Fate/グダグダ進撃隊   作:雑炊

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大変遅れましたが冬木終了&逸般人強化回。

リアルがエクストリームゴタゴタ状態であれですがまだ生きてます。



では本編をどうぞ。




起きて走って飛んで落とされて殴ってぶっ壊して引きちぎって殴る

視界が黒く塗り潰されている。

そう志郎が認識するのに時間はかからなかった。

 

瞼を開けようとするが脱力状態が続いているかのような奇妙な感覚に陥ってしまい、開かない。

全身がそのような状態だ。体を動かそうとしても動かないとはこの事か。

疲労が体の隅々に最大限行き渡っており、もう気力其の物が湧いてこないという酷い状態だ。

 

ただ、状況が理解できる事から、精神はそこまで披露していないのだろう。

 

耳も割と鮮明に物音が聞こえ――――――なかった。

何やら掠れている様に途切れている。

 

瞬間、志郎は内心で『げ』と悪態を吐いた。

先の騎士王の宝具の余波で鼓膜が破れたのかも知れない。

そう思いついたからである。

 

そうなると、もう彼の趣味の音楽などが聞けないし、人とのお喋りも満足に出来なくなる。

ぶっちゃけ、死ぬよりもそれは恐ろしいように感じられた。

しかし、ある意味で後悔はしていない。

取り敢えず、問題の元凶は打倒できた臭いし、何よりも所長やマシュ達を守れたという事がデカい。

臆病者で小心者の貧弱シティーボーイの癖にそういう事をやり遂げられているというのは、結構誇れることだと思う。

 

なので、まあ、代償はデカいが結果オーライというものだろう。

 

また、確かカルデアに居るであろうロマンは医者だと言っていたはずだ。ということは、端くれとも称されるかもしれないが魔術と医術のハイブリット的な技術を持っているのではと推測できる。

ならば頼めば、完全完治は不可能そうだがある程度マシにはしてくれるだろう。

 

まあ、ダメならダメでそれで良いのだが。

 

そんな考えを浮かべながらゆっくりと意識を闇に落としていく。

元より脱力状態なので眠るのが至極楽だ。

あとは意識を落とすだけでいい。

 

落とすだけで、いいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………………………………?)

 

フッと、耳に誰かの声が届く。

否、声なのかすらも判らない。

ただ、音である、という事だけは辛うじて判る。

 

ただ、音の高さから言って、何処かそれは悲鳴じみたものであるように認識できた。

 

……悲鳴?

 

ふっと思考回路がクリアになったような感覚に陥る。

 

嫌な予感が、動かしにくい体に募る。

 

とにかく、何かが警鐘を鳴らしている。

 

――――――拙い、と。

このままでは、兎に角拙いと。

 

意思に反して本能に従いサボりまくろうとする肉体に無理矢理鞭打ち、顔を上げる。

 

些か視界に靄がかかっているが、何も見えないわけではない。

ギリギリ動く顔を上げ、周囲を見渡す。

 

右――――――違う。金色が目に入ったので確実。

 

左――――――違う。灰色のガチムチがいたのでこれも除外。

 

前―――う、よくわからない。黒いのと半裸が見え――――――あ?

 

 

そこまで行って、彼は気づいた。

 

 

先ほどまでおそらく自分がアーサー王と大立ち回りを繰り広げていたのであろうそこの後ろにあった、ある意味釜とでも言えるべきそのデカいのの真上に――――――何か、大穴があいているということを。

 

その向こうに見えるのは――――――カルデアにあった、あの地球儀だろうか?

不気味な明滅を繰り返すそれを、ぼんやりと見ながらついと視線を移動させると――――――銀色の長い何かが見えた。

 

 

 

――――――あ、所長だ。

 

記憶が確かならば、銀髪ロングの人物は彼女だけである。

しかし、彼女は魔術――――――は使えたはずだ。

だとすると、あの空中に浮かんでいるのも魔術なのだろうか?

にしてはやけに表情が必死な気がするし、だったら悲鳴なんて上げるわけも――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――死にたくない!!!

