮をあげた。…2ターン目にさっくりやられたのがそんなに悔しかったのだろうか。
《巨人ゴーグル》ATK/1500
「だが、《ウォーター・ドラゴン》が破壊され墓地に送られた時、墓地の《ハイドロゲドン》2体と《オキシゲドン》1体を特殊召喚するぞ」
《ハイドロゲドン》ATK/1600
《ハイドロゲドン》ATK/1600
《オキシゲドン》ATK/1800
水の塊に電気が走り、緑の気体と茶色の液体に分離した。気体は《オキシゲドン》に、液体は2体の《ハイドロゲドン》にそれぞれ姿を変えた。
「《巨人ゴーグル》を再度召喚してバトル!《巨人ゴーグル》で《オキシゲドン》を攻撃! ゴーグルナックル!」
巨人が岩でできた筋肉を隆起させてうなり声をあげる。そしてその巨体に似合わない俊敏さで《オキシゲドン》に接近し、強烈なアッパーカットをお見舞いした。《オキシゲドン》は気体のはずだが、しっかりとダメージは通ったらしく、そのまま弾けて衝撃が三沢を襲う。
《巨人ゴーグル》ATK/1500→2100
《オキシゲドン》ATK/1800
「リバースカード発動!《スピリット・バリア》! 俺のフィールド上にモンスターが存在する限り、俺への戦闘ダメージは0になる!」
三沢を襲ったはずの衝撃が直前で拡散し、三沢にはダメージが与えられた様子が無い。よく見てみると三沢に白いモヤのようなものがまとわりついており、それが衝撃を弾いたのだろう。モンスターが存在する限り効果を発揮するということは、あれはもしかしたら生き霊の類なのかもしれない。
「さらに、《エヴォルテクター シュバリエ》で《ハイドロゲドン》を攻撃!」
赤甲冑の騎士が《ハイドロゲドン》を叩き斬ったことで衝撃波が発生するが、それも三沢にまとわりついた白いモヤによって弾かれてしまった。やはりあのモヤをどうにかしない限り、ダメージは通らないようだ。
《エヴォルテクター シュバリエ》ATK/1900
《ハイドロゲドン》ATK/1600
「これでターン終了」
「俺のターン、ドロー。 いくぞ、葵! 俺は儀式魔法《リトマスの死儀式》を発動! 合計レベルが8以上になるように手札またはフィールドから生け贄に捧げる。フィールド上の《ハイドロゲドン》と手札の《ブラッド・ヴォルス》を生け贄に、《リトマスの死の剣士》を儀式召喚!」
《リトマスの死の剣士》ATK/0
祭壇に《ハイドロゲドン》と《ブラッド・ヴォルス》が吸い込まれ、雷が落ちる。突然の雷に目がくらんだが、数秒もしないうちに視力が戻ってきた。そして雷が落ちたはずの場所には、奇妙な帽子を被った仮面の剣士が佇んでいた。
「《リトマスの死の剣士》は罠カードの影響を受けず、戦闘によっては破壊されない死の剣士! またフィールド上に罠カードが存在する限り、攻撃力と守備力は3000となる!」
《スピリット・バリア》から赤いオーラが構えられた剣に流れ、妖しく光る。仮面の剣士がこちらをみて不適に笑った気がした。
《リトマスの死の剣士》ATK/0→3000
「《リトマスの死の剣士》で《エヴォルテクター シュバリエ》に攻撃!」
赤甲冑の騎士は迎撃姿勢を取っていたが、仮面の剣士は華麗な動きで近づくと素早く剣を振るった。仮面の剣士が三沢の下まで飛び退き着地すると同時、迎撃姿勢をとったままの赤甲冑の騎士が爆散した。
《リトマスの死の剣士》ATK/3000
《エヴォルテクター シュバリエ》ATK/1900
葵LP2300→1200
「俺はこれでターン終了だ」
それにしても攻撃力が3000もあり、なおかつ戦闘破壊耐性と罠耐性があるなんて嫌がらせにしか思えない。《スピリット・バリア》を破壊すれば解決するのだろうが、それでも結局は戦闘破壊ができないので次のターンからは壁にされてしまう。
「俺のターン、ドロー!」
そうこう悩んでいると、この状況を打破するのにうってつけのカードを引いた。耐性があるのはあくまで罠だけなので、このカードなら問題なく破壊できる。
「俺は、《未来サムライ》を攻撃表示で召喚する!」
《未来サムライ》ATK/1600
青白い裃の侍が登場し、自分の役割を理解しているかのように居合いの構えを取った。しかし召喚権はすでに行使したため、通常召喚での再度召喚は行うことはできない。ならばどうするかだが、答えは単純だ。
「そして、手札から速攻魔法《フォース・リリース》を発動! この効果で俺のフィールド上のデュアルモンスター全てを再度召喚状態にする!」
地面から光が立ち上り、《未来サムライ》の裃が白く染まる。刀は鞘に納められたままだが、鞘越しにでも紫色の光が見える。心無しか侍の脚にも力が入っており、いつでもその力を発揮できることを伝えているようだった。
「そして再度召喚された《未来サムライ》の効果発動! 墓地のモンスター1体を除外することで、相手表側表示のモンスター1体を破壊する! 俺は墓地の《サンライズ・ガードナー》を除外し、《リトマスの死の剣士》を破壊だ! 紫電一閃!」
