※告知事項※
・かなり長いです。暇な時にどうぞ。
・キャラ崩壊が多分に含まれております。
・他、何かあれば書きます。
【003】学園生活部の紹介
私、暁美ほむらは魔法少女である。
……と言っても直ぐには信じてもらえるものではなく、信じてもらうために数回の時間停止を要したが。
結果的に学園生活部に入部(という設定)することになった訳ではあるが、私の目的は団欒することなどではない。今の状況をより良く把握する為、そして。
「やあ、昨日僕が言い掛けていたことなんだけどね。……僕と契約し
「黙れ」
この白い悪魔から彼女達を守る為である。
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――丈槍由紀。
この学園生活部におけるムードメーカー。この絶望的な状況において彼女の言動は場を癒す中和剤となっているだろう。
……だが。
「ねえねえ、ほむらちゃん。またあの曲芸やってよー」
「あれは曲芸では無いわ。魔法よ」
「じゃあ魔法! やってよー」
「ダメよ。徒らに魔力を消費したくないの」
「ちぇー」
とても高校生とは思い辛い空気を読まない言動、愉快な時もあるが――どうも美樹さやかを見ているようで何かイラっとくる。
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――恵飛須沢胡桃。
学園生活部の"汚れ仕事"を担当している少女。ツインテール。いつもショベルを携帯しており、そのショベルのお陰で屋上からこの階まで到達出来たようなものらしい。
……とはいえ、ただのショベルでは少し心もとない。と言うわけで、少し強化してやった。
「な、なんだ!? 私のショベルに変な紫色の模様が浮かび上がったぞ!」
「説明ありがとう。説明する手間が省けたわ。……そのショベルに魔力を注入した。さっきまでと比べて破壊力が上昇している筈よ」
「へ、へえ……お前のその魔法とやらは、時間を止めるっていうDI○宛らのチートだけじゃなかったのか?」
「メインの魔法はそれだけだけど、本当にそれだけだけど、魔力は中々の応用が利くの」
「へぇ……」
ショベルを眺めながら言う胡桃。……眺めながらなのは良いのだけれど、彼女のショベルを見つめる目がどうも只ならぬ目のような気がするのだが――気の所為かしら?
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――若狭悠里。
この学園生活部の部長にしてまとめ役。彼女達がここまで生存出来ているのは大体恵飛須沢胡桃のお陰ではあるが、しかし裏方で活躍する彼女が居なければ、それもまた成立しない生存であっただろう。
「貴女、一体何者なの?」
「唐突に何かしら」
ある日、彼女は私に聞いてきた。
「いえ、その……魔法少女? なんて、今まで見たことも聞いたことも無かったもの。不思議で……まるでファンタジーみたいで」
「無理もないことよ。魔法少女は表立って動かない……ファンタジーっていうなら今の状態もかなりファンタジーな筈だけれど」
「ダークファンタジーね……けど、それとはまた違う、明るいファンタジーというか」
「それは幻想よ。魔法少女はファンタジーでもなければファンシーでもない。ただ絶望の末路しか待っていない、ダークどころかブラッドなファンタジー」
「……貴女はなんで」
「それは聞かないで」
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――佐倉慈。
学園生活部の顧問であり、この巡ヶ丘高校で唯一生き残った大人。桃色のショートヘアーで、同じく桃色のワンピース。首からは十字架のネックレスをぶら下げている。
少し聞いてみたいことがあったので聞いてみた。
「高校の教師って、みんな貴女みたいなかんじなの?」
「それはどういう意味なの!?」
「どういう意味も何も……いえ、高校生というものが意外にも私の想像と乖離していたものだから、教師もなのかな、と」
「つ、つまり私は教師らしくないと!?」
「もう少し厳格で頭の堅そうなイメージだったのだけれど、貴女はそんなことないみたいね」
「どうしよう、悪口言われてるように感じるのは私の勘違いよね?」
「親しみやすい教師も居るのね」
「……親しみやすいのもどうかと言われたことがあるのよね」
「あらそう。じゃあ基本的に私のイメージと合致しているのね。貴女がイレギュラーなだけで」
「認めざるを得ないけど……得ないけどっ!」
正直、煽り甲斐はありそうだけれど頼り甲斐があるのか無いのかよく分からない。高校というのは不思議なところだなあと思った。
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以上が学園生活部と名乗る生き残り達。私がこれから一ヶ月間ともに過ごす四人である。
【004】えんそく
さて、学園生活部は兎も角として、個人的な意見としては他の生き残りも探したいところ。このままぬるま湯につかってぬくぬくと無駄な一ヶ月間を使う気はさらさらない。
と言う訳で聞いてみた。
「貴女達、そろそろ物資は大丈夫?」
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リバーシティ・トロン・ショッピングモール。
巡ヶ丘高校から一番近い大型ショッピングモール。……私事だが、ショッピングモールと言うと良い思い出がまるで無い。まどかとインキュベーターの邂逅場所だし、事情をまるで知らない癖にしゃしゃり出てくる美樹さやかに消火器のガス掛けられたり……。
しかし、物資の入手という点でこれほど優れている場所もあるまい。そして、生き残りを探すという点でも。ゾンビ物の映画ではショッピングモールに籠城するというのは実にありがちな状況なのだ(多分。映画なんてまるで見ないのでよく分からないが)。
物資の不足について指摘したのは私だが、意外なことにショッピングモールという提案をしたのは丈槍由紀だった。
「じゃあ『えんそく』に行こう!」
えんそく――物資調達を言い換えるには言い得て妙だが、"学校で生活する部活"というコンセプトの集団、学園生活部としては相応しい名称と言えよう。
だが、これは予想外な結果だった。個人的には若狭悠里か佐倉慈が場所を提案すると思っていたが、まさか丈槍由紀とは。成る程、彼女はただの足手纏いでは無かったらしい。彼女の行動力は非常に重要なもの。ある意味、素晴らしいパーティーとも言えようか。
そうと決まれば早かった。必要な物を掻き集め、道中のゾンビを私と恵飛須沢胡桃で掃討。佐倉慈の車でショッピングモールへと向かったのであった。
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――もう、限界が近かった。
「…………」
「…………」
私と彼女が会話を交わさなくなって、何日が経過しただろう。
もう何日もロクな物を食べていない。
――ドン! ドン! ドン! ドン!
