そして前回召喚された2人の初陣です。
……あ、勿論影鯖も、杖の人も出ますよ。
……一応。
燃え盛る廃墟だらけの街を4人の影が疾走している。
一人は筋肉モリモリマッチョマンという言葉が生温いというレベルを超えてもはや冷水レベルと言わざるを得ないほどに鍛えられた肉体を持つ灰色の巨漢。
手に持った大理石を無理矢理切り出したような剣状の石斧を持って、眼前の敵を文字通り木の葉のごとく吹き飛ばし、抉り、粉微塵にして蹂躙していく。
一人は戦国時代以前の武士の着物を当時の方々に正面から喧嘩を売っているとしか思えないレベルで露出を上げ、もはや身に付けているものが袖と襟とパンツと腰蓑だけという、日常で着てたら職質確実の痴女スタイルの少女。
襲い来る敵をその手の刀を素早く翻しながら的確に切り捨て、討ち漏らしを許さぬと言わんばかりの気勢で進撃していく。
一人は黒くヘソ出しルックな上に乳袋完備という何かを間違えていると言わんばかりの鎧を身に付けた、少しももいろがかった銀髪の少女。
その手の十字架が彩られた大盾で、敵をすり潰し、粉砕していく。
その後ろを行くは銀髪の少女を背負いながら、空いた右手に前の3人が打ち漏らした敵を引っ掴み、そのまま武器代わりとしている、割と全身ボロボロな青年の姿があった。
……まあ、俺なんですけどね。
「先輩!!!!お願いですからそういう無茶はホントにやめてください!!!!!後生ですから!!後生ですからァァァァ!!!!」
「主殿!!私も同意見です!!というか何故そんな無茶ができるのですか!?物の怪とは言えども、いっその事可哀想になってきます!!」
「じゃあ、こっちにこさせるんじゃねぇよ。OK?」
言いながらスケルトンの頭を軸にしてその下の胴体を回転させ、飛んでくる弓矢を弾く。
……おかしい。割と俺は普通に一般人の筈なのに何でこんな事ができるのか。
まあ、それで生き残れているのだから特に文句はないのだが。
◇
果たして新たに召喚されたダブル変態sは片方がヘラクレス(バーサーカー)。片方が牛若丸(ライダー)という感じだった。
……牛若丸が女だった、という事実で既に俺は頭が痛くなったが、まあ、そこはいい。
問題はその格好だ。マシュ以上の露出であるということは即ち、彼女以下の装甲というのが普通だ。
それに、マシュ自身は防御力特価のシールダー。
あの防御力も、それに由来するものだとすれば、あと二人の防御はもしかしたら紙以下なのでは…
そんな不安があった。
まあ、結局無駄だったのだが。
ヘラクレスは狂ったかの様な雄叫び……というか、所長いわく実際にバーサーカーなので狂ってるらしい。
なので、正常な会話は無理なのだそうな。
(……後に、サーヴァンテイカーにバサカ専用の翻訳アプリがある事に気付いてとても微妙な気分になったが…)
兎も角、そんな雄叫びを上げながら突っ込むバーサーカーには、ぜんっぜん傷が付いた様子はない。
あんだけ刺されたり射られたり切られたりしてるのにである。
流石に大英雄は伊達ではないらしい。
ただ、一撃で敵ごと周囲の構造物を完全粉砕してくのはやめてくれませんかね?
破片がこっちに来てめっちゃ危ないんですけど。
敵の攻撃よかそっちでダメが多いぞ。
わかってるのか?