俺が宣言するのを待ちわびたかの様に、侍は仮面の剣士目掛けて飛び出した。仮面の剣士は両手の剣をクロスにして攻撃に備えていたが、侍は初撃でそれを弾き飛ばし、二の太刀で仮面の剣士を切り捨てた。
「これで邪魔なモンスターはいなくなった。いくぞ!《未来サムライ》で直接攻撃! 来世斬!」
仮面の剣士を切り裂いた侍は、三沢へと向けて走り出した。そしてすれ違いざまに袈裟切りをしてから、跳躍してこちらへと戻ってきた。こちらへと戻った侍は、どこか満足げに刀を鞘に納めていた。
《未来サムライ》ATK/1600
三沢LP4000→2400
「さらに《巨人ゴーグル》で直接攻撃! ゴーグルナックル!」
岩の巨人が腕を振りかぶりながら走り、三沢との距離を詰める。そして間合いに入った所で、風切り音を唸らせながら拳を叩き込んだ。ソリッドヴィジョンだというのに三沢は派手に吹き飛び、痛みをこらえるように立ち上がった。
《巨人ゴーグル》ATK/2100
三沢LP2400→300
「エンドフェイズ時、《フォース・リリース》の効果で再度召喚状態となったデュアルモンスターは全て裏側守備表示になる。効果を受けた《未来サムライ》は裏側守備表示だ。さぁ、ターンエンドだ」
全てとはいったものの、効果発動時には《巨人ゴーグル》がすでに再度召喚状態であったため、今回効果が適応されたのは《未来サムライ》のみである。地味に紛らわしいがここで《巨人ゴーグル》がセット状態になると攻撃にも防御にも不安を感じるので、むしろ都合がいい。
「くっ、俺のターン、ドロー! …《マスマティシャン》を攻撃表示で召喚!」
《マスマティシャン》ATK/1500
ピンクの煙が小さく破裂して現れたのは、灰色のローブを着たお爺さんだった。杖にはユーモラスな意匠が施されており、煙突のようにも見える。
「そして、《マスマティシャン》を召喚した時、俺はデッキトップのカードを1枚墓地に送る。バトルだ!《マスマティシャン》で裏側守備表示の《未来サムライ》に攻撃! バトルカリキュラム!」
杖から数式が現れ、リバースした《未来サムライ》にガツガツとぶつかる。バトルが一気にギャグになった気がするが、気にしたら負けだろう。
《マスマティシャン》ATK/1500
《未来サムライ》DEF/1200
「俺はこれでターン終了だ」
セットカードは無しか、それならばここで下級モンスターを引くことが出来れば…《クリボー》のようなカードが無い限り…俺の勝ちは決まりと言ってもいいだろう。
「俺のターン、ドロー!」
…引いたのは《スペシャル・デュアル・サモン》、再度召喚をサポートしてくれるカードだが、残りの手札は出すに出せない最上級モンスターだけだ。今は使いたくても対象がいない。
「 …バトル!《巨人ゴーグル》で《マスマティシャン》を攻撃!」
巨人がローブの老人を殴り倒したが、その衝撃は《スピリット・バリア》によって三沢までは届かない。
《巨人ゴーグル》ATK/2100
《マスマティシャン》ATK/1500
「《マスマティシャン》が戦闘によって破壊され墓地に送られたことで、俺はカードを1枚ドローする」
結局このターンは三沢のライフを削ることはできなかった。それでもあと一手、下級モンスターでなくとも《思い出のブランコ》のような蘇生カードや《闇の量産工場》のような回収カードでもいい。次のターンには引かなければ。
「次のターンこそモンスターを引いて俺が勝つ。ターンエンド」
「残念だが、既に俺の勝利の方程式は揃っている! 俺のターン、ドロー!」
一応《巨人ゴーグル》はデメリットのない下級モンスターでは倒すことができない程度の攻撃力を持っている。それを突破するならば…効果破壊だろうか。俺のライフも初期値の2割未満だし、これは危ないかもしれない。
「俺は墓地の《カーボネドン》の効果を発動する! 墓地のこのカードの上にカードが10枚送られたことで、瞬間的に高い圧力を受けた炭素はダイヤモンドに変化する! 墓地の《カーボネドン》を除外し、デッキから《ダイヤモンド・ドラゴン》を特殊召喚する!」
《ダイヤモンド・ドラゴン》ATK/2100
フィールドに現れたのは眩しいほどの輝きを放つドラゴンだった。その輝きは身に纏うダイヤモンドが光を乱反射しているものであり、これほどの量のダイヤモンドは果たしてどれほどの値がつくのか…まったく想像ができない。
「いつの間に…」
思い出してみると、《ハイドロゲドン》《ハイドロゲドン》《オキシゲドン》《ボンディング―H2O》《ウォーター・ドラゴン》《リトマスの死の儀式》《リトマスの死の剣士》《ブラッド・ヴォルス》《マスマティシャン》、そしてマスマティシャンの効果で墓地に送られたカードで確かに10枚になっている。