「「っ……!!」」
――ドン! ドン! ドン! ドン!
叩かれた衝撃で扉が揺れた。私と美紀は、扉を抑えている段ボール箱を必死に押さえる。
――ドン! ドン! ドン!
「「…………っ」」
――ドン! ドン!
――ドン!
――……。
音は聞こえなくなった。ぐちゃぐちゃという気味の悪い音を立て、"あいつら"はそこを離れた。
「…………」
――もう、こんな生活、限界だよ。
こんな、ただ生きているだけの生活――生かされているだけの生活なんて。
「…………圭?」
段ボール箱を捌ける。美紀が声を掛けてきた。
「……私、行くよ」
「えっ……」
驚いたような顔の美紀。
"あいつら"はもう居ない。少なくとも、この近くには居ないだろう。抜け出すなら、今しかない――。
「あ、危ないよ」
――何当然のことを。
…………。
私だって嫌に決まってる。死にたくない。危ないのなんて百も承知。でも。
――でも。
「危ないよ? でもさ……」
私はドアノブを捻った。
「生きてれば、それでいいの?」
――良い訳がない。
ドアを開けた。
廊下には何も居なかった。私は、部屋の外に出た。
後ろ手にドアを閉める。
…………。
……さよなら、美紀。
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リバーシティ・トロン・ショッピングモールへの道中の話をしよう。
車を運転するは佐倉慈。まあ当然だろう。免許を持っているのは彼女しかいないし、そもそもこれは彼女の車だ。
「えんそくえんそく〜♫」
「あんまりはしゃぎ過ぎちゃ駄目よ」
「だって遠足だよ! これをはしゃがずしていつはしゃごうか!」
「疲れてダウンとか勘弁してくれよなー」
「大丈夫大丈夫〜♫」
「その自信はどっから来るんだか……」
能天気な丈槍由紀。この絶望的な状況でよくここまで明るく振る舞えるものだと逆に感心する。……まあ、彼女が果たしてちゃんと現実を見ているのかどうかが不明だけれど。
「僕と契約すれば、決して疲れることはない、強靭な肉体が手に入るよ!」
「強靭な肉体は手に入っても魂は脆弱極まりない状態で体外に放逐されるから結局プラマイゼロ。はい論破。死ね」
「暁美ほむら、幾ら何でもそれじゃあ論破できてなきゅっぷい!?」
唐突に湧いたインキュベーターを窓から放り投げ、銃で撃ち抜いた。
「ふう……全くインキュベーターというものは全くゴキブリみたいね――平和な時に限って、こぞって邪魔しにくる。鬱陶しくて堪らないわ。神経に障るのよ、羽化したてのゴキブリ如きが」
「ほむらさん、キャラ間違ってない?」
「大体状況には合ってるから良いでしょう。声も似てるし……っていうか、あんまりメタ的な事言っちゃ駄目よ。読者を選ぶから」
「読者とか言うなよ!!」
「良いじゃない。どうせ別時空ではコラボとかやっているのだし、少しくらい真似しても良いでしょう? 安心して、文房具までは使わないわ」
「意識しまくりじゃねーか!!」
「口の中に突っ込むとしたら『銃』かしらね」
「二重鉤括弧付けんじゃねーよ!! 今度は別のもん混じってんじゃねえか!!」
「何よ、二重鉤括弧付けただけじゃない。別に炎の刀とまでは言ってないし、突っ込むのはペンギンの口じゃないわ」
「こいつ諸々言いやがった」
「み、皆さん? そろそろその会話止めましょ? ね? 幾ら何でもこれが続くと人を選びすぎるわ」
「続かなくても脱落した読者さんは相当数居そうだけれど……」
車の中では終始こんなかんじだった。
その後もちょこちょこ現れるゾンビやインキュベーターを轢いたりして(轢く度に佐倉慈の顔が曇っていった。今はもう泣きそうになっている)、そして漸く。
「着いたー!!」
ショッピングモールに到着したのであった。
【005】祠堂圭
外側から見たモールの中は既にゾンビに占拠されているように見えた。自動ドアは最早自動でもなければドアでもない。壊れて使い物にならない、ただのガラスと化していた。
「さて、爆破するか」
「おいやめろ馬鹿!」
「冗談よ」
「冗談に聞こえねえ……」
まあ、実際に爆弾は持ってるし、本当にやろうと思えば出来るのだけれどね。
流石にこの惨状、正直生き残りが居るとはとても思えない。思えないが、そもそもこの"えんそく"本来の目的は物資調達。生き残りの探索がメインなのは私だけ。
「じゃあ、レッツゴー!」
「あ、ちょっと待って由紀ちゃん!」
危なっかしくもモールの中へ突入しようとした丈槍由紀を若狭悠里が止めた。……丈槍由紀、どうして彼女が生き残れたのだろうか。
「りーさん、どうしたの?」
「え? えっと……」
突発的に止めただけかい。何にも考えてなかったんかい。心の中でツッコんだ。
「丈槍さん、これ」
佐倉慈が何かを拾い上げ、丈槍由紀に見せた。
それはイベントのポスターだった。このショッピングモールでやっていたものなのだろうか。日付は丁度今月になっている。
