一応デュエルもします。
十代に聞いた所、寮入れ替えデュエルの翌日、万丈目が定期船に乗って島を出たことが確認されたらしい。万丈目は退学するという約束を律儀に守り、アカデミアを出たようだ。
その他にもジュンコが猿に攫われたり、動物実験の阻止をしたりと色々あったらしいが、わりとどうでもいいので割愛する。とりあえずその日の授業ノートだけは貸しておいた。
さてそろそろ冬休みに入るわけだが、高寺オカルトブラザーズを名乗る連中に勧誘をされた。どうやらカードの精霊について研究しているらしく、近々実験を行うので見に来ないか、ということだった。
…もちろん、そんな新興宗教のようなものに行くつもりはない。記憶が正しければサイコショッカーの生け贄にされるだろうし、そんな危ない場所に好んで突っ込むつもりはない。
—————
冬休みになったためフェリーに乗って地元に帰ることにしたのだが、黒いコートを着た何かがいた。透けたり発光したりを繰り返しているのに、人間ということはあるまい。
『精霊がおりますな。存在が少々不安定なようですが』
「シハーブ、あれは何の精霊か分かるか?」
餅は餅屋というと少し違うかもしれないが、シハーブも精霊であるため俺よりは詳しいだろう。人型というだけでもかなりの種類があるため、一々絞り込むのも面倒だ。
『ふぅむ…見た所、《人造人間サイコショッカー》ではないですかな。あの肌の色や、見えているスコープを見る限りは間違いないかと』
そこはせめて雰囲気や気配で察して欲しかったところだ。確かにカードは二次元だが、実体化しているなら当然三次元になる。そのためパッと見せられても分かりにくいのだが、なんだか悔しい。
しかし《サイコショッカー》か。さっき高寺と思われる奴が走って逃げていくのが見えたし、高寺の実験の結果だろう。それにしても先ほどからこちらを見ているような気がするのだが、俺も逃げるべきだろうか。
「おい、そこのお前」
あー、あー、聞こえなーい、などと言ってごまかせればいいのだが、そんな手が通じるとも思えない。高寺を追いかけずにわざわざ話しかけてくるのだから、俺に何かしら用事があるのだろう。
「何でしょうか」
「我が生け贄となれ」
「断る」
自分でも驚くほどの即答である。とはいえ俺には自殺願望なんて欠片もないので、当然の返答でもある。
「お前からは今まで見た中で最も強いパワー、波動を感じる。我が三体目の生け贄としてふさわしい」
なるほど、そういうことか。余剰分がカードになったとはいえ、俺は元々この世界の人間じゃないので強い力がある…らしい。追い返したい所だがここはフェリーの上、《ファイヤー・ボール》のようなカードを使うのはまずいだろう。
「シハーブ、あいつを追い返すにはどうすればいいと思う?」
『某にお任せくださいませ』
そういうとシハーブは拳をぶつけ、身体全体をむくむくと巨大化させていく。フェリーの天井に頭をこすりつけながら《サイコショッカー》を見下ろしている様は、まさしく魔人と言えるだろう。
「ほう、《ランプの魔人》ごときが闘おうというのか」
巨大化したとはいえ、攻撃力差が1000もあるのは変わらない。それとも《巨大化》で攻撃力が倍とか、そういう事なのだろうか。
『確かに某は《ランプの魔人》ですがな。しかしこれでもジーニー社に務める身、そんじょそこらの魔人と一緒にしていただいては困りますぞ』
お前確か俺に初めて呼び出されたとか言ってなかったか。ジーニー社がエリート集団でも、お前明らかに落ちこぼれているだろ。流石に敵がいる手前、口には出さないけれども。
「ならば試してやろう! ついてこい!」
《サイコショッカー》がフェリーから飛び降り、森へ向かって走り出す。そして動く事なく、それを見送るシハーブ…ん?