 

 

 

 

 

 

 

―――――――まだ認められてもいないのに!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、体が勝手に動き出して全力疾走をかける。

直後に思ったことはただ一つ。

 

 

 

 

『あ、これアカンやつや』

 

 

 

これだけである。

 

 

 

 

その動きをした志郎を止めれるものは一人もいなかった。

 

というか、予想外にも程があった上に、その速力が明らかに常人の物ではなかったのだ。

 

止められなかったというより呆気に取られたというべきである。

 

その証拠に、今しがた現れ、本性を顕にしたレフも、今まさに死出の旅へと案内されかけていたオルガマリーも、珍しくポカンとした表情でそれを見ている。

 

さもありなん。

 

当の人物は両手両足ずだぼろで、左腕に至ってはちぎれかけ。

出血量も半端ではなく、早く輸血しないと不味すぎるという状況。

 

動けたら奇跡とかじゃなくて逆に異常。それが魔術師でもない元一般人なら尚更である。

 

 

が、実際問題彼は動けている。

どころか、先程の大立ち回りと遜色ないスピードで駆け抜けているのだ。

呆気に取られる方がむしろ当然である。

 

「っ!死に掛けのクズが!」

 

誰よりも早く我に返ったレフが走る志郎へと魔力で編み上げられた槍のような物質を投げつけるが、少しばかり速度が足りない。

着弾は常に彼が通った道より後方になる。

 

また、その直後に続けて気を取り直した牛若丸とヘラクレスが援護に入る。

ヘラクレスはレフへと手近な岩盤を切り抜いて即席の砲弾とし、自慢の腕力で直接投げつけ、牛若丸は自慢の脚力を持って、志郎への援護に走る。

 

 

……走る、のだが…

 

 

(…おかしい………いや、おかしすぎる!)

 

 

段々と、その異常に牛若丸は気付ける。というか、気付くしか無い。

 

 

(何故一向に主殿に追いつけぬ!?)

 

 

牛若丸は英霊―――つまり、サーヴァントとして現界している。

故に、その身体能力は常人ではまず追いつく事が出来ないほどに強化されているのだ。

 

特に、彼女の場合、クラスの補正も相まってスピードはかなりの物になっている。

 

 

 

 

 

―――の筈の彼女が、満身創痍でボロ雑巾の志郎に追いつけないということは天地が引っ繰り返って神が地上へ落ちてきても不可能なのだ。

 

 

 

――――――本来ならば。

 

加えてみれば、先の戦闘におけるアーサー王との一騎打ちも、まずありえない事である。

本来であれば粉微塵になるような所を、志郎は事も無げに耐え切っているのだ。

 

 

……と、すればである。

 

 

――――――外的要因による強化が、常に行われている?

 

 

牛若丸は――――――源義経は、今でこそ幼名を名乗っているものの、その本質は義経の時となんら変わりない。

戦争の天才とされた実力やセンスは、今も残っているのだ。

 

故に、そこまでは思いつける。

そこまでは。

 

 

……だが、どうあがいても、大元の源義経という人間は日本の、加えて言えば平安末期、源平合戦頃の人間であった。

これが平安時代ド真ん中などであれば、妖術等の類の一種に結びつけて考えられたかも知れないが、彼女が生きた時代はその末期である。侍が貴族や朝廷に変わり、実権を持ち始める頃である。

 

妖術や陰陽師の使う術についての知識についても実に浅く(・・)しか知らないのだ。

 

 

故に彼女は気づけない。

いや、気付くことが出来ない。

 

 

気付ければどうだった、となるわけではないのだが。

 

 

 

何はともあれ、志郎はアホみたいなスピードを持って今にもオルガマリーを飲み込まんとする大穴へと一直線に駆け抜けていた。

今だったら『世界を縮めた』とかアホみたいな事を抜かすことができるかもしれない、とか、冷静な部分が考えられる程度には余裕すら出てきている。

 

一方それ以外の部分で、一切知覚できなくなっている部分があるという事が気にかかる。

それは所謂音だとか、触覚といったものだ。

視界に映る色彩も、段々と褪せてるし、下手すると味覚とか嗅覚もいかれているかも知れない。

 

だがそこら辺最早気にしていたら間に合わん、ということを理解しているからか、一気にそこらへんの不安等は消えてなくなる。

 

精々『もしそうだったら困るなー』程度にしかならない。

これはこれで異常なのだが、既に志郎にそれを認識するだけの思考能力は残っていなかった。

あるのは、兎も角オルガマリーを助けねば何かが拙い、という直感じみたなにかだけである。

 