「今イベント中だから、あんまり大きな音を立てちゃダメよ。お客さんに迷惑かかるから」
「あっ……はーい、分かった」
成る程、こうやって彼女を制御しているのか……幾らムードメーカーとは言え、正直切り捨てた方が良いのでは……いや、それは違うか……場を明るくする人材は、こういう絶望的な状況では必要不可欠……殺伐としたチームの末路なんて、ロクなもんじゃない。
――みんな死ぬしかないじゃない!――。
「…………」
……嫌なことを思い出した。
…………。
「ほむらちゃん?」
「!!」
心配そうに私を見つめる丈槍由紀。
「どうしたの? 顔色良くないよ」
「っ――な、なんでもないわ。気にしないで」
「えー、気にするよ! あのクールビューティー気取ってるほむらちゃんがそんな顔するなんて、普通じゃないよ?」
「気取ってる言わないで……あれよ、あの白いアレの事を思い出したのよ。あれを思い出す度に気分が悪くなる――」
「白いアレって僕の事かい?」
「そうよ死ね」
「きゅっぷい!?」
また唐突に湧いて出た白いアレを爪先で蹴り上げ、そのまま踵下ろしで頭を粉砕した。
「っ……」
「気にしないで丈槍由紀。貴女は蚊や蝿を殺す時に可哀想と思うかしら? それと同じ事よ」
「そう言われても……」
丈槍由紀の表情が曇る。その顔を見て、インキュベーターの姿は本当に厄介だと改めて認識した。靴の踵についた血をハンカチで拭う。銃を使えば良かったが、流石に誰かが目の前に居る時に発砲するのは危険だ。
「……よし、んじゃ行くか」
恵飛須沢胡桃が言う。
「ええ、そうね」
若狭悠里も言う。
「さ、由紀ちゃ
「よし、行こう!」
「…………」
丈槍由紀も言う。佐倉慈が何か言いかけていたようだが、まあどうでもいいことだろう。
「……そうね、それじゃあ行き――」
「「「「「「グオオォォォォォォ」」」」」」
「「「「「!!!」」」」」
どうした? 中にいるゾンビが突然叫び声を発した。気付かれたのか? だが奴等はこっちを向いていない。一体――?
「……失礼するわ」
「! ほむ――」
私は砂時計の動きを止めた。
―――――――TIME STOP―――――――
周囲の時間が止まる。丈槍由紀も、恵飛須沢胡桃も、若狭悠里も、佐倉慈も動かない。
「…………」
ショッピングモールの中に入った。
モールの中にはガラスが散乱してあり、裸足で歩こうものなら血塗れになる事は請け合いだろう。血もべっとりと付着していて、出来ることならこの上を歩きたくない。
まあ、幾多もの屍の山の上を歩いてきた私にとっては、別にこんなもの心を揺さぶられるものではないが。
「…………」
時間が止まっているので、当然ゾンビも止まっている。私はゾンビを踏み付けると、その目線を辿り跳んだ。
「…………!」
そして、再びゾンビの上に降り立つ――私の目の前に居るのは、驚く事に生身の人間であった。生き残りだ。
まさか本当に居るとは――来てみるものだ――高校生くらいの少女で、髪型をハーフアップにしていた。おでこを出している。
「…………」
そしてその足元を見る。不愉快な白いゴミ。周りのゾンビが巻き添えになるような形で銃弾を撃ち込んでおいた。
「…………」
私は再び跳び、少女の背後に降り立つ。何もしないのは何かアレなので、格好良さげなポーズをとっておいた。
「……時は動き出す」
―――――――TIME START―――――――
「「「「「「グオォォオォオォォ!?」」」」」」
「きゅっぷい!?」
「っ――っ!? え!? はい!?」
ゾンビの頭が次々に爆ぜ、雪崩のように倒れていく。ついでに白いアレも爆ぜた。
少女は驚いたように目を見張った――と思う。こっちからでは表情が見えない。だからこっち向け。床を足で突いた。
「ひっ、何が――っ!!?」
音に反応したのかこっちを見た。やはり驚いたような顔をしている。
「あ、ああ、あなた誰ですか!? い、いつからそこにいたの!?!?」
「ついさっきよ。さあ、私の手を握りなさい。脱出するわよ」
「へ!?」
「頭が追い付いていないだろうけれど頑張ってついて来て。握りなさい」
「!?!? あっはい」
「時よ止まれ」
私は砂時計の動きを止めた。
―――――――TIME STOP―――――――
「へ? へ!? はい!!?」
「落ち着いて。絶対に手を離さないで」
周囲の時間が止まる。時間停止空間の初体験に困惑している様子の少女。
「あ、あの――こ――これは――」
「説明は後でしてくれるでしょう。握ったままでいなさい」
「ま、待って――あ、足が――」
「竦んで動けないと? ……私そんなに腕力ないわよ」
「わ、私そんなに重くないから、その」
「重くないとか言ってる奴に限って重かったりするのよ。人って言うのは自分の事を自分で見るのがとても苦手なのだから。というか貴女、高校生でしょ?」