「追わないのかよ」
『命令とあらば追いますが、その必要はありますかな?』
確かに必要性は皆無だ。俺の命令は《サイコショッカー》を追い返すことであって、倒す必要もないしそもそも闘う必要すらない。しかも《サイコショッカー》が降りて森に消えた頃には、フェリーの乗船口も閉じられて発進する所だった。
「謀ったなぁぁぁぁぁ!」
森の方から何やら叫び声が聞こえるが、少なくともこちらに来られないようなら問題ない。出遅れてしまったが、席を確保するとしよう。荷物が置ける場所があればいいのだが。
—————
結局室内はほぼ埋まっていたので、甲板の人のいない辺りに座る事にした。どうせ他に聞く人もいないし、仮に近くに人が来てもエンジンと波の音でうるさくて聞こえないだろう。ちょうどいい機会ということで、気になった事をシハーブに聞いてみる事にした。
「そういえば気になった事があるんだが、聞いてもいいか?」
『なんなりと』
「《サイコショッカー》なのに生け贄が三体ってどういうことだよ」
放送時に誰しもが疑問に持ったであろうことだが、《サイコショッカー》は上級モンスターであり通常召喚するならば一体の生け贄で足る。それなのにあの《サイコショッカー》は三体の生け贄を所望したのだ。
『確証はありませんが、恐らくあの者が媒介無しに出現しようとしたからでしょうな』
「媒介? お前のランプの中身みたいなものか?」
『その通りでございます』
ランプの中に《ランプの魔人》のカードがあることは確認している。シハーブ曰く、カードの精霊はカードという形で己を安定化させているらしい。それをせずに精霊界から出現しようと思うと、大変な労力が必要なのだとか。
「ん? 三幻神でも宝玉獣でも、ペガサスがたった1枚だけ作り出したカードなんだろ? 精霊がカードになるっていうんだったらおかしくないか?」
『いえ、何らおかしいことではありませんぞ。精霊が現世に出現する際、存在をカード化させる場合と、元々あるカードに存在を移す場合、この二通りがあるのです』
恐らく、三幻魔やネオスは前者で三幻神や宝玉獣は後者ということだろう。《幻魔の扉》のように、力の一部だけをカード化することもあるらしい。俺のカードもその例に当てはまるそうだ。流石は遊戯王の世界、カードとオカルトが密接に関わっている。
「俺のカードに神のカードとか混じってたんだが、つまるところあれは神自身じゃない、と」
『あれはあくまでご主人様の力をそのような形に納めただけですからな。単体で闘ったとしたら勝ち目はございませんが、物量に任せればあるいは』
自分の力が思いのほかとんでもないんだが、これが異世界チートという奴なのだろうか。デュエリストになるよりも、裏家業の人間になるほうが向いている能力という気がしてならない。
「そんなとんでもない力、よく制御できたな」
さっきの《サイコショッカー》もそうだが、社長の嫁や三幻神も明らかにお前より格上だぞ。魔法や罠にしても、凶悪な効果のカードがいくつもある。むしろこの世界に移動した際、何かしら騒ぎになっても不思議じゃないのだが。
『某はこちらの世界の精霊ではありませんからな。あちらに比べて相対的に力は増しておりますので、だだ漏れになっているだけの力を制御する程度ならば問題はございません』
神に近い力も制御できる《ランプの魔人》…なんというか、とんでもない話である。それでもすごそうに見えないのは、シハーブがそれなりに残念なところを見続けているからだろうか。
「ちなみにシハーブはあっちの世界だとどの程度になるんだ? 物に触れないのは知ってるけど」
『あちらではカードの精霊など雑多な霊と同じ扱いですな』
あちらの世界ではカードという物から精霊が発生したのに対し、この世界では精霊がカードという枠に納められている状態という点が大きく違うということらしいが、どちらにせよオカルトだ。
「ん? その言い草だと、あっちはそういうオカルトだらけって聞こえるんだが」
『それはもちろん、魔人同士で会社を起こすぐらいには多くおりましたぞ。魔人の他にも妖精や幽霊、強いモノになりますと神と呼ばれる存在も数多く存在しておりました』
衝撃の新事実、あちらの世界もオカルト天国だったらしい。カードの精霊どころか、神様が実在していたことに驚いた。
「それがこっちだと神様とやりあえるほどの力を制御できるんだから、こっちとあっちじゃ随分差があるんだな」
『今の某ならば、並の上級モンスター程度なら対処できるでしょうな。そんな機会はそうそうなさそうですが』
つい先ほどあったばかりとはいえ、そんな機会そうあってたまるか。精霊界に喧嘩しにいく理由もないし、面倒ごとになるのはゴメンだ。
