虚・女神転生   作:春猫

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推薦をいただきました、ありがとうございます


Dash Under the Ground

 

 今日も毎度の経験値稼ぎ、顔を合わせるなりアキラが嬉しそうに報告してくる。 

「雨合羽が売れた!?」

「おお、DDSオークションで相手の人大喜びだったぞ?」

 

 雨合羽、大喜びで脳内に浮かんだものと照らし合わせる。

「あー、たぶん、間違いない……」

 

 そう言うとタケルは中でも見られる様になった機能を活かして、掲示板のログを見せた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

【力こそ】脳筋プレイヤーの冒険酒場 その肋【パワーだ!】

1:新橋のバスター

 ここは『女神転生Ruina』で、敢えて脳筋プレイを楽しむ者が集まる酒場です。

 スクショ、動画は歓迎ですが、リンク先へのアクセスは自己責任で!

 煽り、荒らしは豪快に叩き潰しましょう

 絡み酒、他者を巻き込んだ喧嘩はご法度

 和気藹々、マターリ進行でいきましょう

 

 過去スレ:脳筋プレイヤーの冒険酒場 その弌~誤

 

______(中略)__________

 

 

723:九段下のサマナー

 フィネガンのコンプが欲しい!

 男なら拳で語るべきだろ!

 

724:駒場のペルソナ使い

 凹って仲魔にすんのかよ!?

 まあ、特殊なコンプってのは憧れるけどな

 

725:鶯谷のバスター

 みんな丸太は持ったな!! 行くぞォ!!

 また、一歩理想に近づいたぞォ!!

 つ【スクショ】【スクショ】【スクショ】

 後は丸メガネだ!

 

726:品川の異能者

 >>725

 でかした!

 

727:新橋のバスター

 >>725

 でかした!

 

728:本郷のバスター

 >>725

 でかした!

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「…………」

「いや、俺は力極じゃないけど、鈍器使うじゃん? で、鈍器スレ見に行ったら丸太使う人が居てさ……」

「丸太って……。万能武器ネタかよ! まあ、そういうコンセプトなら喜ぶのも分かる」

 

 タケルの花瓶も相当なものだが、上には上が居るものだ。

 対吸血鬼戦闘スタイルで町中を歩いているのだ。

 それで電車に乗っちゃったりもしてるらしい。

 

 タクシーは流石に「ちょっと、その丸太はねぇ」と断られたそうだ。

 

「あと、鈍器スレにこの間行ったアキバで見たジャンクのトンファーコンプのこと書き込んだら、やたら感謝された上に祭になった」

「あー、トンファーキックとか? トンファーはネタの宝庫だからな」

「スレ住人で寄ってたかって強化するらしい」

「丸太コンプとか自作するヤツ居たら嫌だな」

「そのネタ書き込むなよ? あそこの住人じゃ、やりかねない」

 

 毎度のサンプラザ、雑談しながらでも問題無い状況に、そろそろ違う時間帯にも挑戦してみるか、といった話も出ている。

 

 

「タケル~! 気を抜かないの!」

「………………!!」

「悪い、悪い」

「文字通り尻に敷かれてんもんなぁ」

 フィーネはタケルの頭に座っている。

 比喩表現で無しに尻に敷かれているのだ、タケルは。

 

 

「少し長居して、夜の相手と一戦だけしてみる?」

「あー、ぼちぼちそういう時期だよね」

「今日は怪我もしてないし、大丈夫大丈夫!」

「…………!!」

 仲魔たちも乗り気なようだ。

 念のため、ゴム手袋とゴム長靴も装備するタケル。

 炎熱が弱点になってしまうが、行動不能になる凍結や感電を食らうよりはマシだ。

 未見の相手との戦闘では、そうしたちょっとした事が生死を分ける。

 

 

「夜になると堕天使と夜魔、それにマシンが出るのか」

「ゾンビガードマンもゾンビコップになって強化されてるなぁ、銃は流石に怖い」

「あの機械は私とタケルの連携でイチコロだね!」

 ジオから鈍器、マシン系へは鉄板コンボと言えるかもしれない。

 

「…………? …………!」

「ドロップも強くなった分……クリケットヘルメット? これまたマイナーな……」

「なかなかゴツいな。俺もヘルメット……乗馬用? 開発、マイナースポーツ押しか?」

「イギリス人が居るのかもしれない」

 