「っ……う、は、はい」
やはり。もうこれは同年代に会えないと思った方が良い可能性が高い。あの丈槍由紀が高校生だったのだ、もう誰でも高校生だろう。
「私中学、貴女高校。分かる? 年下に縋ろうとするなんて、幻滅するわね」
「ちゅ、ちゅうがくせい!!?」
「そうよ、中学生。さあ、これ聞いてもまだ縋ろうとするかしら? 立って歩いて」
「っ〜〜〜〜!!」
私は少女の手を握りつつ、ショッピングモールを出た。道中また白い虫がさっきのゴミを貪ろうと湧いていたので駆除しておいた。
「な、なんであの子撃っちゃうの!!?」
「ここから説明しなきゃダメなのね……まあいいわ、はい、時間は動き出す」
私は砂時計を動かした。
―――――――TIME START―――――――
「きゅっぷい!?」
後ろから駆除完了の音が鳴った。耳が幸せ。
「うわっ、ほむら!? 急に現れるな――って、誰だその人!?」
「生存者よ。まさか居るとは思わなかったけど」
「っ!! 待って、その子、膝に傷を負ってるわ!!」
「「「「!!!」」」」
見ると、確かに擦り傷のようなものがあった。気づかなかった。
「じゃあ、やっちゃいましょう」
私は銃を構えた。
「ひぃっ!?」
「ま、待って待ってほむらちゃん! 傷があるってだけで、こ、殺しちゃうのは幾ら何でも酷いよ!!」
丈槍由紀が私と少女の間に立ち塞がった。
「べ、別に噛まれたりとかしてないよね!」
「へ!? は、はい、この傷は転んだ時に付いた傷で――」
「ほ、ほらね!? だから早とちりはよくないよほむらちゃん――」
「ゾンビの感染経路はまだ謎なのよ。空気感染とかだったらその傷口からウィルスか何かが入ったかもしれないわ。出来るだけ危険は排除した方がいい」
「じゃあなんで助けたの!!?」
「傷付いてないと思ったから」
「〜〜〜〜っ!!」
「……もういいかしら? どいて」
「っ…………!」
「…………」
聞き分けのない……もういっそのこと彼女も纏めて撃ってしまおうか。場を和ませるムードメーカーは確かに必要だが、絶対不可欠という訳でもあるまい。それにこんな精神では、どうせいずれは――。
「……暁美さん」
「…………」
久し振りに聞いたような声が聞こえた。佐倉慈だ。
「確かに暁美さんの言う事も一理あります。危険は出来るだけ排除した方がいい――全くその通りです。しかし、だからと言ってまだ生きている人を撃つのは、元教師としては看過できません」
「貴女は私の先生ではないわ」
「ええ、そうです。ですが、その子を撃つのはゾンビ化の兆候があってからで良い筈。それさえも不確定な状況で殺すのは、殺人以外の何者でもありません」
「…………」
「まずは彼女を手当てして、それから経過を見ましょう。……だ、だから、殺しちゃうのはちょっと……」
「…………」
教師モードは最後まで保たなかったか。惜しい。後少しだったのに。
…………。
「……そうね。私も性急すぎたかも――じゃあ、それで良いわ」
「暁美さん……!」
「ただし、少しでもゾンビ化しそうになったら、問答無用で殺す。……それは良いわね?」
「……ええ」
「……ですって。……えっと?」
「あっ、し、祠堂圭――祠堂圭って言います」
「祠堂圭、この決定に異論は無いわね? あったとしても認めないけど」
「いえ、ありませんっ」
「ん、オーケー」
「あ、ありがとうほむらちゃん……」
「…………」
……前から思っているのだけれど、彼女……何故かは分からないけれど、まどかを連想してしまう。何故だろう? 同じ桃色の髪だから? それとも呼び方がほむらちゃんだから? 両方の所為か?
……でも、まどかの方が身長高そうよね。確か152cmだった筈だから……いや同じくらいか。っていうかどうでもいいわ。
「……あっ……」
祠堂圭が何か思い出したような声を出した。
「何? ゾンビ化しそう? 死ぬ?」
「ち、違うよ!」
「あら? 敬語はどうしたの? 助けたのは私よ」
「お前が言うかそれ」
「どうしたの? 圭さん」
「もう一人……もう一人、ショッピングモールの中で生き残ってる子が居るんです!!」
祠堂圭は、切羽詰まったように叫んだ。
【006】直樹美紀救出作戦
生き残りの少女の名は、直樹美紀という名前らしかった。例によって高校生。まあ最初から期待していなかったが、何故こうも高校生ばかりなのか。しかも少女ばかり。いや男が出てくるよりはマシなのだけれど、不思議だなあ、と。
――しかしこれは願ってもいない展開だ。生き残りが一人いれば良いところだと思っていたが、まさか二人とは! ショッピングモール恐るべし、テンプレート恐るべしといったところか。
「じゃ、じゃあ助けないと!」
丈槍由紀が言う。
……彼女も彼女で良く分からない。現実をちゃんと認識しているのかしていないのかがまるで分からない。あれか? 危機が迫るとスイッチが入って覚醒するのだろうか?