そう考えているうちに、目的の彼女までの距離は僅かである。

あの釜形のデカイ建造物の上まで登れればという枕詞が付くが、なんか今の自分ならば一飛びであの上までいけそうなので問題がなさそうだ。

いや、実際には問題しか無さそうなのだけれども。

 

とりあえず岸壁の前までくる。

が、足は止めない。

 

ここまで来ると流石にそのデカさが目に付く。

ぶっちゃけると、すみません。調子乗ってました。一飛びとか無理です。

思わず口からそんな言葉が飛び出る程度にはデカかった。

 

いかん。想定外だ。

しかし、もう目前のくせして足は一切止まってくれない。というか止まったら死ぬ。

そんな気がする。

 

なので止まるわけには行かず、それでも登るにはどうしたら良いのか考えなければならず、挙句下手するとタイムリミット有り。しかも二重の意味で。

 

なんだこの四重苦。

 

いっそ笑えてくる。

 

……と、そう半ばヤケを起こし掛けていた彼の目に、釜を構成する岩肌の凹凸が目に入る。

 

直後に、脳裏で豆電球がピカリ。

 

そして、即座にそれを実行する。

 

岩肌の凹凸に手と足をかけ、それらを駆使しながら上を目指す。

 

つまりロッククライミングだ。

 

いやいやいやと思われるだろうが、何故かスイスイ上れているのでこの際四の五のは言ってられない。

 

というか、何やら後方と下が異様に煩い気がするのだが一体何だろうか?

 

確認する暇すら惜しいので特に確認はしないが、何やら子供の声が――――――

 

 

 

 

 

 

 

――――――あ、マシュか。なら問題ねーわ。

 

 

疑問解決。

そんなこんなで釜の淵までたどり着く。

 

瞬間、目に入る肉塊やらなんやら見たいな、とりあえず入ったら拙いと一瞬で解るような毒々しい泉の様な物が目に入る。

 

 

……これが聖杯とやらの中身なんだろうか?

だとすれば相当この『聖杯戦争』とやらの胡散臭さが鼻についてくる。

 

聞いた話では、『願いを叶えることの出来る』コレの奪い合い。それが聖杯戦争だったが、これがまともな願いを叶えるというのか?

 

どう見たって叶えそうにないと思うのは気のせいなのだろうか?

 

そう、思案に耽っているウチに、フッと視線を上にする。

 

 

――――――オルガマリーが半泣きで志郎を睨みつけていた。

 

「………あ」

 

「あ、じゃないわよ!!今忘れてたでしょ?あんた今忘れてたでしょ!?」

 

オルガマリー魂の咆哮である。

まあ、そりゃ助けに来たと思ったらいきなり考え事しだしたら助けられる側は誰だって切れる。

切羽詰っているなら尚更である。

 

何はともかく、当初の目的を思い出した志郎はさてどうするかと頭を悩ませる。

見たところ、彼女のいる場所は丁度釜の真ん中よりこちら側の上。

助走無しでジャンプして手が届くか届かないかは微妙という所。

 

届いても、下手すりゃこの大失敗した闇鍋モドキの中にドボンである。

 

試しに中に手を突っ込んでみる。

 

……水の感触は無し。引き抜いても濡れているわけではない。

しかし、不思議なことに動かせば波紋が立つし、抵抗のような物も感じられる。

どうも、俗に言う魔力的なものらしい。

手に少し何かがくっついてきたが払えばすぐに散った為、問題なさそうだ。

 

続いて足を入れて深さの確認。無論、釜の見た目通りの深さのようで、底には届かない。

肉塊モドキが近くにないか探してみるが、どうやらこれも無いようだ。

 

もっとも、足場になるほどの硬さと浮力があるのか微妙だが。

 

と、なると、

 

 

やはりオルガマリーに飛びついて、釜の淵まで空中で投げるか、一緒に落ちて泳いで運ぶしか無さそうだ。

 

 

そう結論づけて軽く準備運動。

それから、彼女を見る。

 

 

………何故か化物を見る目でこちらを凝視しているのだが、一体なんなのだろうか?

 

まあいいと思い直して跳躍準備。

 

淵も割と幅があるので、助走も出来そうだ。

ギリギリまで下がってから体勢を低くして簡易的なクラウチングスタートの準備をする。

 

 

 

よーい、どん。

 

 

そう心の中で呟いて走り出す。

闇鍋モドキ一歩手前で思い切り足を踏みしめ、膝を曲げ、下半身を全てバネにして――――――跳躍!

