あとはわからない。
コンコン、と控えめに軽くドアを二度叩く音が聞こえる。
「―――」
部屋の主からは何も答えもなくただ無情に時が過ぎた。
コンコン、ともう一度先ほどとは違く部屋全体にまで響く。
「―――ん?」
もぞもぞ、と布団から顔をだせばカーテンからは陽の光が差し込んでいる。
まぎれもなく朝だ。
部屋の主である、グレーティアの朝は弱く二度寝をすることに決心する。
昨日夜遅くまでタバサと話し込んでいたのだ。
そして、今日は進級試験である召喚の儀だが、普段よりも時間が遅く開始
されるため何の問題はないと、確認をする。
そうして、布団を被ろうとし―――
「グレーティア様。朝でございます。起きてください」
無視をし続けようと決心をしたが、その後もずっと声をかけ続けている。
どうも今回の担当のメイドは存分に我慢強い者らしい。
いつのまにか、寝れる状態ではなくなっていた。
「おはようございます。グレーティア様」
「ああ、おはよう。清々しい朝だな」
目の前には視界いっぱいに広がる胸にグレーティアの視線は釘付けだった。
「どうなされたのですか?」
「いや、なに。国の発展性について危惧していたところだよ」
「は、はあ」
脳に写し出されるのは二人の義妹。
どちらもいい歳なのだが、未だ発展性は観られない。
どうしたらいいものか、と真剣に悩む。
「そういえば、お前。初めて見る顔だな」
「も、申し訳ありません。本日からお世話することになります。シエスタといいます」
「ほう。王宮仕えには経験はあるのか?」
「い、いえ。じ、実ははじめてでして―――」
最後のほうは小さくなり声が聞き取りにくく涙目になっている。
それもそうだろう。
初めてのお仕事が、相手国さんの王族だ。
それに、一緒に付き添いで来てくれる先輩もいなく右も左もわからない状態でどうやって
やっていくかわからない。
どうして、自分が選ばれたのかが考えても考えても答えは出ない。
「意地悪な質問だったな。なに気にすることはない。オレから学園側に頼んでおいたのだ」
「わ、わたしをですか?」
「お前個人をというのでは間違いであるがな。
オレのところには、できるだけ新人を寄越すように伝えただけだ」
その言葉にシエスタはさらにわからなくなった。
なぜそのような人間を手元に置くのか。
切れるナイフと切れないナイフ、どちらか欲しいかと言われたら大勢の人が切れるナイフを
選ぶだろう。それを選択しないのは、よっぽどのマニアかおかしな人だけだ。
生活をしていくうえで切れないナイフなんて必要ないのだから。
「なにを呆けている。よもや己の失態をさらしておきながら、気づいていないのか」
「えっ?」
「まさか、初対面にて。ファーストネームを呼ばれるとは、驚くばかりだ。不敬ではないか」
その言葉を理解する前に謝罪の意を示すために頭を下げる。
シエスタの頭の中ではぐるぐると言葉が廻る。
不敬。
この世では、簡単に魔法を扱える者と魔法を扱えない者がいる。
前者がグレーティアであり後者がシエスタ。
大半が魔法を扱える者が貴族であり扱えない者が平民だ。
前者がグレーティアであり後者がシエスタ。
さらに前者は王族である。
「どうした。黙っていては話しが進まんぞ」
平民は常に貴族に頭を下げ生活をしている。
彼ら(貴族)を決して怒らせてはならない。
癇癪の一つで殺されたとしても、文句は言えない。
それがシエスタの平民の基準である。
もしかしたら、目の前にいる人はそうやって自分たちを平民を扱き扱うのではないか。
そうだ。
それだとするなら納得ができる。
自分みたいに、言葉一つで問題を起こしたとして―――
そして、ガリア王国の王族である。
新しく王になってからは、自分たちの耳に入るぐらいにあまり良い噂を聞かない。
学院に仕える事になった時に、先任は結婚をするとのことで解任されたと言っていたが
もしかしたら、と最悪の事態を考える。
そんな今のシエスタの心境を知っていてか頭上からは、くっくっくっ、と笑いを噛みしめる
声が聞こえる。
「ただの冗談だ。お前が余りにも純粋な顔をしていたのでな、からかっただけだ」
「い、いえ、申し訳りませんでした。オルレア―――」
「良いと言っている。それにしても、珍しい髪の色をしているな」
「は、はい。弟たちは違うのですが、私は曾祖父の血を濃く受け継いだようでして」
「ほほう。姉弟がいるのか。どれ、召喚の儀まで時間はある。朝食でも食べながら話しを聞かせてくれ」
召喚の儀のぎりぎりの時間まで、シエスタはグレーティアの部屋で過ごすごとになる。
そのせいか、シエスタのグレーティアに対する印象は、変わった御方だった。
「それにして、キュルケはサラマンダーか。鱗から察するに火竜山脈かこれは珍しいな」
「そうでしょう。微熱のキュルケにぴったりだわ」