「ああ。勿論だ――だが、最上階だろ? キツいな……」
直樹美紀が待機しているのは最上階にある一室らしい。つい先程まで、祠堂圭も一緒に生活していたとか。それが一人で居たということは、向こうも生き残りを探していたのか、それとも仲違いしたか。
「そこまで行くっていうのは中々危険な賭けね……ああ、あと物資も補給しないとダメなんだった……」
そういえばそうだった。完全に忘れていた。まあ、物資なんてやろうと思えば文字通り一瞬(彼女達視点)で盗ってくることが出来るのだが。
「…………」
さて、どうするか――止まった時間の中で動けば確実に救出出来るとはいえ、武器の消費は出来るだけ抑えたい――かと言って見捨てるのも目覚めが悪い。
となると――協力してもらうしかない、と。
……ふん、滑稽ね。もう誰にも頼らないと決めた筈なのに――まあ、これは例外ということにしておきましょう。ええ、そうしましょう。
「……恵飛須沢胡桃」
「ん? 何だよ」
「受け取りなさい」
「へ? ……何だこれ」
「丈槍由紀、若狭悠里、佐倉慈、あと祠堂圭、貴女にも」
私が五人に渡したのは、魔法少女コスチュームの袖を千切ったもの。一見するとただの布だが、それなりに使える。
「貴女達に渡したのは袖の切れ端――それを持っていれば、止まった時間の中でも動くことが出来るわ」
「「「「「!!!」」」」」
「これで貴女達は私と同じように止まった時の中に入門出来るわけ」
「す、凄いね」
「ええ、凄いでしょう? 非魔法少女としては恐らく初めての快挙よ。喜びなさい。それはそれとして兎も角、これから貴女達には私の指示に従ってもらうわ。拒否権はないわよ。拒否しようものならインキュベーターが必要以上に撃たれるわ」
「訳が分からないよ」
「あら、居たの? じゃあ死ね」
「きゅっぷい!?」
いつの間にか湧いていたインキュベーターを爪先で蹴り上げて踵落とし。今度はギリギリで踵を離したのでインキュベーターの頭が爆散しても踵が汚れることはなかった。よし、今度からこれでいこう。
「丈槍由紀と若狭悠里は、物資収集に向かいなさい。佐倉慈は祠堂圭を監視して。ゾンビ化しそうになったら絶対に殺すのよ。恵飛須沢胡桃と私は、直樹美紀を救出しに行く。……以上。質問と異論はある? 受け付けないけれど一応聞くわ」
「「「「「…………」」」」」
ノーコメント。沈黙は肯定と受け取るわ。
「じゃあまあ、モタモタしてても意味がないし――始めましょうか」
私は砂時計の動きを止めた。
―――――――TIME STOP―――――――
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ショッピングモールの中はどこも等しく荒廃していた。二階や三階にも既にゾンビ共の魔の手は伸びており、どこもかしこもゾンビだらけ。モールとしては大繁盛しているこの現状、さぞ嬉しいことだろう。
「……にしても、凄いな」
「何が?」
「……あれだけ手こずってたゾンビ達を一体も倒すこともなく、進んでる。……お前凄いよ」
「……それは違うわね。私が凄いんじゃない、時間停止が凄いの。私自体は魔法少女の中では最弱と言っても良いのだから――それにこの時間停止だって何時までも使えるものではないわ。タイムリープして、そこから一ヶ月間しか、この能力は使えない」
「タイムリープ?」
「おっと失言」
取り敢えず口元に手をやった。うっかりっぽさが出るポーズ。……いや、本当にうっかりなのだが。
「タイムリープって何だ? っていうか一ヶ月間って」
「忘れなさい」
「いや忘れろって言われても……」
「今すぐ忘れなさい。忘れろ、忘れろ、忘れろビーム」
「確かに今は絶対絶望的な状況だしピッタリと言えばピッタリだけれども、某風紀委員みたいなことを言うのを止めろ!」
「ツッコミが長い。四文字で」
「出来るか!!」
「忘れないと時間停止解くわよ。ふふふ、今この状況で時間が動き出すとどうなるかしらね? 貴女はともかく、丈槍由紀や若狭悠里にも危険が及ぶわね、ふふふ」
「悪魔みたいな奴だなお前……」
悪魔ね……ふふふ、幾度となく時間遡行を繰り返し、神にさえ背く背徳の魔法を持つ私……そんな真似が出来る私は、もう悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしらね。
ってそんな訳あるかい。
悪魔って……何? 中二病? 悪魔って……巴マミ辺りが好きそうだけれど、生憎私は中二病患者じゃない。まさか悪魔を自称するなんて、そんな痛々しいこと出来ないわ。
「で? 結局どういう意味なんだ、さっきのは」
「しつこいわねまだ聞くの?」
「最上階に着くまではまだ暫くかかるからな」
「ゾンビに囲まれた状況でよく呑気で居られるわね。度胸試しで解除しちゃいましょうか」
「止めろ!!」
「冗談よ」
「で?」
「…………」
……しつこい……。
もう少し遠慮というものはないのかしらこいつ……失言してしまった私にも責任はあるけれど、しかしもう少しこう……。
「……高校生の癖に首突っ込むわね」
「え?」
「もう少し冷めてるイメージがあったのだけれど――達観してるというか、好奇心がないというか」
「そりゃお前のことだろう」
「あら本当」
盲点だった。確かに今の私ね。
「タイムリープ……タイムトラベルみたいなもんか? あ、もしかして、時間旅行してるとか!? 時間停止があるんだから、時間旅行だってあるだろ!」
「タイムトラベルではない」
あーもう面倒臭いなー……彼女に話すことで私に何か得でもあるのだろうか? まどかを救いやすくなるのだろうか?