 

 

みよ!!この素晴らしいフォーム!!

オリンピックの強化選手だって真っ青――――――すみません冗談です。

ともあれ、十分な距離を稼げたのは確かであった。

 

見れば一気にオルガマリーが近づいてくる。

手を伸ばす。

オルガマリーも手を伸ばす。

残り30cm。

何故か酷くそれがスローに見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……スローに?

 

 

 

 

 

瞬間、悪寒が志郎の全身を襲う。

 

何かが拙い。何かが危ない。何とかしなければ――――――

 

 

 

 

 

だが、それに対して行動を起こすよりも早く、彼の体に複数の衝撃。

 

加えて、鈍痛。

 

そして、視界の急降下。

 

 

 

 

 

同時に、志郎は何が起きたのかを理解するよりも早く、肉塊蠢く汚れた水溜りへと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――痛い。

 

――――――――――――苦しい。

 

――――――――――――――――――憎い。

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね「うぅるっさいわヴォケェ!!!!」――――――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お?」

 

何やらクソ鬱陶しく喚く何かをぶん殴ると同時に、志郎は目を覚ました。

 

が、寝起きなのかどうかは不明だが、頭がおぼつかなく、なんで今ここにいるのかがあやふやである。

 

とりあえず周囲にまとわりついてこようとする黒っぽいモヤモヤを手で払う。

至極あっさりと払える辺り、どうやらそこまで害があるものではないらしい。

 

とか考えているうちに違和感に気づく。

 

――――――手で、払う?

 

ハッとしてみてみれば、ちぎれかけだった自分の左手は黒色に変色し、どこか悪魔を思わせる鋭さと滑らかな無機質さを持った何かに変貌していた。

 

(…え、なにこれ)

 

呆然とそれを見る。

ふっと脳裏に某スタイリッシュゲームの4辺りの主人公が思い浮かぶが、アレのようにゴテゴテしくはない。

 

というかよく見れば全身の怪我も大分というかほぼほぼ完治してしまっているように思える。

流石に服はボロボロのままだが、贅沢は言えないだろう。

 

……いや、ちょっと待てと、そこでようやく志郎は頭を抱えた。

 

明らかに色々と可笑しすぎるのだ。

段々とハッキリしてきた脳みそから情報をすっぱ抜いて思い出す限りでは、自分は確かオルガマリーを助けようとして鍋の淵まで行って、そんで飛び込んだ際、何かからの攻撃を受けて鍋の中に叩き落とされたはずである。

 

……つまり。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここ、聖杯とかいうのの中か?)

 

「大 正 解 !」

 

瞬間的に声がした空間をぶん殴る。

 

ちょっと肉の柔らかさと骨特有の硬さを感じた瞬間、「ぽげべぇ!?」という愉快な悲鳴とともに何かが吹っ飛んだ。

 

いや、吹っ飛んだというのは正しくない。

厳密には殴られた瞬間、空間を流れていったというのが正しいか。

 

そいつは、浅黒い肌に全身タトゥーを入れて、身につけているのはバンダナみたいな赤い布と、これまた赤い腰みのだけであった。

実に変態ちっく極まりない格好であった。

幸い、殴り飛ばした角度的に股間のブツは見えなかったが。

 

 

 

 

 

 

「…え?変態?」

 

「いきなり殴り飛ばしておいてその言い草はねぇんじゃねぇのぉ!?つか、今一瞬まじで昇天しそうになったとかどういうこと!?お兄さん、一体何もんよ!?」

 

 

 

話を聞いてみると、変なカッコのやつ(変態)は『アンリマユの役割を背負わされた人間の成れの果て』らしい。

アンリマユとは、確か『この世全ての悪』とか大層なお名前をお持ちの『ゾロアスター教』の『悪神』だったか、と志郎は思い着くと、どうもそうらしい。

とはいえ、当の本人もいきなりそんなもんにされた上その後は正真正銘の『完全放置』だったらしく、詳しい事までは知らないらしかった。

 

「使えねぇ」

 

「いや、無茶言わないでくれない?何度も言うけど、俺、他の英霊どもと違ってただの人間よ?今のこれだって、この聖杯の核になってる男の皮を着ているようなもんだからね?」

