虚・女神転生   作:春猫

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延々ここまで来て初の悪魔合体です^^;


窓明り

 

 コンプをコタツに置いて空間投影モニターと空間投影キーボードを展開し、アプリの改造を行っているタケル。

 

「タケル~、ブロードウェイに行こうよ!」

「悪い、あと少しで取り敢えず終わるから、ちょっと待ってて!」

「……?」

「ん? 名前か? サーチライト(仮)とでもしとくか?」

 プログラミング画面を見て、分からないだろうに「ふむふむ」などとフィーネはやっていたのだが、流石に飽きて来たようだ。

 ムルルはコタツに入って寝ている。

 

 攻略組から見ればMAGの無駄遣いだろうが、タケルはログインしている間は出来るだけ仲魔は外に出す様にしている。

「悪魔の居る日常」というのも、この『女神転生Ruina』の楽しみのひとつだと思っているからだ。

 これもフィーネやムルルといった仲魔に恵まれたからだとも言える。

 

 ともあれ、一緒に居ても構い倒したりする訳でもなく、それぞれが好きな様に過ごすなどということも珍しく無くなってきており、表の職業の関係もあって上昇しやすくなっているプログラミングのスキルを磨こうと、入門書を見つつ、数値を一部いじるというごくごく初歩的な改造を行っているのだ。

 

 色々考えた末に、選んだ改造対象アプリはエネミーソナー。

 とはいってもそう凝ったものは出来ないので、エネミーソナーの索敵方向を絞り込むことで、探知距離を広げるという方向性で改造しようとしている。

 開けたフィールドならともかく、建物の中や通路などでは必ずしも三百六十度全方位の情報は必要ないし、懐中電灯で照らす様に体の向きである程度はカバー出来ると考え、アキラが銃を手に入れたり、魔法が使える仲魔が増えたりということもあって、相手が気付かない距離からこちら側が相手を把握出来ることの優位性を考えて「意外と使える改造じゃないかな?」と思っているタケルである。

 

「……これでよし! ……あ、メッセージ来てる、タロウからだ!」

「タロウってあの小さい子よね?」

「ああ(タロウもフィーネには言われたくないだろうなぁ……)」

 

 添付のスクショを見てタケルは頬を緩ませる。

 

「父島移住組か! 良かったな、タロウ!」

 

 全て外見年齢は年上の他のプレイヤーに囲まれ、満面の笑顔のタロウ。

 

 先日のイベントでは車の購入資金の約半額にも当たる高額の日本円を獲得したタケルだが、これはタケル一人に限ったことではなく、多くのプレイヤーにかなりの金額の日本円がイベント報酬として与えられた。

「現実で欲しい!」といった切実な叫びが掲示板の書き込みが溢れるほどの大盤振る舞いであったが、運営側の狙いはこうしたホームの転居にあるのだろうと思われる。

 

 初期は都内各地に強制的に割り振られることになったが、そこでのプレイである程度内部に慣れ、イベントで他の町へ足を運び、違う町のプレイヤーたちと知り合うきっかけを作り、最大のハードルである日本円をイベントを機にバラまくという流れを見ると、「そんなつもりは全く無い」という方が不自然である。

 

 父島への引っ越しともなると流石にかなりの費用が発生するが、二十三区内の移動程度ならばさして費用もかからない(住む場所のランクを上げるのには費用がかかるが、同ランクなら新宿でも渋谷でも巣鴨でも秋葉原でも引っ越し費用だけだ)。

 

 もちろん、エリリの様に日本円を「何か必要な時のために」と使わずに取っておく者も多いが、引っ越しだけでなく、タケルの様に乗り物の購入(車は流石に少ないがバイクや自転車はそれなり)に充てたり、アキラの様に転職に用いたり(職種によってはポイントだけでなく日本円も必要とされる)した者も居る。

 

 

 タロウにお祝いの言葉とこちらの近況を知らせるメッセージを発信し、コンプをスマホ状態に戻す。

 

 タケルの車もフィーネのお気に入りだが、それでもいまだにお気に入りナンバーワンはブロードウェイである。

 毎度のブロードウェイ行きをしようとムルルに声をかけると、すぐに目を覚まし、タケルのことをじーっと見つめてくる。

 

 

「ムルル、どうした、眠いのか?」

「……………………!!!!!」

「え? 悪魔合体って……何言ってんだよ、お前!?」

「……………………!……………………!!!」

「いや、今でも役に立ってるだろ?」

「………………!!」

「ずっと一緒にいたいから、強くなりたいんだって、ムルルも……タケル分かってあげて!」

「いや、だってさ、ムルルじゃなくなっちゃうんだよ?」

「……………………!!!」

「こういう時だけ強情なのな、お前……わかった、オークションでお前が合体出来る悪魔を探してみる」

 

 これまで様々なメガテンでそれこそ何百回もしてきた悪魔合体。

 ここまでワクワクしないのはタケルも初めてである。

 

 メガテンの設定として「悪魔は強くなることを望み、悪魔合体を受け入れる」ということは頭では理解していた。

 

 だが、この世界で可愛がって、日常を共にしてきたムルルがそれを望むなどということは、その可能性すら頭から消えていたタケルである。

 