……しかし……まあ……ここまで予想されてしまったのでは、否定するのもあれだし……別にメリットは無いけど、デメリットも無いし……。
…………。
…………。
「……まあいいか」
「はい?」
「恵飛須沢胡桃、貴女の認識は間違っているわ」
「え? 違ったのか?」
「タイムトラベルとタイムリープでは定義が違う。まず、タイムトラベルは過去の世界に自分が戻ることを言うわ。自分が過去の世界に戻るということは、それは即ち、『自分』が過去の世界に二人存在することになる」
「……はあ」
「自分が2人存在するというのは危険極まりないこと――常にタイムパラドックスの危険に晒される」
「……はあ」
「煮え切らない相槌ばかり打っていると、撃つわよ」
「短気すぎだろ!!」
続ける。
「一方、タイムリープというのは過去の自分に自分が『なる』ということ――過去の自分にタイムリープした自分が成り代わるということ。こちらは自分が一人しか存在しないということになり、危険性もぐっと減るわ」
「……はあ……え? じゃあ何か? お前、実は未来からやって来た奴ってこと!?」
「そうよ。絶望的な状況に光を与えるべくやって来たクマ型ロボット、モノクマ!」
「いつまでそのネタ引き摺ってんだよ! つーかドラえもんじゃねーのかよ! そいつだと逆に闇を与えられるわ馬鹿!!」
「馬でもないし鹿でもない、熊よ!」
「うるせえ!!」
「私は未来から過去を救済すべく、時間遡行を繰り返す魔法少女――運命に抗う魔法少女、それが私よ」
「運命に抗う魔法少女……」
……改めて聞くと恥ずかしいわね。何言ってたんだろうか私。その場のテンションというものはなんて恐ろしいの?
「過去を救済すべくって、どういう事だ? お前と初めて会った時、この現象を知らなかったみたいだが……あれは嘘だったのか?」
「いいえ、嘘ではないわ。私は嘘をついた事なんて生まれてこの方ない」
「素晴らしい記憶力をお持ちで」
「私のタイムリープには、どうもムラがあるらしくてね……移動する世界のムラというかなんというか」
「移動する世界のムラ?」
「……まあ、私もよく分からないのだけれど、たまにあるのよ。本来のルートから外れたルートに遡行してしまうことが」
実際、このルートは私の知っているものとは大幅に違う世界のようであった。あの白い有機ゴミは居るものの、三滝原とは似ても似つかない。というかそもそも地名が違うのだから当たり前なのだが。
「私が嘗て居た世界では、こんな現象が起きた事は無かった。魔法少女の真実――貴女たちにも伝えたでしょう? 魔法少女はその魂をソウルジェムという物質に変貌させられ、こうして動いている少女の部分は、最早ゾンビのようなものだと」
「……ああ」
「まあ、ゾンビと形容したのは私ではないのだけれどね。お調子者の人魚姫なんだけど」
「人魚姫?」
「こっちの話――それくらいよ。私がゾンビなんていう単語に関わったのは、それくらいだった」
「……つまりお前は、未来からどころか、違う世界からやって来た奴ってことか」
「そういうことになるわね」
異世界からの来訪者――というと、最近の物語でありがちなファンタジー的展開な訳だけれど。
「なんでそんな事を?」
「言ったでしょう。過去を救済するため――私を変えてくれた恩人を、この手で救うため。あの子に未曾有の救済をさせないために、私は何度でも繰り返すのよ」
「恩人……そいつは、この世界には居るのか?」
「残念ながら居ないようね。まあ、三滝腹じゃないのだから、当然といえば当然だけれど――正直、無駄足だったわ」
「無駄足……じゃあ、もう一回タイムリープすれば良かったんじゃねーか」
「それが出来れば苦労しないわ」
そう、苦労しない。
明らかに失敗してしまったようなルートでも、すぐに戻る事が出来れば――難易度は遥かに優しくなるだろう。時間遡行する回数は増えるものの、それでも、やりやすいことには変わりない。
巴マミが戦死してしまえば、戻る。
美樹さやかが魔女化すれば、戻る。
佐倉杏子が自爆したならば、戻る。
巴マミが自暴自棄になれば、戻る。
佐倉杏子が撃たれたならば、戻る。
まどかが殺されたのならば、戻る。
まどかが契約したのならば、戻る。
「一ヶ月」
「あ?」
「一ヶ月がキーなのよ――約一ヶ月。その一ヶ月間こそ、私が契約した範囲であり、時間停止が使える限界の時間――それ以降は、時間停止が使えない」
「ああ、言ってたな」
「時間遡行は、それとは逆の事情。一度タイムリープしてしまえば、そこから約一ヶ月間――時間停止が使えなくなるその時まで、時間遡行を使うことは出来ない」
「マジか……」
「まどか☆マジカ?」
「お前はいちいちボケを挟まないと会話出来ねえのか?」
「私が貴女たちのレベルに合わせてやっているのよ。感謝しなさい」