そして《ダイヤモンド・ドラゴン》の攻撃力は、《巨人ゴーグル》と同じ2100である。それでも俺のライフは1200、追撃がなければまだ可能性はある。
「そして、俺は《白魔導士ピケル》を召喚する!」
《白魔導士ピケル》ATK/1200
召喚されたのは《スケープゴート》に描かれる《羊トークン》の被り物をしたピンクの髪の少女だった。顔もまだまだ幼いものであり、白くゆったりとした導衣を着ているせいか、余計に幼く見える。
「…えっ」
会場の中で思わず間の抜けた声を出したのは俺だけではないはずだ。バリバリの硬派でアイドルカード否定派であった三沢がこんなカードをデッキに入れ、しかもこんな大衆の前で召喚するなんて驚かないはずがない。
…俺はアニメでアイドルカードがピケルであることは知っていたが、まさか召喚してくると思わなかった。手札に他の攻撃力1200以上のモンスターがいなかったのだろうが、それで無表情を突き通せるのはすごいと思う。
「バトル!《ダイヤモンド・ドラゴン》で《巨人ゴーグル》を攻撃! ダイヤモンドブレス!」
「えっ、あ、げ、迎撃しろ! ゴーグルナックル!」
《ダイヤモンド・ドラゴン》の口から吐き出されたブレスはキラキラと輝いており、大量のダイヤモンドで出来ていることがわかった。岩の巨人はそれを真っ向に受けて身体を削られながらも、《ダイヤモンド・ドラゴン》に拳を叩き込んで破壊した。しかしブレスに耐えきれなかった巨人も破壊されてしまった。
《ダイヤモンド・ドラゴン》ATK/2100
《巨人ゴーグル》ATK/2100
「そして、《白魔導士ピケル》で直接攻撃だ!」
《白魔導士ピケル》の持つ杖の先が白く光り、こちらへと光球が飛んでくる。そして眩しい光に包まれて、特に痛みを感じることもなく俺のライフポイントはなくなった。
《白魔導士ピケル》ATK/1200
葵LP1200→0
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「勝者、三沢大地!」
本来なら歓声があがるべきタイミングなのだが、動揺が広がっているせいかざわざわとした声しか聞き取ることが出来ない。そして俺は俺で三沢になんと声をかけるべきか頭に浮かばない。しかし三沢はこちらに近づいてくる。
「葵、良いデュエルだった」
「お、おう…」
思わずどもってしまう。しかしそれではあまりにも失礼なので、頭を振って言うべき言葉を整理し、まっすぐ三沢に向き直る。
「今回は俺の完敗だったが、今度こそお前の計算を上回ってみせる。それまではそう簡単に負けるなよ?」
そう言って右手を拳にして前に出す。三沢も察したようで、
「あぁ、だが俺の数式は完璧だ。今度も俺が勝つさ」
「言ってろ」
そう言って互いに笑みを浮かべて拳を軽くぶつける。そして観客も衝撃から立ち直ったのか、大きな歓声があがった。
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一回戦第二試合の十代と明日香さんの試合では十代が見事なぶん回しを決めて勝利し、決勝戦では三沢が十代の《融合》を封じることに成功するも、十代はそれを物ともせずに多種多様なサポートカードを駆使して勝利を納めていた。
そして十代は栄えあるアカデミア本校代表として、ノース校との交流デュエルに出場することになった。トーナメントの後、三沢が十代に負けたことを謝ってきたが、"簡単には"負けていないから構わない、という旨を伝えると屁理屈だといいながらも笑っていた。
今回デュエルをしていて痛感したのは、魔法・罠の除去がままならないことと、やはりまったくもってドロー力が足りない。
魔法・罠の除去の手段を挙げるなら、《デュアルスパーク》と《エヴォルテクター シュバリエ》、あとは《ダークストーム・ドラゴン》しか無いのは流石に致命的だ。《ヴィクティム・カウンター》は魔法の発動を無効にできるが、俺のデッキにとっては永続罠の方が厄介なことが多い。
しかしながら《玉砕指令》を入れるにはレベル2以下の通常モンスターが必要なのだが、このデッキでは《デュアル・ソルジャー》しかおらず、かなりの確率で腐ってしまう。
単純な解決法としては、ハイランダーをやめて《デュアルスパーク》だけでも複数採用するのが手っ取り早いだろう。あとは変に拘らず、汎用カードの《サイクロン》などを採用することだろうか。
…デュアルモンスターの枚数をいじるとなんとなく負けた気がするので、ひとまずはサポートカードで枚数を調整しておこう。汎用カードの採用も検討に入れるとして、40枚で収まるだろうか…
それと大山にドロー力を向上させるための訓練の方法を聞いてみるとするか。さすがに十代ほどのドロー力はなくとも、せめて手札でカードが完全に腐る状況だけは回避したい。
リベンジに向けてまずはデッキを弄り直すことにし、シハーブにカード探しを手伝わせながらあーでもないこーでもないと呟き続けるのであった。