ハルケギニア人形劇   作:べっちゃん

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グレーティアの日常の様子です。


ハルケギニアへようこそ

 

「グレーティア、次はコルベール先生で移動授業だよ。早くいこうではないか」

 

本から目線を少し上げれば、グレーティアの友人であるギーシュが目の前にいた。

陽を反射するような金髪に常にバラを所持し、同学年の女子からは好感度は低いが

級生にはまだ人気がある女たらし。

 

「君も本に夢中になるのは悪いとはいわないよ。けど、友人として毎日のように

 本ばかり読んでいては、せっかくの学園生活が勿体ないとはおもわないのかい?」

「それこそ、ギーシュ。せっかくの学園生活だからこそ、文献を読み知識を得ることが

 学生としての本分だとオレは思うぞ」

 

グレーティア・ネルンスト・オルレアン。

茶髪に眼鏡をかけ、身長はギーシュよりも高く成績も良く学年成績では次点。

運動・魔法能力もそれに負けず劣らずと教師からは期待をされている。

ある一点を除けば、誰もが彼を理想像と答えるだろう。

 

「そんなことよりも、聞いてくれよ。グレーティア。

 僕はついに今日一大決心をしたんだ!」

「いちいち、大声を出すなよ。今週何回目だよ」

「面倒そうな声をしないでくれよ。僕はモンモラシーに告白をすると決めたのだよ!」

 

コルベール先生の授業の為、移動しながらギーシュは活き活きとした声で

グレーティアに話しかける。

またかよ。

と、グレーティアは溜息をつく。

今週に入って一大決心の元、何人もの女性に振られたことか。

いつもの病気か、と無視をすることに決めた。

 

「って聞いているのか!グレーティア!僕がこんなにも悩んでいるというのに!」

「今月毎週のように、同じようなことを永遠に聞かされているこっちの身にもなって

 くれよ」

「そ、それは申し訳ない」

「おいおい、冗談が通じないのかよ……もしかして、お前本気?」

「そ、そういっているじゃないか!」

「いや、でもお前。臆病者じゃ」

「いきなりひどくないかい?」

「だって、それギーシュ。お前の本命だろ」

 

えっ?とお前が何故知っている、という顔をしている。

 

「当たり前だろ。あれだけ、夢中に視線を送っていれば誰でもわかるだろ」

「ほんとうに?そんなにわかりやすかった?」

 

などと、これからどうすればいいんだ、と叫びながら気が付けば目的の教室についた。

せいぜい頑張れよ、とギーシュの肩に手を置きグレーティアは自分の席に向かった。

今日も平和な一日になりそうだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の授業が全て終わり、疲れたなといいながらグレーティアは伸びをする。

女友達同士で何をするか、男友達同士で何をするか、それぞれこれからの放課後についての話し合いをしていた。

その中に一人だけ浮いている存在がいる。

ピンク色の髪に強気な瞳。

ルイズがそこにいた。

 

「よっ、ルイズ。どうだ、この後暇だったらお茶でも飲みながら勉強教えてくれない

 か」

 

グレーティアの言葉に、周りはざわつき始める。

また、あのゼロに話しかけているかよ。

本当にグレーティア様に話しかけてもらえるだけでもありがたいと思いなさいよ。

などと、好き放題な言葉が嫌でも耳に入ってくる。

 

「なによ、グレーティア。また私を笑い者にしにきたの?」

 

ジト目で睨むルイズににグレーティアは笑いながら答える。

 

「なんだよ、ルイズ。今日はいつにも増して機嫌が悪いな」

「毎日のように放課後、声をかけられて笑顔でいる女がいるのなら観てみたいわ」

 

その言葉に女生徒からは非難の言葉が影を潜める。

 

「なあに、王子様扱いされるのも気が付かれるのでね。こうやって息抜きをしないと

 身がもたん」

「それは私の事を馬鹿にしているのね! どういう意味よ!」

「おいおい本当に真にうけるなよ。そんなに顔を歪めていると皺ができるぞ」

「あなたのせいでしょう!」

「な、なんだと……このオレがこうやってボッチで寂しい可愛そうなルイズに……」

「そ、それが余計なことだと―――っ?!」

「あっ、皺だ」

 

至極真面目そうな顔をして、ルイズのおでこをぺしぺしと叩く。

 

「こ、このっ!?」

「甘いわ! ルイズ! 今までこのオレ様が何の学習もなしに懐に近づくと

 思ったか!」

「乙女の柔肌に簡単に触って、恥ずかしいと思わないの?!」

「んっ!?乙女だと?どこにそのような、可憐な美少女がいる。是非に紹介してくれ」

「あんたいい加減にしなさいっ!」

「だから、その行動は読めているとっ?!」

 

ぐっ、と膝をつくグレーティア。

ルイズは、ぜぇぜぇと息を切らしながら見事にグレーティアの膝を仕留めていた。

 

「だが、甘いな。ルイズ。私はその蹴りにさえ計算をしていた」

「な、なにがいいたいのよ」

「まだわからんのか、その短いスカートで勢いよく蹴りを出せば」

「まさか、あんたっ――」

「君の髪のように恥じらうような薄いピンっ―――」

 