「グレムリンと……いや、オニは可愛くないだろ、どう考えても……なんか……カソとでアガシオン……これなら、まあ可愛いと言えるかな?」

「……………………♪」

「ムルルもこれがいいって!」

 フィーネは抵抗感が無いようだ。

 この辺が悪魔と人間との感覚の違いなのだろう。

 

 カソを落札、ムルルとフィーネと共にいったんコンプに入れ外に出る。

 

 

「タケル~!」といつもと変わらぬ調子のフィーネの呼びかけに、いつもの様にフィーネとムルルを外に出す。

 

「ブロードウェイにれっつごー!」

「…………♪」

 

 ブロードウェイのいつものクレープ屋に立ち寄り、中を時間をかけて上から下までぶらぶらと歩き、そこから外に出て商店街で焼き鳥を買い、和菓子屋でムルルの好きな落雁を買う。

 

 

 

【おたふく教 東中野会館】

 

 何故か札束が無造作にあちこちに放置された会館に入ると、ごく自然に奥へと案内される。

 

「ようこそ、悪魔がつどいし邪教の館へ何の用かな?」

「仲魔の合体をお願いします」

 

 映画の転送装置の様なメガテンではおなじみの怪しげな機械も、こうして見ると非常に禍々しい。

 

 ムルルを抱きしめ、この合体のためだけに仲魔にしたカソの頭も撫でる。

 このカソもこうしてオークションで落札してすぐで無ければ、これまた愛着が出て辛くなっていただろう。

 

「嬉しそうに手を振るなよ……」

 

 無邪気と言ってもいい調子で手を振るムルル。

 装置が動作し、その姿が歪み、消える。

 

 

 

「僕の名前は妖魔アガシオン、今後ともよろしくね!」

「よろしくな、俺はタケル」

「知ってる、知ってる! ……あれ、なんでだろ?」

「私はハイパーなピクシーフィーネだよ!」

「食いしん坊のフィーネだー!」

 ツボに収まったというか、隠れたというか、そんなアガシオンがふよふよとタケル達の元へ飛んでくる。

 

「仲魔が増えたらまた来るがよい」

 

 邪教の館を後にするタケル達。

 

 

 

「名前なんだけど、どうしようかな……?」

 少し気が抜けてしまった様子ながらも話しかけるタケル。

 ムルルであってムルルでない相手をどう呼べばいいのか考えている。

 

「え? ムルルはムルルでしょ?」

「そうだね、僕はムルルだね!」

「え?」

「名前を付けてもらった悪魔は合体しても記憶や感情は残るんだよ?」

「名前を貰った同士だと、混ざっちゃうらしいんだけどね!」

「なにそれ?」

「仲魔になる前は自我が乏しいって話はしたでしょ? 仲魔になると自分ってものが明確になって、名前を貰うとそれが魂に刻まれるの。だから変な合体のさせ方や戦わせ方をすると大変なんだよー!? 結局、手放すしかなくなったりとか! まあ、私はピクシーを極めるから、合体はしないけどね!」

「僕はいっぱい可愛がってもらって大事にしてもらったからね。最初から親愛度MAXなのさ!」

 

「じゃ、なにか? ムルルじゃなくなってないってことなのか?」

「そうだよ、見た目や喋り方は変わったけど、僕はムルルのままだよ?」

「ずっとそばに居るために強くなるって言ったじゃん! タケル分かってなかったの?」

 

「ははは……そんなん知るか! これまでのメガテンじゃ合体したら別の存在だったわっ! もうお別れかと思って……それでもムルルの望んだことだからって、俺馬鹿みてえじゃん!」

「馬鹿じゃないよ、前の姿の時はその辺うまく説明出来なかったしね。それに僕だって悪魔合体は初めてだったんだから、本当のトコはどうなのかって分からなかったしさ! 実際、合体してすぐは前のこと思い出せなかったしさ。こうして話してる間に色々と思い出してきたんだよ?」

「タケルは馬鹿だけど、優しい馬鹿だよ、だから私たちが一緒に居たいって思うんだから!」

「フィーネ、それ実は貶してるだろ! どうせ、俺は馬鹿だよ!」

「ホント、仲がいいねぇ、ちょっとうらやましいかな?」

 

 口では怒った様な言葉を発しているタケルだが、口元はにやけている。

 

 

「ムルルは食べ物の好みとかは変わってないのか?」

「味とかは前のままだけど、流石に固い物をバリバリとは食べられないよ? 種族は変わってるから」

「そっか、じゃ、ムルルが強くなったお祝いにファミレス行くか!?」

「わーい! ファミレスファミレス! パフェとプリンアラモード両方頼んでいい?」

「僕はお子様プレートが食べてみたいな!」

「いいぞ、なんでも頼め~!」

 

 はしゃぐフィーネとムルルと共に、弾むような足取りでファミレスへ向かうタケルであった。

 

 

 




最初からムルルは合体枠だったんですが、いざ合体させるとなると筆がなかなか進まず、ここまでノッカーのままでした
タケルは悩みましたが、実は悪魔合体してもお別れにはならない仕様です
(書いてる内になんか、そんな感じになりました)
名前を付けていない場合は、技能引継ぎなどはありますが、記憶は残りません

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