 

そう言ってくるアンリマユ―――クラスはアベンジャー(復讐者)というらしい―――を、横目に、志郎はさてどうするかと胡座を組んで考える。

 

アンリマユ曰く、この空間は『常人であれば取り込まれて発狂死する』ような空間であるらしい。

…のだが、志郎はどういう事か自己を平然と保ち、魂は一切汚染されていないどころかそれらの呪いを取り込みまくって食い荒らしているらしい。

まあ、その結果として興味を持ったアンリマユという情報提供者が出てきているのだし、挙句怪我も治っているのだからいろんな意味で万々歳といったところか。

……志郎自身、そんな状況下に腑に落ちない部分はとってもあるのだが。

 

まあ、いいと彼は其処ら辺を切り捨てる。

 

ご都合主義は創作物語においてはチープすぎて嫌われるが、現実において起こりうるのであればウェルカムである。

苦難が楽に終わるほど嬉しいことはない。

 

故に、彼はそれらを“受け入れることにした”。

そもそも、考えること自体そこまで得意ではないのだ。ならば小難しく考えるのは後回しにしても問題はない。

 

 

んで、目下の問題だが。

 

 

「……ホントにここ、出られないん?」

 

「いやぁ、俺も出ようと思ったことないしなー………待った!ちょっと待った!!今考えるから無言で左腕振り上げるのはやめて!!!今度こそ俺消滅しちゃう!!」

 

「はよ。はよ」

 

「やめてぇ!!そんなハイライトどころか白目まで無くなったような目で見ないでぇ!!怖いから!!アンタの方が『この世全ての悪』に似つかわしい状態になってるからァ!!」

 

「はよ」

 

「ちょっと神様(作者)ァ!!この人なんなん!?怖すぎるんですけどぉ!!!」

 

(作者)は言っている。そんなもんは知らんと。

 

ともあれ、結構な勢いで脅されたのが効いたのか、アンリマユは結構真面目に考えた。

 

まず、最終目的は『ここ(聖杯内部)からの脱出である』。

一応これは簡単だ。現在この聖杯を形作っているものを軒並みぶっ壊して、中身を溢れさせればいいのだ。

そうすれば、嫌でも外には出れる。

 

ただ、これには問題がある。

溢れ出た中身は、『アンリマユ』の願いによって汚染された結果、呪いを振りまく泥とかしているのだ。

それは命を汚染し、喰らい、人理の創造物を怨念の炎で焼き尽くす、超が付くほど危険なシロモノである。

 

例外も別の次元では逆に喰らい切って受肉した英雄王や、目の前の逸般人がいるが、それ以外は軒並み食い殺されるのが必定であろう。

無論、それは英霊であっても例外ではない。

泥に塗れれば汚染され、魂を食われ、消滅するか、運が良ければ件の騎士王のように反転する程度で済むが、そうじゃなければ暴走して、本能のままに暴れまわる怪物となる。

 

故に、この案は実行しようとすれば間違いなく目の前の逸般人が切れる。

そうするとアンリマユは殴られて昇天である。

 

それは是が非でも避けたい。

 

しかし、かと言って他に案があるかというと実はそうでもない。

 

というか、今彼らがいる所は、本来は上も下もない、アストラル体で構成された物理法則のない異常な空間なのだ。

故に、上に登っていけば外に出れるというものではないし、下に潜れば底に着くというものでもない。

幸い、境界線替わりの鍋の壁自体はあるものの、それだけな上、それもまた概念的なものなのだ。

 

故に、どうあがいても外に出る方法というのは、その境界線替わりの『壁』の破壊以外にはないのだ。

 

(…どうしたもんかねぇ……アレ(・・)ができれば話は変わるが……そういうもんでもなかろう?)