「あら、そこにいらっしゃるのは代田さんではありませんの?」
モモエがこちらに歩いてきた。どうやら同じフェリーだったようだ。さすがにこのうるさい状態で距離もあるので、シハーブとの会話は聞かれていないと思う。
「たしかキミはモモエさんだったか。何か用か?」
「お見かけしたので、ちょっとデュエルでもいかがかと思いまして」
フェリーが港に着くまではそれなりに時間がかかるので、ちょうどいい暇つぶしになるだろう。モモエが話しかけてきたのは意外だが、あっちはあっちで暇だったのかもしれない。
「この辺はテーブルもないし、デュエルディスクのほうがいいだろ」
「そうですわね、それにテーブルがあってもカードが飛ばされてしまいそうですわ」
お互いにデュエルディスクを構えて向かいあう。船の上といっても、天気もいいしそれなりに大きなフェリーなので揺れはほとんどない。あるとしたらエンジンの揺れぐらいだろうか。そのため、それなりに安心してデュエルを行う事ができる。
—————
「「デュエル!」」
「先攻は私がいただきますわ、ドロー」
まぁ今回はレディファーストと思っておこう。しかし今更だが今は冬休みだと言うのに、モモエは相変わらずのノースリーブにミニスカートだ…アカデミアは女子用の冬制服を作った方がいいとおもう。ついでに男子の夏制服も。
「《デス・ウォンバット》を攻撃表示で召喚しますわ」
《デス・ウォンバット》ATK/1600
ウォンバットとはオーストラリアなどに生息する動物で、鼻が平たく手足の短いが特徴だろうか。日本ではあまり親しみのない獣だが、そんなことはどうでもいい。
「さらに、永続魔法《黒蛇病》を発動ですわ! このカードは自分のスタンバイフェイズ毎にお互いに200ポイントのダメージを与え、さらにダメージは毎ターン倍になっていきますの。さらにカードを1枚ふせて、ターンを終了しますわ」
《デス・ウォンバット》の効果は、コントローラーへの効果ダメージを0にするというもの。つまりモモエはこちらに一方的にダメージを与えることができるのだ。
「俺のターン、ドロー。《デュアル・サモナー》を攻撃表示で召喚、カードを1枚伏せてターンを終了」
《デュアル・サモナー》ATK/1500
本当なら《デス・ウォンバット》を倒したかったところだが、手札の下級モンスターの攻撃力が1500以下ばかりなので仕方がない。
「私のターン、ドローですわ。《黒蛇病》の効果でお互いに200ポイントのダメージですけど、私は《デス・ウォンバット》の効果で私へのダメージを無効にしますわ!」
お互いの手に黒い蛇のような痣が現れ、わずかにその範囲を伸ばして手首に到達した。また足首にも同様の痣が出てきたようだ。まだあまり痛くはないが、おそらくターンが経過するにつれてその範囲も痛みもましていくことだろう。
葵LP4000→3800
「《ダークゼブラ》を召喚してバトルですわ! 《ダークゼブラ》で《デュアル・サモナー》に攻撃しますわ」
どのあたりがダークなのかよくわからないシマウマに蹴飛ばされる召喚師。普通それだけで身体中の骨が折れてもおかしくないのだが、なんとか耐えきったようだ。
《ダークゼブラ》ATK/1800
《デュアル・サモナー》ATK/1500
葵LP3800→3500
「《デュアル・サモナー》は1ターンに1度戦闘破壊されない」
「そうですわね、それなら《デス・ウォンバット》で《デュアル・サモナー》に攻撃ですわ!」
そしてこれまたどのあたりがデスなのかよくわからないウォンバットに突進される召喚師。今度は耐えきれなかったようで、派手に倒れ込んでそのまま消滅してしまった。
《デス・ウォンバット》ATK/1600
《デュアル・サモナー》ATK/1500
葵LP3500→3400
「このままターンエンドですわ」
「俺のターン、ドロー。お、いい所に《エナジー・ブレイブ》を攻撃表示で召喚!」
《エナジー・ブレイブ》ATK/1700
黄金色の肌に青い服、耳や爪が尖っており、おまけに角まで生えている。鬼かなにかの親戚かもしれない。身体の各所からバチバチと放電して、威嚇しているようだ。
「バトル! 《エナジー・ブレイブ》で《デス・ウォンバット》に攻撃!」
「罠発動ですわ!《グラヴィティ・バインド―超重力の網―》! これでレベル4以上のモンスターは攻撃を行うことができませんの」
当然防御カードは入っていると思ったが、《デス・ウォンバット》を除去し損ねたのは辛いな。《エナジー・ブレイブ》のレベルは4なので当然攻撃できないし、レベル3以下のモンスターで攻撃力1600を超えるモンスターはいない。効果破壊を狙っていくしかなさそうだな。