「「似合わね~!!」」

 互いに被った姿を見て笑い合うタケルとアキラ。

 タケルの場合はスーツにゴム手袋、ゴム長、そこに野球とアメフトのヘルメットを合成した様なクリケットヘルメット。

 アキラの場合はタンクトップにジーンズと安全靴というややパンクス系の恰好に、乗馬服か、牧童スタイルでも無いと似合わない乗馬用のヘルメット。

 共に統一感皆無である。

 

「パニック映画の生き残り装備みたいだな」

「ゾンビは散々倒してるけどな」

「「まあ、丸太雨合羽に比べりゃ普通だよな!」」

 

 ひと笑いして今日の経験値稼ぎは終了。

 サンプラザの入り口で別れ、ホームへと戻る。

 

 

 帰り道、東中野の商店街を通るとお好み焼きの屋台が出ていたのでそれを買い、ムルル用には同じく屋台が出ていたべっ甲飴を買う。

 綺麗な細工のべっ甲飴にムルルは目をキラキラとさせている。

 フィーネは少し羨ましそうだが、それでもお好み焼きのソースの匂いも捨て難く、結局大きな口でお好み焼きにかぶりついている。

 

「…………♪」

「むきーっ! イカっておいしいけど噛み千切りにくいっ!」

 ご機嫌のムルルとイカをクチャクチャさせているフィーネ。

 夜の攻略を少ししてきたため、いつもよりは遅い時間となっている。

 町を行く人も帰宅するサラリーマンなどの姿が増えている。

 

 

 歩くうち焼き鳥の匂いに釣られ、色々と買ってしまう。

 ネギマにハツにレバーにつくね、それにムルル用にナンコツと手羽先。

 骨だけ、というものは流石に無かったので、骨の付いた手羽先を買ったのだ。

 

 和菓子屋でデザートも購入。

 

 ホームへと戻ると少し疲れを感じる。

 

 買い置きのレンジでチンするご飯の上に焼き鳥を乗せて食べていると、フィーネが自分もご飯を欲しがったためもう一個ご飯を温める。

 

 ムルルは手羽先を骨ごと嬉しそうに食べている。

 予想通り、骨も好きな様だ。

 流石に串を一緒に食べない様に注意はしたが、同じ様な味付けをされたものを何故食べてはいけないんだろう、と不思議そうな顔をしている。

 

 平気で自分と同じくらい食べるフィーネに「いったいどこに入るんだろう」とマジマジと見てしまうタケル。

 ムルルが食が細い様な気がして色々と気にかけていたが、実はフィーネが食べ過ぎなだけなんじゃなかろうか?

 

 そんなタケルの内心を他所に「デザートを要求する!」と元気いっぱいのフィーネ。

 一人一個で買った三つの和菓子を前に真剣に悩んでいる。

 結局、一つを選んだが、まだ未練がある様だ。

 タケルは苦笑をすると自分の分を半分に分け、半分をフィーネのところに、ムルルも同じ様にしている。

 

「ムルルは優しい良い子だなぁ」と頭を撫でてあげると目を細めて喜んでいる。

「やっぱり、全部おいしかった!」とフィーネも喜んでいる。

 そろってお茶を飲んでまったりと過ごす。

 

 かなりの時間、のんびりとしてからログアウト。

 

 

 掲示板巡回の後、思い立って公式サイトを見てみる。

 

 トップページに【『女神転生Ruina』連動アプリ発売!】と目立つ表示。

 

「ありがちな性質の悪い課金アプリか?」とも思いつつも、「それでVR運営にプラスになるなら、ちょっとくらいは無駄遣いしてもいいか」とリンク先にアクセスする猛。

 

 内容を見て、速攻でアプリを購入する。

 

 

『女神転生Ruina』での仲魔を現実に召喚する、という謳い文句だが、流石に現実世界には悪魔は呼べない。

 VR世界内でコンプに入っている状態と同じ形で、仲魔一体に限ってコミュニケーションが取れるというアプリだ。

 自分のスマホがコンプ替わりになるという訳だ。

 

 カメラやマイク、スピーカーと画面でこちらを認識した相手と相互コミュニケーションをするのだという。

 現実世界でもついついフィーネに話しかけてしまう猛の様なサマナーにとっては、これ以上無いアプリであろう。

 要求スペックが高いのではと確認するも、現在持っているもので十分。

 これは購入するしかないだろう。

 

「あー、本格的なサービス開始はまだ先なんだ、焦って買う必要無かったか?」

 そう呟きながらも、賑やかになりそうな今後の暮らしについつい頬を緩める猛であった。

 

 




脳筋スレの住人の天敵はギリメカラさんです

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