ふわり、とスカートが舞い隠すようにして下からルイズの太ももがみえる。

オレの勝ちだ、と確信をする束の間にルイズの膝がグレーティアの顎を突き上げる。

グレーティアは笑顔になりながら、その場に気絶をした。

 

 

 

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

目を覚ませば、目の前にはタバサがいた。

蒼い髪に蒼い瞳。

同じガリア王国の王族である、義妹が見下すようにして見下ろしていた。

 

「なにをみている、そんな暇があるなら起こしたらどうだ」

「………」

「ふん、可愛くないやつだ」

 

いてて、と声に出しながらグレーティアは近くにあった椅子に腰を掛けた。

窓を見れば、日は傾きオレンジ色に教室を染めている。

教室の中には、グレーティアとタバサの二人のみ。

傍から見れば幻想的な雰囲気に見れるかもしれないが、両者にあるのは

そのような甘い空気ではなかった。

むしろ、肌を刺すような剣呑な空間が出来上がっていた。

 

「それで、何の用だ。なにもこのオレの顔を観たくて、今までいたわけではないだろ」

「任務が終了した」

 

静かに膝をつき、頭を上げずにタバサはグレーティアに報告をする。

その有様は王と臣下のようにして見える。

 

「ほう。また、イザベラのやつが下らない任務をなすりつけたのだろ」

 

ほら、と報告書を手にし流し目に確認をする。

内容は簡単に言えば亜人に対する討伐報告が記載されていた。

その他にも薬剤について、記載されていたがグレーティアにとってはどうでもいいことなので気に留めていない。

 

「長旅疲れたであろう」

「別に」

 

気を使うようにして掛けたグレーティアの言葉にそっけなく返すタバサ。

 

「無理をするでない。内容は、きちんと読んではいないが少なくとも

 トライアングルクラス級だ」

「任務だから」

 

この世界には、ドット・ライン・トライアングル・スクウェアと四段階に分かれ、

タバサはその三段階に位置する。

貴族の学生の中で大勢は、ドット・ラインでありトライアングルクラス級は数えら

れる程度しかいない。

さらに、現大人になったとしてもラインクラスは大勢いる。

このことから、タバサは魔法の事に対して才があることがわかる。

 

「そう生真面目になるな。そのようにしては、いずれ壊れてしまうぞ」

「―――っ」

 

グレーティアの言葉に僅かにではあるが苦虫を潰したかのような顔をするタバサ。

お前に何がわかる、というように。

 

「そう邪険にするな。これでもオレは心配しているのだぞ」

「別にいい」

「全く本当に可愛いげがないやつだ。昔はあんなに―――」

「用がないなら、いく」

「……ったく。なら、何か褒賞をとらせよう」

「別にいらない」

「そういうな」

「だから、別にいらない」

 

いらない、の一点張り。

その言葉にさすがに諦めがついたのかとため息をつきながら俯くグレーティア。

そして、先ほどまでとはうって変わって、金色の瞳から蒼の瞳に切り替わる。

タバサの瞳に映るのは、自分と同じく王家がもつ蒼の眼。

ただ、グレーティアの眼はどこまでも深く、そして恐ろしかった。

 

「勘違いをするなよ。オレ(王)を潰すつもりか? 褒美一つ与えることができない

 狭量な王だと」

「―――っ」

 

咄嗟に頭を垂れるタバサ。

心臓を掴まれ方のようにして、臓が激しく痛む。

呼吸をするのも、ままならない。

 

「臣下の働きには、きちんと褒美を出すものだ。オレからの褒美がそんなに嫌か?」

「い、いえ、そういうわけでは」

「そうであろう。オレがオレ達がどんなに憎かろうと、言葉は素直に受け取るものだぞ」

「………」

「それがまずは、長生きするコツだ」

 

 

目の前が霞んでいく。

いっそのこと、瞼を閉じてしまえば楽になれるんじゃないのか。

だがあきらめてはならない。

この前にいる男は。

そして、その背景にいる男は。

こんなことで、弱音を吐いてはならない。

 

「きょ、虚無の曜日に―――」

「ん?」

「虚無の曜日には、休みをいただきたく思います」

「ほう、そんなものでよいのか。で、何をする予定なのだ」

「積み重なっている本を読もうかと」

「そういえば、本が好きだったな。どれ、その日だけではなく三日間はなにも急務を入れないようにしておいてやる」

「あ、ありがとうざいます」

「イザベラにもオレから言っておく。ゆっくりと休んでおけ」

「はい」

 

ふと、心が軽く感じる。

視線を上げれば、元の金色に戻っていた。

 

「そういえば、明日は使い魔召喚の儀であったな」

「はい」

「楽しみであろう、タバサ」

「………強ければ、別に」

「ははは、使い魔はメイジの一生だ。あまり、乱暴に扱うではないぞ」

 

がたっ、と席を立つグレーティア。

習うかのようにしてたつ、タバサ。

気が付けば、夕日は沈み空には蒼と紅の月が浮かんでいた。

 

「本当に楽しみだ」

 

後をついていく、タバサ。

土のようにして深かったグレーティアの髪がなぜか、月のように紅く染まって見えた。




続かない!
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