……無いんだろうな……
気を取り直して牛若丸の方は………言うまでもない。
装甲の薄さに比例した速度の速さ。
言うまでもなく、攻撃が当たらない。
当たれば普通にダメはあるようなのだが、即座にこちらに回復の指示を出してきたりと、やりたい放題である。
戦いの天才に、嘘偽りはなかった。
きっと格好もそう言う理由なのだろう。うん。
そうであってほしい。
そう考えながら歩を進めるに当たり、目下の目的地は眼前の小高い丘の上にある教会……であろう建物だ。
既に炎に巻かれ焼け落ちて、辛うじて立つ十字架だけがその存在の証明になっている。
所長いわく、タイムスリップ先である2004年のこの冬木市では当時、7騎のサーヴァントを用いて同数のマスターが凌ぎを削りあい、あらゆる事を実現できるという『聖杯』をかけた戦い(実際には儀式らしい)である、通称『聖杯戦争』が行われていたらしい。
……その際は特に大規模な被害は起きず、歴史の闇に抹消されるだけに留まったという。
ただ、その10年前に起きた4回目の聖杯戦争では、冬木市一帯が炎に巻かれ多数の死者を
出した『冬木大火災』が発生するという結果に終わっているらしい。
現在の冬木市は、モロにその『冬木大火災』の状態と同じ事になってしまっているらしく、所長いわく、特異点になったことで本来の物とは別にイレギュラーな事態が起こってこうなった。結果、2016年以降の観測が不可能or人類文明消滅へと繋がったのではないか、との事である。
そのため、俺達は現在その原因を突き止めるべく各地を調査しているわけ……なのだが……
……所長の説、ほかの連中納得してるが俺はもう一つの可能性を考えてしまい、中々素直に安心はできないのだ。
◇
タイムパラドックス、という言葉がある。
過去の出来事を変えた結果未来が変わるというアレだ。
ただ、実際には未来は不確定の状態で、過去を変えた所で変わらなかったAという時間軸の代わりに、変わったBという時間軸が出来るだけ、という説もある。
某電子レンジで過去に飛べるゲームでも言っていた、世界線というやつだ。
個人的には、この世界では、これの可能性があるのではないかと思っている。
つまり俺達が居る冬木市は“時間軸B”であり、本来の“時間軸A”ではないのではないか、という事だ。
そも、タイムスリップ事象自体、イレギュラーな状況下での事だ。
本来ならば確実にAに飛べた可能性があるのだが……
(…ま、考えてもしゃーねーか)
そう思いながらマドハンドもどきを蹴り殺す。
こいつらは手の平の上に丸か菱形。色が銀色の物は十字の星型の水晶体が浮かんでおり、そこから所謂魔力弾を放ってくる、要は固定砲台だ。
銀色以下は一発の威力と耐久は低いのだが、それでも数で来られるとスケルトン以上に厄介な存在になる。
集中砲火されて死にかけるとか割とすっ飛ばして相当笑えない。
今の所は最前列で大暴れのヘラクレスがまとになり易くなってくれてるから良いものの、あれがこっちに向いたらそれだけでアウトだ。
鉄パイプだろうとなんだろうと吹き飛ばされてしまう。
現に今も手に持っていたスケルトンが流れ弾で消し飛んだ。
幸いレーザーやビームではなく、着弾したら消えるタイプなので、貫通とかは考えなくていいが、それでも恐ろしいものは恐ろしい。
おかげさまで所長は今や物言わずプルプル震えるだけの荷物と化している。
…置物じゃないだけマシなのだろうか?
それにしても、と、
よくもまあ、その渦中の俺は平然と出来てるな、と疑問に思う。
ぶっちゃけ異常だろ。これ。
右向きゃバケモン。左向きゃバケモン。
後ろ向きゃバケモン。前には英雄とバケモン。
バケモンは全部俺らの命狙いに来てる、と。
……うん。何でパニックにならないんだ俺。
とうとう危険感知能力が麻痺ったか。
それとも、半ブラックなグレー企業のアレコレで、とっくに心が壊れてたか、或いはそれ以外か…
……これこそ考えるだけ“無駄”だな。はい、思考終了。考えるのやめた。
そう思いながら協会後に目を向ける。
目的地までは、もうあまり無かった。
◇
「……ダメね。生存者はともかく、死体すら無いわ……」
「空振りですか」
「空振りですね」
「空振りでしょうね」
「■■―――」
「うるっさいわ非常識パーティーズ!!!無駄口叩かず警戒と探索しなさい!!!」
「「「ういーっす」」」
「■―――■」
「グッ……バーサーカーにすら馬鹿にされている気がする……!」
そんな小コントを繰り広げつつ元協会であった廃墟を探索する。
探索は所長と俺(護衛込み)。
警戒はマシュ達3英雄ならぬ3変態である。
ぶっちゃけ肉盾ならばヘラクレスでも良い……というか適任なのだが、所長曰く
『絶対に廃墟を壊すからやだ』
とのこと。
まあ、あの巨体だし……仕方ない部分はあろう。
……おっと聖書発見。焼けずに残っているので貰っておこう。売れば足しになる。
あとは……ナイフの柄だけか。奇特な所有物だな。儀礼用だとは思われるが、投擲物としては丁度良いサイズなので貰っておく。
そこ、火事場泥棒とか言わない。
◇
『……っ!二人共!高魔力反応だ!!』
「なっ!?数は!?」
『……1体だけだ。でも、そこいらのよりも早い上に尋常じゃない反応だよ……おそらくは……』
そこまでロマンが言ったあたりで、
3変態が警戒してた辺りより破壊音。
続けて、ヘラクレスの雄叫びと、何かが打ち合う音。
同時に、何かがスパンと切り飛ばされたような音。
「「『………………』」」
…誰も、何も言わない。
というか、何かが切り飛ばされた音がしてから、以降何も聞こえないといったほうがいい。
一気に静かに、なった。
「……」
『……』
「……まあ、うん。マシュだけじゃないから、大丈夫でしょう。うん」
『……あ、反応消えてる……うん。心配しなくても良さそうだね、これ』
「探索……は、やめましょう。最悪、敵の増援が来てもおかしくはありません。今はここを離れるのが先決…いいわね?」
『「イエス、マム」』
そう言ってから、俺は再度所長を背負って外に出る。
そこには、マシュと牛若丸とヘラクレスが、地面に倒れふした真っ黒な人型のまさに影というような存在にに対して、まさに死体蹴りを敢行しているというとてもアレな光景が広がっていた。
「「……うわぁ……」」
所長と俺の声がハモる。
きっと表情も何とも言えない感じだろう。お互いに。
とりあえず俺は手近な所に落っこっていた十字架(おそらく協会の上に立てられていたものだ)を空いた手に引っつかむと、3人に声をかけた。
……あの、マシュさん?死体蹴りしながら子犬か何かのように“褒めて褒めて”と近付いてくるんじゃない。一瞬ホントに尻尾が見えたような気がしたから。
可愛いけど、状況的に見ると相当変だからやめなさいマジで。
牛若丸もそろそろやめなさい。隙間から見えたらいかんもんが見えるからやめい。教育に悪いんだよ。
……そしてヘラクレスは何でジ○ジ○立ちだ貴様!?