「ならこのままターンを終了する」
「私のターン、ドローしますわ。そしてスタンバイフェイズ、《黒蛇病》の効果で200ポイントの倍、400ポイントのダメージですわ!」
手首にあった黒い蛇の痣が肩に向けてその範囲を伸ばし、肘との半ばまで到達したようだ。まだ問題ない程度の痛みだが、バーンダメージとしては次から問題になってくるだろう。
葵LP3400→3000
「そして、カードを1枚伏せてターンを終了しますわ」
やっぱり動かないか。むしろ動けないというか、動く必要もない方が正しいだろうな。
「俺のターン、ドロー。《サンライズ・ガードナー》を攻撃表示で召喚! そして、罠カード《デュアル・ブースター》を発動して装備! 攻撃力を700上昇させる!」
《サンライズ・ガードナー》ATK/1500→2200
召喚された途端に発電機から力を供給される光の戦士…決して光の国からやってきた戦士ではない…それはさておき、《サンライズ・ガードナー》は下級デュアルでは珍しいレベル3のモンスターだ。つまり今なら殴り倒せる。
「《サンライズ・ガードナー》で《デス・ウォンバット》に攻撃!」
「罠カードですわ!《安全地帯》ですの! これで《デス・ウォンバット》は相手の効果の対象にならず、戦闘および効果では破壊されませんわ!」
なんでそんな新しいカード持ってるんだこいつは…確かにこっちの世界とあっちの世界じゃ流通しているカードの時代などが違うみたいだが、まさかZEXAL直前のパックに収録されていたカードが流通しているとは思わなかった。
「それでも戦闘ダメージは受けてもらう」
白く輝いた戦士がウォンバット目掛けてラリアットをかまそうとするが、流石に背の高さが違い過ぎるのでかすることもなく衝撃波だけがモモエを襲った。
確かにその高さなら安全地帯とも言えなくはないのだろうが、《サンライズ・ガードナー》が蹴り技をすれば済む話ではないのだろうか。
《サンライズ・ガードナー》ATK/2200
《デス・ウォンバット》ATK/1600
モモエLP4000→3400
「俺はこのままターン終了」
「私のターン、ドローですわ。そしてスタンバイフェイズ、《黒蛇病》の効果で400ポイントのさらに倍、800ポイントのダメージですわ!」
袖に隠れているが黒い蛇の痣が肘まで到達したようで、絞められるような痛みがあった。ズボンに隠れて見えないが、脚も同様に膝まで浸食しているようで、四匹の蛇に四肢を絞められているようだ。
そして次のターンには1600のダメージ、回復手段を持っていないのでさらにその次のターンにはライフが消し飛ぶ事は避けられない。
葵LP3000→2200
「そして《デス・ウォンバット》と《ダークゼブラ》を守備表示にしてターン終了ですわ」
《デス・ウォンバット》ATK/1600→DEF/300
《ダークゼブラ》ATK/1800→DEF/400
「俺のターン、ドロー!」
ん?たしかこいつの処理はあのカードと同じはず、ということはつまり…
「《サンライズ・カードナー》で《ダークゼブラ》に攻撃!」
シマウマ向けて走っていった光の戦士は、鎧とほぼ同化している盾で殴りつけた。相手は足をたたんで伏せの体勢なのに、なんでこいつは蹴り技を使わないのだろうか。
《サンライズ・ガードナー》ATK2200
《ダークゼブラ》DEF/400
「そしてモンスターを1体セットして、ターンを終了する。」
「あら、裏守備表示ですの? 別にこちらから攻撃するわけでもありませんのに」
「こっちにも事情があるからな」
「そうですの、それでは私のターン、ドローですわ。そして《黒蛇病》の効果で800ポイントの倍、1600ポイントのダメージですわ!」
黒い蛇の痣が肩まで到達したらしく、蛇に噛まれたような痛みが肩を貫いた。太ももの辺りも噛まれているようで、痛みが順番にくるというのもまた嫌らしい。
葵LP2200→600
「ここでカードを1枚セットしてターンを終了しますわ」
「俺のターン、ドロー。俺は《マジック・スライム》を反転召喚し、再度召喚する!」
《マジック・スライム》ATK/700
青いゲルが地面から隆起し、鏡のように周りの景色を映し出した。ぷるぷると左右に揺れる動作がなかなかに可愛らしい。おそらくそう言ったとしても共感されることはあまりないだろうが。
「これが最終ターンになるでしょうに、そんな二度手間なことをしてよろしいんですの?」
「二度手間っていうなっ!」
何故かこの台詞も久しぶりな気がする。最近は授業でデュエルする相手がブルー生ばかりなので、ほぼ毎回言っているはずなのだが…
