虚・女神転生   作:春猫

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イベントが続きます


Dimensional Trip

「いやー、助かった、どうもありがとう!」

 

 そう声を上げる男……いや、少年。

 どう見ても小学校高学年。

 本来のゲームプレイヤーにはあり得ない年齢の少年は「ニコッ!」とその手の趣味を持つ人間なら撃沈される笑みを浮かべたのであった。

 

 

 

 叫び声の方へ駆けつけたタケル達、コンプからフィーネたちを召喚すると臨戦態勢に移る。

 神社の境内、少年と対峙するのはオオカミ。

 

「な? え、プレイヤー? このタイミングで来てくれるなんて、俺、主人公みたいだな?」

「手助け要るか? 状況は?」

「この島ならここだろうとこの神社来たら『汝の力を示せ!』とイヌガミ登場、俺一人だとパトるしかなかった! たのむっ!」

「衝撃、破魔弱点、火炎反射、呪殺無効か、フィーネはいつも通り、ムルルはアギが反射だからタルカジャか攻撃!」

「分かった! まずはそっちの人だね、ディア!」

「…………!」

「ちぃっ、せっかく覚えたアギが使えねえってか!」

「ペルソナ! ガルッ!!」

 

 相手の素早さに中々攻撃が当たらず、素早さに唯一対抗出来るタケルが相手の直接攻撃に対応することになる。

 

「くそ、当たらねえ、こうなりゃ、とっておき、食らえ、ザンストーン!」

「効いてるよ! 脳天落とし!」

「こなくそ! そんなに齧りたきゃ、これでも食っとけ!」

「タケル~下がって! ジオ!」

「これでトドメだ、ソニックパンチ!」

 少年(?)の顔に似合わぬ一撃でイヌガミが沈む。

 初対面どころか互いに自己紹介も済ませていないのにハイタッチ。

 神社の一か所だけ消えていた灯篭に灯りが点る。

 

 

 

「いや~、この島、俺しか居ないし、無けりゃいいけどあったら俺以外イベントこなせる人間居ないしで根性入れて来て見たはいいもののさ、これ、絶対、一人で相手出来る悪魔じゃないでしょ?」

「ここまで素早い悪魔は初めてだな、当てるだけでも一苦労、一人じゃ回復の余裕も無いし、確実に詰む相手だなぁ」

「致命傷もらわなくても削られて終わりってパターンよね」

「にしても、小学生アバってアリなの?」

「いやいや、俺、小学生じゃないよ? ちゃんとした大人! 種族で先祖返り(ランダム)ってのを選んだら先祖返り(小人)ってなっただけ! いや、だってさ、選択肢に(ランダム)ってあったら強キャラの予感感じない? なんか、とんでもなく強い種族とかになったりとかさ!」

「あ~、分かる分かる。パラもランダムとか可能な場合、とんでもないボーナスとかありそうな気がするしな」

 どこからどう見ても小学生にしか見えない相手、小人の先祖返りだというが無理がある様な気もする。

 この島でボッチで無ければ、「ショタキャラキタ――(゚∀゚)――!!」と掲示板で拡散されていただろう。

 

 

「じゃ、あらためて、自己紹介。俺はタロウ、意外とこういう名前って残ってんのな? 本名はコウタロウだけど、コウタとかコタロとかコータの方は取られてて、自棄になってこの名前入力したら、あっさり通った。バスター、ボクサーのN/N、この外見で職業ボクサーが通っちゃうのが笑えるだろ?」

「サマナー/SEのタケルだ。でもって仲魔のピクシーのフィーネとノッカーのムルル。素早さふりの前衛型サマナーってとこかな?」

「バスター/学生でデビ○マンのアキラだ。一応、剣の前衛だけど、悪魔人って関係でアギは使える。割とタケルとは組んでるから、そこそこ連携はいけてるんじゃないかな?」

「ペルソナ使い/学生のエリリだよっ! ペルソナの魔法使いながら遊撃ってのが普段のスタイルかな? 耐性弱点の攻撃してくる相手だと後衛になるけどね」

 互いに自己紹介を済ませ、ドロップを確認。

 流石に毎回ネタアイテムということは無く、それぞれ宝玉とストーン系もしくは宝石をゲットする。

 

「にしても、ここ、一人っきりだろ? 良く、やめずに続けてるな」

「まあ、他のプレイヤー居ないのはしんどいけどね。現実でも住みたくなるくらい、この島がいいんだよ。まだ遭遇してないけど、台風とかは大変みたいだけどね。」

「ミリオタ?」

「オタまではいかないけど、そっちも好きだね」

 父島には海上自衛隊の基地も、旧日本軍の施設跡もある。

 JAXAや気象庁の施設もあってマニア的にも観光的にも見る場所は多いし、八丈島経由で光ケーブルも来ているため、物流や人の移動以外ではさほど生活に問題はないのだ。

 

  

「そういや、ここに来てるってことは転移陣使ったってことだよね?」

「うん、地元の方は人が多いから私たち居なくても平気だし、掲示板とかで父島の人が一人だって書いてあったから、そこに行ければラッキーって、南に行く秒末尾に入ったら一発!」

「現実の方で宝くじでも買うかな? 今、結構運がいいだろ、絶対」

「俺ら中野、サンプラザとかブロードウェイとかある辺から来たんだ」

「そっか、じゃ、その転移陣まで案内してもらえりゃ、俺も島からの初脱出がなるんだな……また、ここでの生活に戻るにしても、フレが居るのと居ないのじゃ違うだろ? この機会にフレを沢山作っておこうかな!」