「中々に暖かい。これからの季節にはぴったりだな」
「ちょ、ちょっと。勝手にひとの使い魔を使おうとしないでくれる」
「よいではないか。こやつもほれ、こんなに懐いでいるではないか」
「そんなわけないでしょう。いい加減、フレイムから離れてくれない。この子が怯えているわ」
グレーティアが手を放すと、ぎゅるぎゅる、と鳴き声を上げキュルケの後ろに隠れるように待機をする。
「おいおいキュルケよ。怯えているというのは、こういう事だろ」
と、近くにいるタバサの使い魔の風竜を触ろうとする。
きゅいきゅい、と鳴き大きく空に飛び立ってしまう。
傍からどう見ても、嫌われている。または、それ以上に感じる。
「あの子を怯えさせないで」
「うーむ。そんなつもりはないのだが」
「そうよ。どうみたって、嫌がっているじゃない」
「なら、キュルケがそのサラマンだーを我に渡すしかなるまい」
「どうすればその答えにたどり着くのかしら。ひとの使い魔の前に自分の使い魔のことを心配したほうがいいんじゃないの」
「使い魔というのは、メイジの特性により現れるのであろう。
すでに運命が決まっているようなものに、いちいち考えていられるか」
溜息のキュルケにジト目を向けるタバサ。
両者とも腰に手をつきながら、笑うグレーティアに対して飽きれていた。
そんな笑い声をかき消すかのようにして、広場に爆音が鳴る。
誰もがいわずとも、その原因は分かっていた。
ルイズが魔法を使用したのだ。
「いままでに無く派手に使ったものだ。ほれ、せっかくの衣装が台無しだ」
「こっちだって同じセリフよ」
「同じく」
「しかし、まあなんだあれは。ルイズのやつ、平民を召喚をしたのか」
「ル、ルイズが平民を召喚?! さっすが、ゼロのルイズ。おもしろいように、私の期待を裏切ってくれるわ」
「………」
「どこにいくのだ、キュルケ」
「ルイズに冗談を言いに行くだけよ。
次は、グレーティアの手番なんだから準備ぐらいしていきなさいよ」
手を振りながら、キュルケはルイズのところに行ってしまった。
その後に広場からは生徒たちの笑い声に包まれる。
どうせ、またおもしろおかしくからかっているのであろう、と。
「人間が召喚された」
「そうであろう。やはり、ルイズはオレの期待を裏切らない。
にしても、平民か。同じ平民であったとしても、傭兵なりのほうがまだ使い道があっただろうに」
「驚かないのね」
「これでも驚いているのだよ。
それよりも、好奇心のほうが勝るのでな。ほれ、タバサ。
プライドが高いヴィリエール家にただの平民の使い魔。これからの事を考えるだけでおもしろくなるもの」
「興味ない」
「全く。それでは、楽しく人生を謳歌できんぞ」
ぽんぽんと、タバサの頭を叩き広場に向かうグレーティア。
彼に向かって、タバサは一言だけ呟いた。
「あなたの使い魔には興味がある」
グレーティアが広場に着く頃には、喧噪であった空気もいまは静寂を保っている。
この広場にいる生徒が教師がグレーティアに注目を集めていた。
ガリア王家第三王子にして、新しく即位した無能王ジョゼフの代わりとなるであろう
と他国家ではその話しで持ち上がっている。
「オルレアン様。あなたで、最後となります」
「うむ。コルベールよ。
して、オレもあのように平民の男を召喚をしたならば口づけを交わさないといけないのか」
その言葉に広場にまた笑い声が響き渡る。
それを遮るようにしてルイズの声が切り裂く。
「なによ!勝手にあいつが私の召喚に来ただけなんだから!」
「やめなさい、ヴァリエール。
あなたの召喚にどれだけの時間がかかったと思っているのですか」
「ですが、コルベール先生!馬鹿にされて黙っているわけにはいきません!」
「勘違いするなよ、ルイズ。
オレはもしもの可能性を考慮しているだけだ。
ルイズは、男であったから良いかもしれんが、オレのところに来てみろ―――」
グレーティアが最後まで言う前に悲鳴が上がる。
主に女子から。
「ほれ皆もオレの事を思って、心配しているではないか」
「どっちかというと、歓喜って感じだったけどね。
だからって、古今東西で人間を使い魔にしたなんて、聞いたことがないわ!」
「はあ、そこにいるではないか」
びしっと、ルイズに指を指すグレーティア。
がるっ、と噛みつこうとするが虚しく空を切り、がりっ、とだけ歯を鳴らす音が鳴る。
「おおい!これから召喚の儀があるというのに、物騒なことをするでない」
「あんたが全部悪いんでしょう!」
「大体ルイズは、淑女として気品をもう少し持てんのか」
「いちいち、私に突っかかってくるからでしょうが!」
「キュルケを見習いたまえ。素行は悪いものだが、言葉遣いには目を見張るものがある」
「な・ん・で、そこでツェルプストーが出てくるのよ!