「手札から、魔法カード《鹵獲装置》を発動! 互いに自分の場のモンスター1体を選択し、コントロールを入れ替える! このとき俺は通常モンスターしか選択できないので、《サンライズ・ガードナー》を選択する」
「ちょ、ちょっと待って欲しいですわ。私の場にいるモンスターは《安全地帯》の効果で対象にとられない《デス・ウォンバット》しかいないので、不発になるんじゃありませんの?」
この場合実際は空撃ちのため発動不可だが、発動されているのを見たためか不発になると思ったようだ。そう思いたかったという事もあるかもしれない。
「残念ながら対象を取る効果ではないからな。問題なく発動されるし、もちろん《デス・ウォンバット》も効果を受ける」
そう、《強制転移》とこのカードは対象を取る効果ではないのだ。そのため《魂を削る死霊》も自壊せず、《安全地帯》の影響も受けない。さすがに魔法効果を受けないカードやコントロール変更ができないカードにはどうしようもないが、それでも対象をとらない奪取カードは便利である。
「さて、《デス・ウォンバット》をいただくとしよう」
「で、ですが私のライフは3400ポイントありますわ! 次のターンに代田さんの《マジック・スライム》を攻撃すれば私の勝ちですわ!」
攻撃力2200の《サンライズ・ガードナー》と攻撃力700の《マジック・スライム》の差は1500、俺のライフはたった600なのでそう考えるのも自然だろう。ただし、《マジック・スライム》の効果さえなければ、だが。
「なら《マジック・スライム》で《サンライズ・ガードナー》を攻撃!」
「自爆特攻するつもりですの!?」
「再度召喚した《マジック・スライム》の効果により、このカードが戦闘することによって受ける戦闘ダメージは相手が受ける。マジカルリフレクト!」
《マジック・スライム》がぷるぷると身体を振るわせてモモエの姿形を取った。すこし金属的な光沢がみえるが、色もモモエに似せているようだ。一度こちらを向いて手を振ったと思いきや、モモエにも手を振っている。
《サンライズ・ガードナー》のボディーブローが当たり《マジック・スライム》が弾けたが、それと同じくしてモモエが腹部を押さえていた。どうやら攻撃された場所と同じ場所にダメージが通っているようだ。
《マジック・スライム》ATK/700
《サンライズ・ガードナー》ATK/2200
モモエLP3400→1900
「さて、ターン終了」
「私のターン、ドローですわ…」
「スタンバイフェイズ、《黒蛇病》の効果で互いに1600ポイントの倍、3200ポイントのダメージだが、俺は《デス・ウォンバット》の効果でダメージを受けない」
「キャアァァ」
モモエの方は今まで痣は手にしか浮かんでいなかったのだが、爆発的に範囲が広がり、腕にも脚にも見える範囲には黒い蛇が巻き付いているような状態になっていた。そして首にも蛇は広がり、痛みのせいかモモエはへたり込んでしまった。
モモエLP1900→0
—————
「ソリッドヴィジョンだから問題ないとは思うけど、大丈夫か?」
「えぇ、問題ありませんわ」
さすがにへたり込んでしまったのは心配だったのでモモエの方に駆けつけたのだが、やはり問題はなかったらしい。なんでも自分で《黒蛇病》の効果を受けたのは初めてらしく、それも5回目の効果はかなりの痛みがあったらしい。
闇のゲームではなくあくまで体感システムなので痛みも緩和されているし、意識が飛んだり後遺症が残ったりはしないが、それでも痛い物は痛い。モモエの場合、すこしわざとらしいところがある気もしなくはないが。
「それで、お手を貸しましょうか?」
「三沢さんや万丈目さんのようなイケメンなら似合うと思いますが、代田さんにはちょっと似合いませんわね」
そう言ってモモエは自力で立ち上がった。わざと演技がかった言い方をしたのだが、なかなか手厳しい返しである。一つだけ反論するならば、万丈目は上から目線で要求するほうが似合っていると思う。
モモエは流石に外が寒かったらしく、室内に戻る事にしたらしい。温帯とはいえ12月の海の上が暖かいはずはない。俺は一応コートを羽織っているが、モモエは制服のままなのでなおさら寒いだろう。
その後は暇つぶしに三沢から借りた、牛尾システムズ出版「詰めデュエル大全」を読み解いていくことにした。実際に警備会社で使用されていたという詰めデュエルを解きながら、フェリーにゆられて実家に帰宅したのであった。
別にモモエフラグは立ちません。
強いていうなら、知り合いの知り合いが知り合いになった程度です。
知り合い以上友達未満ですね。
TF世界ならギャルゲー展開だったかもしれませんが、ここはアニメ世界ですから。(笑)