「おお、いいな! じゃ、まずは俺らからだな!」

「「「よろしく~」」」

 フレ登録も済ませる。

 初めて埋まったフレ欄に、タロウは感慨深げだ。

 

 

 

「で、この島、ココ以外にイベントに絡みそうなトコある?」

「怪しいトコなら一杯だよ、この島は! 軍施設、砲台、塹壕の跡はあるし、JAXAや自衛隊の施設だって、この世界の場合なら、何か隠してててもおかしくない。ただ、俺だけでしょ、この島? 運営が鬼畜でも無い限り、ここに沢山イベント関連スポットは置かないと思うんだよね」

「今、プレイヤー分布ってどうなってたっけ?」

「当時の実際の人口分布に応じてプレイヤー割り振ってる感じらしい」

「いったん、中野戻って、ブロードウェイまでタロウを案内して、それからまた考えるって感じかな?」

「だな、一回、各自ホーム戻って軽くログアウトしてもいいかも」

「それなりに長丁場のイベントになりそうだしな……あ、タロウはホームに戻って軽く一回ログアウトしてから、もう一回、ここなり、どっか分かりやすい場所なりで合流した方がいいかもな?」

「せっかく来たんだし、少しは島も見たいしなぁ」

「イベント終わっても転移陣残ればいいのにな」

「そうさせてもらった方がいいな。じゃ、俺は一回ログアウトしてくるから、一時間後にまた、ここででいいかな?」

「オッケー! じゃ、一時間後に!」

 手を振りながら駆け足で去っていくタロウ。

 やはり、どう見ても小学生だ。

 

 

「サイズ的には造魔とあまり変わらないけど、ショタキャラプレイヤーが居るとは思わなかったな」

「フィーネは何やってんだ?」

「シュッシュッってあの子カッコよかったよね」

「そういや、表が戦闘系って初めて会ったな」

「自衛官とか警官とかは最初のキャラ作成で頭に浮かんだけど、ボクサーとかもあるんだな」

「いろんな意味でシュールなヤツだけどな。有名ボッチプレイヤーで、外見小学生で、職業ボクサー」

「つい、『えらいねぇ』って頭撫でたくなっちゃって、我慢してた! だってねぇ、見た目小学生なんだもん!」

 雑談しながら、少し周囲を見て回る。

 生憎とイベントで夜の状態になっているため、景色を楽しむというわけにはいかないが、海の匂いを時折運んでくる潮風の中でのんびりと歩くのもいいものだ。

 

 

「自販機は生きてんだよな? じゃ、これは?」

 アキラが指を指す先にはカップヌードルの自販機。

 それも現在では見ることの少なくなったお湯を注ぐ機能が付いたものだ。大昔にはドライブインや酒の自販機と並んで酒屋にあったりしたが、ハンバーガーの自販機ほど駆逐されつくしてはいないものの、まず日常では見かけない。

 

「ああ、たまに、なんか凄く食べたくなるよね、これ!」

「なになに? 甘い物?」

「いや、これは甘く無いなぁ、アイスの自販機とか、ここまで来る船にはあるらしいけど、この辺は無いみたいだしなぁ」

 珍しさも手伝い、カップヌードルを買い、3分待って少しずつ回し食いする。

 フィーネには乳酸菌飲料、3人はそれぞれ好みの飲み物。

 ムルルは飲み物は要らないというので、タケルが最近では常備している飴を渡す。

 

 

 その後も適当にぶらつくが、二度ほど悪魔に遭遇。

 危なげなく倒し、時間の余裕を見て待ち合わせ場所へ。

 

 既に来ていたタロウと合流し、来た時には駆けて来た道を歩いてゆっくりと進む。

 意外と思っていたより距離があり、途中で「あれ? 通り過ぎた?」と不安になるも無事に到着。

 足並みを揃えて転移陣に入ると少し空気が涼しくなる。

 転移で中野に到着。

 

 まずはタロウをプレイヤーがまだ多く居るであろうブロードウェイに案内する。

 歩きながらそれぞれのこれまでのプレイを話したり、掲示板ネタで盛り上がったりする内に到着。

 最初に来た時に比べれば多少は減っているものの、後からログインしてきたものが様子見に来ていたりとパッと見では大して変わっていない。

 

 一度話をして、フレにも登録しているウシロが居たのでタロウを紹介すると目を丸くして驚いていた。

 きっとすぐにでもログアウトして掲示板に書き込みに行きたいと思っているのだろう。

 ウシロとタロウがフレ登録を済ませ、更に周囲の人間と交流しだしたのを機にタケルたちはいったん解散し、軽くログアウトをしてから合流することにする。

 

 公式HP、掲示板なども見るつもりなので、二時間後の約束。

 ホームに戻ったタケルはまずはフィーネをなだめるため、冷凍庫からアイスを取り出し、最近ムルルのお気に入りになったアイスキューブも小鉢に盛ってテレビをつけてみるものの砂の嵐。

 フィーネとムルルとコミュニケーションをとってからコンプに戻して、ベッドに横たわるとログアウトする。

 

 猛はVR機を外すとパソコンの電源を入れ、冷蔵庫の中から栄養補給ゼリーを出して吸いながらパソコンに向かう。

 

 公式HPはアナウンスとほぼ同じだが、地図が表示されており、クリアされている場所には赤い点が表示されている。

 

 掲示板はかなり荒れていて、ガセネタも多く流れているようだ。

 

「こりゃ、短時間じゃ情報収集は難しいかな?」

 取り敢えずは地元関連の掲示板だけをチェックする猛であった。

 

 

 




ボスキャラもイベントの終わらせ方も決まってますんで、早ければ次回にはイベント終了します

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