あんな女以下だと思うと吐き気がするわ」
「その言葉をやめろ、となぜ気が付かん。
これだから、ヴァリエール家は狭量で胸が小さいと言われるんだ」
「む、胸は関係ないでしょうが!!」
「おっ、そうであったな。
カトレア嬢は例外であるか。
しかし、カトレア嬢が例外というだけで実際に母君にエレオノール嬢は実際にそうではないか」
「あ、あんた………よく、そんなことが平気で言えるわね」
その頃、ヴァリエール家・アカデミーでは両ヴァリエール共、お仕置きが必要か、と。
呟いていたとか何とか。
「いい加減にしないか! 二人とも!」
結局のところ、コルベールの雷の下最後の召喚の儀が始まった。
「我が名は、グレーティア・ネルンスト・オルレアン」
グレーティアの呼び声に応えるかのように大地はゆっくり深く呻き声を上げる。
拒絶のように。
厭うように。
怨むように。
大地が反逆をし地を揺るがす。
幾人の生徒は立つことが出来ずにそこにへたりこむ。
圧倒的な魔力の前に。
ギーシュがキュルケが召喚したときとも違う。
ましてや、タバサが風竜を召喚した時とも違う。
今でさえ召喚の儀は、メイジの下僕としてパートナーとして共に生きると謳っているが
本来はメイジ同士の戦争の際に用いられる道具だ。
ハルケギニアに大きくそれぞれ覇権が分かれる前に、各地では戦火が飛び交っていた。
そう。
メイジがメイジを倒すための殺すための道具として用いられていた。
本来ならば簡単にやっていいことではない。
「五つの力を司るペンタゴンよ」
杖を空高く彼の場合は剣と呼んだほうがいいだろうか。
天に挑むかのようにして空を切り開くようにして、高く振り上げる。
メイジの戦闘は己の魔法を駆使して戦闘をすることが基本だ。
よって、ルイズの魔法の杖のように軽く魔力が高い素材を加工し使うのが一番利口だ。
中には、ギーシュのように己が信条としているバラを杖とする場合もあるだろう。
あるいは魔力特化とし、タバサのように己の身長まで長い杖を扱う者がいる。
そう。
メイジは己の魔法を扱い相手を打ち倒すものだ。
魔法剣士という分類もあるが、元来魔法を扱える者が貴族であり扱えない者が平民だ。
下の者が上を目指すのは理解できるが上にいる者が自分よりも劣っている事に対しては理解し難い。
より戦闘の中で護身用として身に付けている為、やはり魔法重視の戦闘となる。
それに対しグレーティアがもつのは、ただ一つの剣。
「我が力に我が願いに応えるならば」
何度も言うがメイジは魔法を駆使し杖を目標に向け能力を発動し戦闘をする。
誰が好んで己よりも劣る平民の真似事のような事を平民の真似事をするのか。
魔法を扱うならば、魔法を扱えない平民の前では無敵と言っていい。
ならば敵はメイジとなる。
それならば、相手よりも素早く行動するためのルイズの杖のように。
ギーシュのように杖を欺くためのバラのように。
殲滅するための、タバサのように。
ただ重く長期戦になれば枷となる武器を扱う意味がどこにある。
貴族はプライドが高く誰が好き好んで平民の真似事をする。
それが、グレーティアが王族でありながら平民のなりふりをし生活をしているのが
トリステイン魔法学院の生徒による我慢ならない姿であった。
「ちょっと、タバサ。
王族っていうのはあんなに出鱈目な者なの?」
キュルケからは、もうなんのよ、と文句を垂らしながら前を向くことも億劫なのか俯いている。
タバサはじっと、グレーティアから視線を逸らさずにいた。
グレーティアの周りを包むかのようにして、風が突風が暴風が暴れまわる。
あれこそが私の敵。
「わからない。
彼が魔法を使うのは初めて見る」
「ちょっと、タバサ冗談はよしてよ。
いくらあなただって、何度か王宮に通うぐらいあったでしょう」
「でも、本当に初めて」
「本当に秘密主義なのね、ガリア王国は」