「お前年上に対する敬意とか本当無いよな」
「私は体感時間では軽く貴女たちの年齢なんて超えてるのよ多分。寧ろ貴女たちの方が敬うべきではなくて?」
「お前の体感時間なんて知るか!!」
まあ、私自身もよく覚えてないし、別に敬意を払って欲しいとは一片たりとも思ってないが。
「はい、以上よ。私の説明終わり。まだ何か聞きたいことでもある? もうすぐ最上階だけれど」
「……いや、ねーよ。ありがとう」
「そこはありがとうじゃないわよね」
「何でだよ!?」
「貴女が私に質問した所為で物語が一向に進まず、だらだらとした説明を見せつけられた読者に対して一言謝りなさい」
「だからメタ的なこと言うなって言ってんだろうが! つーかそもそも失言したお前が原因なんだからな!」
「何? ここに来て責任転嫁? 怖いわー、高校生怖いわー」
「うるせえ!!」
「こんな怖い人にはゾンビの餌になってもらいましょう」
「ごめん、だな」
……さて、まあそんな訳で到着。リバーシティ・トロン・ショッピングモール最上階。ここから、直樹美紀とやらが潜伏している部屋を探し出す。
「じゃあ、恵飛須沢胡桃。よろしく」
「え!?」
「何のために貴女を連れてきたと思っているの? 貴女のその強化ショベルは何のためにあるの? 飾りなの?」
「ど、どうしろと」
「ショッピングモールの最上階となれば、鍵の掛かっている部屋があってもおかしくはない。そして直樹美紀が隠れている部屋にも、バリケードみたいなのが設置されてるっていうじゃない? そこで貴女の出番よ恵飛須沢胡桃」
「……扉を一枚ずつ壊せと」
「理解が遅かったわね」
「力仕事かよ……まあ良いけどさ」
恵飛須沢胡桃はぼやきながらも、扉の破壊作業を開始した。ショベルは私の魔法によって強化されており、一振りで扉を壊すことが出来た。まあ、恵飛須沢胡桃自身のパワーも相まっているのだろうが、中々の破壊力である。
「ここには居ないな」
「じゃあ次ね」
恵飛須沢胡桃は再びショベルを振るい、扉を壊した。
「ここにも居ないな」
「じゃあ次ね」
恵飛須沢胡桃は再びショベルを振るい、扉を壊した。
「ここにも居ないな」
「じゃあ次ね」
恵飛須沢胡桃は再びショベルを振るい、扉を壊した。
「ここにも居ないな」
「じゃあ次ね」
恵飛須沢胡桃は再びショベルを振るい、扉を壊した。
「ここにも居ないな」
「じゃあ次ね」
恵飛須沢胡桃は再びショベルを振るい、扉を壊した。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか手応えが違うような……」
「本当? じゃあ当たりなんじゃない?」
良かったわ。これでようやく話が進む。ここまで散々喋ったけれど、実際のところ全く話が進んでいなかったのだから。
部屋の中を覗く。すると確かにそこには、扉の他にいくつかの段ボール箱が散乱していた。中身も出ている。そして。
「ん」
部屋の中に敷いてあった布団の上でうな垂れて三角座りをしている少女が居た。パールホワイトのショートヘアーで、その瞳は青い。彼女が直樹美紀か?
「……"みき"ねえ」
「どうした」
「別に。知り合いの恋愛馬鹿を思い出しただけ――多分、この子よね」
「ああ、だろうな。聞いていた特徴とも一致する」
「じゃあ運びましょう。貴女運んで」
「えぇ……」
「何? 不満? 言っておくけど、私の身体能力なんて普通の女子中学生レベルなのよ? ただちょっと時間停止が使えるだけの、その辺にいる女子中学生なのよ? そこら辺ちゃんと分かってるのかしら?」
「偉そうに……」
「実際偉いもの」
「分かったよ分かったよ。ま、どうせこうなるだろうなとは思ってたけど……よいしょっ、と!」
恵飛須沢胡桃は、うな垂れている直樹美紀を抱き抱えた。俗に言うお姫様抱っこ。
「……凄いわね」
「あ? 何が」
「いえ、ショベルを抱えながら人間も抱き抱えるなんて……感心するわ。流石高校生」
「あれ、もしかして褒めてる?」
「ええ、褒めてるわ。凄いじゃない、ゴリラも顔負けよ」
「ゴリラと同列に語るな! これでも乙女なんだぞ!!」
「ちっ、これだからJKは……無駄にプライド高いんだから」
「褒めたり貶めたり忙しいなおい!」
【007】えんそくの終わり
「恵飛須沢胡桃、只今帰還しました!」
「帰ってきたわよ」
「くるみちゃん、ほむらちゃん、お帰りー!」
「無事で良かったわ」
直樹美紀を無事救出し、ショッピングモールからの脱出に成功した私達は、学園生活部の面々+αと再会した。
「どれくらい買い物したんだ?」
「えっとねー、お菓子でしょ、防犯ブザーでしょ、それから……」
「役に立ちそうなものが買えたわ。それも沢山! ほむらさんのお陰だわ」
「でしょうそうでしょう、もっと敬いなさい」