 

ちらっと件の逸般人を伺う。

 

あいも変わらず寄ってくる呪いを払うか何かしているようだが、一向に汚染されたりなどの兆候は見られない。

 

――――――行ける、かも?これ。

 

……まあ、そもそも、彼がどうにかなったところで自分には何の損はないのだ。むしろ、そもそも居なくなってくれたほうがよっぽど特である。

また暇な時間が延々と続くかと思うと憂鬱だが、いつ消滅させられるかもわからない時間が延々と続くかと比べたらマシである。

 

そうと決まれば。

 

 

「おーい兄ちゃん、考えついたぜぇ。まあ、一か八かで成功するかはアンタ次第だけどねぇ」

 

そう言って、いつもの胡散臭い笑みを貼り付けながら、アンリマユは問いかける。

 

 

 

 

 

 

乗るか、反るか。

 

どっちにするのだと。

 

 

 

 

それに最初に気付いたのは、やはり英雄王であった。

終始ニヤついた表情のまま延々とレフの語りを聞いていたかと思えば、突然大爆笑を始めたのだ。

なんの脈絡もない笑いである。

レフの言葉に共感したのかと思えば、その言葉はまだ途中の中途半端なものであったし、かと言って気が触れたのかといってもそうではない。

あの英雄王である。

気が触れる、というモノからは確実に縁がない存在である。

 

 

では、何故か―――そこまでマシュが考えた辺りで凄まじい轟音と振動が洞窟全体を襲った。

思わず盾を支えにしなければ、まともに立てない程の物だ。

 

他の皆はと見れば、牛若丸はちゃっかりその石斧を支えにしたヘラクレスの方に乗り、英雄王は相変わらず直立不動である。

一方レフは相当狼狽しているのが見える。

轟音のせいで何を言っているのかは聞こえないが、しきりに聖杯を見ながら頭を掻き毟るなどして何かを喚いている。

 

 

と、次の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

爆音。

そして大量の石礫。

 

 

 

咄嗟に宝具を展開し、牛若丸とヘラクレスの防御に回る。

英雄王も一応範囲の中だ。(とはいえ、彼程になればいとも容易くよけられそうなものだが)

 

直後凄まじい衝撃がマシュを襲った。

思わず目を瞑り、必死に耐える。

 

やがて、振動が収まった。

一体何が――――――そう思うよりも早く、男の悲鳴が耳を劈く。

 

 

同時に、肉を引きちぎる様なブチブチという不快な音と、相変わらずの英雄王の爆笑と拍手の音。

 

 

え!?と思わず声が漏れ、悲鳴の出処を見る。

 

 

声は先程まで世界の醜さを明朗に語っていたレフのものだ。

マスターを聖杯に落とし、オルガマリー所長を消滅させたあの男が――――――激痛と、恐れから来るのであろう悲鳴を上げていた。

 

 

そして、そのレフは今。地面に引き摺り下ろされ、右半身から夥しい血を流してもがいていた。

 

 

その傍らに、一人の少年の姿があった。

 

白い服と黒いズボンという、カルデアの制服を身に纏った姿―――――しかし、その衣服は夥しい数の傷から出た流血によって赤く染められ、左腕に至ってはちぎれかけ――――――て、いない。

 

しかし、おかしい。色がおかしいのだ。

 

やけどを負った痛々しい赤でもなく、健常な肌色でもない――――――無機質で、滑らかな、黒。

 

その黒い腕の先の手には――――――引きちぎったのであろう、レフの右顔面と首の一部を含めた右肩から腕にかけてのソレ――――――!!

 

直後に、世界が砕け、白い光に包まれる。

 

その瞬間、かろうじてマシュが目に焼き付けた最後の光景は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――凄まじい怒声を発しながら、綺麗な肌色の右腕でレフの顔面を殴りつける、一人の青年の姿だった。




如何でしたでしょうか?

どうも雑炊です。

分社化だの現場移動だの中耳炎だの新人教育だの親の襲来だの色々ありますが、なんとか生きていけてます。

今回で冬木編は終了。
次回に少し幕間話のカルデア編挟んでいよいよ皆大好きな彼女の居るオルレアンに進撃します。



なお、本作品におけるオルレアンは、『ハロウィン及び月見』が終わった状態での進撃になります。




――――――後はわかりますね?



ではいつもの捕捉に。

英霊よりはやーい
→オケアノス見る限り多分死ぬ気で走ればグダーズはデフォルトでもヘラクレスより早く走れそうな上、志朗君は更に諸事情でちょっと強くなっているため行けるかなと。
でも多分宝具とか使われたら余裕で負けます。

アンリの呪い<<<志朗?
→仕方ないね。逸般人だからね。
真面目な話をするとこれも志朗君の特性が原因。
ただし盛大に変質してるのでより質が悪くなっています。

こんなところでしょうか?
ではまた次回。
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