「………」
幼きまだ幸せだったあの頃の記憶がちらつく。
それが嘘のように頭を振る。
あの日常は帰ってこないのだ。
私も彼も全てが変わってしまった。
もう、戻らないのだ。
「やっぱり、あなたも本当は私を嘲笑っていたのね」
ルイズはただ茫然とグレーティアを眺めていた。
いつの頃からなのか。
たまたま、トリステインの姫様。アンリエッタ様の食事会に呼ばれたときに、彼と出会った。
何も考えずに馬鹿をし一緒に怒られ一緒に泣いた。
いつからは、ウェールズとも出会い幼少期を過ごした。
年を重ねてみれば、魔法の成功はこの年になってもゼロ。
月日が経つ度に、自暴自棄になり自身を呪い慰めの言葉が辛かった。
トリステイン魔法学院に入学し随分と変わっていたがグレーティアを見違えるはずはなかった。
相手は王族だ。
グレーティアから話しかけてきたときは驚き、私の言葉遣いにグレーティアも驚いた。
ここは学園なのだろ、ならそのような言葉遣いは不要だ。
と言われたときは純粋に嬉しかった。
ヴァリエールとしてではなく、ルイズとして観ていてくれたのだから。
それでも私は言葉遣いを直すことなく学園生活を送った。
魔法の実技がある度に顔には出してはいないもの、内心は焦っていた。
しかし、その度に、グレーティアの実技講習はオスマン学園長の下で授業を受けていた。
彼は王族だ。何かしらの理由があるのだろう、と気に留めなかった。
季節が変わるにつれ、彼が居ないところではゼロと馬鹿にされる日々が続いた。
そんな中、グレーティアも実は魔法を使えないのではないか。
と生徒たちの中で噂が広まる。
なにせ、半年近くグレーティアが魔法を使うところは誰一人として観ていないのだから。
だが、オスマン学園長の一言で忘れ去れることになる。
「皆は、オルレアン卿の魔法をみたことはなく想像できんかもしれんが。
彼の魔法技術は素晴らしいものだ。いつかは目にする日がこよう。きちんと勉学に励むのだぞ」
生きる伝説とも言われた学園長の言葉だ。
その言葉に生徒は信じ私も信じた。
でも、心のどこかで思っていたのかもしれない。
もしかしたら、私と同じとは言わないけど苦手の分類ではないか。
端的に言ってしまえば、下手くそではないのかと。
現に、杖など持たずに平民の真似事をしているのだから。
決して、そんなことを本人に言えないけど。
彼との学園生活は唐突に終わりを迎える。
前触れもなく予告もなく何事もないようにしてそれは来た。
「グレーティア様。ルイズは魔法が使えないことを知っていましたか?」
いつもの移動教室。
いつもの二人で予習と復習をしながらの移動の会話。
なんの代わり映えがない日常。
「使えないわけがなかろう、苦手な属性はあるかしれないが使えないというのは可笑しいことだ」
「でも、グレーティア様はルイズの魔法を見たことはないでしょう?」
「ならばオレの魔法を見たことがないお前は、オレに魔法を使えないというのか?」
「い、いえそうわけではありません。
オスマン学園長がグレーティア様の魔法は素晴らしいものだと仰ってましたし、現に私を含め
クラス中のみなさんはルイズの魔法を一度きりだって成功したところがないんです」
グレーティアと私をいつも遠まわしに見ていた女だ。
一緒にいる私に嫉妬し遂に我慢出来なくなったに違いない。
「なにを可笑しな。
ルイズはオレと同じで必要な時以外に使用しないだけだ。
気分が悪い。
往くぞ、ルイズ」
「はい、殿下」
「こ、コモンマジック一つできないのですよ!!」
その言葉に対し足を止め振り返るグレーティア。
突然の出来事にルイズは埋まるようにグレーティアに当たってしまったが女子生徒の
ひぃ、とか細い悲鳴は確かに聞こえた。
「ここまで馬鹿にされて、何も反論をしないルイズに申し訳ないが