一体何のネタだそれは!?
クソが割と決まってるから余計に腹が立つというか笑えてしまう!
いや、唸られてもわかんねーよ!!何!?なんなん!?お前ファンなん!?ファンなん!?俺もだけどよ!!!
………英霊の座って、実は意外とサブカルチャーとかが浸透しているのだろうか……?
◇
「……ほーう。中々やりやがる………ってわけじゃぁねえな。ありゃ完璧にバーサーカーが先手必勝で致命傷与えてただけっぽいしな」
教会から少し離れた廃墟の一角。
そこにフードを目深にかぶり、大きな杖を担いだ青い人影があった。
全体的に鍛えられており、見る者が見れば直ぐに解るであろうその筋肉の付き方は、明らかにアスリートの物ではない。
「……あの嬢ちゃんは見所はあるな。芯が通ってやがる…うん。鍛え甲斐はありそうだ……が、あの坊主と背負われてる嬢ちゃんは何だ?」
その男は、明らかに戦場で、特に、最前線で武器を振るって戦う為の肉の付き方をしていた。
現代の、重火器を使った兵士とは違う、中世以前の、槍や刀を持って戦う者の付き方だった。
(嬢ちゃんの方は回路や量は一流……ずばぬけてやがるのにマスターとしての素養がない……珍しいがこっちはわかる……が……)
そんな彼は、今慌てたように教会から出てきた後に頭を抱えて項垂れた“少年”を睨みながら、こう、ポツリと呟く。
「――――――何故、あの坊主――――――
――――――あんなに存在が希薄のままで居られやがる?」
そうして、彼は今まで見ていた一団に接触せんと動き出す。
彼自身の目的の達成の為に。
――――――少年の奇妙さを、確かめるために。
いかがでしたでしょうか?
どうも雑炊です。
お酒が入ると筆が進みますが、覚めてから見ると?マークが出てたりします。
そこは置いといて、だんだんと進んできました。次回で杖の人とは合流でしょうね。
……明らかに影鯖連中がレベル低くて、マシュがピンチになる事はあってもそれ以外がなりそうもありませんがwww
正ヒロイン(予定)の菌糸類の明日はどっちだ!?(笑)
世界線の話
→実際にはどうなのか不明ですが、ランサーが弁慶の段階でおそらく大元の原作における5次とは全く別の世界線のお話なんだろうなと思ったので、今回こんな事を言わせてみました。
……んが、明らかに入れなくてよかった気もする……そんなダメ作者は私です……
一応本作におけるキーワードですが。
志郎の異常性
→一応伏線でありますが、多分有効活用はオルレアンくらいまでですかねー…
まあ、私がまだオルレアンまでしか行ってないだけですが。
……4騎士のピースと再臨用アイテム出ねー…
影鯖
→ぶっちゃけ私自身がサクッと終わり過ぎて『あれ?影鯖のライダー出てきてないよな?』とか終盤で思ったのがネタ元です。
いや、マジでこの時マシュとポンポコのレベルが30になってまして、苦戦もクソもなくサクッと終わってしまったんです。バサクレスが20レベだったのも要因の一つでしょうか。
そりゃ、1発で8000近くたたき出されたらすぐ終わりますわな。
教会探索
→あくまで探索。タイトル通りにNOT火事場泥棒ですので…(目逸らし
と、今回はここまで。
ではまた次回。