「ああ、流石だね暁美ほむら! 君の秘めたる魔力は眼を見張るものがある!」
「死ね」
「きゅっぷい!?」
忘れた頃に現れた汚い淫獣をブーツの爪先で蹴り上げ、踵落とし。地面に着く直前で足を停止させたため、爆散した血はかからなかった。
「駄目ね、調子に乗ると不幸が訪れるわ」
「へへっ、ざまあみろ」
「時間停止解除したらゾンビの群れにぶち込んでやるわ」
「やめろよ!!」
喚く恵飛須沢胡桃は置いておいて、車の中を確認する。
「祠堂圭の様子はどう?」
「暁美さん! ええ、大丈夫。あれからゾンビ化しそうな兆候は無いわ。傷も、本当に転んだだけみたい。今は疲れて眠っているわ」
「あらそう。良かったわ」
「直樹さんは?」
「大丈夫、サルベージしたわ。恵飛須沢胡桃! 直樹美紀を持ってきて」
「人を物みたいに……」
「貴女は奴隷みたいね」
「やかましい!!」
恵飛須沢胡桃は直樹美紀を抱き抱え、車の中に運んだ。圭の隣に設置する。
「それじゃあ、時間停止を解除するわ」
私は砂時計を傾けた。
―――――――TIME START―――――――
「っ!!?!?」
「きゃっ!?」
直樹美紀ががばっと起き上がった。その所為で顔を覗き込んでいた佐倉慈に激突、佐倉慈は呻いた。
「痛たた……」
「め、めぐねえ大丈夫!?」
「大丈夫……めぐねえじゃなくて佐倉先生……」
こんな時でも訂正するのね。というかもうめぐねえに改名すればいいのに。先生って言われても違和感しかないのだし。
「こ、ここは!? え!? な、い、い、な」
「お黙り」
「ひっ!!?!?」
直樹美紀の顔に銃を向けた。ここにきて騒がれ、ゾンビがわらわら寄って来てまた時間停止を使うというのも面倒極まりない。困惑はよく分かるが、静かにしてもらおう。
「いいかしら。貴女の軽率な行動が私達の危険を招く……驚いているかもしれないけれど、今はその疑問を胸の奥の奥に仕舞いなさい。後で答えてあげる」
「――は――はい」
「いい子ね」
「お前はいちいち物騒なんだよ……」
「悪い子ね」
「お前がな!」
「若狭悠里。もう物資は十分に補給出来た?」
「ええ。万全よ」
「ふむ」
では、もうここに長居は無用か……まだ生き残りがもしかしたら居るかもしれないけれど、その方は運が悪かったということで、生存を諦めてもらうしかないわね。無限の時間は有限なのだから。
……愛は無限に有限とかほざいていたサイコレズとか、そういえば居たなあ。ああ嫌だ嫌だ、嫌な奴等のことを思い出してしまった。
「恵飛須沢胡桃、ちょっと蹴らせて」
「なんでだよ!?」
「気晴らしに」
「暴力反対!!」
「大丈夫、痛いのは一瞬よ」
「それ私意識失ってないか!?」
「冗談はまあさておき……じゃあ、もういいわね? 用はもう何も無いわね? 丈槍由紀。別にいい?」
「えー……うーん……」
「了解、別に良いわね」
「まだ何も言ってないよ!? いや別にいいけどさ」
オーケー。若狭悠里、丈槍由紀の許可は取った。恵飛須沢胡桃はどうせオーケーとして、佐倉慈。
「貴女はもう何もない? 何もないなら、車の運転をしてほしいのだけれど」
「ええ、大丈夫よ。分かった――じゃあ、みんな乗って! 帰りましょう!!」
佐倉慈は言い放った。大声で。
……大声で。
「「「「「「「グオオオォォォオ」」」」」」」
「「「「「っ!!」」」」」
モールの中から、大量のゾンビがわらわらとこちらへ向かってきた。佐倉慈の大声に反応してしまったのだろう。
「佐倉慈、貴女責任取って餌になってきなさい」
「ご、ごめんなさい! みんなごめんなさい!」
「誤りを謝って済むと思っているの? 謝って済むなら警察なんていらないのよ」
「ええいほむら! 面倒臭い絡みは後にしろ! 今は逃走が先だ!!」
「面倒臭い!? そんな事を思っていたの!? 貴女がそんな奴とは思わなかったわ!」
「それが面倒臭いって言ってんだよ!! いいから早く乗れ!!」
「ちっ」
「舌打ちすんな!!」
私は車の上に乗った。運転席には佐倉慈、助手席には若狭悠里、後ろの席には丈槍由紀、恵飛須沢胡桃、直樹美紀、祠堂圭――要は、車の中は定員オーバーなのだ。となると、私の座る場所がない。立てるだけの広さも無いし、恵飛須沢胡桃を捨てていくという案も浮かんだが、すぐに消えた。ではどうするか。車の上に乗ればいいのだ。至極簡単な話である
佐倉慈の運転する車は、私が車の上に乗ると、すぐに走り出した。わらわらと寄って来るゾンビを突き離し、のこのことやって来たインキュベーターを撃ち殺しながら、私達は学校へと帰還した。
こうして、学園生活部の『えんそく』は、幕を閉じた。
こういうノリです!!(大事な事なので何回でも)
それはさておきお待たせしました、中篇です。プロローグ後篇は、恐らく11月中に投稿することになるでしょう。以上です。