一介の貴族風情が随分舐めた口を聞く。オレは女子供といって容赦はせぬぞ」
「ひぃぃぃ、そ、そういうわけでは、け、決して。
る、ルイズ、お、お願いよ。魔法を使えないと認めて!じゃないと私が―――」
「なにを懇願している。
自分の言葉の責任も取れないとは嘆かわしい。お前、本当に貴族か。
なあ、ルイズ」
「………」
「どうしたのだ、ルイズ。何を黙っている。ああ、安心しろ。
ここは学園だ。互いの国の為に面倒なことは起こさん」
「い、いえ、陛下。
始業の開始の時間がもう少しで始まります。
急いで向かわれたほうがよいかと」
「なればこそだ、ルイズ。
このような児戯の為にまた時間を取られては、無駄だ」
「わ、わかりました、陛下。
ご不愉快と思われますが、私がレビテーションで教室まで送らせて頂きます」
「そんな了解とらずともよい」
「はい………レビテーション!!」
それからは答える意味もなく下らない日常が始まった。
グレーティアに笑われ、それが頭に来て殴り飛ばし。
翌日には今までは打って変わって、狎れ慣れしい態度で馬鹿にされた。
それに対し文句を言ったら。
きょとん、とした顔で固まったと思ったらまた笑い出した。
いらついてまた殴り飛ばす。
それが当たり前のようになり、以前とは違うけど私の横には変わらず
グレーティアがいた。
時々、馬鹿をして遊んでいた時を思い出していたが、目の前にあるのが現実なのだ。
唇から滲む血があまりにも苦い。
召喚の儀は終わりを迎えようとしていた。
「御身を我に差し出せ!」
剣を大地に打ち貫く。
足元の地面には亀裂が起き、地獄の引きずり混むかのようにして隙間からは
白い光が溢れ出す。
一箇所から漏れていた光が次々と天に向かって伸びる。
永い眠りから覚めるように、雄々しく駆け上がる。
ぱりん、と空間が裂けたかのような音が聞こえる。
「いかん!みなさんは、急いで学園に戻りなさい!」
コルベールが大声になり支持を出す。
慌てながらも逃げ出す生徒を確認しつつ、まだ残っている生徒に怒鳴り声を上げる。
ルイズ、キュルケ、タバサ。
その三人だった。
「何をしているんだ、君たちは!
私の声が聞こえなかったのかね!ここは危険だ!」
長年の勘が告げている。
これでも若き時代は、傭兵として生業をしていることもあった。
ここまで高い魔力を感じるのは初めてだ。
思わず流れる、額の汗を拭う。
グレーティア・ネルンスト・オルレアン。
彼の天才メイジ、十二歳にしてスクウェアのクラスに到達とされた。
オルレアン公シャルルを超える才として認められ。
次期ガリア王国、国王として期待される存在。
周りが見えなくなるほどに光に包まれる。
それが一点に集まり収縮した―――
瞬間に、爆発が起きる。
ルイズの爆発が可愛いく感じるかのように、あたり一面を飲み込んだ。
その中心にいたのが
自らの存在の強さを示すかのように、両角があり。
「な、なんだね………これは」
余りにも予想外の出来事にコルベール唾を飲む。
永い年月眠っていたのだろうか、陽を拒むかのようにして黒く
「ちょっと、ちょっと、タバサ。あれはどういうこと」
「これは予測外」
タバサとキュルケは大きく目を明け。
「これがオレの使い魔か」
「ちょっと!あんた!これはどういったことか説明しなさいよ!」
グレーティアは、関心したかのようにそれを眺める。
ルイズは理解できないと、グレーティアに向かって怒鳴る。
「両角のお前、オレの使い魔に相違ないか?」
グレーティアの声で目が覚めたのか。
相手を射殺さんとし、グレーティアと眼が合う。
「童の眠りを妨げる馬鹿は、おぬしか」
この日、グレーティア・ネルンスト・オルレアンの最愛のパートナーとして
幾戦の戦場を掛け、歴史の一ページを刻む使い魔が召喚された。
ヴェストリの広場の中心――
そこには、茶髪眼鏡と両角日焼け少女がいた。
続けない!